ジレンマ
「ジレンマ」の基本的な意味
「ジレンマ」とは、二つの選択肢があり、どちらを選んでも不利益が生じるような状況を指す言葉である。このような状況は、選択の難しさや複雑さを示すものであり、解決策が見つけにくいことが特徴である。例えば、経済成長を促すために環境破壊を引き起こす政策を採用するか、環境保護を優先して経済成長を犠牲にするかといった状況がジレンマの一例である。「ジレンマ」の語源
「ジレンマ」は、古代ギリシャ語の「ディレンマ」(dilemma)が語源である。ディレンマは、「二つの前提」を意味する「ディ」(di)と、「仮定」を意味する「レンマ」(lemma)が組み合わさった言葉である。古代ギリシャの哲学者たちは、二つの前提から導かれる結論がどちらも受け入れがたい場合をディレンマと呼んでいた。現代では、この言葉が二つの選択肢に対する困難な状況を指すようになっている。「ジレンマ」の類語
「ジレンマ」に類似した意味を持つ言葉に、「窮地」や「板挟み」がある。窮地は、進退窮まった状況や苦境を指す言葉であり、ジレンマと同様に選択が難しい状況を示す。板挟みは、二つの勢力や意見の間で立場を決めかねる状況を表す言葉である。これらの言葉も、ジレンマと同じく困難な選択を迫られる状況を表現するために用いられる。「ジレンマ」に関連する用語・知識
プリズナーズ・ダイレンマ
プリズナーズ・ダイレンマは、ゲーム理論における有名な問題であり、ジレンマの一種である。二人の犯罪者がそれぞれ自分の利益を最大化しようとすると、互いに不利益な結果になるという状況を示す。この問題は、個人の利益追求が集団全体の利益を損なうことを示しており、協力や信頼の重要性を考える上で参考にされる。トラジコメディ
トラジコメディは、悲劇と喜劇の要素を併せ持つ演劇の形式である。登場人物がジレンマに直面し、その選択によって悲劇的な結末や喜劇的な結末が生じることが特徴である。トラジコメディは、人間の葛藤や選択の難しさを描くことで、観客に深い感動や考えさせるものを提供する。バランス・シート・リセッション
バランス・シート・リセッションは、企業や家庭が負債の返済を優先して消費や投資を抑制し、経済が停滞する状況を指す。この状況では、政府が財政政策を用いて経済を刺激しようとすると、財政赤字が拡大し、長期的な経済成長が阻害されるジレンマが生じる。バランス・シート・リセッションは、適切な政策選択が求められる難題である。「ジレンマ」を用いた例文
1. 彼は、仕事を続けて家族との時間を犠牲にするか、仕事を辞めて家族と過ごす時間を増やすかというジレンマに悩まされていた。 2. 企業は、新製品の開発に投資して競争力を維持するか、利益を確保するために投資を抑制するかというジレンマに直面している。 3. 政府は、インフラ整備のために多額の費用を投じることで財政赤字が拡大するジレンマに苦しんでいる。ジレンマ
「ジレンマ」とは、2つの事柄の間で板挟みになった状態のことを意味する表現。
「ジレンマ」とは・「ジレンマ」の意味
「ジレンマ」とは、互いに反対の関係にある2つの事柄の間で板挟みになる状態をいう。ジレンマは「ディレンマ」ともいい、英語の「dilemma」を語源とした外来語である。dilemmaは「仮説」や「前提」を意味する「lemma」に、数字の2を意味する「di」が付随したギリシャ語が語源となっており、「二重の問題」という意味を持つ。数字の3を意味する「tri」が付随すれば「トリレンマ」となって、「3つの選択肢の中で1つを放棄しなくてはならない状態」のことになる。ジレンマもトリレンマも、ともに望ましくない状況に陥っていることを示す言葉である。「ジレンマ」が示す板挟みとは、2つの事柄の中から必ずどちらかを選択しなくてはならないと同時に、どちらを選ぶにしても望ましくない結果を招いてしまう状況のことをいう。また、論理学では「両刀論法」といわれる三段論法のことをジレンマという。2つの選択肢を大前提、1つの選言を小前提として結論を導き出すのが両刀論法であり、「私は嘘をつくと人に嫌われる」「私は嘘をつかないと人に嫌われる」「私は嘘をつくかつかないかどちらかである」「私はどちらにせよ嫌われる」などがその例になる。
