国際人権法とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 方式・規則 > 主義・方式 > 学問 > 学問 > 国際人権法の意味・解説 

こくさい‐じんけんほう〔‐ジンケンハフ〕【国際人権法】


国際人権法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/07 08:29 UTC 版)

国際人権法(こくさいじんけんほう、英語: international human rights lawフランス語: Droit international des droits de l'Homme)とは、国際法の中の人権に関する分野[1]。この法によって、いかなるでも保護されるべき人権の種類・内容および、国際機関による人権保障実施が定められている[2]。国際人権法に含まれているのは、国際人権章典(世界人権宣言国際人権規約)と、人権条約(主に子どもの権利条約女性差別撤廃条約人種差別撤廃条約拷問等禁止条約)と、それらを実施するための制度である[1]

概要

国際法によって個人の人権を保障する、国際法の一分野をいい、第二次世界大戦後に急速に発展してきた分野である。第二次世界大戦前は、人権は国内問題として、国内問題不干渉義務(国際連盟規約15条8項)の下、各国の専属的事項とされていた。しかし、第二次世界大戦の反省から、国際連合憲章において人権保護が規定され、戦後急速に国際平面における人権保護が発展しだした。その端緒は、1948年の国連総会において採択された世界人権宣言である。諸国の憲法で同宣言が言及されていることを根拠に、今日ではこれが慣習国際法の一部となっているとする見解もある[3]。諸国の国内裁判所の判決では、日本においては1989年5月2日最高裁判決をはじめ同宣言の法的拘束力が否認されている[4]。1980年6月30日米控訴裁第二巡回区判決(「フィラルティーガ事件」)では、世界人権宣言その他国際合意を基に証拠づけられ定義されている拷問から逃れる権利が慣習国際法になっていると判示された(630 F.2d 876, 882.(2d Cir.1980))[5]

国際人権法は、二つに分類することができる。普遍的保障地域的保障である[6]

普遍的保障

第一に、普遍的保障であるが、これは、国連システム条約制度に分けられ[7]、多くの場合が一般的に強制力をもった履行手続きを備えていない[8]

国連システムでは、国際連合経済社会理事会が創設した国連人権委員会の制度があった。2006年に、同委員会は国連人権理事会に発展した(国連総会決議60/251)。しかし、基本的な性格や目的は、維持されているといえる。すなわち、国連人権理事会は、テーマ別人権問題について対話の場を提供したり(同決議、5項(a))、各国による人権に関する義務の履行の普遍的定期審査英語版を行ったり(同項(e))、法的拘束力のない「勧告」(recommendations)を行ったり(同項(i))するにとどまる。国連人権委員会の最大の問題点がその政治性であったが、人権理事会となった現状でも、独立した判断機関とはいえず、政治的組織の内部に属するものにとどまっているという他はない[9]。1993年のウィーン宣言及び行動計画に起源をもち、国連総会決議48/141(1994年1月7日)によって設立された、国際人権条約の採択、普及の促進を目的とする国際連合人権高等弁務官事務所も同様に、諸国家に忠告や技術的、財政的援助を与え、国連の人権分野での調整を行う役割を有するにとどまる[10]

発効に伴い批准した国に法的拘束力を有する条約制度として、世界人権宣言を条約化したといわれる経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)と市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)があるが、特に発達している自由権規約の制度においても、自由権規約第1選択議定書の下の個人通報制度では、規約人権委員会は、法的強制力のない「見解」(views)を述べる権限を有するにとどまる(5条)。他にも、国連の下で作成された条約として、1965年の人種差別撤廃条約、1979年の女性差別撤廃条約、1989年の児童の権利に関する条約(こどもの権利条約)、1990年の全ての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約、2006年の障碍のある人の権利に関する条約などがある。これらの条約も個人通報制度について定めた選択議定書や規定を持ち、それを批准ないしは受諾する締約国に勧告を行う委員会を有するが、自由権規約と同様、強制力のある決定を下す権限は付与されていない[11]

これらのほか、1948年の集団殺害罪の防止および処罰に関する条約、1951年の難民の地位に関する条約と1984年の拷問等禁止条約、そして2006年の強制失踪防止条約もそれぞれ国際連合総会決議の形で採択された。

