エスニックジョーク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/10 02:06 UTC 版)
エスニックジョーク (英: ethnic joke) とは、ある民族の民族性、もしくはある国の国民性を端的に現すような話によって笑いを誘うジョークのことを言う[1]。国民性や民族性を大袈裟に皮肉ったり、はぐらかしたりする[2]。
民族文化への風刺という性質上、社会的なタブー(民族差別)に抵触する部分があり、ブラックジョークの一種に分類されることも多い。
概要
エスニックジョークとは、ある民族もしくはある国の国民が一般的に持っていると思われている典型的な性格や行動様式など、ステレオタイプに着目し、その特徴を端的に表現したり、揶揄するようなエピソードを紹介することで笑いを誘うものである。国民性と民族性をよく表しているとされ、英語圏ではアイルランド人、スコットランド人を題材にしたものが多いが、それ以外にもイギリス人、アメリカ人、ドイツ人、フランス人、インド人、中国人、日本人と題材にされる[1]。
このため、ある民族、国民が一般的に持っていると思われている特徴、例えば「日本人は集団主義者である」、「ドイツ人は合理的である」というような特徴が共通理解となっていて初めて成立するジョークである。
こうしたジョークを「エスニックジョーク」と呼ぶようになったのは、1970年代頃であると考えられている[3]。
差別性
エスニックジョークに用いられている民族性(国民性)とは当然、ステレオタイプなものであり、必ずしも現実と一致しているものではない。このために差別的と捉えられる場合もありうる。
1880年から1920年にかけての米国では、ポーランド人移民が急増した結果「ポーランド人ジョーク」が大量に出回った。歴史家のジェームズ・S・プーラによれば、無害とは程遠いステレオタイプが流布され、嘲笑がマスメディアなどを介して広まり、ポーランド人のアイデンティティや自尊心を傷つけた。現在では、ポーランドの共産主義勢力との戦いや、ポーランド系アメリカ人の経済的成功、ポーランド系アメリカ人団体の尽力などによって、ポジティブなイメージが広まった結果、偏見は薄まってきているという。しかし、現在でもインターネット上などでは、依然として偏見がジョークの形で流布され続けている。[4]
エスニックジョークが親しまれている国では、ネタにする立場の人とネタにされる立場の人の間で、ジョークが差別的かつ侮蔑的だという理由で確執が生まれたりすることはあまりなく、むしろ互いの民族(国民)の典型的な特徴を指摘して笑い合うという関係を楽しんでいることが多い[要出典]。哲学者のスラヴォイ・ジジェクは差別的発言をきっかけに友人が生まれた自身の経験を挙げ、もちろん我々は単純に互いを罵倒するべきではないとしつつ、ポリティカル・コレクトネスには問題があると主張している[5]。
ジョークの例
- 中国人、アメリカ人、日本人の3人が、列車で旅をしていた[1]。
- アメリカ人が火をつけた煙草を一服しただけで窓から投げ捨てた。中国人が「もったいない」と言うと、アメリカ人は「アメリカでは煙草は捨てるほどある」と言った。
- 日本人がカメラを窓から投げ捨てた。中国人が「もったいない」と言うと、日本人は「日本ではカメラは捨てるほどある」と言った。
- 中国人が隣に座っていた中国人を窓から放り出した。アメリカ人と日本人が「何をするんだ」と言うと、中国人「中国では人間は捨てるほどいるから」と言った[注釈 1]。
- キューバ人、ロシア人、日本人、ハワイ住民の組み合わせで、キューバ人が葉巻を投げ捨て、ロシア人がウォッカを投げ捨てたのを見てハワイ住民が日本人を投げ捨てる(ハワイは日本人だらけである)という筋書きであることもある。
- 沈没船ジョーク(タイタニックジョークとも)の例[6]
- 沈没しかけた船に乗り合わせる様々な国の人たちに、海に飛び込むよう船長が説得を試みる。
- アメリカ人に 「飛び込めばあなたはヒーローになれます。」
- イギリス人に 「飛び込めばあなたはジェントルマン(紳士)になれます。」
- ドイツ人に 「飛び込むのはルールです。」
- イタリア人に 「飛び込めばあなたは女性に愛されます。」または「先程ものすごい美人が飛び込みました。」
- フランス人に 「飛び込まないでください。」
- ロシア人に 「海にウォッカのビンが流れています。」
- 中国人に「海に美味しい食材が泳いでいますよ。」
