放線菌とは? わかりやすく解説

ほうせん‐きん〔ハウセン‐〕【放線菌】

読み方:ほうせんきん

カビのように分岐した糸状細胞菌糸生じ細菌土壌中に広く分布し動植物寄生するものもある。抗生物質産生するストレプトミセス病原性をもつアクチノミセス・マイコバクテリウムなどがある。


放線菌 [Actinomycetes]

 培地上や病巣部の細菌集落放射状広がることから放射状ともよばれた細胞の形が分枝した糸状(菌糸)で多場合もあり、集落一見かびに似ており、真菌細菌中間位置するような微生物であるが、細胞の幅は約1μm(1mmの千分の1)で、その他の性質から細菌の1群とされ、放線菌目中の結核菌などが含まれるマイコバクテリア科を除く細菌を放線菌とよんでいる。広い分類ではノカルジアも放線菌に属している。S.A.ワクスマン(アメリカ)によって、抗生物質ストレプトマイシンが放線菌ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)から発見され以来土壌中の一微生物群である放線菌が注目されるようになった
気菌糸をつくるものやつくらないもの、胞子を包む胞子嚢をもつもの、根粒中で窒素固定するものなど多種類があり、ストレプトマイセス属以外に約30属が知られている。抗生物質産生する放線菌の多くストレプトマイセス属の放線菌である。家畜放線菌症をおこすアクチノマイセスもある。放線菌の多く土壌生息し一般にグラム陽性で、好気性または通性嫌気性である。放線菌に寄生するウイルス知られ、アクチノファージ(actinophage)とよばれている。アクチノ・ファージ六角形頭部細長い尾部をもっている。アクチノ・ファージ近年遺伝子組替え技術クローニング媒介(ベクター)の一つとして研究されるようになった

放線菌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 01:34 UTC 版)

放線菌(ほうせんきん、: Actinomyces)は一般に、グラム陽性細菌のうち、細胞菌糸を形成して細長く増殖する形態的特徴を示すものを指す慣用名である。元来、菌糸が放射状に伸びるためこの名があるが、現在の放線菌の分類は16S rRNA遺伝子の塩基配列による分子系統学に基づいているため、系統的に類縁な桿菌球菌の菌群も放線菌に含められることがある。このため、もはやこの菌群を菌糸形成という形態で特徴づけることは困難である。


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