生物学・化学・生物医学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 03:01 UTC 版)
「日本の発明・発見の一覧」の記事における「生物学・化学・生物医学」の解説
寒天 寒天は1658年頃に美濃太郎左衛門によって日本で発見された。 全身麻酔 華岡青洲は、1804年に世界で初めて全身麻酔を手術に用いた外科医で、乳癌や中咽頭癌の手術、壊死した骨の除去、四肢の切断などの手術を日本で恐れずに行った。 チアミン(ビタミンB1) チアミンは水溶性ビタミンの中で最初に記述されたものであり、生存に不可欠な微量化合物の発見とビタミンという概念へとつながった。それは高木兼寛(1849-1920)により、脚気が窒素摂取不足(タンパク質不足)に起因していることを指摘する1884年まではなかった。1910年、日本の科学者、鈴木梅太郎が米ぬかから水溶性の微量栄養素の複合体を抽出することに成功し、それをオリザニンと命名した。彼はこの発見を東京化學會誌に日本語で発表した。ポーランドの生化学者カシミール・フンクは、後にこの複合体を1912年に「ビタミン」(「バイタルアミン」のかばん語)と命名することを提案した。 メタンフェタミン メタンフェタミンは、1894年に化学者の長井長義によって日本で初めてエフェドリンから合成された。1919年には、薬理学者の緒方章によって塩酸メタンフェタミン(ヒロポン)の結晶化に成功した。 タカジアスターゼ ニホンコウジカビとして知られる別個の微細真菌の成長、発達、栄養から生じるジアスターゼの一形態。高峰譲吉は、1894年にそのために世界初の抽出方法を開発した。 エフェドリン合成 エフェドリンの自然界での形態は、伝統的な漢方薬でマオウ(麻黄)として知られていて、漢の時代から中国で文書化されていた。しかし、エフェドリンの化学合成は日本の有機化学者である長井長義によって1885年に初めて達成されるまではなかった。 抗体 1889年、北里柴三郎は不可能といわれた破傷風菌の純粋培養に世界で初めて成功した。さらに破傷風菌の毒素を無力化する「抗毒素(抗体)」を発見した。 血清療法 1890年、北里柴三郎とエミール・ベーリングが血清療法の発見を共同で発表。 エピネフリン(アドレナリン) 日本の化学者である高峰譲吉と助手の上中啓三は、1900年にエピネフリンを初めて発見した。1901年に高峰は羊や牛の副腎からホルモンの分離と精製に成功した。 人工癌の作成 山極勝三郎と市川厚一は1915年、世界初の化学物質を使った人工癌の作成について口頭発表し、1916年に論文発表した。 ウルシオール 1917年、真島利行がアルキルカテコールの混合物であるウルシオールを発見した。また、ウルシオールがアレルゲンであることを発見し、ウルシオールがツタウルシやウルシなどのトキシコデンドロン属の植物に皮膚刺激性を与えることを明らかにした。 ジベレリン 1926年、黒沢英一がイネの馬鹿苗病の原因毒素であり、植物ホルモンであるジベレリンを発見した。1935年、藪田貞治郎が培養液から単離し、ジベレリンと命名した。 携帯用心電計 武見太郎は1937年に最初の携帯用心電計を製作した。 ベクトル心電図 武見太郎は1939年にベクトル心電図を発明した。 上部消化管内視鏡 杉浦睦夫は、日本で初めて胃カメラ(現在の上部消化管内視鏡)を開発したことで有名な技術者である。彼の話は、NHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX~挑戦者たち~」で紹介されている。杉浦はオリンパス光学工業に在職中の1950年に初めて上部消化管内視鏡を開発した。 フロンティア軌道理論 福井謙一は、フロンティア軌道理論を提唱し、1952年に論文発表をした。 岡崎フラグメント 岡崎フラグメントは、DNA複製の際にラギング鎖に新しく形成される短いDNA断片(フラグメント)である。岡崎フラグメントはラギング鎖と相補的な役割を果たし、二本の短いDNA鎖を一緒に形成する。一連の実験により、岡崎フラグメントが発見された。実験は、1960 年代に岡崎令治、岡崎恒子、坂部貴和子、その同僚によって、大腸菌のDNA複製の研究で行われた。1966 年、坂部貴和子と岡崎令治は、DNA 複製が断片を含む不連続な過程であることを初めて示した。大腸菌におけるバクテリオファージのDNA複製に関連する研究を通じて、研究者及び同僚によってさらに研究された。 緑色蛍光タンパク質 1962年、下村脩とフランク・H・ジョンソンらは、オワンクラゲから緑色蛍光タンパク質を発見。単独で発色団(色を発現する化学構造)を形成するのが特徴。特定分子にこれを付け、挙動の観察により細胞内で起こる生命現象を解析する「蛍光イメージング」の分野で用いられている。 