ストライキ ストライキの概要

ストライキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/14 04:22 UTC 版)

「ストライキ」ロバート・ケーラー1886年油彩

転じて、ハンガー・ストライキなど労働争議ではないが組織的な抗議行動を指すこともある。

概説

歴史上最古のストライキの記録は、エジプト第20王朝においてファラオの建設に従事していた労働者たちが起こしたものである[2]

労働者がストライキをする権利(団体行動権または争議権の1つ)は、国際社会において国際人権規約(社会権規約)の第8条(d)項で保障されている。

イギリスのように労働組合が職能別労働組合を主とする場合、ある技能者の組合がストライキを入ると、個々の会社の所属と関係なく、その組合員である技能者はストライキに入ることが多い[3]。一方、日本のように労働組合が企業別労働組合を主とする場合、その会社又はその工場で働いている労働者のみがストライキに入ることが多い[3]

ストを無視して働くことはスト破りと呼ばれ、ストライキ参加者や参加団体からは忌まれると同時に、労働組合の団結を乱したものとして、除名罰金始末書提出命令・解雇などの統制処分の対象となることがある。このスト破りを防ぐと同時に、一般人へ目的の正当性を訴える手段としてピケッティング(ピケ)を張ることもある。

第一次産業第二次産業についても、ストライキが多く見られた事例がある(遠洋漁業・鉱山・工場など。農家・林業者・漁師は自営なので必要がない)。

第三次産業では、ストライキに訴えて問題解決を図るケースが多いのは、公共交通機関医療など、公営・民間問わず、主に公共サービス業関連の労働組合である。本来ストライキは、社会的弱者の側面を持つ被用者が雇用主への問題解決の働きかけの手段であるが、これらの業種は社会的弱者を含む社会のあらゆる階層がサービスを受けていることから、ストライキが実際に打たれた場合、当該サービスの利用者に対するサービスの中断や質の低下をもたらす皮肉な側面があり、これを指摘した楽曲が、1970年2月に日本でリリースされた老人と子供のポルカである。 このため、社会全体が貧しい場合や、ストライキによって解決が期待される社会問題(時に政治問題)の解決が、ストライキによるサービスの中断を上回る場合は、ストライキもある程度容認される傾向にある。しかし社会がある程度物質的に豊かになった場合、ストライキによるサービスの中断は、社会的弱者を含む社会のあらゆる階層から非難を受けることが多い。

日本では、国家公務員法第98条や地方公務員法第37条の規定により公務員のストライキが禁じられているが、逆に公務員のストライキが認められている国も多い。 フランス[4]イタリアアメリカ合衆国[5]では公務員や教師のストライキ、ドイツでは軍人のストライキがあり(労働組合的性格を持つ団体「連邦軍協会」がある)、公務員ではないが弁護士医師がストライキを起こすこともある。イギリスでは消防士らのストライキが行われることがあるが、このような場合には軍などが消防活動を代行する[6]。アメリカでは警察官(巡査や事務官)がストを打つ事があり(警察の労働組合「警察官協会」がある)、このような場合は巡査部長級以上の管理職が第一線に出る。

スペインでは航空管制官が2010年12月にストライキを打ち、国際線管制は空軍が行なう事態になった(国内線は運行出来ず麻痺した)。

なお、電力・水道・ガス・ごみ収集などのライフライン関連について、日本ではストライキが顕在化した例はほとんどない。しかし、1970年代のイギリス、2000年代のイタリアなどでは起きた例がある。この場合、ストライキによる社会への負担は計り知れないものがある。

商業・金融・証券・保険など、公共サービス業とは異質の第三次産業では、よほどの政治問題が起きる状況でなければ通常ストライキは起きない。1915年中国での日本の「対華21ヶ条要求」の際の商店でのストライキ、1923年ドイツでのフランスルール工業地帯占領の際のストライキなどがそうである。

各国とも、公共サービス業でストライキが多発した時代を含め、少なくとも1960年代以降、個人商店の営業休止による抗議やデパートスーパーマーケット銀行保険会社などのストライキによる営業休止、銀行のオンラインや証券取引所のストライキによる取引停止の例はほとんどみられない。これには、これらの業種においては、休業が企業や国民生活の破綻に直結しかねないという事情がある。特に銀行業の場合、銀行決済が不能になれば、その損害は計り知れない。