地域的保障

第二に、地域的保障は、欧州人権条約(正式名称、人権と基本的自由の保護のための条約)が非常に発達しており、次いで米州人権条約、次に人及び人民の権利に関するアフリカ憲章(アフリカ人権憲章)が発達している。各制度は、独自の人権裁判所を有しており、法的強制力のある判決を下して、その実効性を担保している点で、先の普遍的保障の制度と大きく異なる。なお、アジアにおいて、地域的人権条約を創設しようとする努力もなされたことがあるが、いまだ実現していない。

欧州人権条約は、欧州評議会の下、基本的自由が世界における正義と平和の礎であるとして(前文)、1950年に創設された。加盟国は、広く、欧州連合諸国のみならず、ロシアトルコまで含む。国家に加えて、個人や非政府団体も、ここに締約国の条約違反を直接訴えることができる(第34条)欧州人権裁判所を有し、現在、大変活発に活動している。同裁判所の判決は強制力を有し(第46条)、個人の人権に関しても加盟国を直接、法的に拘束する(2004年6月22日「ブロニウスキ対ポーランド事件」欧州人権裁判所大法廷判決[12])。

米州人権条約は、米州機構により1969年に欧州人権条約にほぼ倣ってつくられた制度であり、同様に米州人権裁判所を有する。同裁判所も活発に活動しており、国際法の観点からは、例えば、1999年に国際司法裁判所で争われた「ラグラン事件」(メキシコ対米国)に関連して、独自に勧告的意見を出したことや(1999年10月1日「公正な裁判の枠組みにおける領事扶助の通達の権利」米州人権裁判所勧告的意見、Serie A, No.16, para.106[13])、「バリオス・アルトス事件」に関して、ペルー政府に対して恩赦法の取り消しと捜査再開、被害者と遺族に対する補償を命じた判決(2001年3月14日「バリオス・アルトス対ペルー事件(本案)」判決、Serie C, No.75、2001年9月3日「同事件(解釈)」判決、Serie C, No.83、2001年11月30日「同事件(賠償及び費用)」判決、Serie C, No.87[14])などが、注目されている。

1981年にアフリカ統一機構によって成立したアフリカ人権憲章は、人権の保護を目指すと同時に、植民地支配の撤廃(前文)、人民の平等(19条)や発展の権利(22条)も目的としている。同条約が設置していたアフリカ人権委員会は、その後、2006年に設立されたアフリカ人権裁判所英語版(人及び人民の権利のアフリカ裁判所)を有して、他の地域的制度と同様に司法機関を持つようになった。しかし、条約の実効性については、未だ発展段階にあるといえる[15]。2008年7月1日に、アフリカ司法人権裁判所規程に関する議定書 (Protocol on the Statute of the African Court of Justice and Human Rights) が成立し、アフリカ人権裁判所とアフリカ連合司法裁判所の二つが統一されることになっている[16](2020年6月18日現在、55ヶ国中、署名33ヶ国、批准8ヶ国。15ヶ国の批准で発効)[17]。この新しい裁判所は、条約、慣習法、アフリカ諸国に共通の一般原則を適用するとされ、勧告的意見も発することができることになっている。

人権条約の国内的実施

国際人権法の最大の課題は、その国内的実施である。特に、各種人権条約の国内法秩序への直接適用性(direct applicability)が問題となる。日本においては、次のようになっている。

自由権規約(ICCPR)については、1997年の国連人権委員会における外務省が作成した日本政府第四リポートで、特定の条項はその目的、意味、用語の使用法に従って直接適用されることが示されたが、これに対する法務省の見解では逆に、ICCPRは自動執行力がないとされた。実際には、国内判例において、1994年4月27日大阪地裁判決、1993年2月3日東京高裁判決、1997年3月27日札幌地裁判決ほかで関連条項の直接適用性が認められた[18]。社会権規約(ICESCR)については、これが漸進的性格を有するゆえに、原則として直接適用性は認められないとされており、1984年12月19日最高裁判決(「塩見事件」)でもICESCR第9条の直接適用性が否認された。しかしながら、社会権規約委員会の一般注釈第3番(General Comment No.3)ではICESCR第2条の差別の禁止等、特定の条項は即座に実現されるべきもので自動執行力があるとされ、そのようなオランダの国内判決の例もある[19]

