宇宙 現代宇宙論

宇宙

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 12:10 UTC 版)

現代宇宙論

一般相対性理論アインシュタイン方程式は厳密解がいくつか知られており、その中に宇宙の膨張を示す解が存在する。この非定常宇宙モデルは、宇宙が過去のある時点に誕生したことを示唆している。この宇宙の誕生と初期宇宙を説明する理論として、ビッグバン宇宙論がある。ビッグバン理論において、宇宙は誕生直後に指数関数的な膨張(宇宙のインフレーション)を経験したと推定される。

現在、4つの基本相互作用が存在することが知られているが、統一場理論に基づき、これらの基本相互作用は初期宇宙では区別なく統一されていたと考えられている。例えばワインバーグ=サラム理論により、電磁相互作用弱い相互作用が統一されることが知られている。基本相互作用は宇宙が膨張し冷却されるにつれて分離されたと考えられている。

亜原子粒子原子分子は宇宙が膨張し冷却される過程で生まれたと考えられている。また恒星銀河などの天体は、水素およびヘリウムからなる分子雲からが生まれたと考えられている(宇宙の誕生と進化の項を参照)。

ビッグバン理論を構成する宇宙論的パラメータに関する仮説はΛ-CDMモデル(Lambda-CDM model)としてまとめられている。だが、これについては異論もある。もしこのモデルを採用するならば、宇宙は原子バリオン)からなる通常の物質(matter)、ダークマター(dark matter)、そしてダークエネルギー(dark energy)から構成される、とされる。現代の物理学で記述できる通常の物質が占める割合は5%程度であり、ダークマターダークエネルギーからなる残りの95%は現在も正体がわかっていない。各成分の構成比率は時間とともに変化しており、現在はダークエネルギー優勢時代(dark energy-dominated era)と推定され、ダークエネルギーの影響により宇宙の膨張が以前より加速している(宇宙の加速膨張)、とされている[12]

宇宙の大きさ

宇宙の年齢

宇宙の誕生から現在までの経過時間は様々な方法やモデルに基づいて計算されている。

2003年、NASAの宇宙探査機WMAPによる宇宙マイクロ波背景放射の観測値を根拠に計算したものによると、約137億歳(正確には、13.772 ± 0.059 Gyr)と推算された[13]。この値は、他の放射年代測定を根拠に計算された110–200億歳[14]や130–150億歳[15]とする大雑把な推定値とも矛盾しない。

2013年3月21日、欧州宇宙機関(ESA)は「宇宙の誕生時期がこれまでの通説より1億年古い、約138億年前(正確には、13.798 ± 0.037 Gyr)である[16]」と発表した。

宇宙の成分

原子でできている通常の物質は宇宙全体の5%にも満たない。

宇宙は何でできているか、またその占める割合については、かつては光を含む電磁波による観測から求められていた。ところが、様々な研究を通じて必ずしも観測できるものだけが宇宙を構成しているとは考えられなくなった。やがて宇宙の成分は原子である物質ではなく、エネルギーの比で表されるようになり、むしろ未だ正体が判明しないダークマターとダークエネルギーとの割合が多数を占めるようになった[17]宇宙マイクロ波背景放射の観測で得た宇宙初期のむらから当初試算されたエネルギー比は、ダークエネルギー72.8%・ダークマター22.7%・物質(原子)4.5%だったが[17]宇宙探査機WMAP人工衛星プランクの観測によって、2003年以降、精度が高められ、以下の数値になった[17][18]

人類はその目に映る物質の根源や力の法則を明らかにする研究を続け素粒子物理学を構築している。それは宇宙開闢の様子さえ理論化に成功した。ところが、宇宙の研究においてこれらの考察が宇宙全エネルギーの4.9%程度にしかならず、残りの95%は、そのようなものがあるという程度しか理解が及んでいない。この分野への科学的探究が求められている[17]

