柳葉家
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家族は、魚にちなんだ名前が多い。江戸っ子下町人情が残る店で、銀座四丁目 にある大衆店【柳寿司】を経営している。なお、東京や神奈川に「柳寿司」が実在するが、本編の「柳寿司」とは無関係。源治と佐原直哉、工藤和彦は柳葉家の血筋ではないが、源治は鱒之介の同門であり、直哉は鱒之介の、和彦は旬の、其々の弟子で家族待遇となっているため、柳葉家に含める。札幌出身の結城達也、小樽出身の佐原直哉、津軽出身の工藤和彦と、弟子は北日本出身者ばかりである。家族待遇ではないが、「親父の教え子」という理由により、「九条料理専門学校」で鱒之介の教えを受けた者たちを、旬は弟(妹)弟子として扱っている。また、正式な弟子ではないが、中村と磯山太一は旬に寿司の教えを受けている。 柳葉旬(やなぎば しゅん) 『江戸前の旬』本編の主人公。1979年3月15日午前0時3分誕生。物語開始時の第1話(1999年3月発表)では20歳と明記されている。銀座北高等学校卒業生。四人兄妹の末っ子だが、父・鱒之介が病に倒れたことをきっかけに、実家の寿司屋「柳寿司」の三代目を継ぐべく、鱒之介の元で寿司職人としての修行を始める。長年の修行の過程で、深川の親方、松ヶ根の親方、鱒之介の「兄弟子」結城哲らに師事、特に、深川の親方と松ヶ根の親方にとっては、最後の弟子となった。また、「嘉志寿司」の吉沢大吾とは終生のライバルかつ最高の親友となる。仕事にストイックなあまり自分の恋愛に対しては不器用ですれ違いなども多く、また相手が自分に抱いた好意に気付かずに終わることもあったが、後に紆余曲折を経て藍子と結婚した。仕事以外の趣味は釣り。たとえ相手が自分より年やキャリアが下、時には寿司職人や料理人以外を相手にしていても、これまで培ってきた技術を惜しみなく伝授するなどの懐の深い面もある。修行の過程で日本中の数々の若手職人達とも交流を重ね、彼を中心に大きな横の繋がりが出来ている。基本穏やかで優しい性格もあり、当初は様々な理由から彼を嫌ったり憎んだりしていた若手職人も、最終的に彼に信服するようになる(完全な敵役、悪役としてほぼ一度しか登場しない職人は別)。 コンクールやイベント、雑誌企画などで大吾をはじめとした他の寿司職人たちと競ってきた。旬本人は「勝ったことは一度もない」と言っているが、実際は勝ったことがある。英二との最初の勝負では英二を不戦敗に追い込んでいる。また、大吾との五番勝負ではトータルでこそ引き分けだったが、うち2勝しており尚且つ大吾より先にトータルでの敗北を回避している。 江戸前寿司もそれ以外の寿司も同じ「すし」であると考えており、それらを区別せず郷土料理や顧みられなくなった料理も積極的に取り入れる。回転寿司に対しても見下すことはなく、お客さんが自分たちの店に来てくれるのは、回転寿司の存在で寿司が一般の人にも身近になってくれたからだと語り、「寿司ロボット」で作られた寿司についても、心を込めて作られたものであれば立派な寿司だという考えを持っている。来店した回転寿司業界の人物にアドバイスを送ることも少なくない。最良と判断すれば、客のために江戸前寿司以外のすしを提供することもあり、江戸前寿司には無い寿司ダネを握ることもある。河豚調理師の資格を取るため、お店の営業と並行しながら姉の真子の夫すなわち義兄である哲也の下で修行し、試験に臨み、無事合格した。 既に多くの寿司職人から一目置かれる存在になっているが、商売っ気がなく非常に良質なネタを損を覚悟して客に提供することもしばしば。 和彦を弟子に迎えてからは、優しく時に厳しい親方としての修業もこなしている。また、父親としての自覚も徐々に出てきたようである。みどりの育児と客の反応から自分の目指すべき寿司道がおぼろげながら見えてきた。そして、そのことの発端となった客との邂逅を経て鱒之介の模倣ではなく自分の目指すべき寿司の道を確立した。ヒラマサからは、食べるものを心から慈しみ安堵させる力があると称され、その立ち振舞いから握りの姿形は菩薩のようだと表現された。 柳葉藍子(やなぎば あいこ=旧姓・朝岡) 単行本第37巻「マトウダイ」にて初登場。築地場外市場に店を構える【朝岡水産】の娘で、小さな頃から店頭に立っていた。