ヘブライ語聖書とは? わかりやすく解説

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ヘブライ語聖書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/06 07:30 UTC 版)

11世紀の写本
タルムード・トーラー(ユダヤ教の学び)

ヘブライ語聖書(ヘブライごせいしょ、ヘブライ語: תַּנַ"ך, תּוֹרָה, נביאים ו(־)כתובים)とは、ユダヤの聖典タナハ[1]ミクラー[注 1]とも。ヘブライ聖書と表現されることもある[3][4][注 2]

キリスト教の立場におけるいわゆる「旧約聖書」の原典(文脈によってはそのもの)であり、多くの部分において同一の内容(創世記出エジプト記など)で構成されている一方で、解釈や収載順などに違いがみられる。

概説

聖書ヘブライ語 で記されるユダヤ教の「聖書正典」である。

タナハは本来、セーフェルー・トーラーヘブライ語版英語版として巻物の形であった。

なお、「旧約聖書[注 3]というのはキリスト教徒や彼らの影響を受けた異教徒の呼び方、考え方であり、ユダヤ教徒、つまりユダヤ人はキリスト教徒の言う「新約聖書」を認めず、当然「古い契約」とも考えないため「旧約聖書」とは呼ばない[7]。 そもそも日本語訳の「聖書[注 4]という表現自体がすでにキリスト教的ニュアンスを含んでいる[注 5]

西暦90年頃に現在のイスラエル南西部のヤブネでユダヤ教学者たちによって行われた宗教会議であるヤムニア会議で、エステル記を含む39の書物をユダヤ教の正典と確定した[8][9]

三大区分

ユダヤ教においてヘブライ語聖書は大きく以下の3つに区分される。タナハ(Tanakh、ヘブライ語: תנ״ך)とは、この3つの部分を呼び分けた名称の頭文字に母音を付した頭字語であり、これらの聖典を統べる呼称になっている。

  1. 律法(トーラー / Torah[10][4] ヘブライ語: תורה)。5巻の書物より成ることから「フンマーシュヘブライ語版英語版[注 6](意訳で「五書」[注 7])とも呼び慣わされる。キリスト教的な文脈では「モーセ五書[注 8]と表現される。
    1. 創世記
    2. 出エジプト記
    3. レビ記
    4. 民数記
    5. 申命記
  2. 預言者 (ネビーイーム)英語版(ネビーイーム / Nevi'im ヘブライ語: נביאים)8巻。
    1. 前預言者4巻。ヨシュア記士師記サムエル記列王記
    2. 後預言者3巻。イザヤ書エレミヤ書エゼキエル書
    3. 十二小預言書1巻。(ホセア書ヨエル書アモス書オバデヤ書ヨナ書ミカ書ナホム書ハバクク書ゼパニヤ書ハガイ書ゼカリヤ書マラキ書
  3. 諸書(クトビーム, カトビーム / Ketubim ヘブライ語: כתובים)11巻。
    1. 真理(エメト)3巻。詩篇箴言ヨブ記
    2. 巻物(メギロート)5巻。雅歌ルツ記哀歌伝道者の書エステル記
    3. その他3巻。ダニエル書エズラ記-ネヘミヤ記歴代誌(I, II)

律法、預言者、諸書の順に5+8+11=24巻[12]、同じく5+21+13=39書と数えることがある[12][13][14]。39を数え上げる場合は、エズラ記とネヘミヤ記は別に、また、サムエル記、列王記、歴代誌はそれぞれ2つの書物からなるとする。

トーラー(律法)ないしタナハ全体(広義のトーラー[注 9])は、文字で記され文書を成すことから成文トーラー[注 10]と呼ばれ、これに対する当初口伝のみされた口伝トーラー[注 11][注 12]と合わせて「二重のトーラー」[注 13]とも呼ばれる[注 14][注 15]

古書・写本

現存する古いヘブライ語聖書としては、西暦930年頃に作成された「アレッポ写本ヘブライ語版英語版[16]が著名であるが、全体の1/4が損失している。 欠損の少ない古いヘブライ語聖書としては、ユダヤ教古文書収集家が所蔵していた9世紀後半から10世紀初頭にかけて作成された「サスーン写本ヘブライ語版英語版」が知られている。創世記の初頭の12葉が欠落しているものの、ほぼ完全な形で現存しており、2023年にはオークションにかけられた際には、写本としては史上最高額の3810万ドルで落札されている[17][18]