- 日本人に 「皆さんが飛び込んでいます。」
- 韓国人に 「日本人は飛び込んでいます。」
- 飛び込むように指示すると謝罪と賠償を要求されるので、韓国人は放置するよう指示する筋書きも存在する。
- 問題が発生したら、それぞれの国家では、どんな対処をするのか[7][8]。
- ドイツ:最短の時間と最低のコストで解決する。
- アメリカ:コストを惜しまず手段を講じるが、なぜかドイツ人よりも時間がかかる。
- イギリス:ティータイムにして解決したことにする。
- アイルランド:まずはエールを1杯・2杯・3杯・・・・・・と続けているうちに酔って問題が霞んで見える。
- アイスランド:「まぁ、何とかなるさ(Þetta reddast)」→問題点は曖昧にして避けて通っていく。
- フランス:騒ぎの末に、デモが起きたり衝突したりで問題が深刻化。
- ベルギー:解決策はあったが、何時の間にか問題になっている。
- スイス:国民投票を行い、答えを出す。解決するとは限らない。
- イタリア:パスタを食べて解決したことにしてしまう。
- これに「面倒なことはドイツ人がやってくれる」と続くバージョンも存在する。
- スペイン:問題を放置したままシエスタする。
- ギリシャ:政府機関から商店に至るまで閉鎖してしまう。
- スウェーデン:イケアの組立説明書のように考えてみるが、結局サポートデスクに電話する。
- チェコ:「そもそも問題なのだろうか」で議論が終わる。
- インド:聖なる牛にお伺いを立てる。
- 「国外に移住する」というバージョンも存在する。
- ロシア:当事者はもちろんのこと、問題を指摘した者から目撃者から全て逮捕して、解決を宣言する。
- 北朝鮮:この国では問題点も解決策も、偉大なる第一書記によって指導される。
- 中国:「我が国にはそのような問題は存在しない」という姿勢を保ちつつ、一方では問題を起こした幹部が拘束され、他方では問題を指摘した者も逮捕される。
- 日本 : 中身のない会議が行われ、問題は一向に解決しない。
- 南アフリカ共和国:ラグビーの試合で決着をつける。
- オーストラリア:とにかくバーベキューでもして解決したことにしてしまう。
- ブラジル:サッカーの試合で決着をつける。
- アルゼンチン:堂々巡りの果てに、かなり問題点が深刻になってしまう。
- ウルグアイ:ブラジルとアルゼンチンの様子を見て、悪い方を選ぶ。
- ジャマイカ:巻いて火を着け「問題なんてないさ (No problem man)」とあっけらかんと開き直る。
注釈
出典
- ^ a b c 英語のジョークを楽しむ会「第7章 他人のことなら(エスニックジョーク)」『楽しく英語が身につくジョーク集 ビジネス・日常で使えるジョーク218』ごきげんビジネス出版、2018年。ISBN 978-4909745279。
- ^ 阿部一『できる英会話の表現とポイント: スパイスの効いた会話はここが違う!』三修社、2007年、92頁。 ISBN 9784384006681。
- ^ クリスティ・デイビス 著、安部剛 訳『エスニックジョーク―自己を嗤い、他者を笑う』講談社、2003年、23頁。 ISBN 978-4062582681。
- ^ Dominic Pulera (2004). Sharing the Dream: White Males in Multicultural America. Continuum International Publishing Group. p. 99. ISBN 0-8264-1643-8
- ^ “Slavoj Žižek thinks political correctness is exactly what perpetuates prejudice and racism”. 2021年5月5日閲覧。
- ^ 大谷恵「タイタニックに学ぶ、相手の心のくすぐりかた」『「選ばれる人」はなぜ口が堅いのか?: 言葉を選ぶ技術、言い換えるテクニック』プレジデント社、2017年。 ISBN 978-4833422260。
- ^ “International Guidelines For Problem Solving”. 9GAG. 2019年2月8日閲覧。
- ^ 纐纈タルコ (2013年12月19日). “トラブル発生! そのとき各国では……世界のお国柄がひとめでわかる「世界トラブル解決ガイドライン」”. Pouch. 2019年2月8日閲覧。
参考文献
