カースト カーストの概要

カースト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/13 06:09 UTC 版)

スペイン植民地におけるカーストを描いた図。この語がインドのヴァルナとジャーティにも使われるようになった

カースト(英語: Caste[注釈 1])とは、ヒンドゥー教における身分制度ヒエラルキーヴァルナジャーティヴァルナ・ジャーティ制)を指すポルトガル語英語だが[1]インドでは、現在も「カースト」でなく「ヴァルナとジャーティ」と呼ぶ[2]。本来はヒンドゥーの教えに基づく区分であるが、インドではヒンドゥー以外の宗教でも、カーストの意識を持つ者がいる[3][4]

紀元前13世紀頃に、インド亜大陸の先住民を征服したアーリア人諸部族に根付く原始信仰による神権政治の元、バラモン(祭司)・クシャトリヤ(武士)・ヴァイシャ(平民)・シュードラ(隷属民)の4つの身分の括りが取り決められヴァルナとして定着した。時代が下るにつれ、さらに世襲の職業に基づく現実の内婚集団であるジャーティへと細分化され、親の身分が子へと引き継がれていく。今生の者は、前世の報いによりその身分のもとに生まれ、生涯役目を全うすることによって来世の福が保証されるという、徹底した宿命観を篤く信仰している[5]


注釈

  1. ^ 19世紀までの英語綴りは cast であった。語源は、ポルトガル航海者がインドで目にした社会慣行に対して与えたカスタ(Casta)である。
  2. ^ 現在においてはプネーも人口500万以上の1級都市に含まれる。
  3. ^ IT産業従事者の多くが留保制度によって、公務員職・高級官僚等の花形職までも低カーストに不当に奪われたという被害意識を持っていることが、その理由である。
  4. ^ かつて皮革製品の製造を担っていた立場であった「サルキ」や鍛冶の「カミ」、縫製の「ダマイ」はカーストの中で最下層とされており、今もその存在を差別し時には侮辱・侮蔑する市民が見受けられる。

出典

  1. ^ a b c 藤井(2007)
  2. ^ a b c d 山上証道「世界問題研究所レクチャーシリーズ(10)インド理解のキーワード : ヒンドゥーイズム」『世界の窓 : 京都産業大学世界問題研究所所報』第11号、京都産業大学世界問題研究所、1995年、108-125頁、CRID 1520009409567375104hdl:10965/00007012ISSN 09125213 
  3. ^ a b インドのイスラーム教徒とカースト制度”. 京都大学人文科学研究所所報『人文』第四八号 (2001年3月31日). 2019年1月11日閲覧。
  4. ^ a b “「名誉殺人」で15歳の娘の喉かき切り殺害、父親を逮捕 インド”. AFPBB News. (2017年3月23日). https://www.afpbb.com/articles/-/3122506 2019年1月11日閲覧。 
  5. ^ a b c 奈良部健 (2020年9月11日). “インドのカースト最下層、ヒンドゥー教捨てて仏教へ 日本から来た僧が後押し”. 朝日新聞社. https://globe.asahi.com/article/13714295 2023年5月29日閲覧。 
  6. ^ 高倉嘉男 (2020年8月20日). “インドでは映画の世界においても「カースト」が存在する”. クーリエ・ジャポン. https://courrier.jp/columns/209602/ 2020年8月22日閲覧。 
  7. ^ a b c d e f g サブハードラ・チャンナ「インドにおけるカースト・人種・植民地主義」『人種概念の普遍性を問う』人文書院,2005所収)
  8. ^ 谷口晉吉「ベンガルにおける部族とカーストをめぐって」『東京外国語大学論集』第86巻、東京外国語大学、2013年7月、175-204頁、CRID 1390295658309924864doi:10.15026/73472hdl:10108/73472ISSN 0493-4342 
  9. ^ NewGuinea Tapeworms and Jewish Grandmothers (By ROBERT S. DESOWITZ)
  10. ^ http://www.hindu.com/2001/03/10/stories/05102523.htm
  11. ^ 「カースト制」谷川昌幸
  12. ^ a b c d e f g 志賀美和子「〈3. ワーキングペーパー : 2012年度・第2回 国内シンポジウム論文〉セキュラリズムと「カースト問題」の変容 : タミル・ナードゥ州の場合」『2012年度 研究報告書』、龍谷大学アジア仏教文化研究センター、2013年3月、397頁、CRID 1050289631618329984hdl:10519/5802 
  13. ^ 【私は〇〇人】(7)軍の統合 支えるカースト別編成朝日新聞』朝刊2020年1月7日(国際面)2020年1月9日閲覧
  14. ^ D-Com(ディシジョン・コンパス). “世界のIT業界を支えるインド 脱カーストで成功を求める精神が起爆剤に(2ページ目) | D-Com(ディシジョン・コンパス)”. project.nikkeibp.co.jp. 2022年10月20日閲覧。
  15. ^ a b c インドのIT産業「カーストは無関係」の大誤解”. 池亀彩 (2021年11月24日). 2023年5月16日閲覧。
  16. ^ a b c インドの「カースト差別」を明示的に禁止する法案がアメリカ・カリフォルニア州で提出される”. 株式会社OSA (2023年4月17日). 2023年5月16日閲覧。
  17. ^ Paresh Dave (2022年8月17日). “焦点:カーストとシリコンバレー、IT企業が問われる差別対応”. ロイター通信. https://jp.reuters.com/article/tech-caste-idJPKBN2PN052 2023年5月16日閲覧。 
  18. ^ a b [1]ヒューライツ大阪資料館
  19. ^ a b 西村祐子「インドにおける「ダウリ禍」考 : 婚姻法・財産権およびカースト内婚の視点から」『駒澤大学外国語部研究紀要』第34巻第1号、駒澤大学、2005年3月、387-409頁、CRID 1050282813207730176ISSN 03899845NAID 120006610629 
  20. ^ Yule and Burnell (1903年). “Hobson-Jobson”. p. 163. 2013年1月20日閲覧。
  21. ^ “カースト制度最下層出身 日本で研修生活送る女性”. 神戸新聞. (2018年9月15日). https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201809/0011641960.shtml 2018年9月15日閲覧。 
  22. ^ a b c 山本勇次「ネパールのカースト社会における観光産業と社会的弱者」『日本文化人類学会研究大会発表要旨集』第2008巻、日本文化人類学会、2008年、29頁、CRID 1390282680688194304doi:10.14890/jasca.2008.0.29.0ISSN 2189-7964 
  23. ^ “異カースト間の結婚に給付金、差別対策で ネパール”. AFPBB News. (2006年8月26日). https://www.afpbb.com/articles/-/2621140?pid=4358520 2013年5月20日閲覧。 
  24. ^ バリ島の宗教バリ・ヒンドゥーを知ろう”. バリ島旅行.com. 2013年5月19日閲覧。
  25. ^ Rania Abouzeid (2014年9月4日). “イラク、聖地を追われるヤジディ教徒”. ナショナルジオグラフィック. http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9678/?ST=m_news 2016年6月13日閲覧。 
  26. ^ 英語表記はDiscrimination based on work and descent
  27. ^ 職業と世系に基づく差別問題に関する特別報告者最終報告書
  28. ^ Discrimination”. 国際連合児童基金 (2011年1月1日). 2011年12月1日閲覧。






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