エノク書
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ヘブライ聖書 または 旧約聖書 |
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詳細は聖書正典を参照 |
ユダヤ教、プロテスタント、 カトリック教会、東方教会 |
ユダヤ教とプロテスタントが除外 |
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『エノク書』(エノクしょ ゲエズ語(古代エチオピア語):መጽሐፈ ሄኖ,ヘブライ語: ספר חנוך א' )または『第一エノク書』は、紀元前1 - 2世紀頃成立と推定されるエチオピア正教会における旧約聖書の1つ。エノクの啓示という形をとる黙示である。多くの文書の集成であり、天界や地獄、最後の審判、ノアの大洪水についての予言などが語られており、天使、堕天使、悪魔の記述が多い。
『第一エノク書』は元々アラム語か、またはヘブル語で書かれていたらしい。アラム語の断片が死海文書の中に見出される。現在エチオピア語訳が現存しているが、19世紀にエジプトにおいて、ギリシア語でかかれた『エノク書』の断片が発掘された。しかし、スラブ語訳・エチオピア語訳共に、原本の通りに訳されたわけではなく、様々な記述が加えられている。
書かれた当初は広く読まれたらしく、教父達の評価も高かった。初期のキリスト教の一部やエチオピア正教では『エノク書』は聖書の一部とされる。 他では偽典とされるが、七大天使などでエノク書にしか現れない天使名が使われており、キリスト教初期には広く知られていた。
『ユダの手紙』1章14-15節は『エノク書』60章8節と1章9節を引用している。しかし、『エノク書』1章8-10節は『申命記』33章2-3節のミドラーシュだと認識されている。
関連項目
参考文献
- 日本聖書学研究所編 「スラヴ語エノク書」『聖書外典偽典3 旧約偽典 I』 教文館、1989年、ISBN 9784764219038
- 日本聖書学研究所編 「エチオピア語エノク書」『聖書外典偽典4 旧約偽典 II』 教文館、1990年、ISBN 9784764219045
外部リンク
エノク書
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旧約偽典のひとつであるエチオピア語の『第一エノク書』によれば、 アザゼルは人間の女性と交わる誓いを立ててヘルモン山に集まった200人の天使たちの一人で、その統率者の一人であった(第6章)。 200人の天使たちは女性と関係をもち、女たちに医療、呪いなどを教え、女性たちは巨人を産んだ(第7章)。 アザゼルは人間たちに剣や盾など武具の作り方、金属の加工や眉毛の手入れ、染料についての知識を授けた(第8章)。 神の目から見れば、アザゼルのしたことは「地上で不法を教え、天上におこなわれる永遠の秘密を明かした」ことであった(第9章)。 神はラファエルにアザゼルを縛って荒野の穴に放り込んで石を置くよう命じた(第10章)。 エノクは縛られて審判を待つアザゼルを見て声をかける(第13章)。 天使の言葉のなかでアザゼルが堕天使の頭目として言及される。第69章では堕天使たちのリストの10番目にその名が挙げられている(第54・55章)。 『エノク書』に記される伝説では、堕天使としてのアザゼルはもともとは神に命ぜられて地上の人間を監視する「見張りの者たち」(エグレーゴロイ)の一人であった。アザゼルら見張りの天使の首長たちは、人間を監視する役割であるはずが、人間の娘の美しさに魅惑され、妻に娶るという禁を犯す。アザゼルらとともに200人ほどの見張りの天使たちが地上に降り、人間の女性と夫婦となった。『第二エノク書』では、この堕天使の一団はスラブ語でグリゴリ(Grigori=見張り)と呼ばれる。こうした物語は、“「神の子ら」(ベネ・ハ=エロヒム)が人間の娘と交わった”とする創世記の記述を後世の黙示文学の作者たちが発展させたものと考えられている。
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