宇宙にある元素は、水素原子が93.3%を、ヘリウム原子が6.49%を占める[19]。また、観測可能宇宙内の原子の総数は、足し合わせると10の80乗個程度となる。

宇宙の膨張

20世紀に入り行われた観測から、宇宙は膨張をしていると見なされている。だが過去には様々な考えがあった。アイザック・ニュートン絶対時間絶対空間の前提から導かれたニュートン力学が支持され、人々は宇宙は静的で定常であると見なしていた[11]

1915年アルベルト・アインシュタインが発表した一般相対性理論では、エネルギー時空曲率の間の関係を記述する重力場方程式アインシュタイン方程式)があった。この方程式が導き出す宇宙の未来は、星々の重力によって宇宙は収縮に転じ、やがて一点に潰れるというものだった[11]。この解は、アインシュタイン自身やウィレム・ド・ジッターアレクサンドル・フリードマンジョルジュ・ルメートルらによって導かれた。当初アインシュタインは、宇宙は定常であると考えていたため自分が見つけた解に定数宇宙定数)を加えることで宇宙が定常になるように式に手直しを加えた[11]

1929年エドウィン・ハッブルが、すべての銀河が遠ざかっている事を発見し、さらに距離が遠い銀河ほど遠ざかる速度が早いことを見出した(ハッブルの法則)。この観測結果から「膨張する宇宙」という概念が生じ、アインシュタインも「人生最大の誤り」と述べ重力場方程式から宇宙定数を外した[11]

膨張の中心

すべての天体を含む宇宙全体が膨張しているため、無数の銀河がほぼ一様に分布していて、その距離に比例した速度で遠ざかっている。そのため、いずれかの銀河から見たとしても、同じ速度に見える(膨張宇宙論)。「宇宙原理を採用すれば、宇宙には果てがない」と言うため、これを信じれば宇宙膨張の中心は存在しない。銀河の後退速度が光速に等しくなる距離は、宇宙論的固有距離において地球から約150億光年のところとなる。宇宙年齢に光速をかけた距離とこの距離が近似するのは偶然である。これはハッブルが発見したため、ここまでの距離はハッブル距離、あるいはハッブル半径と呼ばれるが、これは宇宙の地平面(宇宙の事象の地平面、あるいは粒子的地平面)ではない。光速を超えて遠ざかる天体は赤方偏移Z=1.6程度の天体と考えられるが、この値を超える天体はすでに1000個程度観測されている。

宇宙の誕生

ビッグバン理論では、宇宙は極端な高温高密度の状態で生まれたとされる(下)。その後、空間自体が時間の経過とともに膨張し、銀河はそれに乗って互いに離れていく(中、上)

ビッグバン理論(ビッグバン仮説)では、宇宙の始まりはビッグバンと呼ばれる大爆発であったとされている。ハッブルの法則によると、地球から遠ざかる天体の速さは地球からの距離に比例している。そのため、逆に時間を遡れば、過去のある時点ではすべての天体は1点に集まっていた、つまり宇宙全体が非常に小さく高温・高密度の状態にあった、と推定される。このような初期宇宙のモデルは「ビッグバン・モデル」と呼ばれ、1940年代にジョージ・ガモフが物理学の理論へ纏め上げた[11]

ガモフはビッグバンの時に発せられた光がマイクロ波として観測されるはずと予言した[11]。その後、1965年アーノ・ペンジアスロバート・W・ウィルソンによって、宇宙のあらゆる方角から放射される絶対温度3度の黒体放射に相当するマイクロ波(宇宙背景放射)が発見された。これは宇宙初期の高温な時代に放たれた熱放射の名残とみなされ、予言の正しさを裏付ける証拠とされた[11]

