恋愛 宗教と恋愛

恋愛

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/28 08:12 UTC 版)

宗教と恋愛

ユダヤ教

ユダヤ人の間では、恋愛は行ってもよいが恋人同士で積極的に意見を交換することを教え、恋愛にのめり込み過ぎることは破滅を意味するとタルムードで教えている[12]

キリスト教

アブラハム・カイパーは『カルヴィニズム』で「自由恋愛が結婚の神聖を乱そうとし」ていると述べるように[13]、恋愛について否定的な見解がある。恋愛が「ある種の威厳を持ち、恋人に対する全面的献身・・を要求して、神のように語る」ので「神に従わせなければ、それ自体が絶対的な服従を求めてきて、悪魔化し、偶像化」する危険があるとキリスト者学生会の高木実主事は指摘し、C.S.ルイスの『四つの愛』を引用している[14]。またC.S.ルイスは『悪魔の手紙』で恋愛は悪魔が広めた思想であるとしている[15]。恋愛に伴うことのある問題として、福音派婚前交渉を禁じている[16][17][18]カトリック教会は婚前交渉を禁じており、避妊は大罪である[19][20]

イスラーム

イスラム諸国や一部アフリカ諸国では、現在も恋愛は不道徳なものとされている。

現代の各国の恋愛

現代では西洋諸国でも日本でも、文学演劇絵画ドラマ歌謡曲漫画などさまざまなジャンルで恋愛が扱われている。

東洋における愛

仏教では貪愛(とんあい)・染汚愛(ぜんまあい)と信愛(不染汚愛)の区別が説かれる。前者は衆生が解脱しえない根本原因で、十二因縁の一つに数えられる。財欲、名誉欲、色欲などの五欲がそれである。信愛は信心をもって師長を愛するようなもので、貪欲煩悩をはなれて善法を修め衆生を憐愍することである。そのもっともすぐれたものが慈悲とよばれる。

中国では、古くは墨子の兼愛説、つまり博愛平等の異端的主張が有名である。歴史上、玄宗皇帝楊貴妃にうつつを抜かし、その親族に便宜を図り、国政をすっかりないがしろにして、ついには国を滅ぼしてしまったことが中国の人々には強く記憶されている。 現代の中華人民共和国では18歳未満の低年齢者が恋愛をすることを「早恋」と呼び、学業成績の低下だけでなく生活の乱れや家出、同棲などの非行につながると考える有識者が多く、黒竜江省では2009年8月末に未成年者の恋愛に対して「父母や監督責任者は批判、教育、制止、矯正を行わなければならない」と定めた条例が制定された[21]

日本思想における愛は、いとおしいという心情で、思想の影響もいちじるしいが、特に山川草木、花鳥風月に対する愛情の強い点は特色といってよいであろう。 [22]

西洋における恋愛

現代の西洋諸国では大抵の国では、おおむね恋愛は自由で素晴らしいものと考えられている。ただし、どこの国でも交際は男女の2者間の関係が基本で、ポリアモリーは少数派である。両者が親しくなると同棲により生活を共にし、問題がなかった場合婚約するのが一般的(例えばスウェーデンでは結婚したカップルの99%が同棲を経験している。[23]

西洋の文学では、男性が男性に恋する気持ち(男性の同性愛の気持ち)も表現されてきた歴史がある。シェイクスピアは『ソネット詩集』で、オスカー・ワイルドは『ドリアン・グレイの肖像』で、トーマス・マンは『ベニスに死す』で、男性が男性に恋する気持ちを表現した。フランスのジャン・ジュネは『泥棒日記』『薔薇の奇跡』などでそうした気持ちを描写した。

現代歌謡曲でもそうした同性への恋愛感情が表現されているものが多数ある。男性への恋愛感情を打ち明けられない辛さ・悲しさを正面から歌った作品もある。反対に喜ばしくそうした恋愛感情を表現している歌もある。また、(誰にでもあからさまに同性愛と分かってしまわないような婉曲的な表現方法で、あるいはゲイの人や察しの良い聴き手に限って分かるように)さりげなく表現されているものも多い。たとえばエルトン・ジョンの'Your song'『僕の歌は君の歌』、Whamワムジョージ・マイケル) 'Wake Me Up Before You Go-Go'「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」等々等々である。

日本と恋愛

日本語の「恋愛」

日本語で「恋愛」という表現は、1847-48年のメドハーストによる『英華辞典』にみられるのが最古であるが、loveの訳語としてではなく、今日の「恋愛」の意味として辞書に登場したのは明治20年(1887年)の『仏和辞林』でamourの訳語として「恋愛」の語が当てられたのが最初とされる[24]。ただし定着は遅れ、北村門太郎(後の北村透谷)も明治20年では「ラブ」と片仮名表記している[25]。それ以前は、現代人が一般に「恋愛」と呼ぶものについては、「色」、「情」、「恋」、「愛」などと呼ばれた[24]