- 早坂隆 『世界の日本人ジョーク集』 中央公論新社、2006年、ISBN 978-4121502025
- マーヴィン・トケイヤー 『ユダヤジョーク集』 講談社、1994年、ISBN 4062560607
関連項目
エスニックジョーク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 13:45 UTC 版)
エスニックジョークは、特定の集団のもつ民族性(それが本当であれ、あるいは想像上のものであれ)をユーモラスに表現したものに由来する。それらは、隣国あるいは自国内のマイノリティについてのステレオタイプな見解に由来することが多い。例えば、フィンランド人はスウェーデン人とジプシー(ロマ)についてのジョークを好む。 2人の少数派民族系市民が、カモ狩りをしていた。彼らは、狩って狩って、狩りまくったが、1羽のカモも獲れなかった。最後に、一人がこう言った。「ちくしょう、(俺たちがこのまま狩りを続けるより)イヌを空に投げ上げた方がうまくやるだろうぜ!」 多くのエスニックジョークの中には、カモにされている当のエスニックグループの名前以外はすべてそのままの形で様々な文化圏で語られているジョークというのもある。例えば、ポーランド人についてのアメリカのジョーク、ニューファンドランド人についてのカナダのジョーク、アイルランド人についての英国のジョーク、ポルトガル人についてのブラジルのジョーク、シーク教徒についてのインドのジョークなどがある。 英国の典型的なエスニックジョークでは「イングランド人とアイルランド人とスコットランド人が…」で始まることが多く、どれか一者を他の二者と比較することで三つの内のいずれでもからかい続けることができるように出来ている。 エスニックジョークの中でも非常に特殊なのは、ユダヤ人についてのジョークの場合で、それらはユダヤ人に著しく特化したものになる。また、この種のジョークではユダヤ人社会で用いられるスラングが多く使用されているため、他の多くの言語では理解しがたいことがある。但し、これらのジョークの目的は、ユダヤ人蔑視のためのものではないことを明記しておく。ユダヤ人ジョークは、意外にもユダヤ人の間でも非常に好まれている。 このエスニックジョークと似たようなものに、テキサスA&M大学の学生を茶化したもので、特にテキサス州で流行っているいわゆる農業大学ジョーク (Aggie jokes) のような、大学ジョークというのもある。 年老いたジプシーが町議会に現れてこう言った。「妻が病気を患って、旅を続けることができなくなってしまいました。私達は議事堂をもらえるでしょうか?(公営住宅に住めるでしょうか?)」 サハラ砂漠を彷徨っていたヌビア人が魔法の壷を見つけた。フタを開けると魔神が現れ、三つの願いをかなえてやるという。ちょっと考えて彼は言った。「ひとつ、水をくれ。ふたつ、オレを白くしてくれ。みっつ、オレにまたがってくるヨーロッパ中の白人美女を一山くれ。」魔神は即刻その願いをかなえてやった。男は、EU本部の女子用水洗便所の便器に生まれ変わった。 Q: 5,000人のウクライナ人をいっぺんに殺すにはどうすればよいか?A: 高速道路に、キノコを生えさせればおしまいさ。 Q: 今までにあった喧嘩の中で一番血なまぐさいやつは?A: アイスランド人とカモメが腐った魚を奪い合った喧嘩。 あるユダヤ人商人が臨終の床にあって言った。 「愛する我が妻は居るか。」「ええ、ここに居るわ。」 「愛する息子は居るのか。」「ここに居るよ、父さん。」 「……娘は。」「ここに居るわ。お父さん。」その瞬間、老いた商人はがばりと起きあがって叫んだ。「なんだって!?それじゃ一体誰が店番をやっているんだ!」 Q: どうすれば、12人のユダヤ人を一台のフォルクスワーゲンに入れることができるか?A: 1ペニー硬貨(日本円で約1円)を後部座席に投げ込めばよい。 Q: ポーランド人の「社会の窓」(ズボンのファスナー)が開いているのはどんなとき??A: 21まで数えなければならないとき。 ユダヤ人同士の会話:「なぁ、シルベスタイン。どうやったらナイチンゲール(サヨナキドリ)のパテを20セントなんて値段で売れるんだい?他のみんなは1ドルで売っているぜ?なんかごっちゃに (mix) してないか?」「みんながやっているようにしているだけだよ。ほら、ちゃんと、ナイチンゲールのお肉と馬肉を半々に混ぜている (mix) だろ。」
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