女性差別撤廃条約の直接適用性については、意見が分かれている。法務省は、条約当事国の意思、条約の文言及び起草過程でそれが明らかであれば、条約の直接適用は認められるという立場をとっている[20]

人種差別撤廃条約の直接適用性については、外務省は、条約のいくつかの特定の条項は直接適用されることをはっきりと認めている[21]

関連項目

出典

  1. ^ a b 松村 et al. 2021, p. 「国際人権法」.
  2. ^ Britannica Japan Co., Ltd. 2021, p. 「国際人権法」.
  3. ^ Zamfir,I., "The Universal Declaration of Human Rights and its relevance for the European Union", European Parliamentary Research Services, November 2018. https://www.europarl.europa.eu/RegData/etudes/ATAG/2018/628295/EPRS_ATA(2018)628295_EN.pdf
  4. ^ Iwasawa,Y., International Law, Human Rights, and Japanese Law. The Impact of International Law on Japanese Law, Oxford, Clarendon, 1998 (Reprinted 2003), p.38, note 54.
  5. ^ Buergenthal,Th./Shelton,D./Stewart,D., International Human Rights in a Nutshell, 3rd ed., Minnesota, West Publishing, 2002, p.376.
  6. ^ Sudre,F., Droit européen et international des droits de l'homme, 11e éd., Paris, P.U.F., 2012, p.131.
  7. ^ Buergenthal/Shelton/Stewart, supra, pp.27-132.
  8. ^ Daillier,P./Forteau,M./Pellet,A., Droit international public Nguyen Quoc Dinh, 8e éd., Paris, L.G.D.J., 2009, p.730.
  9. ^ Eudes,M., «De la Commission au Conseil des droits de l'homme: Vraie réforme ou faux-semblant?», A.F.D.I., 2006, pp.599-616.
  10. ^ Buergenthal/Shelton/Stewart, supra, pp.119-122.
  11. ^ Voir, Sudre, supra, pp.93-94.
  12. ^ Sudre,F. et al., Les grands arrêts de la Cour européenne des droits de l'Homme, 6e éd., Paris, P.U.F., 2011, p.819.
  13. ^ Voir Burgorgue-Larsen,L./Úbeda de Torres,A.(dir.), Les grandes décisions de la Cour interaméricaine des droits de l'Homme, Bruxelles, Bruylant, 2008, pp.702-703.
  14. ^ Burgorgue-Larsen/Úbeda de Torres(dir.), ibid., pp.291-292, 299-300.
  15. ^ 例えば、不処罰への闘いや民主制について、Kamto,M., «Introduction générale», Kamto,M.(dir.), La Charte africaine des droits de l'Homme et des peuples et le Protocole y relatif portant création de la Cour africaine des droits de l'Homme. Commentaire article par article, Bruxelles, Bruylant, 2011, pp.45-46.
  16. ^ 二つの裁判所の融合、競合問題について、Kamto, ibid., pp.26-27.
  17. ^ http://au.int/en/treaties/protocol-statute-african-court-justice-and-human-rights
  18. ^ Iwasawa,Y., International Law, Human Rights, and Japanese Law: The Impact of International Law on Japanese Law, Oxford, Clarendon, 1998 (Reprinted 2003), pp.49-56.
  19. ^ Iwasawa, ibid., pp.56-61.
  20. ^ Iwasawa, ibid., pp.61-63.
  21. ^ Iwasawa, ibid., p.66.