日本の恋愛の歴史

日本では、古くから恋は和歌文学の主要な題材である。

万葉集』の「相聞歌」や『古今和歌集』に恋歌を見出すことができる。相聞の中でも特に傑作と評価されることが多い2つを挙げる。

あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る — 額田王(巻1・20)
紫草の にほへる妹を憎くあらば 人妻ゆゑにわれ恋ひめやも — 大海人皇子(巻1・21)
紫の上を柴垣ごしに見つめる源氏(土佐光起筆『源氏物語画帖』「若紫」)

また物語文学においても『伊勢物語』や『源氏物語』など、貴族の恋模様を描いた作品が多数ある。この時代、男が女の元へと通う「通い婚」が通例であり、男女は時間を作って愛を育んだ後、女側の親が結婚を承諾して夫婦となった。平安時代の男女の倫理は(後の封建時代と比べて)まだ自由(別の言い方をすれば「おおらか」「だらしない」)であった[26]。貴族の男性は複数の女性と並行的に関係を持ち、ある男性の子があちらこちらの女性の腹から生まれることが一般的、またある女性が産んだ子の父親が一体誰なのかわからない(周囲の人にも、時には産んだ女性自身にも)ということも多かった。

こうした男女倫理が変わったのは封建時代になってからである[26]。平安時代の貴族のような男女倫理では、世の中は乱れに乱れてしまう[26]

関東の名門豪族の娘北条政子は、親の決めた相手を拒否し、一族の命運をかけ、自分が惚れた源頼朝を相手に選んだ。が、源頼朝のほうは京の貴族の習慣を身につけていて(最初は考えが甘く)そうした貴族風の男女関係をそのまま自分の婚姻にも持ちこみ他の女性たちとも関係を持とうとしたが、政子はそれを許しはしなかった[注 3]。二人は互いに強力なパートナーとなり、政子は関東における人脈力や人心掌握力を駆使し鎌倉幕府を盛り立て、頼朝を一流の男に押し上げた。

中世頃には、仏教の戒律のひとつの女犯に関するもの(不淫戒)の影響が見受けられ[注 4]、とくに男性社会の側から恋愛を危険視する(あるいは距離を置くべき対象としてとらえる)傾向が生じた。権門体制を維持する手段として男性が賦役・租税の対象とされる一方、女性を財産ととらえ、交換や贈与の対象とする傾向が確認され、恋愛を社会秩序を破綻させる可能性のあるものとして否定的にとらえる傾向が生じた。この傾向は江戸時代の儒教文化にも受け継がれ、女大学にみられる恋愛を限定的にとらえる倫理観や、家族制度・社会規範に対する献身を称揚する文化に継承された。

明治時代には中流階級では家制度による親が結婚相手を決めるお見合い結婚が多かった。男性にとっては結婚は少なくとも法律上は結婚後の自由な恋愛・性愛を禁ずるものではなく、地位ある男性が配偶者以外に愛人を持つことはしばしば見られた。社会も既婚男性が未婚女性と交際することには寛容であったが、既婚女性が愛人を持つことは法律上許されなかった(姦通罪)。

明治から大正にかけて、文化人を中心としてロマン主義の影響もあって、恋愛結婚が理想的なものとの認識が広まり、大正時代には恋愛結婚に憧れる女性と、保守的な親との間で葛藤がおこることもあった[27]

日本女性は昭和時代から、恋愛小説を読みふけったり、お神籤を引いてその恋愛運に関する文章の文言ひとつひとつに一喜一憂したり、占い師に恋愛相談をしてみたり、恋愛成就のお守りを買ってみたり、ということさかんにし、平成でもそれは続いている。だが、日本男性のほとんどは、それらのことは(昭和時代でも平成時代でも)一切せず、一般にそういったことには興味が無い。

高度経済成長期以降は、恋愛結婚の大衆化により、恋愛は普通の男女であれば誰でもできる・すべきものだという風潮が広がった。また、1980年代後半から1990年代初頭のバブル景気の日本では恋愛で消費行動が重視される傾向があったとされ、「この時(イベント)にデートするならばここ(流行の店など)」「何度目のデートならどこにいく」というようなマニュアル的な恋愛が女性誌や男性向け情報誌、トレンディドラマなどで盛んにもてはやされた。

現代では、親の意向にのみ基づいたお見合い結婚の割合はかなり少なく、夫婦の間の愛情を重視する恋愛結婚が大多数となり、お見合い結婚であっても本人の意向を尊重するものが多くなった[28]

