不斉水素化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 04:05 UTC 版)
S体の 2-アリール置換プロピオン酸はまた、不斉合成の標的化合物ともされた。ナプロキセンを合成する場合は下図のように、2-(6-メトキシ-2-ナフチル)プロペン酸 (1) のプロキラルなアルケン部位に対し、図の手前側から水素を付加できれば (S)-ナプロキセン (2) が得られる。 野依らは 1987年に、彼らが開発した配位子、BINAP を持つルテニウム錯体 Ru((S)-binap)(OCOCH3)2 を不斉触媒とし、これと水素ガスを用いた不斉水素化により、(S)-ナプロキセン (2) を定量的に、かつ鏡像体過剰率 97%ee と高選択的に得ることに成功した。これは、野依らによる不斉水素化の中のほんの一例ではあるが、不斉配位子としての BINAP の優秀性をよく示すものと言えよう。 その後、K. T. ワン、M. E. デービスにより、水溶性を付与した Ru-BINAP 系触媒をエチレングリコール溶液として担持した親水性の多孔質を用いて、シクロヘキサン/クロロホルム溶媒との二相系による同様の不斉水素化が開発され、その中でも (S)-ナプロキセンの選択的合成が達成された (96%ee)。
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