見かけは綺麗だがガラッパチで煮ても焼いても食えないキャラクターから「金魚」の異名も。紆余曲折を経て旬のプロポーズを受諾、結婚した。旬の6歳年下だが、「旬くん」と呼ぶ。初めて「柳寿司」を手伝った際に、義姉の真子から渡された君江の着物姿をヒラマサに、「着物姿が君江にそっくり」と評された。 普段から女将として店頭に立つが、自身も食い意地が張っていて寿司や魚が大好き。貴重な寿司ダネが入ると旬にねだることがしばしば。 「旬の役に立ちたい」と「義父(鱒之介)に美味しいフグチリを食べさせたい」という思いから、「柳寿司」での女将の職務の傍ら、旬や弟の一郎と共に哲也の下で、河豚調理師の修業を始め、試験に臨んだ。受験後に妊娠三ヶ月であることが判明した。試験は不合格だったが、その後にみどりを無事出産した。 女将として良質なネタを安く提供しすぎる旬の商売っ気のなさに気をもむこともあるが、それも旬のいい所と受け入れている節もある。 柳葉みどり(やなぎば みどり) 旬と藍子の第一子。2011年4月2日午前0時1分誕生。体重3700グラムの女の子。名付け親はヒラマサ。名前の由来は、ヒラマサ曰く「『李謐と孔藩』の故事から、勤勉さと謙虚な人間になって欲しい」という願いを込めたとのこと。 父の旬を「とーと」または「とうと」、母の藍子を「まんま」、鱒之介は「じいじ」、和彦は「にいに」と呼ぶ。母親の藍子と同じく、食い意地が張っていて母と食べ物の取り合いをすることもしばしば。予防接種に欠伸をするなど豪快な性格だが、一方でいじめられている友達や困っている人を助けたり、ホタルイカが死んだことに涙を流す優しい一面もある。 築地第一幼稚園を卒園後、都立築地小学校に入学。大河、美和、航とともに、魚について勉強したり、寿司を食べたりすることを目的とする「おさかなクラブ」を結成した。将来の夢は柳寿司四代目になる事で、包丁さばきも、同級生が職人技と舌を巻く程上手くなり、113巻では鱒之介に弟子入りを請い、本格的な修行に入るようになった。 柳葉鱒之介(やなぎば ますのすけ) 旬の父。「柳寿司」の二代目で昭和の大名人と言われた寿司職人。ヒラマサからは、握る寿司は食べるものを圧倒する絶対的な力を持っていると称されており、不動明王のような力強さを持っている。「魚を扱う者は魚に生かされている」、「しっかりとした技・舌・心を持って握ったモノは、客の心を打つことが出来る。それは、土台を支える江戸前の技があったればこそ」という思いから、江戸前の心を重んじていて、客の前では江戸弁をしゃべることがある。「柳寿司」に来店し、一度でも交流したことがある客は、幾年過ぎても忘れない。 寿司職人としての旬の師匠に当たる存在。昔気質で短気なところもあり、理不尽ではないとはいえ体罰を行うこともあった。基本的に江戸前にない寿司を旬が扱うことを認めないなど頑固な面があるが、江戸前でないサーモンを違和感を覚えながらも客のために握ったり、他の職人の新たなアイデアを見て自らの認識を改める柔軟な一面もある。 旬が高校3年生の時に病に倒れて(プレストーリー『銀シャリ!!』での出来事)以来、右半身が不自由になっており、長時間寿司を握り続けたりすると右手が震える症状がでることがあり、月に一回通院しつつも寿司職人を続けていた。みどりの誕生を機に引退の時期を見計らっていたが、手の甲に染みが見つかり「寿司職人が人様の前に出せないような手になった時は潔く引退する」という新見清次郎(深川の親方)の教えを守り、67歳で引退した。 その後、九条に請われ【九条料理専門学校】の日本料理の講師となり「鱒っちゃん先生」と呼ばれ慕われていた。11年務めた末に年齢を理由に引退し、みどりの弟子入り志願を受け入れて指導を始めた。 また、旬が「俺たちが子供のころはあんなに怖かったのに、孫には甘い」というなど、昔に比べて物腰が柔らかくなっている。 特別編『寿司魂』では20歳(1964年の物語開始時)の鱒之介が主人公であり、後に本作で良二郎が語った武勇伝も数多く残している。また深川の親方に紹介された中学を卒業した佐原直哉を一人前の寿司職人に鍛え上げた。なお本作では2002年に鱒之介の還暦祝い(実:58歳)が行われており、生年にズレが生じている。 柳葉君江(やなぎば きみえ=旧姓・紺野)*(故人) 旬の母。長野県出身。