参考文献

  • Britannica Japan Co., Ltd.国際人権法」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』Britannica Japan Co., Ltd.・朝日新聞社・VOYAGE GROUP、2021年5月20日https://kotobank.jp/word/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E4%BA%BA%E6%A8%A9%E6%B3%95-174801#E3.83.96.E3.83.AA.E3.82.BF.E3.83.8B.E3.82.AB.E5.9B.BD.E9.9A.9B.E5.A4.A7.E7.99.BE.E7.A7.91.E4.BA.8B.E5.85.B8.20.E5.B0.8F.E9.A0.85.E7.9B.AE.E4.BA.8B.E5.85.B82021年5月20日閲覧  ブリタニカ国際大百科事典『国際人権法』 - コトバンク
  • 酒井啓亘/寺谷広司/西村弓/濵本正太郎『国際法』(有斐閣、2011年)第5編・第4章、第5章(寺谷)
  • 芹田健太郎『国際人権法Ⅰ』(信山社、2011年、204頁)
  • 申惠丰『人権条約の現代的展開』(信山社、2009年、420頁)
  • 畑博行/水上千之編『国際人権法概論』(第4版)(有信堂、2006年、334頁)
  • 山内敏弘『人権・主権・平和―生命権からの憲法的考察』(日本評論社、2003年、370頁)
  • 寺谷広司『国際人権の逸脱不可能性』(有斐閣、2003年、432頁)
  • 阿部浩己/今井直/藤本俊明『テキストブック国際人権法』(第2版)(日本評論社、2002年、294頁)
  • 大沼保昭『人権、国家、文明―普遍主義的人権観から文際的人権観へ』(筑摩書房、1998年、353頁)
  • 芹田健太郎『普遍的国際社会の成立と国際法』(有斐閣、1996年、262頁)
  • SUDRE(Frédéric), Droit international et européen des droits de l'homme, 11e éd., Paris, P.U.F., 2012, 935pp.
  • SUDRE(Frédéric) et al., Les grands arrêts de la Cour européenne des droits de l'Homme, 6e éd., Paris, P.U.F., 2011, 902pp.
  • DECAUX(Emmanuel)(dir.), Le Pacte international relatif aux droits civils et politiques. Commentaire article par article, Paris, Economica, 2011, 996pp.
  • KAMTO(Maurice)(dir.), La Charte africaine des droits de l'Homme et des peuples et le Protocole y relatif portant création de la Cour africaine des droits de l'Homme. Commentaire article par article, Bruxelles, Bruylant, 2011, 1628pp.
  • BURGORGUE-LARSEN(Laurence)/ÚBEDA DE TORRES(Amaya)(dir.), Les grandes décisions de la Cour interaméricaine des droits de l'Homme, Bruxelles, Bruylant, 2008, 995pp.
  • BUERGENTHAL(Thomas)/SHELTON(Dinah)/STEWART(David), International Human Rights in a Nutshell, 3rd ed., Minnesota, West Publishing, 2002, 450pp.
  • STEINER(Henry J.)/ALSTON(Philip), International Human Rights in Context. Law, Politics, Morals, 2nd ed., Oxford, Oxford University Press, 2000, 1494pp.
  • PETTITI(Louis-Edmond)/DECAUX(Emmanuel)/IMBERT(Pierre-Henri)(dir.), La Convention européenne des droits de l'Homme. Commentaire article par article, 2e éd., Paris, Economica, 1999, 1230pp.
  • IWASAWA(Yuji), International Law, Human Rights, and Japanese Law. The Impact of International Law on Japanese Law, Oxford, Clarendon, 1998 (Reprinted 2003), 355pp.

国際人権法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 06:16 UTC 版)

