期間の定めのある労働契約とは? わかりやすく解説

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有期労働契約

(期間の定めのある労働契約 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/11 03:57 UTC 版)

日本の雇用者
(総務省統計局、2019年度労働力調査[1]
雇用形態 万人
役員 335
期間の定めのない労働契約 3,728
1年以上の有期契約 451
1か月~1年未満の有期契約(臨時雇) 763
1か月未満の有期契約(日雇い 15
期間がわからない 239
OECD定義による各国の一時雇用者の割合[2]

有期労働契約(ゆうきろうどうけいやく、Fixed-term contract)とは、契約期間の満了日が設定された雇用契約であり、期間の定めのある労働契約(きかんのさだめのあるろうどうけいやく)とも呼ばれる[3]一時雇用のひとつ[2]。これと対比される概念は期間の定めのない労働契約である[3]

この契約を締結する場合は、契約期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない[4]

各国においては雇用保護規制の対象となっており、契約更新の最大回数もしくは累積月数を規制する国もある[2]。正規労働者の解雇規制が強い国では、一時雇用者の雇入規制も高いという傾向がみられる[2]

国際労働条約

国際労働機関(ILO)の雇用終了条約(第158号)においては、有期労働契約が雇用保護規制の回避を目的として用いられないよう措置を求めている。

第二条3
特定の期間の定めのある雇用契約であつて、この条約に基づく保護を回避することを目的とするものが利用されることを防ぐための適当な保障を規定する。
第四条
労働者の雇用は、当該労働者の能力若しくは行為に関連する妥当な理由又は企業、事業所若しくは施設の運営上の必要に基づく妥当な理由がない限り、終了させてはならない。
—  1982年の雇用終了条約(第158号)

ヨーロッパ

EU諸国においてこの形態の労働契約を結ぶケースは、英国で4.3%、スペインで22.3%、ドイツで11.0%、イタリアで13.4%、フランスでは14.4%であった[5]

欧州連合

欧州連合の有期労働指令においては、第4項1において同一労働同一賃金の義務が定められている。

Clause.4.1. In respect of employment conditions, fixed-term workers shall not be treated in a less favourable manner than comparable permanent workers solely because they have a fixed-term contract or relation unless different treatment is justified on objective grounds.

雇用条件に関して、有期労働者は、客観的な理由により異なる待遇が正当化されない限り、有期契約または関係を持っているという理由だけで、同等の正規労働者より不利な待遇を受けてはならない。

— Fixed-term Work Directive 99/70/EC

イギリス

イギリスの有期労働契約は、期限満了日になると自動的に終了し、雇用主はそれを通知する必要はない[6]。しかし期間が2年を超える場合、雇用主は雇止めを行う理由が存在することを示す義務がある[6]。また早期に中途解約する場合、1週間の事前通知期間を置く必要がある[6]

また期間が4年を超える場合、事業主が合理的な理由を示さない限り、自動的に期間の定めのない労働契約に転換となる[6]

日本

日本では労働契約法第4章で定められている。

労働基準法 第14条  (契約期間等)

労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、5年)を超える期間について締結してはならない。
  1. 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第41条の2第1項第1号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
  2. 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)

「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」とは、ダムや大型のビルの建設現場など、工事が完了すればその事業が明らかに消滅する場合[7]

契約の更新と終了

契約期間が終了後、更新について異議を述べないときは、契約は同一条件で自動更新されたと推定される。

民法第629条(雇用の更新の推定等)

  1. 雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第627条の規定により解約の申入れをすることができる。
  2. 従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、身元保証金については、この限りでない。

契約更新の判断基準の明示

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準[4]  (契約締結時の明示事項等)

第1条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の締結に際し、労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない。
2 前項の場合において、使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない。
3 使用者は、有期労働契約の締結後に前二項に規定する事項に関して変更する場合には、当該契約を締結した労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければならない。

労働条件通知書においては、期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準が絶対的明示事項となっている(労働基準法施行規則第5条1項)。モデル通知書では以下のフォーマットとなっている。

  • 更新の有無 - 自動的に更新する / 更新する場合があり得る / 契約の更新はしない
  • 契約更新の判断基準 - 契約期間満了時の業務量により判断する / 労働者の勤務成績、態度により判断する / 労働者の能力により判断する / 会社の経営状況により判断する / 従事している業務の進捗状況により判断する

満了による雇用終了

使用者の側から有期労働契約を更新しない場合(雇い止め)、有期労働契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続して雇用されている労働者については、30日前までに雇用終了予告が必要である[4]

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準[4]  (雇止めの予告)

第2条 使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第二項において同じ。) を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。

契約の中途解約

有期労働契約の中途解約は、民法上はやむを得ない事由があれば可能であるが、「やむを得ない事由があるとき」に該当しない場合は解雇することができないことを特別法である労働契約法によって明らかにしている。

労働契約法(契約期間中の解雇等)
第17条  使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

民法第628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

民法上は契約期間が5年を超える場合は上述の限りではないが、特別法である労働基準法により一般の労働契約では原則として3年を超える有期雇用契約は締結できない。

民法第626条(期間の定めのある雇用の解除)