代表的な「ジレンマ」として知られているものに、「囚人のジレンマ」「ヤマアラシのジレンマ」「社会的ジレンマ」などがある。囚人のジレンマとは、ゲーム理論に基づくもので、ゲームの参加者は自分にとって得になる選択を行えば行うほど、他の参加者と協力して対処するよりも悪い結果を導いてしまうというジレンマである。企業の価格競争などに見られ、2店が値下げしなければともに利益は変わらないことがわかっていても、1店が値下げして利益を得ると、もう1店も値下げして利益を得ようとする。そのうち両店の値下げ合戦に陥って、結果的に両店は利益を落とすというのがその例である。
ヤマアラシのジレンマとは、全身に鋭い針を持つヤマアラシ同士が寄り添おうとすれば、その針がお互いの体を傷つけることから、近づきたくても近づけず、一定の距離をとらざるを得ないという人間関係のジレンマである。社会的ジレンマとは、個人にとって最も良いと思われる選択が、社会的にみると受け入れられないことから生じるジレンマである。たとえば、夏の暑い日に、冷房を最大限にして涼をとるという個人の行動は、個人にとっては合理的で最善の選択であっても、温暖化防止の観点から節電を促進しようとする社会全体の流れには反した行動となるといった板挟み状態がその例である。
「ジレンマ」の熟語・言い回し
恋のジレンマとは
恋のジレンマとは、恋愛状況にある人が陥りがちな心理の板挟みをいい、多くはヤマアラシのジレンマに陥っているものである。相手に寄り添いたい気持ちがあっても、心に葛藤を抱えてしまって近づけない状態をさす。葛藤の原因は、「どうせ自分なんて相手にしてもらえない」といった自己肯定感の低さや、拒絶されることへの恐怖感、負けず嫌いからくる心理的降伏への抵抗感、過去の失恋のトラウマなどが考えられる。
ジレンマを抱えるとは
ジレンマを抱えるとは、2者択一の心理的な板挟み状態に陥ってしまうことをいう。たとえば、同じ職場の同僚同士で人間関係も良好だった2人が、一方の昇格によって関係のバランスが崩れ、友人としての気持ちと上司に対する気持ちの板挟み状態に入ってしまったそのときに、ジレンマを抱えるという状態になる。
「ジレンマ」の使い方・例文
「ジレンマ」の使い方・例文としては、「外交努力を怠ってしまうと、安全保障のジレンマに陥ってしまう恐れがある」「仕事が忙しくなれば給与はあがるが、その分家族と過ごす時間が少なくなるというジレンマに悩む」「人間関係の悩みはヤマアラシのジレンマで説明できる」「経済を優先すれば自然を破壊せざるを得ないというのは現代人が抱えているジレンマだ」「彼は悩み多き男で常にジレンマを抱えている」「イノベーションのジレンマは、特に歴史ある企業に起こりやすい」「友達と同じ人を好きになってしまったら、恋か友情のどちらかを犠牲にしなくてはならないというジレンマがやってくる」「人生の後半で、生きるか死ぬかのジレンマを抱え込むとは思わなかった」「ジレンマの類義語には、ピンチや窮地といった言葉が適切である」「デジタルジレンマの問題はコストがかかるという点だ」「人の死の定義は医療の倫理ジレンマにかかわる答えの出にくい問題だ」などを挙げることができる。ジレンマ【dilemma】
ジレンマ
ジレンマ
ジレンマ
ジレンマ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/28 03:52 UTC 版)
ジレンマ、ディレンマ (ギリシア語: δί-λημμα、英語: dilemma) とは、
- ある問題に対して2つの選択肢が存在し、そのどちらを選んでも何らかの不利益があり、態度を決めかねる状態。心の葛藤。
- 哲学や議論、修辞学の分野において前提を受け入れると2つの選択肢の導く結論がともに受け入れがたいものになることを示す論法。日本語では両刀論法[1]ともいう。