1989年9月3日、旬が小学5年生の時に死去。享年42歳。「柳寿司」の二代目女将として直哉や子供たちを温かく見守り続けた。穏やかな性格。結婚前は銀座のデパートで働いていた。父親は開業医。旬を妊娠した時、既に子供を産める体ではなかったが、「この子は神様からの贈り物」と旬を産んだ。しかし、そのことがきっかけで真子の結婚式の時まで君江の両親は旬を逆恨みしていた が、後に旬の優しさと君江直伝の旬の笹寿司に感動し、己の過ちを認め心の中で旬に謝罪した。君江の母は、娘の死の真相を旬に明かすこと無く息を引き取った。なお、祖母の通夜の時に、君江のお骨は鱒之介によって分骨した物を祖父に渡された。 柳葉鱚一郎(やなぎば きいちろう) 鱒之介の長男。1968年9月25日生まれ。名付け親は節子。【旭東物産】食品開発部勤務。母の死は父がしっかり看病しなかったせいだと反発し、実家を離れ商社マンとなった。しかし皮肉にも食品開発部に配され、家業と向き合うこととなった。後に父とは和解している。単行本第55巻では、鱒之介と君江に愛されていたことを誕生日に知り、涙ながらに感謝した。ちらし寿司をカップに入れたカップちらしを開発し、食品開発部部長となった。また、銀座に社命で創作寿司の店「SUSHI BAR F.E.Island」を開店。大盛況となる。 嘗て、鱒之介が運動会に出る自分たちのために巻物を作っていたことに感動し、旬に教えを請い、巻物を特訓した。その想いは、息子の誠にしっかりと伝わっていた。 妻の佳菜子とは大学の同期。その時の恋敵の応援で口説き落とした。 柳葉佳菜子(やなぎば かなこ) 鱚一郎の妻。旬の義姉。神奈川県の三浦出身。『銀シャリ!!』では、「朋子」という名になっている。初期の容姿は若かったが、年月の経過もあり近年登場した際はいきなり老け込んだ容姿となっていた。 柳葉誠(やなぎば まこと) 鱚一郎の長男。旬の甥。鱒之介にとっては初孫であり、唯一の男系の男孫。海苔が縁で東堂会長の孫である春彦と友達になる。また、友達の相談に良くのるなど懐は深い。七五三の時に鱒之介と鱚一郎が仲違いしていたため、お祝いをしていなかった。しかし、恵と祐樹の七五三の時に、母である佳菜子の実家の風習に倣い、鱒之介が贈った立派な着物を着て七五三を祝われた。クラスメイトの帆立恵美に促されて受験勉強を頑張った結果、志望校(恵美と同じ学校)に合格した。小学生時代は旬を差し置いて「柳寿司」の三代目になると言っていたが、次第にその意志は薄れていく。その後、彼女と共に一流大学のM大法学部に進学。弁護士を目指していたが自分には無理と察し、在学中に【スーパー丸高屋】にアルバイトとして入社。卒業後にそのまま就職した。 柳葉恵(やなぎば めぐみ) 鱚一郎の長女。旬の姪。佳菜子が「柳寿司」に来る途中で破水したため、帝王切開により誕生した。 柳葉鮭児(やなぎば けいじ) 鱒之介の二男(第二子)。1970年5月6日生まれ。名付け親は鱒之介。放浪癖があり長いこと一つ所にいられない性格。18歳の時から家を離れて、大道芸をしたり偽薬を売ったりしながら世界中を回っているが、たまに家に帰ってくる(確認できるところでは、母・君江の十三回忌(夢に君江が出てきた)と妹・真子の結婚式(リムジンで登場)、そして旬の結婚式(風呂上がりを泥棒と勘違いした藍子にモップでど突かれた。その後、圭斗たちと協力して旬と藍子のドッキリ披露宴を企画した))。眉毛の形が兄妹で唯一鱒之介似である。旬の結婚式後は長野で車エビの養殖に従事していたが、そこの社長に教えられた粗放養殖を東南アジアに広めるため、家族と日本に別れを告げて旅立っていった。 酒井真子(さかい まこ=旧姓・柳葉) 鱒之介の長女(第三子)。旬より3歳年上。料理雑誌の編集者だったが、日本料理人の酒井哲也と結婚し退職、店を手伝う。当初は高級店の娘でないという理由でで哲也の母に結婚を反対されていたが、鱒之介が説得したことで結婚を許された。後に祐樹という息子をもうける。その際に、夫の哲也が仕込み、鱒之介と旬が握った握り寿司に感動した。『銀シャリ!!』では、君江がお寿司屋さんのケーキとして出した卵焼きで鱒之介と和解した。後に、『江戸前の旬』本編では、その卵焼きで(父の日が哲也との結婚式であったため)、一日早く鱒之介に感謝の念を込めて出した。