イクオリン 1962年、下村脩とフランク・H・ジョンソンらは、オワンクラゲからイクオリンという発光タンパク質を発見し、抽出・精製した。クラゲの発光細胞内でカルシウムの濃度を感知して発光する。 免疫グロブリンE(IgE) 免疫グロブリンEは、哺乳類にのみ存在する抗体の一種である。IgEは、1966から1967年に2つの独立したグループによって同時に発見された。コロラド州デンバーの小児喘息研究所・病院の石坂公成のチームとスウェーデンのウプサラのグンナー・ヨハンソンとハンス・ベニッヒのチームである。共同論文が1969年4月に発表された。 光触媒 藤嶋昭は酸化チタンの表面で光触媒が発生していることを1967年に発見した。 ヘック反応 1971年に溝呂木勉ら、1972年にリチャード・ヘックらにより独立に報告された。パラジウム触媒を用いて塩基存在下、初めて応用できるクロスカップリング反応を開発した。 スタチン スタチン系薬剤は、製薬会社の三共に勤務していた生化学者、遠藤章によって1973年に初めて発見され、1974年に特許出願、1976年に論文発表された。メバスタチンはスタチン系の最初に発見された薬であった。第二のペニシリンとも評されている。 アベルメクチン 1974年、大村智は放線菌MA-4680株を分離。1979年、米国メルク社との共同研究で、この放線菌を新種Streptomyces avermectiniusと記載するとともに、生産する抗寄生虫物質をアベルメクチンと命名。その後、アベルメクチンのジヒドロ誘導体であるイベルメクチンを開発した。これを基にしたヒト用製剤メクチザンは、オンコセルカ症やリンパ系フィラリア症の治療に効果が大きく出ている。 V(D)J遺伝子再構成 北里柴三郎が抗体を発見して以来、100年間、抗体の多様性が未解決の課題であった。1976年、利根川進は「V(D)J遺伝子再構成により、B細胞が自らの抗体遺伝子を自在に組み替えて、無数の異物に対応する無数の抗体を作ることができること」を証明した。 人工細胞膜 1977年に人工分子から生体膜の基本構造である二分子膜が自己組織的に形成されることを国武豊喜が世界で初めて報告した。 導電性高分子 かつて、高分子には電気は流れないと考えられていた。白川英樹はアラン・マクダイアミッドとアラン・ヒーガーの3人で共同研究を行い、ドーピングという手法で、いくつかのπ電子を引き抜くと電気が流れることを発見し、1977年に報告した。これはタッチパネルや、小型で大容量の電池などに欠かせない技術である。 根岸カップリング 1977年に根岸英一らにより報告。塩基、添加物や加熱を必要とせず、パラジウムまたはニッケル触媒のもとに縮合させ、炭素-炭素結合生成物を得る手法を開発した。 クラススイッチ 1978年、抗体遺伝子が敵に応じて法則的に変化するクラススイッチモデルを本庶佑が提唱し、その後多くの論文でこれを実証した。 鈴木・宮浦カップリング 1979年に鈴木章、宮浦憲夫らが報告。特別な条件を整えなくても反応が進み、毒性が強い化合物を使わずにすむ。また、特定のタイプの化合物のみを生成することが可能である。液晶材料の生成や医薬品の製造等、様々に活用されている インターロイキン-6 1982年、平野俊夫がIL-6の存在を発見。1986年、IL-6遺伝子の単離に成功し、全構造を決定した。レセプターの構造を決定。岸本忠三と平野俊夫はその多様な機能と、複雑な情報伝達経路を解明した。また、IL-6が関節リウマチなどの病態に重要な役割を果たしていることを突き止めた。一連の研究により、IL-6だけでなくサイトカインの異常産生と、種々の疾患との関係が世界的に注目を浴びるようになった。 MY-1 1984年、徳永徹はBCGを抽出・精製してMY-1という核酸画分を発見。MY-1中のBCG菌体DNAが、ナチュラル・キラー細胞やマクロファージを活性化し、強い抗腫瘍活性を示すことを発見。これは、DNAの免疫増強効果を世界で初めて発見したものである。 メデルロジン 1985年、大村智らは遺伝子操作による新しい抗生物質メデルロジンを創製し、微生物創薬の発展の礎を築いた。これは世界で初めて遺伝子操作により化合物を作り出したものである。 HIV治療薬 1985年、満屋裕明はデオキシヌクレオチドが強い抗HIV活性をもつことを発見し、アメリカ国立衛生研究所で世界初のHIV治療薬「AZT」を開発した。 IGZO系酸化物半導体TFT 1985年に君塚昇が初めて単結晶IGZOの合成に成功。2004年に東工大の野村研二、神谷利夫、細野秀雄らが「アモルファスIGZO-薄膜トランジスタ(TFT)」を開発。携帯電話のディスプレイに使われている。 カドヘリン 1986年には竹市雅俊がカドヘリンを発見し、カドヘリンが細胞間接着を担う分子であることを突き止めた。 