うちゅうマイクロは‐はいけいほうしゃ〔ウチウ‐ハハイケイハウシヤ〕【宇宙マイクロ波背景放射】
読み方:うちゅうまいくろははいけいほうしゃ
宇宙マイクロ波背景放射
宇宙マイクロ波背景放射
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/11 08:10 UTC 版)
「ビッグバン」の記事における「宇宙マイクロ波背景放射」の解説
「宇宙背景放射」を参照 ビッグバン理論からは、バリオン数生成の時代に放出された光子による宇宙マイクロ波背景放射 (CMB) の存在が予測されていた。初期宇宙は熱平衡の状態にあったため、プラズマが再結合するまでは放射とプラズマの温度は等しかった。原子が作られる以前には、放射はコンプトン散乱と呼ばれる過程によって一定の割合で吸収・再放射されていた。つまり、初期の宇宙は光に対して不透明だった。しかし宇宙が膨張によって冷却すると、やがては温度が3000K以下にまで下がり、電子と原子核とが結合して原子を作り、原始プラズマは電気的に中性のガスに変わった。この過程は光子の脱結合 (decoupling) として知られている。中性原子のみとなった宇宙では放射はほぼ妨げられることなく進むことができる。 初期の宇宙は熱平衡状態にあったため、この時代の放射は黒体放射スペクトルを持ち、今日まで自由に宇宙空間を飛んでいる。ただし宇宙のハッブル膨張によってその波長は赤方偏移を受けている。これによって元々の高温の黒体スペクトルはその温度が下がっている。この放射は宇宙のあらゆる場所で、あらゆる方向からやってくるのが観測できる。 1964年、アーノ・ペンジアスとロバート・W・ウィルソンは、ベル研究所にある新型のマイクロ波受信アンテナを使って一連の試験観測を行なっていた時に宇宙背景放射を発見した。この発見は一般的な CMB の予想を確実に裏付けるものだった。発見された放射は等方的で、約3Kの黒体スペクトルに一致することが明らかとなったのである。この発見によって宇宙論をめぐる意見はビッグバン仮説を支持する方へと傾いた。ペンジアスとウィルソンはこの発見によって1978年にノーベル物理学賞を受賞した。 1989年に NASA は宇宙背景放射探査衛星 (COBE) を打ち上げた。1990年に発表されたこの衛星による初期の成果は、CMB に関するビッグバン理論による予想と一致した。COBE は 2.726K という初期宇宙の名残の温度を検出し、CMB が約105分の1の精度で等方的であると結論した。1990年代には CMB の非等方性が数多くの地上観測によって詳しく調査され、非等方成分の典型的な角度サイズ(天球上でのサイズ)の測定から、宇宙は幾何学的に平坦であることが明らかになった(宇宙の形を参照のこと)。 2003年の初めには WMAP 探査機の観測結果が発表され、宇宙論パラメータのいくつかについてこの時点で最も精度の良い値が得られた(宇宙背景放射の観測実験を参照)。この探査機のデータからいくつかのインフレーションモデルは妥当性を否定されたものの、観測結果は大筋ではインフレーション理論と整合するものだった。続いて、欧州宇宙機関 (ESA)によって2009年に打ち上げられた探査機プランクにより、さらに高精度で測定が行われた。
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宇宙マイクロ波背景放射
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/18 05:43 UTC 版)
「現代宇宙論」の記事における「宇宙マイクロ波背景放射」の解説
詳細は「宇宙背景放射」を参照 宇宙マイクロ波背景放射は、原子が最初に形成され、ビッグバンによって生み出された放射が荷電イオンによるトムソン散乱を受けなくなった再結合期(宇宙の晴れ上がり)以来残っている放射である。この背景放射は1965年にアーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンによって最初に観測され、完全な黒体放射のスペクトルを持っている。放射の温度は今日では2.7Kで、105 分の1の精度で等方的である。初期宇宙のわずかな非一様性の進化を記述する宇宙論的ゆらぎの理論によって、研究者は背景放射の角パワースペクトルを正確に計算することができ、同時に最近の衛星観測実験(COBE や WMAP)や多くの地上観測・気球観測実験(Degree Angular Scale Interferometer, Cosmic Background Imager, MAXIMA, BOOMERanG)によって測定が行なわれている。これらの研究の目標の一つは、Λ-CDMモデルの基本パラメータを高い精度で測定することであり、またビッグバンモデルの予言をテストし、新たな物理学を探求することである。例として、最近行なわれた WMAP による観測結果はニュートリノの質量に制限を与えている。 また、宇宙マイクロ波背景放射の偏光を測定するという新たな実験も試みられている。これによって理論がさらに確認され、また宇宙のインフレーションや、銀河や銀河団と宇宙マイクロ波背景放射との相互作用によって起こるスニヤエフ・ゼルドビッチ効果やザックス・ヴォルフェ効果といったいわゆる第二の非等方性に関する情報が得られるものと考えられている。
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宇宙マイクロ波背景放射
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「宇宙の加速膨張」の記事における「宇宙マイクロ波背景放射」の解説
宇宙マイクロ波背景放射 (CMB) は宇宙の晴れ上がり時に宇宙を満たしていた光子が等方な 2.725 K の熱的なマイクロ波として現在観測されるものである。CMB にはわずかな温度の異方性があり、その角度依存性や偏光の解析から宇宙論パラメータを高い精度で決定することができる。これは21世紀に入ってから人工衛星によるCMB温度異方性の高い精度の観測によって可能となり、WMAP衛星は2003年にIa型超新星の結果と矛盾しない結果を報告し、宇宙の加速膨張が裏付けられた。その後のPlanck衛星の結果も加速膨張を支持している。
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