  1. 雇用の期間が5年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
  2. 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは3月前、労働者であるときは2週間前に、その予告をしなければならない。

労働基準法第14条(契約期間等)
労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、5年)を超える期間について締結してはならない。

  1. 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第四十一条の二第一項第一号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
  2. 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)

なお労働者側からの解約は、原則として契約から1年を経過していればいつでも可能である。

労働基準法第137条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

中途解雇の予告

使用者側から中途解雇を行う際には、期間の定めのない労働契約の場合と同様に、予告期間を30日以上置くか、または日数分の解雇予告手当を労働者に支払う必要がある。しかし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(単なる経営破綻では「やむを得ない事由」には該当しない)もしくは懲戒解雇である場合は事前予告・解雇予告手当は不要である。さらに2か月以内の労働契約(日雇い)や試用期間である場合等、事前予告・解雇予告手当を不要とする者が定められている。

労働基準法第21条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第1号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第2号若しくは第3号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。

  1. 日日雇い入れられる者
  2. 2箇月以内の期間を定めて使用される者
  3. 季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
  4. 試の使用期間中の者

無期転換

労働契約法改正により、有期労働契約が5年を超える場合、これを期間の定めのない労働契約に転換できる権利を得ることとなった(無期転換申込権)[8]

なお、以下の労働者は特例規定が制定されている。

  • 高収入、かつ高度な専門的知識・技術・経験を持つ有期雇用労働者で、厚生労働大臣から認定を受けた事業主。期間の上限は10年間である(専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法)。
  • 定年後に、同一の事業主または「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」における特殊関係事業主(いわゆるグループ会社)に引き続き雇用される有期雇用労働者。
  • 科学技術に関する研究者又は技術者・研究開発等に係る運営管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る)に従事する者であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したもの科学技術に関する研究者又は技術者・研究開発等に係る運営管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る)に従事する者であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したもの。

同一労働同一賃金の推進

働き方改革関連法成立により、事業主は正規雇用者との間において不合理な待遇相違を設けてはならず、相違があるときはその理由を説明する義務が課せられた。

(不合理な待遇の禁止)
第8条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

第14条2 事業主は、その雇用する短時間有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。
3 事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない

—  短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

脚注

  1. ^ 労働力調査(基本集計) 全国 年次 2019年 (Report). 総務省統計局. (2019-01-31). 基本集計 第II-10表. https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200531&tstat=000000110001&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=000001040276&tclass2=000001040283&tclass3=000001040284&result_back=1. 
  2. ^ a b c d OECD Employment Outlook 2020, OECD, (2020-07), Chapt.3, doi:10.1787/19991266, ISBN 9789264459793 
  3. ^ a b 労働契約法 第四章
  4. ^ a b c d 『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準』(プレスリリース)厚生労働省、2003年10月22日。平成15 厚生労働省告示第三百五十七号https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/index.html 
  5. ^ Eurostat - Tables, Graphs and Maps Interface (TGM) table”. Eurostat. 2020年8月14日閲覧。
  6. ^ a b c d Fixed-term employment contracts”. www.gov.uk. 2022年2月閲覧。
  7. ^ 文部科学委員会. 第185回国会. 7. 29 November 2013.
  8. ^ 会社にもよるが、有期労働契約(有期契約社員)から無期労働契約(無期契約社員正社員と異なる場合がある)に転換しても、賃金や待遇等が有期労働契約と同じで法律上も問題がないので注意が必要である

関連項目

外部リンク


期間の定めのある労働契約

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/07 02:37 UTC 版)

