国際法上の国有化の要件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 18:16 UTC 版)
国有化の要件については、一般的な条約は成立していない。少数国間におけるものについては、投資保護協定(日中投資保護協定など)が結ばれていることが多く、規定があればそれによる。規定がない場合には慣習国際法が規律することになる。 慣習国際法上の要件として、伝統的に説かれてきた要件としては、 公益のためであること(公益性の要件) 対象財産がどの国の国民の者かということで差別しないこと(無差別の要件) 損害の補償を即時、かつ完全に(国有化される財産・移転費用等が完全に満足される形で)なされること(補償の要件) などといわれてきた。 しかし、第二次世界大戦以降に植民地だった各国が独立したのちに状況が変わる。これらの国は独立はしたものの、産業の資本は宗主国の企業や国民が握っていた。したがってこれらの新興国は、自国の資源の利益のうちのある程度をこれら企業などに取られてしまうことになる。この状況に対し、資源ナショナリズムの考えが強まり、同じ状況を抱える国々が手を結び、国際的な主張を開始した。 そこでの新しく説かれた要件においては特に補償の要件が重視され、相当な時期に、相当な額の補償でよい、ということが強く説かれた。新興国は数が多いため、国連総会でもたびたび同様の宣言が採択されている。 もっとも、国連総会決議は法的効力はないため、現在のところは上記慣習国際法上の国有化の要件が動揺している状況にある。 なお、過去の具体例としては、「アングロ・イラニアン石油会社(英語版)(AIOC)国有化事件」、「テキサコ対リビア事件」などがある。
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