野依不斉水素化反応 1987年、野依良治は野依不斉水素化反応を発見した。化学物質の合成の際、一緒に別の物質までできてしまうことが課題であった。野依はBINAPという左右の物質を作り分けることのできる触媒を完成させ、不斉合成反応により、狙った物質のみを合成できるようにした。様々な薬品の製造等に活用されている。 CRISPR 1987年、石野良純は大腸菌のDNAからCRISPR配列を発見した。 十倉ルール 1989年、電子型高温超伝導体を世界で初めて発見した。そこから高温超伝導物質の一般則(十倉ルール)を発見した。 カーボンナノチューブ 1991年、飯島澄男は多様ならせん構造をもつカーボンナノチューブを発見し、電子顕微鏡で構造を決定した。 光誘起相転移 1992年、腰原伸也は光照射により物質の性質を超高速かつ劇的に変化させる、光誘起相転移を世界で初めて提唱し、これに対応する物質を数多く発見した。 ATG遺伝子 1992年、大隅良典らは出芽酵母のオートファジーを初めて観察した。1993年、大隅良典らは出芽酵母のオートファジー不能変異株15種を単離し、世界で初めてATG遺伝子を発見した。前述の15株から14種の遺伝子を同定し、仕組みを分子レベルで解明した。 PD-1 1992年、本庶佑研究室の大学院生であった石田靖雅らがPD-1を同定・命名。その後の研究で本庶佑らは、PD-1が免疫反応の負の調節因子であることを明らかにした。PD-1シグナルの遮断が有効ながんの免疫治療となりうる可能性を世界で初めて提示し、新しいがん免疫療法に道を拓いた。 制御性T細胞 1995年、体内に侵入した細菌などの異物を排除する免疫反応の手綱を引く「制御性T細胞」というリンパ球を坂口志文が発見(命名は2000年)。それが異常になることで自己免疫病やアレルギーの原因になることを証明した。 活性化誘導シチジンデアミナーゼ 1999年、本庶佑らは活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)を発見。その後の研究で、これがクラススイッチ組換えのみならず、体細胞超突然変異にも必須の酵素であることを明らかにした。こうして抗体の機能性獲得のメカニズムを明らかにした。 TLR9 TLR9が細菌およびウィルスの DNAを認識する受容体であることを審良静男は発見し、2000年に発表。自然免疫は侵入者を無差別に攻撃するのではなく、細胞膜にあるTLRという受容体がセンサーとして作動し、細菌やウィルスの種類に応じて働いていることがわかった。癌や花粉アレルギーのワクチン開発など、多方面の応用研究が展開されている。 セラミックス伝導体 2002年、細野秀雄らは、代表的な絶縁体であるセラミックスを半導体に変えることに成功した。 Foxp3 2003年、制御性T細胞の特徴を決めているとみられるマスター遺伝子であるFoxp3を坂口志文らが発見。これは、IPEX症候群という免疫疾患の原因遺伝子である。 ニホニウム 2004年、理化学研究所は、森田浩介らのグループが「113番元素」の合成に成功。6回のアルファ崩壊を経て254Mdとなる崩壊系列の確認に初めて成功した。原子番号113の元素Nh。 TLR7 2004年、TLR7がRNAを認識することを審良静男らは発見。抗体の産生にTLR7が必須であることを明らかにした。 フロリゲン 1936年に提唱された花成ホルモン。その正体は未知であったが、1999年に京都大学の荒木崇らによってフロリゲンをつくる遺伝子が同定された。さらに、2005年にはFT遺伝子と相互作用するFD(FLOWERING LOCUS D)遺伝子が荒木らによって発見され、花芽形成においてのFT遺伝子の作用機構が確認された。 麹菌 ニホンコウジカビのゲノムの配列が解析され、2005年後半に日本のバイオテクノロジー会社のコンソーシアムによって公開された。 人工多能性幹細胞 人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、成熟細胞を用いて作られる多能性幹細胞の一種である。iPS細胞技術は2006年に山中伸弥とその研究室の研究者によって開発された。 鉄系超伝導物質 鉄を含む化合物は超電導を示さないと考えられていたが、細野秀雄らはLaFePOなどが超伝導性を示すことを2006年にかけて発見した。 セメントの超電導体化 2007年、細野秀雄らは、代表的な絶縁体である12CaO・7Al2O3(C12A7)が超電導を示すことを発見。
※この「生物学・化学・生物医学」の解説は、「日本の発明・発見の一覧」の解説の一部です。
「生物学・化学・生物医学」を含む「日本の発明・発見の一覧」の記事については、「日本の発明・発見の一覧」の概要を参照ください。
- 生物学・化学・生物医学のページへのリンク