上記のいずれかを指す。
概説
ひとつめの用法について解説すると、ギリシア語やラテン語においては元々「δί-λημμα」「di-lemma」とは「2つの仮定(前提)」といった意味の表現であり、それらがもたらす障害や問題を意味し、「進退両難」や「板ばさみ」という訳語が用いられることがあり、つまり「二方向のどちらも行けない」、「二方からの相容れない要求によって身動きが取れない」といった表現[2]で言いあらわされるような状態のこと。「抜き差しならない羽目」[3]といった翻訳がされることもある。こうしてディレンマはやがて「窮地」[4]という意味にも使われるようになった。
2つの選択肢がともに受け入れがたいことを比喩的に表現して「ジレンマの角(つの)」ということがある(角は2つで、とがっていて不愉快なことから)。
論理学では「A または B である」「A ならば C である」「B ならば C である」という仮定から「C である」という結論を導くことをジレンマと呼ぶ。
選択肢が3つある場合にはトリレンマ(trilemma)と呼ぶ。
例
ジレンマ
- 囚人のジレンマ
- ヤマアラシのジレンマ
- 社会的ジレンマ
- 安全保障のジレンマ
- エウテュプローンのジレンマ
- 医療の倫理ジレンマ
- ワーノックのジレンマ
- イノベーションのジレンマ
- デジタルジレンマ
- マレー・ジレンマ
トリレンマ
- ミュンヒハウゼンのトリレンマ
- 国際金融のトリレンマ
- サービス経済のトリレンマ - 脱工業化が進展すると、所得平等、雇用拡大、均衡財政の3つをすべて成立させることはできない。
- 環境問題のトリレンマ - 経済発展、資源・エネルギーの確保、環境の保全の3つをすべて成立させることはできない。
脚注
関連項目
- 「ジレンマ」を含む記事名一覧
- 英語版で"dilemma"を含む記事一覧。(日本語版より多数あり。)
- 二律背反
- パラドックス
- 思考実験
- トレードオフ
- 矛盾
- ダブルバインド
- 三すくみ
- レンマ
ジレンマ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/31 13:30 UTC 版)
エネルギーと資源の高水準の処理量をもって近代が現れて以来、近代の願わしい諸相と、エネルギーと資源の持続不可能な水準の利用との間に妥協案が明白に見出される。マルクス主義の見方を通してこれを別の角度から見れば、上部構造と下部構造にこれらは関係する。反成長の劇的に異なった物質条件によって、それの社会は、社会の文化的ならびにイデオロギー的分担の変化を同じく劇的に生み出しうる。
※この「ジレンマ」の解説は、「反成長」の解説の一部です。
「ジレンマ」を含む「反成長」の記事については、「反成長」の概要を参照ください。
ジレンマ
「ジレンマ」の例文・使い方・用例・文例
- ジレンマに陥っている
- 彼はプリンシパルとエージェントのゲームの狭間でジレンマに陥っている。
- 彼はジレンマに悩んだ。
- ジレンマの状態で.
- 人生はさまざまな矛盾やジレンマに満ちている.
- ジレンマから簡単に抜け出した
- 巨大なジレンマが私達に直面する
- 本物のジレンマ
- 解決不能のジレンマ
- 道徳上ジレンマを解決するための、一般的な倫理原則の応用に基づく道徳学
- 秘書はマネージャーのジレンマについて空涙を流した
- 官僚主義かアドホクラシーの選択は、一般のジレンマを意味する
- 彼は、わたしたちのジレンマが分かるような人ではない
- 英国の作家で、学究的な世界での道徳上のジレンマに関する小説を書いた(1905年−1980年)
- 囚人のジレンマという,ゲームの理論
- 論理学において,ジレンマという論法
ジレンマと同じ種類の言葉
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