普遍的保障
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/08 00:51 UTC 版)
第一に、普遍的保障であるが、これは、国連システムと条約制度に分けられ、多くの場合が一般的に強制力をもった履行手続きを備えていない。 国連システムでは、国際連合経済社会理事会が創設した国連人権委員会の制度があった。2006年に、同委員会は国連人権理事会に発展した(国連総会決議60/251)。しかし、基本的な性格や目的は、維持されているといえる。すなわち、国連人権理事会は、テーマ別人権問題について対話の場を提供したり(同決議、5項(a))、各国による人権に関する義務の履行の普遍的定期審査(英語版)を行ったり(同項(e))、法的拘束力のない「勧告」(recommendations)を行ったり(同項(i))するにとどまる。国連人権委員会の最大の問題点がその政治性であったが、人権理事会となった現状でも、独立した判断機関とはいえず、政治的組織の内部に属するものにとどまっているという他はない。1993年のウィーン宣言及び行動計画に起源をもち、国連総会決議48/141(1994年1月7日)によって設立された、国際人権条約の採択、普及の促進を目的とする国際連合人権高等弁務官事務所も同様に、諸国家に忠告や技術的、財政的援助を与え、国連の人権分野での調整を行う役割を有するにとどまる。 発効に伴い批准した国に法的拘束力を有する条約制度として、世界人権宣言を条約化したといわれる経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)と市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)があるが、特に発達している自由権規約の制度においても、自由権規約第1選択議定書の下の個人通報制度では、規約人権委員会は、法的強制力のない「見解」(views)を述べる権限を有するにとどまる(5条)。他にも、国連の下で作成された条約として、1965年の人種差別撤廃条約、1979年の女性差別撤廃条約、1989年の児童の権利に関する条約(こどもの権利条約)、1990年の全ての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約、2006年の障碍のある人の権利に関する条約などがある。これらの条約も個人通報制度について定めた選択議定書や規定を持ち、それを批准ないしは受諾する締約国に勧告を行う委員会を有するが、自由権規約と同様、強制力のある決定を下す権限は付与されていない。 これらのほか、1948年の集団殺害罪の防止および処罰に関する条約、1951年の難民の地位に関する条約と1984年の拷問等禁止条約、そして2006年の強制失踪防止条約もそれぞれ国際連合総会決議の形で採択された。
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