法規範性についての争い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/30 05:30 UTC 版)
「世界人権宣言」の記事における「法規範性についての争い」の解説
世界人権宣言は、条約ではなく、総会において採択された決議である。国際連合総会決議は勧告であり法的拘束力がないために、世界人権宣言も拘束力がないのではないかという問題がある。 これに対して、慣習国際法を明文化したものであり、慣習国際法としての拘束力があるとする説がある。しかし、宣言が自ら前文で、「権利を創設する」としており、また、当時の人権状況をみれば慣習国際法とは言い難いと批判されてもいる。 そこで、宣言に法的拘束力を認める有力説として、現在では、慣習法になる手前の段階である「ソフト・ロー」として法的拘束力があるとする説や宣言が採択された当時は拘束力がなかったものの、その後に宣言を基礎にした各種人権条約の発効や各国の行動によって現在は慣習国際法になっているとする説がある。後者が多数において支持されている説になるため、実質的には慣習国際法としての地位を獲得していると考えられている。 なお、世界人権宣言の内容の多くは、国際人権規約などによっても明文化されており、その後の国際人権法に係る人権条約はすべてその前文において国際連合憲章の原則と共に、世界人権宣言の権威を再確認している。しかし、人権状況に問題がある多くの国は、これらの条約に署名していないことが多い。そのため、世界人権宣言そのものの法的拘束力を認めるための論議が行われるのである。日本国は1952年に発効したサンフランシスコ講和条約の前文で世界人権宣言の実現に向けた努力を宣言している。 しかしながら世界人権宣言を根拠とした「人権と基本的自由の保護のための条約」は欧州人権裁判所によって加盟国の憲法をも上回る法的拘束力を与えられ、欧州連合加盟国によって議論された「欧州憲法」中にもこの世界人権宣言が含まれている。ただし欧州憲法と関連して成立した欧州連合基本権憲章は連邦制国家における国内法(欧州連合内でしか通用しない)とみなすのが通常である。欧州連合に加盟していないスイス、アメリカ合衆国や日本国などに対する拘束力の根拠となるわけではない。
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