落書き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 04:41 UTC 版)
各国における対策と処罰
法律・条例
落書きは都市の景観を損なうことから、各国で多くの市民は迷惑行為と考えており、器物損壊、不動産に対する侵害、ヴァンダリズムの一環となる。また落書きと若年犯罪の密接な関係を強調し、犯罪抑止の観点から割れ窓理論等の犯罪抑止理論が盛んに論じられるようになり、都市部の落書きも地域の治安を悪化させる要因と見なされ、厳重に取り締まられている。
1990年代以降落書きに対する規制や消去の努力が各国の地方政府やボランティアの手で始まっている。ニューヨークのルドルフ・ジュリアーニ市長(当時)は割れ窓理論の立場からかねてから落書きに反対し、悪名高い地下鉄の落書きを消し去った。1995年には落書きと戦う「アンチ・グラフィティ・タスクフォース」を結成し、過去最大級の落書き反対キャンペーンを開始した。また同年、18歳以下の青少年にエアロゾール・スプレーを売ることを禁止したニューヨーク市条例を施行させた。
落書きは、美観損害と不快感、地域治安悪化の原因となる。藤沢市は2007年7月に「藤沢市きれいで住みよい環境づくり条例」を制定し、早期発見・早期消去・予防対策の3つを掲げ、「まちから落書きをなくしましょう!」と落書き防止に取り組んでいる[16]。
代替案と限界
イタリアのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂ではバーチャルに落書きするアプリを搭載したタブレット端末が設置されている[25]。一方、ヨーロッパやアメリカ、近年では日本でも、特定の壁面をストリートアーティストやグラフィティアーティストのために開放し自由に描いてもらおうという、「リーガル・グラフィティ(合法的な落書き)のための壁面」を用意する特別地方公共団体や建物所有者が現れるようになった。アーティストには見回りの目を気にしない発表の場を存分に提供し、同時に非合法な落書きを減らし、都市の装飾や観光にも使おうとのアイデアである。これには歓迎する立場と、非合法の落書きを減らすことにはならないと歓迎しない立場がある。
東京都渋谷区では、2000年代からナイキと関係のあるNPO法人などによって、落書きが目立つ公共の壁面などにリーガル・グラフィティの設置が提案され、渋谷区周辺の公的施設の限定された場所で一部認可された。しかし、関係者以外には壁の側面等に描かれたモノが合法の場所に書かれたか否かの認識が定着せず、リーガルグラフティ(許可場内に書かれたラク化)を目にした国内外の訪来者が、「渋谷区では落書きが許容されている」と曲解し、自ら選定した場所へ落書きを行うなどのケースが多発した。「渋谷は落書きOK」という勘違いが外国人にも広まり、2018年にはオーストラリア人の少年が逮捕されるなど、同区では意図に反して非合法な場所への落書きが増加したとも指摘される[26][27]。落書き消去などの活動はボランティアを含む地元の団体やNPO法人等の協力を得て推進されているが、原状回復と防止政策などの費用については、公費や建造物所有者など地域住民の資金負担とされている。
- ^ a b フジテレビ系(FNN). “コロナ禍「原宿」は落書き増加 渋谷区「描かれたらすぐ消す!」(フジテレビ系(FNN))”. Yahoo!ニュース. 2021年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月12日閲覧。
- ^ “文化財なら罰則アップ、悪質なら5年以下の懲役刑も!-落書き:トラブル脱出の知恵”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2010年5月4日). 2024年4月13日閲覧。
- ^ a b FNNプライムオンライン. “「落書き消します」渋谷区がコロナ禍で増える落書きに専用窓口を設置…安心安全な街をアピール”. www.msn.com. 2021年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月12日閲覧。
- ^ a b “子どもの落書きが止まらない!対処法をご紹介!|ベネッセ 教育情報サイト”. ベネッセ 教育情報サイト. 2021年5月12日閲覧。
- ^ 参考文献: NHKスペシャル ローマ帝国 2 ポンペイの落書き、ポンペイ・グラフィティ―落書きに刻むローマ人の素顔 / 中公新書
- ^ ヘルプ!広島市立袋町小学校被爆校舎(西校舎)アーカイブ
- ^ 袋町小学校平和資料館
- ^ 三上喜孝『落書きに歴史をよむ』吉川弘文館、2014年。p4
- ^ 1996年 - 97年頃の発言。スキゾ・エヴァンゲリオン、パラノ・エヴァンゲリオンなどを参照。
- ^ News23多事争論(1999年7月15日のインターネットアーカイブキャッシュ)
- ^ a b “玉川徹氏、「落書き」動画投稿者に憤慨「犯罪でしか自己顕示欲を満たせない…なんてつまらない人間」”. スポーツ報知 (2024年3月12日). 2024年4月13日閲覧。
- ^ a b “謎の「エビチリ」渋谷・下北沢で迷惑落書き急増 犯行の瞬間を直撃すると「書きたい場所に書いているだけ アートなんで」(めざましmedia)”. Yahoo!ニュース. 2024年4月13日閲覧。
- ^ a b 「バンクシー」消した地下鉄、判断は適切だった? 欧州の鉄道、「落書き」の被害は深刻な問題 | 海外 | 東洋経済オンライン
- ^ “いたずらでは済まない!落書きは犯罪です!|熊取町”. www.town.kumatori.lg.jp. 2024年4月13日閲覧。
- ^ “落書きは犯罪です | 落書き対策 | 渋谷区ポータル”. www.city.shibuya.tokyo.jp. 2024年4月13日閲覧。
- ^ a b 藤沢市. “まちから落書きをなくしましょう!”. 藤沢市. 2024年4月13日閲覧。
- ^ 海外邦人事件簿|Vol.06外務省
- ^ 神奈川大生、ケルン大聖堂に落書き ツイッターで発覚朝日新聞
- ^ “落書きアート消した開発業者に賠償命令7億円超、米NY”. AFP BB NEWS. フランス通信社 (2018年2月14日). 2018年2月19日閲覧。
- ^ The Legends of "Kilroy Was Here"
- ^ a b c 「<落書き>伊紙「あり得ない」 日本の厳罰処分に」『毎日新聞』2008年7月1日
- ^ 「ハートマークに相合い傘 落書きだらけのイタリア大聖堂」『中國新聞』2008年6月29日付配信
- ^ スプレー落書きを受けた列車の動画
- ^ “公共物に落書きの男性が賠償金450万円支払う”. 毎日新聞 (2019年6月4日). 2019年6月18日閲覧。
- ^ どうしても落書きしたい?アプリでどうぞ 伊フィレンツェAFPBB 2016年5月3日閲覧
- ^ ビルの外壁に落書き、豪州国籍の2人を逮捕「渋谷はいいと思った」、ライブドアニュース、2018年2月7日。
- ^ 落書きNO! 「渋谷はOK」外国人ら誤解?、日本経済新聞、2016年10月12日。
品詞の分類
- 落書きのページへのリンク