植物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 08:02 UTC 版)
現在の植物の定義
本節では、2012年現在における植物の複数の定義と、それらの定義が提案がされるに至った背景を説明する。
背景
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「かつて[いつ?]「植物」という単語は、広く光合成をする生物一般、すなわち光合成生物全般を指していた[要出典]」だが、生物に関する科学的知見が深まるにつれ、この素朴な定義は大きく修正されることになった。[要出典]
修正された理由は主に3つある。第一の理由として、生物全体が細菌、古細菌、真核生物の3つのドメインに分かれることが分子系統解析によりわかったことが挙げられる。これは細菌に属する光合成細菌は真核生物である陸上植物とは異なる系統であることを意味する[4]。したがって陸上植物を含む単系統群として植物を定義するのであれば、植物を真核生物に属するものに限定しなければならない。[要出典]」と誰[誰?]は指摘した。
第二の理由は真核生物がいくつかのスーパーグループに分類できることが分子系統解析によりわかったことである[5]。この分類に真核光合成生物を当てはめてみると、下記のように多系統であることがわかる:
スーパーグループ | 具体例 | |
---|---|---|
オピストコンタ | (後生)動物・襟鞭毛虫・菌類 | |
アメーボゾア | 粘菌・アメーバ | |
エクスカバータ | ユーグレノゾア・ディプロモナス類 | |
アーケプラスチダ | 緑色植物・紅色植物・灰色植物 | |
SAR | ストラメノパイル | 不等毛植物(褐藻・珪藻・黄金色藻など)、 |
アルベオラータ | 渦鞭毛植物・アピコンプレクサ・繊毛虫 | |
リザリア | 放散虫・有孔虫 | |
ハクロビア[注釈 2] | ハプト植物・太陽虫 |
第三の理由は葉緑体の起源がわかったことである。真核光合成生物は、シアノバクテリアに類似した原核生物を真核生物が取り込んだことにより誕生した(一次共生)[10]。そしてこのようにして誕生した真核光合成生物をさらに別の真核生物が取り込むことで新たな真核光合成生物も誕生した(二次共生)[10]。二次共生は生物の歴史で何度も起こった事が知られており[10]、これが真核生物の様々なスーパーグループに光合成生物が属している理由である。それに対し、一次共生が起こり二次共生が起こっていない生物群はスーパーグループのアーケプラスチダと一致する事が知られている[10]。
『何を持って植物と呼ぶべきかという問いに対する一つの答えは「アーケプラスチダに属すること」という事になる。[要出典]』 『2012年現在提案されている植物の定義の多くは、アーケプラスチダもしくはそこに属する単系統部分群だ[要出典]』と誰[誰?]は言った[いつ?]。
この他、非主流の系統仮説をもとに、アーケプラスチダより広い範囲を「超植物界」とする提案がされたこともあるが[11]、有力な説となってはいない。
アーケプラスチダの系統樹は以下のようになる:
定義
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2012年現在、植物界の定義として以下のものがある:
- アーケプラスチダ
- 緑色植物、紅色植物、灰色植物からなる単系統群。葉緑体膜が2重である。シアノバクテリアを細胞内に共生させた生物を共通祖先とする単系統群であるという仮説に基づき、トーマス・キャバリエ=スミスがこの系統を植物界と定義した。単に「広義の植物界 (Plantae sensu lato)」と言った場合、これを意味することが多い。ただし、より広義の意味と対比させ、「狭義の植物界」と呼ぶこともある。[13][14]
- 緑色植物
- 葉緑体がクロロフィル a/b をもつ事で特徴づけられる単系統群で[15]、葉緑体膜が2重である。「狭義の植物界 (Plantae sensu stricto)」と言った場合、これを意味することがある。
- 陸上植物
- コケ植物、シダ植物、種子植物からなる単系統群。古くは後生植物ともいい、陸上で進化し、高度な多細胞体制を持つ。この群を植物界とする分類はリン・マーギュリスが唱え、マーギュリスにより改訂された五界説と共に広まった。
注釈
出典
- ^ 広辞苑第五版
- ^ 生物学の文脈であっても、「植物界」の定義 と 「植物」という言葉の用法 では違う、と指摘する人がいる。
- ^ 岩波『生物学事典』【植物】
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- ^ 伊藤12 p 6.
- ^ 伊藤12 p7
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