プロフェッショナルスポーツにおいては、年俸抑制策やチーム・選手の削減に対する抗議行動として実施されることが多い。

フランスなど、労働者の権利意識が特に強い国などを除いては[7]、日本・諸外国とも1990年代以降ストライキの数は非常に少なくなっている。これは国営サービス業の一部(時には大半)の民営化(その影響は民営化された事業者のみならず、元々の民間事業者にまで及ぶ)、日本においてはグローバリズムバブル崩壊による労働組合の弱体化、欧米諸国においては移民増大、EU統合・冷戦終結が背景にある。過去のストライキが社会に多大な負担を強いてきた反省から、労使ともストライキを極力避ける交渉術を多用するようになっている。

ストライキの激減のメリットとしては、公共サービスなどかつてストライキの多かった業種でのサービスの確実性がある。デメリットとしては労働運動が雇用確保の手段とならなくなったことが社会に周知され、結果雇用者の身分が不安定になったことである。

ストライキの態様

ゼネラル・ストライキ(ゼネスト)
ハンガー・ストライキ(ハンスト) - リレーハンスト
納金スト
政治スト
同情スト
スト権スト
ストライキなど争議権を認められていない日本の公務員あるいは国家公務員が争議権を獲得するためにするストライキ。日本では、争議権のない労働者によって行われるので「違法行為」とされる。日本では1970年代初頭に日本国有鉄道で多数実施され、「スト権スト」「スト権奪還スト」「順法闘争」などとも呼ばれたが、1975年(昭和50年)末に行われた8日間のストライキを指すことも多い。
山猫スト
一部の組合員が組合指導部の承認を得ず、独自に行うストライキ。Wildcat Strikeを直訳した語で「山猫争議」ともいう。
集改札スト
鉄道で集札および改札の業務に限って行うスト。つまりフリーパス状態にすることで無賃乗車が可能となり乗客に迷惑をかけずに経営のみに打撃を与える。改札口には管理職の職員が代わりに立って集改札をおこなうことが多い。1970年代から関西の大手私鉄を皮切りに自動改札機が導入されると、ストライキ時には改札機の電源を切ってストライキに「参加」させる手法が用いられた。非接触ICカード乗車券を導入した事業者の組合で実施した例は現在のところない。
一斉休暇闘争
一斉に有給休暇をとることによって、賃金を得つつストライキと同等の効果を得ようとするもの。経営側は「不当な休暇権の行使」と主張し、時季変更権を発動したりもする。
部分スト(指名スト)
組合の指示により、一部の者(主に操業の核となる人物)のみがストライキをすること。争議行為に参加しなかった組合員も賃金をもらえないということも起こりうる。「指名スト」とも。闘争時の臨時専従者の確保に使われることもある。
時限スト
ストを行う時間を区切って行うスト。闘争の初期段階や、公共サービスに大きな影響を与える場合にこれを防ぐため、行われる。学校で教職員組合によって行なわれる場合もあり、この場合はその時間帯、授業が自習になる。
一部スト
産業別労働組合などのある組合がストに突入する一方、他の組合はストを行わなかった場合。企業別労働組合が普通の日本では、むしろ一部ストのほうが一般的である。
支援スト
他の組合のストライキを支援する目的で行われるストライキ。

  1. ^ a b c コトバンク2016/3/29閲覧
  2. ^ 近藤久雄、細川祐子『イギリスを知るための65章』明石書店、2003年、140頁
  3. ^ a b マークス寿子『大人の国イギリスと子どもの国日本』草思社、1992年、109頁
  4. ^ フランスで公務員がスト、マクロン大統領の経済改革に反発”. CNN (2018年5月23日). 2019年12月8日閲覧。
  5. ^ ロサンゼルスで教員3万人がスト-大規模学区で30年ぶり”. 時事通信 (2019年1月25日). 2019年12月8日閲覧。
  6. ^ 総務省消防庁諸外国の消防行政の概要及び職業的消防職員の労働基本権の状況等 に関する調査概要、2010年、3頁
  7. ^ 仏全国スト、大学でも抗議拡大 試されるマクロン大統領の改革案”. AFP (2018年4月5日). 2018年4月10日閲覧。
  8. ^ 小西康之 Q3.労働組合による組合活動や争議行為にはどのような法律上の保護が及ぶのでしょうか。 労働政策研究・研修機構 (2010年10月)
  9. ^ 第9条には、船員法(昭和22年法律第100号)の適用を受ける船員に関しては、地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)に届け出ることとする規定があったが、2008年の法改正により労働委員会又は都道府県知事に届け出先が統一された。


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