いっぽう恋愛の世界で格差社会化が進んでいるとし、「恋愛資本主義」、恋愛資本による「魅力格差」、「恋愛格差」などという言葉も用いられている。このような情勢のなかで恋愛や性交渉を経験したことがない中年層が増加しつつあると分析する者もいる[29]。また、世の中に「モノ」が大量に溢れる中で、カップルの低俗化が指摘されることも増えた。次第に日本男性は女性に興味を示さなくなり(あるいは日本の女性というのは、自分が恋愛の対象にするほどの価値はない、と若い日本男性は冷静に(冷めて)判断するようになり)、2006年には「草食系」という用語で、そうした(恋愛への意欲を感じない)男性が呼ばれるようになった。

近年は若い男女の恋愛離れが叫ばれており、日本テレビはその例として「交際相手が欲しい」と答えた新成人の割合が2000年は男性が91.6%、女性が88.5%だったのに対し、2016年は男性が63.8%、女性が64.2%だったこと、実際に交際相手がいる新成人が1996年は50%だったのに対し、2016年は26.2%だったことを挙げている。恋愛離れの原因として、非正規雇用の増加やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及などが挙げられている。マーケティングライターの牛窪恵は「非正規雇用や年収が低い男性は『どうせ自分なんか』と自己肯定感が低く、自分から女性に声をかけようとしない」と分析。少子化ジャーナリスト白河桃子は「女性は出産を考えると、ある程度収入のある人と結婚したいと考え、相手に完璧さを求めるため、恋愛や結婚に慎重になる」と分析している。教育評論家尾木直樹は恋愛離れの原因をSNSの普及とし、「SNSの普及で全てがバーチャルになってしまい、若者の精神的な成熟だけでなく、身体的、性的な成熟も遅れている」と分析している[30]。一方、若者の恋愛離れは嘘であるとの指摘もある。東洋経済新報社は婚約者・恋人がいる者の割合の1982年から2015年までの推移を挙げ、「1980年代の水準に戻っただけ」と指摘している[31]他、草食系男子の増加も嘘であるとしている[32]

ネットゲームや動画編集ソフトなどデジタル化された空間では人間の音声や身振り手振りなどのコミュニケーションの中で不可避的に不自然さが含まれる部分が除去されており理想人物像が現実離れをした相手を望む様になっている。また、恋愛をした時にモチベーションが高まるメカニズムに対しての研究も進み、恋愛をしている時にのみ起こり得る脳内神経細胞の変化を人工的に作り出し活動力を向上させる方法も発明されつつある。

現代日本の恋愛

現代における恋愛の難しさには、史上初の性質とも言うべき要素があるという指摘がある。それは世界における「人権問題(子供の人権や男女平等思想を含む)」や、それに伴う「個人主義の台頭」が大きく関与していて、詰まる所「いい男といい女の定義が、社会によっていいとされていたものから、異性が本音でいいと感じるものへと変わっていった」[33]ことにより、「恋愛をする上での努力の指針」が曖昧になってきていることや、スマートフォン・インターネット・SNSなどの普及により、人との「ご縁」が大切にされなくなってきたことなどが挙げられる。また、近年の学校教育等では恋愛を禁止する風土はあっても推奨する風土がなかったこともあり、自ら恋愛を経験し上達していく一部の者たちが多くの異性たちを独占してしまう、上記の「恋愛格差」は、若者の価値観ならびに現代日本社会において深刻な問題となっている。

モテ期

「人生において、人は異性から好かれる(モテる)時期が3度ある」という都市伝説があり、それが俗に「モテ期」と呼ばれている。噂の出所は不明であるものの、多くの者達が実感した経験から囁かれ始めたものだと考えられる。これについて「人の成長過程と世の中の流行が一致した時期」であると考える者もいる。つまり、「人は時期によって価値観やセンスが変わり、同じように流行も変わっていく。多くの若者は必ず何らかの流行の影響を受けるので、その人自身の価値観やセンスが流行と一致する時期が生じやすい。流行は、多くの若者たちが高く評価する価値観なので、その流行が異性に好まれるものである限り、自然とその人も多くの異性に好まれることになる。この偶然の産物は、自分や流行の変化によってその噛み合わせを崩していく。この一連の変化がモテ期である」[34]という説である。

恋愛学

現代日本において、恋愛のノウハウを「学問」として考察し世に広めたのが、早稲田大学国際教養学部教授の森川友義である。上記の「恋愛格差社会」に一石を投じる彼の「人間の恋愛は科学的な研究が可能である」という思想は、彼自身の社会的地位も相まって、マスコミやインターネットで話題になっている。


