慣習国際法とは? わかりやすく解説

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慣習国際法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/13 08:40 UTC 版)

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慣習国際法(かんしゅうこくさいほう)、または国際慣習法とは、国際法法源のひとつである[1][2]。国際法の法源としては慣習国際法のほかに条約があり、またこれらに加えて国際司法裁判所(以下ICJ)はICJ規程第38条第1項(c)に定められる法の一般原則も国際法の法源に含まれるとする見解が有力である[3]。基本的に批准などの手続きを行った国だけに適用される条約と違い、国際慣習法はすべての国々に普遍的に適用される[2][4]。国際法においては重要な規則が現代においても慣習法の形で定められている[4]

性質

現代の国際法の原則の多くは元々中世ヨーロッパにおける慣行に由来したものが多く、近代以降から国連の成立まで慣習国際法は長く不文の法として国際関係を規律してきた[5]。国連の成立以後は条約によって規律される分野が増えて慣習国際法の適用範囲は狭まったといえるが、しかし条約には基本的に当事国間に限り有効という制限があり、条約が規律しない国際関係については今なお慣習国際法が適用される[5]

1969年の北海大陸棚事件ICJ判決では国際慣習法について、「まさにその性質上、国際社会のすべての構成国に対して等しく効力をもたなければならず、自己の都合のために任意にいずれかの国によって一方的に排除しえないものである」と判示された[6]。そのためこのような性質をもつ慣習国際法は、慣習国際法が成立した後に誕生し慣習国際法の形成にかかわっていない新独立国に対しても拘束力が及ぶことになる[4][1]

成立要件

ICJ規程第38条1項(b)では慣習国際法とは「法として認められた一般慣行としての証拠としての国際慣習」と定められ、慣習国際法の成立するためには以下に述べるように「一般慣行」と「法的確信」の二つの要件を満たしていることが必要とされる[4][5]

一般慣行

同様の行為が反復性・継続性を持って紛争当事国だけでなく広く一般的に諸国家により「実行」されることを「一般慣行」または「国家慣行」といい、慣習国際法成立のために必要な要件とされる[4][5]。ここでいう「実行」として具体的には、政策声明、法制意見、新聞意見、判決、国内法令、行政機関の決定・措置、外交書簡、条約など国際文書の受諾、条約草案に対する回答などという「国家実行」、さらに国際機関による決議などがあげられる[5]。 一般慣行として成立するためにこの「実行」がどの程度の時間繰り返されることを要するのかについては明確な基準はなく、その認定は個々の事案の事情に照らして行われる[5]。例えば前記北海大陸棚事件ICJ判決では、慣習国際法形成のために必要なのは国家の慣行が広範囲にわたり一致していることであり、単純に長い時間が経過していることが求められるわけではないことが示された[4][5]

法的確信

法的確信」、または「法的信念」とは、一般慣行に該当する「実行」を、国際法上の権利義務にもとづくものと認識して行っていることをいう[4][5]。一般慣行に加えて慣習国際法形成のための要件とされる[4][5][7]。慣習国際法成立のためには一般慣行だけで十分であり法的確信は不要とする見解も存在するが、この見解では例えば政治的な慣例や儀礼的な配慮に基づいて行われる法的権利義務を伴わない国際礼譲と慣習国際法との区別が難しくなることが指摘される[4][5][7]常設国際司法裁判所(以下PCIJ)も法的確信に関してはローチュス号事件判決において、国家がある行為を控える場合に関して、「そのような抑制がもしこれを控えるという義務の認識にもとづくものであるならば、この場合にのみ国際慣習を語ることができる」としている[8]

出典

  1. ^ a b 「国際慣習法」、『国際法辞典』、96-97頁。
  2. ^ a b 小寺, 岩沢 & 森田 2006, pp. 33-36。
  3. ^ 「国際法の法源」、『国際法辞典』、122-123頁。
  4. ^ a b c d e f g h i 杉原 et al. 2008, pp. 14-17。
  5. ^ a b c d e f g h i j 山本 2003, pp. 53-57。
  6. ^ (杉原 et al. 2008, pp. 14-17)における北海大陸棚事件ICJ判決の日本語訳を引用。ICJ Reports 1969, pp.38-39, para.63. "by their very nature, must have equal force for all members of the international community, and cannot therefore be the subject of any right of unilateral exclusion exercisable at will by any one of them in its own favour."
  7. ^ a b 山本 2003, pp. 29-30。
  8. ^ (杉原 et al. 2008, pp. 14-17)におけるローチュス号事件PCIJ判決の日本語訳を引用。PCIJ Series A, No.10, p.28."for only if such abstention were based on their being conscious of having a duty to abstain would it be possible to speak of an international custom."

参考文献


慣習国際法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 06:16 UTC 版)

国際法」の記事における「慣習国際法」の解説

詳細は「慣習国際法」を参照 慣習国際法は、不文ではあるが、条約同等効力有する法源である。もっとも、不文であるため、それぞれの慣習国際法がいつ成立したのかを一般的にいうことは難しいが、もはや慣習国際法として成立したされれば国際法として国家拘束する。 その成立には、「法的確信(羅: opinio juris)」を伴う「一般慣行」が必要である。「一般慣行」が必要とされるため、長い年月をかけて多くの国が実践するようになったことによって成立したものがある一方、「大陸棚への国家権利」のように発表からわずか20年足らず成立したとされるものなど、その成立は様々である。国際司法裁判所1969年の「北海大陸棚事件判決において、ある条約規則一般法になっているための必要な要素について、「たとえ相当な期間の経過がなくとも」(even without the passage of any considerable period of time)、「非常に広範代表的な参加」(a very widespread and representative participation)があれば十分であるとし、また、「たとえ短くとも、当該間内において、特別の影響を受ける利害関係をもつ国々を含む、国家慣行(State practice)が、広範でかつ実質一様で(both extensive and virtually uniform)あったこと」を挙げた(I.C.J.Reports 1969, pp.42-43, paras.73-74; 皆川洸国際法判例集391頁)。 「一貫した反対国」(persistent objector) 、すなわち、ある慣習法生成過程にあるときに常にそれに反対していた国家、への当該慣習法拘束力については、学説上、議論がある。国際司法裁判所は、1951年の「漁業事件」(イギリスノルウェー判決において、領海10マイル規則に対してノルウェーがその沿岸においてその規則適用するあらゆる試みに反対表明を常に行っていた([la Norvège] s'étant toujours élevée contre toute tentative de l'appliquer)ので、10マイル規則ノルウェー対抗できない (inopposable) と判示した (C.J.I.Recueil 1951, p.131) 。 慣習法のみが一般国際法 (general international law) を形成する、という従来理論に関して小森光夫疑問提示し慣習法一般国際法化の際のその形成適用について、それぞれ問題点示している。すなわち、形成に関しては、慣習一般化において、全ての国家参加が必要とされずに、欧米諸国など影響力のある限られた数の国家事実上慣行のみでそれが認定されてきた点を挙げるまた、適用に関して、すでに一般化したとされる慣習法に、新独立国自動的に拘束されるとする理論について、それが一貫した反対国と比べて差別的である点を挙げる。そうして、一般国際法存在慣習法集約させて論じることを止め別個に一般法秩序条件理論化確立すべきだと主張する

※この「慣習国際法」の解説は、「国際法」の解説の一部です。
「慣習国際法」を含む「国際法」の記事については、「国際法」の概要を参照ください。

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