不斉合成とは? わかりやすく解説

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ふせい‐ごうせい〔‐ガフセイ〕【不斉合成】


不斉合成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/10 15:59 UTC 版)

不斉合成(ふせいごうせい)とは、化学的な処理過程のひとつ。光学活性キラル)な物質を作り分けることである。

原理

光学活性な物質とは、分子構造が非対称なために鏡写しの構造をとった分子(鏡像体、エナンチオマー)が元の分子とは異なる物質のことである。これらは、化学反応性や物性がほぼ等しいため分離が困難であるが、生体への作用はまったく異なっている場合がある。そのため、鏡写しの分子のうち有用な物質を選択的に合成することが医薬品農薬の開発に大きな貢献をした。

光学活性な化合物の合成手法としては、ジアステレオ選択的な方法とエナンチオ選択的な合成方法がある。ジアステレオ選択的な方法とは、すでに不斉の要素を持つ化合物に対して反応を行うことで、一方のジアステレオマーを優先的に合成する方法である。

エナンチオ選択的な方法とは、不斉の要素を持たない化合物に対して反応を行うことで、一方のエナンチオマーを優先的に合成する方法である。野依良治は不斉な配位子を持つ金属錯体を触媒として、不斉要素を持たない化合物のエナンチオ選択的還元反応において有用な方法を開発し、2001年のノーベル化学賞を受賞している。

ちなみに、光学活性な化合物を得る不斉合成以外の方法としては、ラセミ体に対して光学活性な基質を反応させて、ジアステレオマーにして分離することで光学活性な化合物を単離する方法(ジアステレオマー塩法)や、ラセミ体のうち一方と選択的に反応させることで光学的に純粋な原料と生成物とを得る方法(速度論的分割)などがある。

エナンチオ選択的不斉合成反応では基質の側鎖を少し変化させただけで、選択性(異性体の片方が過剰にできる割合)が劇的に変化する。モデル化合物で選択性の高い反応が見つかっても、有用な化合物の生産には全く役立たず、不斉触媒を使うよりもエナンチオマーの等量混合物であるラセミ体を合成して、それを分離するほうが手間がかからず、安価になる場合もある。

関連項目

外部リンク


不斉合成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 19:12 UTC 版)

不斉補助剤」の記事における「不斉合成」の解説

不斉補助剤は、立体中心絶対配置コントロールするために合成経路において組み込まれるデヴィッド・エヴァンスによるシトバリシン合成において、オキサゾリジノン不斉補助剤利用して1つ不斉アルキル化反応4つ不斉アルドール反応行い9つ不斉中心立体選択的に導入した不斉補助剤用いる不斉合成反応は、通常次の3つの段階を経る。まず最初に不斉補助剤基質共有結合によって結合させる次に、この化合物反応する際、複数ジアステレオマー生成するその際一方ジアステレオマー生成優先される最後に目的生成物ラセミ化起こらない条件にて不斉補助剤除去するキラル補助剤利用するコストが高いことや、合成に多段階要することから、この方法は非効率的である。ところが、多く反応において不斉補助剤利用する方法のみがその反応をエナンチオ選択的に進行させる唯一の方法であるため、これらの反応においては不斉補助剤依存している。加えて不斉補助剤用い反応多彩であり報告例多く純粋なエナンチオマーを得る反応を行う際に時間的効率良い。 さらに、不斉補助剤導入した生成物ジアステレオマーとなり、カラムクロマトグラフィー再結晶によりこれらを分離することができる。

※この「不斉合成」の解説は、「不斉補助剤」の解説の一部です。
「不斉合成」を含む「不斉補助剤」の記事については、「不斉補助剤」の概要を参照ください。

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