国際法」の記事における「国際人権法」の解説

「国際人権法」(International Human Rights Law; Droit international des droits de l'Homme)とは、国際法によって個人人権保障する国際法一分野をいい、第二次大戦後に急速に発展してきた分野である。第二次大戦前は、人権国内問題として、国内問題不干渉義務国際連盟規約15条8項)の下、各国専属事項とされていた。しかし、第二次大戦反省から、国連憲章において人権保護規定され戦後急速に国際平面における人権保護発展しだした。その端緒は、1948年国連総会において採択された「世界人権宣言」(Universal Declaration of Human Rights)である。 国際人権法は、二つ分類することができる。普遍的保障地域的保障である。 第一に普遍的保障であるが、これは、国連システム条約制度分けられ多く場合一般的に強制力をもった履行手続き備えていない。 国連システムでは、国際連合経済社会理事会創設した国際連合人権委員会」の制度があった。2006年に、同委員会は「国際連合人権理事会」(the Human Rights Council)に発展した国連総会決議60/251; A/RES/60/251, 3 April 2006)。しかし、基本的な性格目的は、維持されているといえる。すなわち、国連人権理事会は、テーマ別人権問題について対話の場を提供したり(同決議、5項(a))、各国による人権に関する義務履行普遍的定期的審査行ったり(同項(e))、法的拘束力のない「勧告」(recommendations)を行ったり(同項(i))するにとどまる。国連人権委員会での最大問題点がその「政治性であったが、人権理事会となった現状でも、独立した判断機関とはいえず、政治的組織内部属するものにとどまっているという他はない。国連システムにおける人権保護は、「1235手続き」及び「1503手続き」に基づく「国別手続き」、そして「テーマ別手続き」に分かれる条約制度として、世界人権宣言条約化したといわれる経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約社会権規約)と市民的及び政治的権利に関する国際規約自由権規約ICCPR)があるが、特に発達している自由権規約制度においても、自由権規約第1選択議定書の下の個人通報制度では、自由権規約人権委員会 (the Human Rights Committee) は、法的拘束力のない「見解」(views)を述べ権限有するにとどまる。他にも、国連の下で、人種差別撤廃条約アパルトヘイト防止処罰に関する条約女子差別撤廃条約こどもの権利条約等の人権条約作成され実施されているが、同様に拘束力のある決定下す機関はない。 第二に、地域的保障は、欧州人権条約正式名称、「人権と基本的自由の保護のための条約」)、米州人権条約アフリカ人憲章正式名称、「人及び人民の権利に関するアフリカ憲章」)が非常に発達している。各制度は、独自の人権裁判所有しており、強制的な法的拘束力のある判決下してその実効性を担保している点で、先の普遍的保障制度大きく異なる。なお、アジアにおいて、地域的人権条約創設しようとする努力なされたことがあるが、いまだ実現していない。 欧州人権条約は、「欧州評議会」(le Conseil de l'Europe; the Council of Europe)の下、基本的自由世界における正義平和の礎であるとして(前文)、1950年つくられた。加盟国は、広くEU諸国から、ロシアトルコまで含む。国家加えて個人非政府団体も、ここに締約国条約違反直接訴えることができる(34条)「欧州人権裁判所」を有し、現在、大変活発に活動している。同裁判所判決強制力有し(第46条)、加盟国直接法的に拘束する米州人権条約は、1969年欧州人権条約にほぼ倣ってつくられ制度であり、同様に米州人権裁判所」を有する。同裁判所活発に活動しており、国際法観点からは、例えば、1999年国際司法裁判所争われた「ラグラン事件」(メキシコ対米国)に関連して独自に勧告的意見出したことなどが、注目されている1981年成立した人及び人民の権利に関するアフリカ憲章は、人権保護目指す同時に人民の平等(19条)や発展権利22条)も目的としている。同条約設置していた「アフリカ人委員会」は、その後2006年に「アフリカ人裁判所」(正式名称、「人及び人民の権利アフリカ裁判所」; la Cour africaine des droits de l'homme et des peuples)に代わり他の地域制度同様に司法機関を持つようになった。しかし、条約実効性については、未だ発展段階にあるといえる2008年7月1日に、「アフリカ司法人権裁判所規程に関する議定書」(Protocol on the Statute of the African Court of Justice and Human Rights)が成立し、これによれば、「アフリカ人裁判所」と「アフリカ連合司法裁判所」の二つ裁判所統一されることになっている2020年6月18日現在、55国中署名33ヶ国、批准8ヶ国。発効には15ヶ国の批准が必要)。この新たな裁判所は、条約慣習法アフリカ諸国に共通の一般原則適用するとされ、勧告的意見発することができることになっている。 国際人権法の最大課題は、その国内的実施である。特に、各種人権条約国内法秩序への直接適用性(direct applicability)が問題となる。日本において、自由権規約(ICCPR)については、国内判例では、1994年4月27日大阪地裁判決1993年2月3日東京高裁判決1997年3月27日札幌地裁判決ほかで関連条項直接適用性が認められた。社会権規約(ICESCR)については、これが漸進的性格有するゆえに、原則として直接適用性は認められず、1984年12月19日最高裁判決(「塩見事件」)でもICESCR第9条直接適用性が否認されたが、社会権規約委員会(the Committee on Economic, Social and Cultural Rights)の一般注釈第3番(General Comment No.3)ではICESCR第2条差別の禁止等、特定の条項自動執行力があるとされている。

※この「国際人権法」の解説は、「国際法」の解説の一部です。
「国際人権法」を含む「国際法」の記事については、「国際法」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「国際人権法」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「国際人権法」の関連用語

国際人権法のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



国際人権法のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの国際人権法 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの国際法 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS