タマネギ 栽培

タマネギ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/19 14:15 UTC 版)

栽培

種まきや収穫の時期、産地などによって、一年中出荷されている[34]。世界のタマネギ生産量(2018年)は、最大の生産国である中国が約2470万トン、2位のインドが2207万トン、3位のアメリカが328万トンで、以下エジプトイランパキスタンと続く[39]

一般には9 - 6月が栽培適期で、秋に種をまき、苗を育てて晩秋に苗を定植する。定植後はあまり手間がかからず、晩春から初夏に収穫する[40]。栽培適温は15 - 20とされ、連作も可能である[40]。長日種は、多くは北半球で栽培されて、夏の間に生長して秋に収穫する[12]。短日種は、長日種よりも気温の高い赤道地域などで栽培され、秋に植えて冬を越し、春に収穫する[12]

日本における生産と流通

タマネギ畑(富良野市)
新タマネギ。例年日本では4月から5月頃に出回る。

日本での生産量(平成30年)は115万5000トン、作付面積は2万6200ヘクタール (ha) である。そのうち北海道が生産量約67万トン、作付面積1万4700 haと、全国生産量で約6割強、作付面積で6割弱を占める[41]。生産量では北海道に次いで佐賀県が1割強、兵庫県(主に淡路島)が8%強を占め、以下長崎県愛知県静岡県栃木県が1-2%となっている[41]。北海道は春播き栽培、他府県では秋播き栽培が行われるため、季節ごとに産地の異なるものが小売されている。

安価である外国産(中国、タイ、アメリカ、オーストラリアニュージーランド)の輸入品も多い(輸入量約29万4000トン/2018年)[42]。国産品は価格面の対策として生産・流通コストの低減化、端境期対策としてマルチング・ビニールトンネル栽培による極早生の早期化や、収穫後の貯蔵技術の向上、極早生品種・高貯蔵性品種の開発、品質面の対策として、高機能性品種の開発を行っている。

栽培体系

大きく分けて春播き栽培と秋播き栽培がある。致命的な病気や害虫は少なく、栽培の容易な野菜である。

春播き栽培

品種は7月以降に収穫できる晩生。2月末から3月にビニールハウス内で播種し、育苗する[11]。4月下旬から5月にかけて苗をに定植する[11]。定植後1か月ほどは苗の活着に要する。6月から7月中旬にかけては葉の生育が盛んな時期で、その後7月下旬から鱗茎の肥大が始まる[11]。鱗茎の肥大期以降はボトリティス菌、軟腐病菌、ネギアザミウマによる被害を受けやすいため、定期的に農薬による防除を行う。7月から8月にかけ、地上部が倒伏する。倒伏が揃った後、収穫の前には株を土から引き抜くか、根か根を切り離す「根切り」と呼ばれる作業をする[11]。収穫直前に2週間ほど茎葉が枯死するまで畑でそのまま乾かしてから、収穫を行う[11]。収穫後は茎葉が枯死した葉を切り落とし、容器に入れてそのまま乾燥させる[11]

セット栽培

春播き栽培と秋播き栽培の中間的な栽培方法。品種は極早生。2月末から3月にビニールハウス内に播種しそのまま結球させ、直径が2cm程度の小タマネギ(種球根)を作る。

秋播き栽培

9月に播種し、葉が4 - 5枚になるころまで、間引きと土増しを行って育苗する[40]。2か月ほど経った11月ころに苗を定植する[43]。極早生から早生にかけては、マルチ栽培やトンネル被覆を行うところもある。5 - 6月ころになって茎が十分太くなったり、葉が倒れてきたら収穫の適期で、約8割方の葉が倒れたら、天気のよい日に葉の付け根から引き抜いて収穫する[43]。早生や極早生では倒伏前に収穫し、葉付きで出荷することもある。中生や晩生では、風通しのよい日陰で乾燥させて貯蔵する。数個のタマネギを葉のところで紐で縛り、吊るして貯蔵する事もある[43]

固定種の採種栽培

採種(種の収穫)を目的とした栽培は食用栽培と大きく異なる。主な工程は母本選抜と開花・採種である。採種したい品種を食用栽培と同様の方法で大量に栽培し、収穫と同時に最も理想的で優れた性質の個体を厳しく選抜する。9月頃に播種する。選抜した個体(母本と呼ぶ)を9月頃に定植する。ここまでに約1年かかる。日本においては開花・結実時期が梅雨にあたるため、ビニールハウスなどの雨を避けられる環境でなければ安定した収穫が得られないので、この事を考慮して植え付け場所を選定する。秋に定植した株は翌年の7月頃から開花・結実を始める。熟した実が弾けて種が落ちてしまうので、見回りを行って熟したものから順にネギ坊主の塊ごと刈り取って乾燥する。種播きから始まり母本の選抜などを経て、採種に至るまでおよそ22か月かかる。

交配種(F1品種)の採種栽培

母本選抜の方法や注意点などは固定種と同様である。タマネギの交配種の採種には、雄性不稔という正常な花粉を作れない突然変異系統を用いる。不稔の性質は母から子へ伝わるため、不稔の個体に正常な個体の花粉を着けてやれば不稔個体の繁殖が行える。Aという品種の花粉を不稔個体に交配して採種し、その子世代にAを再度交配する。そこから得た孫世代に再度Aを交配する。同様の交配を繰り返すことで、Aにそっくりな不稔系統「a」を得られる。雄性不稔になったaと、正常な花粉を作れる品種B(花粉親)を並べて開花させれば、ミツバチによってBの花粉がaに交配されて結実する。十分に交配が済んだら、交配用の品種Bは不要なので刈取り、または抜き取って処分させる。市販されている交配種は不稔であるが、正常な花粉を交配してやれば交配種からの自家採種も可能である。しかし、交配に用いた花粉親に近いものとなる。また、その子・孫世代も不稔であるため、採種のたびに花粉親に近づいていく。

重要病虫害

  • 乾腐病 病原菌:Fusarium oxysporum f. sp. cepae
  • 軟腐病 病原菌:Erwinia carotovora subsp. carotovora
  • ボトリティス菌による葉枯れ(白斑葉枯病):Botrytis squamosaB. cinerea、ほか
  • ボトリティス貯蔵腐敗:Botrytis alliiB. byssoidea、ほか
  • ネギアザミウマ Thrips tabaci
  • タマネギバエ Delia antiqua
  • タネバエ Delia platura
  • べと病[44]

注釈

  1. ^ 日本では、生食用に軟白栽培されたラッキョウが「エシャット」や「エシャロット」の名で呼ばれている[34]
  2. ^ 遺伝子に欠損があるため、花粉ができない状態[37]
  3. ^ 庫内の温度と空気成分の調整によって、青果物の呼吸を最小限に抑え、鮮度の低下を防止するシステム[11]

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium cepa L.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月8日閲覧。
  2. ^ a b c ジェイ 2017, p. 12.
  3. ^ こぐれひでこの食悦画帳/葉タマネギ 玉のままうどんに『読売新聞』夕刊2018年12月8日(2面)。
  4. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 300. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358319 
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  10. ^ a b c d e f g h i 田中孝治 1995, p. 193.
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  14. ^ ジェイ 2017, pp. 11–12.
  15. ^ ジェイ 2017, pp. 20–21.
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