ビッグバン・モデルの研究は進み、例えばその温度についてガモフは100億度程度と考えたが、後に1031度と試算されている。ビッグバン直後の宇宙には物質は存在せず、エネルギーのみが満ちた世界だったと考えられている。理論によると、物質の基礎になる素粒子は100万分の1秒が経過した頃に生じ、その時には温度が10兆度程度まで下がった。1万分の1秒後に温度は1兆度になり、陽子中性子が出来上がった。宇宙は膨張しながらさらに冷え、3分後には水素・ヘリウム・リチウムなどの原子核や電子が生じ、温度は10億度になった。38万年が経過すると温度は3800度程度になり、電子が原子核に囚われて原子となって、ビッグバンが起こった時に生じた光子が素粒子に邪魔されずに真っ直ぐ進めるようになった。これは「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれ、この光が宇宙背景放射である[11]。原子は電気的に中性で反発しないため、やがて重力で纏まり始めて、約1~1.5億年後にはファーストスターが[20]、約9億年後には[21]星や銀河を形成するようになった[11]

しかしその後、宇宙の地平線問題平坦性問題といった、初期の単純なビッグバン理論では説明できない問題が出てきた。これらを解決する理論として1980年代にインフレーション理論が提唱され、ビッグバン以前に急激な膨張(インフレーション)が起こった、とされるようになった[22]。この理論では宇宙の真の誕生はビッグバンの前に無から生じ、急激な膨張(インフレーション)を経てからビッグバンが起こったという。インフレーション時に内包するエネルギーにはわずかなムラがあり、このムラが原子の集積を呼び込んだ事、またムラが一様だったため宇宙が平坦になったとしている[21]。提唱当時のインフレーション理論には観測結果が伴っていなかったが、後に精密な宇宙背景放射の測定が理論と一致する事が判明し、信頼性が高まった[21]

宇宙の未来

宇宙定数を取り除いたアインシュタイン方程式の解が示す宇宙の未来は、膨張がやがて収縮し、最終的に一点につぶれるビッグクランチと呼ばれるモデルであった。地球表面でボールを空に投げると高く上がるが、やがて勢いが無くなり落ちて来る。同様に、膨張の原動力である熱や光の放出の力が低下し、重力が優勢になると宇宙は膨張速度を落とし、収縮に転じる。ほとんどの科学者はこのモデルを支持していた[23]

ところが1998年に膨張速度を観測した2つのグループ[注釈 1]が、宇宙誕生後70億年頃から加速膨張が始まったと発表し、未来モデルは書き換えられた。宇宙を加速膨張させる原動力は謎のままダークエネルギーと名付けられ、将来的にこの量がどのように推移するかによって2つのモデルが作られた。ダークエネルギーの増加が続き膨張が加速され続けてやがて無限大になると、宇宙は素粒子レベルまでばらばらに引き裂かれて終焉を迎える。これはビッグリップと呼ばれる。ダークエネルギーによる膨張が無限大に達しなければ、宇宙は緩やかに膨張を続けながらも破綻しない可能性もある[23]

宇宙の歴史


注釈

  1. ^ この2つのグループはライバル関係にあり、それらが同じ結論に至った事が観測の信ぴょう性を高めた。荒舩、p. 19
  2. ^ 電磁波による観測に制限されない、観測可能な宇宙との違いに注意。
  3. ^ ここでいう「速度」の大きさとは地球のある位置から対象までの宇宙論的固有距離を宇宙時間で微分したものである。以下、「宇宙の大きさ」の項目における「速度」および「速さ」はこの定義に準ずる。
  4. ^ 450億光年先の空間は現在における光子の粒子的地平面である。