  1. ^ この記述では性愛の側面を重視しており、また一方的な片思いでも恋愛は成り立つと解釈できる。
  2. ^ 第6版で性愛についての記述が削除された。
  3. ^ 結果として二人の関係は確かなものとなった。
  4. ^ 宇治拾遺物語』、『道成寺
  1. ^ 平凡社 哲学事典 P1
  2. ^ 森進一訳, 『饗宴』, 新潮文庫, 1968[要ページ番号]
  3. ^ 平凡社 哲学事典 P1
  4. ^ 平凡社 哲学事典 P1211
  5. ^ 平凡社 哲学事典 P1211~1212
  6. ^ 平凡社 哲学事典 P1
  7. ^ 永嶋哲也「愛の発明と個の誕生--思想史的な観点から--」比較思想論輯2004.6[1][2]
  8. ^ 『恋愛論』大岡昇平 訳[要ページ番号]
  9. ^ 『恋愛論』[要ページ番号]
  10. ^ なお、スタンダール自身は『恋愛論』の序文(1826年)において、「この本は成功しなかった」と述べており、論の展開は「必ずしも理由がなくはかない」と告白している。
  11. ^ この項目、平凡社 哲学事典 P1、2による
  12. ^ ユダヤの力(パワー)-ユダヤ人はなぜ頭がいいのか、なぜ成功するのか! (知的生きかた文庫) 加瀬 英明 著[要ページ番号]
  13. ^ アブラハム・カイパー著『カルヴィニズム』聖山社 p.96
  14. ^ 高木実著『生と性-創世記1-3章にみる「男と女」』いのちのことば社 p.67
  15. ^ C.S.ルイス『悪魔の手紙』中村妙子訳、平凡社[要ページ番号]
  16. ^ 高校生聖書伝道協会『クリスチャン・ライフQ&A』いのちのことば社[要ページ番号]
  17. ^ 尾山令仁『結婚の備え』いのちのことば社[要ページ番号]
  18. ^ チャールズ・スウィンドル『性といのちの問題』いのちのことば社[要ページ番号]
  19. ^ カトリック・プロライフ
  20. ^ 公教要理[要ページ番号]
  21. ^ “早すぎる恋愛”はダメ!高校の規則に「男子と女子は44cm以上離れよ」-中国
  22. ^ 哲学事典 P2
  23. ^ これは事実婚に寛容な文化を背景にしている)なので、日本のように告白を経て彼氏彼女の関係になるが、生活は別々でたまに遊園地レストランデートに出かける程度でプロポーズを経て婚約するということはない(世界SEX百科―肉体と意識、そして各国の性風俗 由良橋 勢 著[要ページ番号])。
  24. ^ a b 菅野聡美、『消費される恋愛論 大正知識人と性』p9- 青弓社, 2001 ISBN 978-4787231888
  25. ^ 揚穎, 「透谷の女性観 : 幼少年時代の透谷が女性から受けた影響」『Comparatio』 14巻 p.17-26 2010年, 九州大学大学院比較社会文化学府比較文化研究会, doi:10.15017/24627, hdl:2324/24627
  26. ^ a b c 渡邊昭五『梁塵秘抄の恋愛と庶民相』岩田書院, 2005 p.10-13
  27. ^ 加藤秀一『恋愛結婚は何をもたらしたか』ちくま書房[要ページ番号]
  28. ^ リクルート「結婚トレンド調査2006」
  29. ^ 渡部伸『中年童貞』扶桑社新書[要ページ番号]など
  30. ^ “交際相手不要…なぜ?「若者の恋愛離れ」”. 日テレNEWS24 (日本テレビ放送網). (2016年1月20日). http://www.news24.jp/articles/2016/01/20/07320362.html 2018年3月2日閲覧。 
  31. ^ “100年前の日本人が「全員結婚」できた理由”. 東洋経済オンライン (東洋経済新報社). (2018年1月2日). http://toyokeizai.net/articles/-/202863 2018年3月2日閲覧。 
  32. ^ “「草食系男子の増加」という大いなる勘違い”. 東洋経済オンライン (東洋経済新報社). (2016年12月8日). http://toyokeizai.net/articles/-/148345 2018年3月2日閲覧。 
  33. ^ 矢野優也『空回りしない恋愛のすすめ』デザインエッグ株式会社、2015年8月17日初版、6頁より引用
  34. ^ 矢野優也『空回りしない恋愛のすすめ』デザインエッグ株式会社、2015年8月17日初版、14頁より引用
  35. ^ a b c 田中秀臣 『最後の『冬ソナ』論』 太田出版、2005年、126頁。
  36. ^ 田中秀臣 『最後の『冬ソナ』論』 太田出版、2005年、129-130頁。
  37. ^ 田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、46頁。


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