人権条約の国内的実施
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/08 00:51 UTC 版)
国際人権法の最大の課題は、その国内的実施である。特に、各種人権条約の国内法秩序への直接適用性(direct applicability)が問題となる。日本においては、次のようになっている。 自由権規約(ICCPR)については、1997年の国連人権委員会における外務省が作成した日本政府第四リポートで、特定の条項はその目的、意味、用語の使用法に従って直接適用されることが示されたが、これに対する法務省の見解では逆に、ICCPRは自動執行力がないとされた。実際には、国内判例において、1994年4月27日大阪地裁判決、1993年2月3日東京高裁判決、1997年3月27日札幌地裁判決ほかで関連条項の直接適用性が認められた。社会権規約(ICESCR)については、これが漸進的性格を有するゆえに、原則として直接適用性は認められないとされており、1984年12月19日最高裁判決(「塩見事件」)でもICESCR第9条の直接適用性が否認された。しかしながら、社会権規約委員会の一般注釈第3番(General Comment No.3)ではICESCR第2条の差別の禁止等、特定の条項は即座に実現されるべきもので自動執行力があるとされ、そのようなオランダの国内判決の例もある。 女性差別撤廃条約の直接適用性については、意見が分かれている。法務省は、条約当事国の意思、条約の文言及び起草過程でそれが明らかであれば、条約の直接適用は認められるという立場をとっている。 人種差別撤廃条約の直接適用性については、外務省は、条約のいくつかの特定の条項は直接適用されることをはっきりと認めている。
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