道徳 道徳の概要

道徳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 23:07 UTC 版)

概要

道徳は、次のような意味をもつ。

道徳
人間が無意識の内に世の中に存在するものと認識している[要出典]正邪善悪規範。個人の価値観に依存するが、多くの場合は個々人の道徳観に共通性や一致が見られる。社会性とも関わる。
道徳観
道徳に対する観方、捉え方。正邪・善悪の価値観。個々人の価値観に依存する。
道徳的規範
道徳観に基づく規範。嘘(うそ)をつくことは悪いことだというように多くの人々から是認されている規範もあれば、動物を殺して食べるべきではないというような少数の人々が従う規範もある[要出典]
道徳的社会規範(社会道徳)
社会共同体において、その構成員の大多数によって共有される道徳観に基づき、より健全で快適な共同生活を送る為に守るべき、又は行うべきと考えられている規範、行動の指針のこと。
道徳性
正邪・善悪を区別し、道徳的規範に従う心、能力、判断のこと。道徳心

道徳的規範は、成文化された規則である法律と一致しない場合もある。

道徳的規範は非常に幅が広く、文化の多様性と同じだけの驚くべき多様性がある。様々な種類の規範は、マナーエチケットタブーとも関連する。儀礼式典として、形式化されていることもある。

それでも、様々な社会の間に共通した特性を発見することができる。例えば、互恵関係、忠誠権威の尊重、身体的な危害の制限、性的関係や食べ物の規制などである。この類似性が何に起因するのかは、議論の的であった。 [3]

道徳的見地から見た言動や身持ちのことを、「品行」「操行」「素行」「日頃の行い」「平素の行い」などの語句を用いる。「方正」とはきちんとしていて正しいことで、「品行方正」とは行いが正しく立派で、模範的であるさまを意味する。

道徳の研究

倫理学者の研究

古代から、哲学者は道徳や倫理の論理的基盤について分析し、考察を行ってきた。このような哲学の分野を、倫理学という。特に19世紀以降の倫理学者は、特定の文化や宗教教義に基づかない普遍性のある道徳の規準を捜してきた。

社会科学者の研究

社会科学者は、伝統的に二つの異なるアプローチを用いた。

  • 経験主義では、道徳的な知識、理解、行動は、幼少時の経験と学習に由来すると考えた。生まれつき人が備えているのは学習装置だけで、それ以外には何もない。全ての文化の子供は、同じような問題に直面するので、道徳の類似性が生まれる。
  • 生得主義では、対照的に、類似性は進化の過程で人の心に刻みつけられたと考えた。それは、発達の過程で速やかな道徳の学習を可能にする。

道徳心理学者の研究

心理学者は、人が現実の世界でどのように道徳的規範を理解し判断するのかを解明しようとしてきた[要出典]。この心理学の分野は、道徳心理学と呼ばれる。

現在の一般的な道徳心理学者の合意は、個人の道徳性は生得性と経験の双方によって形づくられるということである[4]

道徳心理学者は、倫理学者は特定の判断をどのように正当化できるかを議論しているのだと指摘した。ジョン・ロールズピーター・シンガーは、人の道徳判断に生得性に基づく偏りがあることを認めた上で、それでも社会規範としての道徳は合理性と論理に依拠しなければならないと提唱した。

「道徳的優位性」

李氏朝鮮時代から朝鮮民族では、「正統性」にこだわる儒教という思想の中で最も純正性追求をする「朱子学」「性理学」を学ぶことが重視されてきた。これらの思想では、先祖の功徳だけでなく、先祖の罪も後世の子孫にも引き継がれると考えられているので、「悪いことをしたのだから、罪を徹底的に償うべきだ」というように子々孫々の代まで徹底的追及がなされる。韓国でも死後も敵の責任を問うため、日常生活でも「墓を掘り起こして処罰(剖棺斬屍)」という表現を使う[2]。この影響は現代の朝鮮民族にも残っているため、韓国人の思考回路を理解する際には、韓国儒教思想を知ることが助けになる。 2004年7月14日の東京大学コリア・コロキュアムで琴章泰は「韓国社会と儒教──韓国儒教の課題と特性」という発表で、現代韓国社会にも、当てはまるが、朝鮮民族は儒教の影響で価値判断について、「正当性の基準を画一化させようとする意志が強く、対立するときに折衷や妥協の余地がなくなってしまう。」「正統論が強化され、異端排斥論が強く、現実への適応力が弱くなり、妥協と包容を通じた和合の機能が衰える」と論じた[2]。 このように、韓国では原理原則論や道徳的優位性にこだわるからこそ、妥協なき「明確な謝罪獲得」に躍起になり、彼らの価値観を知らない人には「韓国が歴史問題にあんなにしつこい」と感じる[2]。「過去にさかのぼった正義と正統性」「道徳的優位性」が非常に重要となっている韓国では、「道徳的優位性」という独特な言葉が韓国ではメディアだけでなく日常生活でも重視され、使われている。韓国では敵陣営には国内国外だろうが、「反省」と「謝罪」を引き出して、自身や自陣営の「道徳的優位性」を確認したがる[2]


  1. ^ 日本国語大辞典,世界大百科事典内言及, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,デジタル大辞泉,世界大百科事典 第2版,大辞林 第三版,日本大百科全書(ニッポニカ),精選版. “道徳(どうとく)とは” (日本語). コトバンク. 2020年7月27日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 「韓国が歴史問題にあんなにしつこい」深い理由(東洋経済オンライン)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2022年8月1日閲覧。
  3. ^ ピーター・シンガー著、山内友三郎、塚崎智監訳『実践の倫理』新版、昭和堂、1999、p. 6.
  4. ^ Jonathan Haidt and Craig Joseph, Intuitive Ethics: How Innately Prepared Intuitions Generate Culturally Variable Virtues, Daedalus, 133, 4, 2004.
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  20. ^ J. Haidt and J. Graham, When morality opposes justice: Conservatives have moral intuitions that liberals may not recognize., Social Justice Research, 20, 98-116, 2007..
  21. ^ フランス・ドゥ・ヴァール著、西田利貞、藤井留美訳『利己的なサル、他人を思いやるサル―モラルはなぜ生まれたのか』草思社、1998.(原題 "Good Natured")
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  26. ^ Jonathan Haid, Moral psychology and the misunderstanding of religion, www.edge.org, 2007.
  27. ^ J. Haidt and C. Joseph, The moral mind: How 5 sets of innate moral intuitions guide the development of many culture-specific virtues, and perhaps even modules., in P. Carruthers, S. Laurence, and S. Stich (Eds.), The Innate Mind, 3, 2007.
  28. ^ Jonathan Haidt, The New Synthesis in Moral Psychology, Science, 316, pp. 998-1002, May 2007






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