出典

  1. ^ “Hubble's Deepest View Ever of the Universe Unveils Earliest Galaxies” (プレスリリース), NASA, (2004年3月9日), http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/2004/07/ 2008年12月27日閲覧。 
  2. ^ Merriam-Webster, definition of cosmos.
  3. ^ 広辞苑第六版【宇宙】
  4. ^ Merriam-Webster, definition of universe.
  5. ^ 宇宙”. トクする日本語. 日本放送協会 (2014年9月24日). 2014年9月25日閲覧。
  6. ^ フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 5』講談社、2004年。
  7. ^ Sanz Fernández de Córdoba, S. (2004年6月21日). “100km altitude boundary for astronautics”. www.fai.org. FAI. 2022年1月28日閲覧。
  8. ^ Sanz Fernández de Córdoba 2004, The Karman separation line: Scientific significance.
  9. ^ de Gouyon Matignon, Louis (2019年12月24日). “Why does the FAA uses 50 miles for defining outer space?”. www.spacelegalissues.com. Space Legal Issues. 2022年1月28日閲覧。
  10. ^ Commercial Space Transportation Activities”. www.faa.gov. FAA (2020年6月19日). 2022年1月28日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m 荒舩、pp. 8-13、ビッグバンからはじまった宇宙
  12. ^ Frieman, Joshua A.; Turner, Michael S.; Huterer, Dragan (2008-09-01). “Dark Energy and the Accelerating Universe” (英語). Annual Review of Astronomy and Astrophysics 46 (1): 385–432. doi:10.1146/annurev.astro.46.060407.145243. ISSN 0066-4146. https://www.annualreviews.org/doi/10.1146/annurev.astro.46.060407.145243. 
  13. ^ Nine-Year Wilkinson Microwave Anisotropy Probe (WMAP) Observations: Final Maps and Results (PDF)”. 2013年1月29日閲覧。
  14. ^ Britt RR (2003年1月3日). “Age of Universe Revised, Again”. space.com. 2007年1月8日閲覧。
  15. ^ Wright EL (2005年). “Age of the Universe”. UCLA. 2007年1月8日閲覧。
    Krauss LM, Chaboyer B (3 January 2003). “Age Estimates of Globular Clusters in the Milky Way: Constraints on Cosmology”. Science (American Association for the Advancement of Science) 299 (5603): 65–69. doi:10.1126/science.1075631. PMID 12511641. http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/299/5603/65?ijkey=3D7y0Qonz=GO7ig.&keytype=3Dref&siteid=3Dsci 2007年1月8日閲覧。. 
  16. ^ Planck 2013 results. XVI. Cosmological parameters (PDF)”. 2013年6月8日閲覧。
  17. ^ a b c d 荒舩、pp. 22-23、星や銀河は宇宙のわずか5%にすぎない
  18. ^ Planck reveals an almost perfect Universe”. ESA (2013年3月21日). 2013年7月7日閲覧。
  19. ^ 「徹底図解 宇宙のしくみ」、新星出版社、2006年、p39
  20. ^ 荒舩、pp. 16-17、ビッグバンで膨張した宇宙の成長
  21. ^ a b c 荒舩、pp. 14-15、ビッグバンの前にも宇宙はあった
  22. ^ 「宇宙はどのように生まれたのか?」(国立天文台)
  23. ^ a b 荒舩、pp. 18-19、宇宙が辿る運命は3つの可能性
  24. ^ 「宇宙図の見方」(国立天文台)
  25. ^ Rindler (1977), p.196.
  26. ^ Christian, Eric. “How large is the Milky Way?”. 2007年11月28日閲覧。
  27. ^ I. Ribas, C. Jordi, F. Vilardell, E.L. Fitzpatrick, R.W. Hilditch, F. Edward (2005). “First Determination of the Distance and Fundamental Properties of an Eclipsing Binary in the Andromeda Galaxy”. Astrophysical Journal 635: L37–L40. doi:10.1086/499161. http://adsabs.harvard.edu/abs/2005ApJ...635L..37R. 
    McConnachie, A. W.; Irwin, M. J.; Ferguson, A. M. N.; Ibata, R. A.; Lewis, G. F.; Tanvir, N. (2005). “Distances and metallicities for 17 Local Group galaxies”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 356 (4): 979–997. doi:10.1111/j.1365-2966.2004.08514.x. http://adsabs.harvard.edu/cgi-bin/nph-bib_query?bibcode=2005MNRAS.356..979M. 
  28. ^ Mackie, Glen (2002年2月1日). “To see the Universe in a Grain of Taranaki Sand”. Swinburne University. 2006年12月20日閲覧。






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