君江の両親には、結婚式の時に着用した白無垢姿を「35年前の君江の花嫁姿を見ているようだ」と評された。旬と藍子の結納の時は、柳葉家の人間として出席した。 柳葉鮃蔵(やなぎば へいぞう) 「柳寿司」の初代。宮城県の松島の農家出身。鱒之介の父親。旬の祖父。太平洋戦争中、衛生兵の後に米軍の捕虜になっていたが、昭和21年、日本に帰国し、東京・有楽町の寿司屋横丁に、「柳寿司」を開店。昭和39年、銀座に移転した。鱒之介と源治に魚に感謝することと江戸前の寿司職人の心意気を叩き込んだ。戦前は「巽寿司」で修行していた。『寿司魂』にも登場している。 源治(げんじ) 鱒之介の同門。旬が3歳の時に後述の直哉が入門した後に「柳寿司」から独立したと作中で語られる。2003年ごろの話で、勤めていた店の経営方針が変わったことを嘆いて包丁を返しに来るが、鱒之介に江戸前の心を諭され、寿司職人として生きる決意を新たにする。なお、「柳寿司」が開店してから鮃蔵が死ぬまでの間、『寿司魂』には一度も登場していない。 佐原直哉(さはら なおや) 源治の独立直前に深川の親方の紹介で「柳寿司」に入門し、鱒之介の下で厳しい職人修行を積んだ。修業の様子は『寿司魂』で描かれているが、こちらでも『銀シャリ!!』での回想シーンとは齟齬が見られる。当初は人前でナイフを振りかざすなどの手のつけられない暴れん坊だったが、鱒之介の握る寿司を見て、弟子志願した。『寿司魂』では、給料で「嘉志寿司」に寿司を食べに行ったり、親方である鱒之介に黙って築地仲卸業者から魚の捌き方を習ったりしている。しかし魚の捌き方を習いに行くのに店の包丁を持参し、さらに帰宅時にその包丁に血が付着していたことから同時期に「柳寿司」近辺で発生していた押し込み強盗への関与を節子(鱒之介の母)に疑われたが、鱒之介が包丁に付いていた血が魚の血であると見抜いたため、疑いは晴れている。旬が小学校低学年の時に母親の病気のため地元小樽へ帰った後、小樽寿司屋通りで「直寿司」を経営する。『銀シャリ!!』では、旬に江戸前寿司職人としての才能があるかどうかを、鱒之介に頼まれて見極めている。真子の結婚式と旬の結婚式で家族待遇として呼ばれた。 工藤和彦(くどう かずひこ) 旬の弟子。初登場は単行本第56巻。青森県の津軽地方出身。謙虚だが芯が強い。元々は、月島の工場に就職する予定だったが、内定を断られ気落ちして「柳寿司」を父親と共に訪れる。そこで、直向きさを鱒之介に気に入られ弟子となる。また、親方の旬が悩んでいた時には旬のライバルである大吾に相談に乗って欲しいと相談しに行ったことがある。親方である旬への信頼は揺ぎ無いが、思いつめて自責しやすい一面もある。 最初は料理全般について全くの素人であったが、食べる人の事を考えたかんぴょう巻きと藍子の破水時の対応で、旬から改めて認められた。仕事でミスをすることはあるが、追い回しとしての仕事も旬がさせることがなくなってしまうほどしっかりこなし、旬に早くから包丁を与えられるほどに認められている。 一方技術的な上達は紆余曲折もあり、芝エビが入った卵焼きは美味く焼けなかった。しかし日々の仕事を通して客に対する責任と喜びを学び、旬の招待で半年ぶりに再会した両親に芝エビの入った卵焼きを振る舞い、旬・藍子夫婦および両親を安心させた。「貝焼き味噌」のように、和彦がまかないなどで披露した料理が「柳寿司」にて和彦の担当として品書きに載ったり、旬も気づかなかった寿司の工夫を考案するなど着実に力を身につけ、現在では仕入れや、ツケ場で握りや巻物もある程度任されるようになっている。「東都デパート」のイベントで、都内で働く経験10年未満の若手寿司職人のナンバーワンを決める大会「TOKYO SUSHI-1 GP ~next generations~」に、発案者の良二郎直々の打診を受け出場した際には、「東都デパート」の催事場で行なわれる決勝に進むことこそ惜しくも叶わなかったが、「柳寿司」で培った実力を遺憾なく発揮した。 現在は勝どきのマンションで一人暮らしを始めており、仲を深めつつある井上真紀の他、辻川ケビン、小山内清、篠崎沙羅、大崎数馬と言った同世代の寿司職人たちとともに寿司道を邁進している。
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