ビブリア・ヘブライカ

ビブリア・ヘブライカ(Biblia Hebraica)はヘブライ語聖書を意味するラテン語の熟語。この語は伝統的にタナハの印刷版の表題に用いられた。

脚注

注釈

  1. ^ ヘブライ語: מִקְרָא、Miqra’、読誦を意味する[2]
  2. ^ 「ヘブライ」の表現のゆれからヘブル語聖書[5]へブル聖書[6]とも。
  3. ^ : Παλαιά Διαθήκηヘブライ語: הברית הישנה: Old Testament
  4. ^ ヘブライ語: ביבליה
  5. ^ ヘブライ語で「ヘブライ語: קֹדֶשׁ, קָדוֹשׁ, קִדּוּשׁ)」とは、「特別な、特殊な、他と違う、献呈された、献納された、捧げられた、費やされた」といった意味になる。
  6. ^ ヘブライ語の音訳での仮名表現。ヘブライ語: חֻמָשׁ: Chumash, humash[11]
  7. ^ 英語を含む欧文ではギリシア語での"5"("πέντε")の表現を借りて"Pentateuch"とも。
  8. ^ : Five Books of Mosesヘブライ語: חֲמִשָּׁה חֻמְשֵׁי תוֹרה
  9. ^ 単に「トーラー」(律法)とも[10]
  10. ^ ヘブライ語: תּוֹרָה שֶׁ(־)בִּכְתָב: Written Torah, Written Law、成文律法とも。
  11. ^ ヘブライ語: תּוֹרָה שֶׁ(־)בְּעַל־פֶּה: Oral Law
  12. ^ 口伝トーラーは「タルムード(「学び」)」の代名詞でもある。
  13. ^ : Dual Torah
  14. ^ 「トーラー(ヘブライ語: תּוֹרָה)」は教え、指図、理論学説の意味であり、算術(תּוֹרַת הַ(־)חֶשְׁבּוֹן)、論理学תּוֹרַת הַ(־)הִגָּיוֹן)、認識論תּוֹרַת הַ(־)הַכָּרָה)、のように一般名詞としても使われる。
  15. ^ 最も広い捉え方として、狭義のトーラーを含むヘブライ語聖書(成文トーラー、タナハ)に口伝トーラー(タルムード)を加えた全体をトーラー(律法)とする考え方もある[15][10][4]

出典

参考文献

関連項目

  • Sofer英語版 - ヘブライ語聖書・経典などを写字する職業者

外部リンク


ヘブライ語聖書

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/06 14:22 UTC 版)

ソドミー」の記事における「ヘブライ語聖書」の解説

ソドム破壊物語、および神の破壊阻止するアブラハム試み失敗については、創世記18章-19章記述されている。同書では神の怒り買った罪について内容深く触れた記述がない。 ソドム同性愛との関連付けは、ロト客人に街の男が強姦企てをした記述由来している。聖書の記述の元となった著者なかには、これを罪深い行為考えた人物がいて、もてなしの心の欠如を罪の主軸にしていた。この考え創世記18章-19章ロト客人が街へやってくる前に説明されておらず、「もてなし」の言葉ソドム破壊決まってから出現するユダの手紙19章-21章には様々な点で創世記似た記述があり、ここでは住民女性強姦をした罪によってほぼ完全に街が破壊されたとしている。 モーセ五書預言書では、神のソドム破壊絶大なの証明として何度も書かれている。この出来事申命記29章、イザヤ書1章3章13章エレミヤ書49章および50章、エレミヤの哀歌4章アモス書4章11節、ゼファニヤ書2章9節で記述がある。申命記32章、エレミヤ書23章14節、エレミヤの哀歌4章では、ソドム罪について言及しているが、罪の細かな内容について言及がない。ソドムの罪の詳細については、「姦淫や嘘」 (エレミヤ書)、「強情」 (マタイによる福音書) 、「怠惰な生活」 (ルカによる福音書)、「婚前交渉」 (ユダの手紙)、「下品な生活」(ペトロの手紙二)に関連する項目がある。欽定訳聖書(KJV)では性的不道徳を示す語 "aselgeiais" (マルコによる福音書コリントの信徒への手紙二エフェソの信徒への手紙ペトロの手紙一ユダの手紙)、または「淫乱」 (ローマの信徒への手紙ペトロの手紙二)の言葉表現されている。 エゼキエル書16章には、ソドムイスラエル王国比較がある。 あなたは彼らの道を歩まず、彼らの憎むべきに従っていないが、しばらくすると、あなたのおこないは、彼らよりもさらに悪くなる。 —エゼキエル書 16章47節(日本聖書協会訳、1955) 49 見よ、あなたの妹ソドムの罪はこれである。すなわち彼女と、その娘たち高ぶり食物飽き安泰に暮していたが、彼らは、乏しい者と貧しい者を助けなかった。50 彼らは高ぶり、わたしの前に憎むべき事をおこなったので、わたしはそれを見た時、彼らを除いた。 —エゼキエル書 16章49-50節(日本聖書協会訳、1955) エゼキエル書要約には性的な罪に明示的に言及した箇所はない。

※この「ヘブライ語聖書」の解説は、「ソドミー」の解説の一部です。
「ヘブライ語聖書」を含む「ソドミー」の記事については、「ソドミー」の概要を参照ください。

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