性差別
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ポルノグラフィーと性差別
一部のフェミニストはポルノグラフィを性差別だとする意見を述べている。女性の肉体が男性の楽しみによって利用される事自体が性差別だとする考え方は、一部のフェミニストに支持されている。アメリカの著名なラディカル・フェミニストであるキャサリン・マッキノンとアンドレア・ドウォーキンが代表的。ラディカル・フェミニストは、かつては左翼ラディカルの印象が強かったが、現在は急進右派と一致している部分が増えている。反ポルノの姿勢はその典型で、マッキノンらの反ポルノ主義は右派のロナルド・レーガン(共和党)が80年代に成立させた「反ポルノ法」の思考と一致している[40]。『オンリーワーズ』という著作の中でマッキノンは、男性を攻撃用の犬(attack dogs)に見立てており、男性をポルノグラフィにさらすことは『訓練された番犬に攻撃せよと言うようなもの』だと論じている。マッキノンが熱心に取り組んだ法案は、いったん成立したが、表現の自由を保障した合衆国憲法違反であり、裁判所によって「無効」とされた。
カナダやEUはラディカル・フェミニストの女性議員が多い為か、(準)児童ポルノに対する規制が厳しく、所持しているだけで逮捕される例が存在する。
夫婦同氏と性差別
婚姻の際、ほとんどの場合結婚後の姓として男性の姓を選ぶが、これを性差別として、その改善のために選択的夫婦別姓制度を導入するべきであるとの意見がある。なお、この制度については、2009年の大手新聞各紙の世論調査などで賛成が反対を上回るケースも多かったが[41]、2010年の時事通信による調査など反対が賛成を上回るケースもあり[42]、また、内閣府が2006年11月に実施した「家族の法制に関する世論調査」(2007年1月27日発表)の結果については、日本経済新聞や東京新聞はじめ新聞報道で「賛否拮抗」という評価が目立つなど、制度導入の是非について賛否両論がみられる。
性差別に関する法令
日本
日本では、日本国憲法において法の下の平等を定めており、性別により差別されないという規定がある[43]。ただし、憲法は本来国と私人の間の関係を規律するものであって、私人同士の関係には原則として直接適用されない(最判昭和48年12月12日など)。一方各種法令の中には、私人によるものも含めて性別による差別を明確に禁じるものがある[44]。この節ではそういった法令の性差別に関連する部分について言及する。
法律・条例 | 章・節 | 条文 |
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日本国憲法 | 第14条 | すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない[43]。 |
男女雇用機会均等法 | 第5条 | 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。 |
男女雇用機会均等法 | 第6条 | 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。
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教育基本法 | 第4条第1項 | 教育の機会均等 — すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない[45]。 |
大阪府男女共同参画推進条例 | 第7条第1項 | 何人も、職場、学校、地域、家庭その他社会のあらゆる場において、性別による差別的取扱いをしてはならない。 |
男女平等参画推進なごや条例 | 第6条 | 何人も、職場、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、性別による差別的取扱いを行ってはならない。 |
東京都男女平等参画基本条例 | 第14条第1項 | 何人も、あらゆる場において、性別による差別的取扱いをしてはならない。 |
注釈
出典
- ^ 小項目事典,百科事典マイペディア,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),デジタル大辞泉,ブリタニカ国際大百科事典. “性差別とは”. コトバンク. 2021年6月5日閲覧。
- ^ デジタル大辞泉,人事労務用語辞典. “ジェンダーフリーとは”. コトバンク. 2021年6月5日閲覧。
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- ^ 荒井 1988, p. 65.
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- ^ a b 荒井 1988, pp. 204–205.
- ^ 荒井 1988, pp. 214–217.
- ^ 荒井 1988, p. 209.
- ^ 荒井 1988, pp. 210, 214.
- ^ a b c E.S. フィオレンツァ 著、山口里子 訳『彼女を記念して――フェミニスト神学によるキリスト教起源の再構築』日本基督教団出版局、1990年(原著1983年)、100頁。
- ^ イスラムと女性の人権 一国連での討議をとおして- (PDF)
- ^ 「女性に一夫多妻制を認める教えを」、マレー系ムスリム議員が発言
- ^ 植木 2018, pp. 187–188.
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- ^ 岩本裕『仏教と女性』第三文明社〈レグルス文庫〉、1980年、134-135頁。
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- ^ “強姦は日常的、生理は止まり……北朝鮮の女性兵たち”. BBC (2017年11月22日). 2017年11月23日閲覧。
- ^ “27分ごとに発生する米兵の性暴力で女性兵士3割レイプ被害-軍隊は女性も住民も兵士自身も守らない”. BLOGOS (2013年3月21日). 2017年11月23日閲覧。
- ^ http://www.forerunner.com > ... > Pornography Battle
- ^ 民法改正を考える会『よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて』朝陽会、2010年
- ^ WSJ「夫婦別姓、反対が55.8%=外国人参政権も賛成少数−時事世論調査」2010年3月12日
- ^ a b 日本国憲法国立国会図書館
- ^ 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 - e-Gov法令検索
- ^ 教育基本法 - e-Gov法令検索
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