労働契約法」の記事における「期間の定めのある労働契約」の解説

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の反復更新により、期間の定めのない労働契約実質的に異ならない状態で存在している場合雇い止め客観的に合理的な理由欠き社会通念上相当であると認められない場合有期労働契約更新されたものとみなされる使用者有期労働契約について、やむを得ない事由がある場合なければ、その契約期間満了するまでの間において、労働者解雇することができない第17条1項)。有期契約労働者実態をみると、契約期間中の雇用保障期待している者が多くみられるところである。この契約期間中の雇用保障に関しては、民法第628条において、「当事者雇用の期間を定めた場合であってもやむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ち契約の解除をすることができる」ことが規定されているが、「やむを得ない事由があるとき」に該当しない場合取扱いについては、同条の規定からは明らかでないこのため第17条1項において、「やむを得ない事由があるとき」に該当しない場合解雇することができないこと明らかにしたものである(平成24年8月10日基発0810第2号)。 「やむを得ない事由」があるか否かは、個別具体的な事案に応じて判断されるのであるが、契約期間労働者及び使用者合意により決定したものであり、遵守されるべきものであることから、「やむを得ない事由」があると認められる場合は、解雇権濫用法理における「客観的に合理的な理由欠き社会通念上相当であると認められない場合以外の場合よりも狭いと解されるのである契約期間であっても一定の事由により解雇することができる旨を労働者及び使用者合意していた場合であっても当該事由該当することをもってやむを得ない事由」があると認められるものではなく実際に行われた解雇について「やむを得ない事由」があるか否か個別具体的な事案に応じて判断される第17条1項は、「解雇することができない」旨を規定したのであることから、使用者有期労働契約契約期間中に労働者解雇しようとする場合根拠規定になるものではなく使用者当該解雇をしようとする場合には、従来どおり、民法第628条が根拠規定となるものであり、「やむを得ない事由」があるという評価基礎付ける事実についての主張立証責任は、使用者側が負うものである平成24年8月10日基発0810第2号)。 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者使用する目的照らして必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約反復して更新することのないよう配慮しなければならない第17条2項)。有期労働契約については、短期間契約反復更新された後に雇止めされることによる紛争みられるところであるが、短期間有期労働契約反復更新するではなく当初からその有期契約労働者使用しようとする期間を契約期間とする等により全体として契約期間長期化することは、雇止めに関する紛争端緒となる契約更新回数そのもの減少させ、紛争防止資するのである。「その労働契約により労働者使用する目的照らして必要以上に短い期間」に該当するか否かは、個別具体的な事案に応じて判断されるものであり、第17条2項は、契約期間特定の長さ上の期間とすることまでを求めているものではない(平成24年8月10日基発0810第2号)。 有期労働契約であって次の各号いずれかに該当するものの契約期間満了する日までの間に労働者当該有期労働契約更新申込みをした場合又は当該契約期間満了遅滞なく有期労働契約締結申込みをした場合であって使用者当該申込み拒絶することが、客観的に合理的な理由欠き社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前有期労働契約内容である労働条件同一労働条件当該申込み承諾したものとみなす(第19条)。最高裁判所判決確立している、いわゆる雇止め法理1.については東芝柳町工場事件(最判昭和49年7月22日)、2.については日立メディコ事件(最判昭和61年12月4日))の内容適用範囲変更することなく規定したのである当該有期労働契約過去反復して更新されことがあるものであって、その契約期間満了時に当該有期労働契約更新しないことにより当該有期労働契約終了させることが、期間の定めのない労働契約締結している労働者解雇意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約終了させることと社会通念同視できると認められること。 当該労働者において当該有期労働契約契約期間満了時に当該有期労働契約更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものである認められること。これらの要件該当するか否かは、これまでの裁判例と同様、当該雇用臨時性・常用性、更新回数雇用通算期間、契約期間管理状況雇用継続期待もたせる使用者言動有無などを総合考慮して個々事案ごとに判断される。2.の「満了時」における合理的期待有無は、最初有期労働契約締結時から雇止めされた有期労働契約満了時までの間におけるあらゆる事情総合的に勘案される。したがって、いったん、労働者雇用継続への合理的な期待抱いていたにもかかわらず当該有期労働契約契約期間満了前に使用者更新年数更新回数の上限などを一方的に宣言したとしても、そのことみをもって直ちに2.の該当性が否定されることにはならない平成24年8月10日基発0810第2号)。 「更新申込み」及び「締結申込み」は、要式行為ではなく使用者による雇止め意思表示に対して労働者による何らかの反対意思表示使用者に伝わるものでもよい。また、雇止め効力について紛争となった場合における「更新申込み」又は「締結申込み」をしたことの主張立証については、労働者雇止め異議があることが、例えば、訴訟提起紛争調整機関への申立て団体交渉等によって使用者直接又は間接に伝えられたことを概括的に主張立証すればよい(平成24年8月10日基発0810第2号)。 有期労働契約締結している労働者労働契約内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一使用者期間の定めのない労働契約締結している労働者労働契約内容である労働条件相違する場合においては当該労働条件相違は、労働者業務の内容及び当該業務に伴う責任程度職務内容)、当該職務内容及び配置変更範囲その他の事情考慮して不合理認められるものであってならない第20条)。有期契約労働者については、無期契約労働者比較して雇止めの不安があることによって合理的な労働条件決定が行われにくいことや、処遇対する不満が多く指摘されていることを踏まえ有期労働契約労働条件設定する際のルール法律上明確化したものである。なお令和2年4月改正法施行により、パートタイム労働法有期労働契約労働者均等待遇規定組み込まれたことから第20条削除されたが、経過措置として令和3年3月31日までは一定規模以下の中小事業主には第20条適用される。 「労働者業務の内容及び当該業務に伴う責任程度」は、労働者従事している業務の内容及び当該業務に伴う責任程度を、「当該職務内容及び配置変更範囲」は、今後見込み含め転勤昇進といった人事異動本人役割変化等(配置変更伴わない職務内容の変更を含む。)の有無範囲を指すものであること。「その他の事情」は、合理的な労使慣行などの諸事情想定されるのである例えば、定年後有期労働契約継続雇用され労働者労働条件定年前の他の無期契約労働者労働条件相違することについては、定年前後職務内容当該職務内容及び配置変更範囲等が変更されることが一般的であることを考慮すれば、特段事情がない限り不合理認められない解されるのである平成24年8月10日基発0810第2号)。 不合理性の判断は、有期契約労働者無期契約労働者との間の労働条件相違について、職務内容当該職務内容及び配置変更範囲その他の事情考慮して個々労働条件ごとに判断されるのであること。とりわけ通勤手当食堂利用安全管理などについて労働条件相違させることは、職務内容当該職務内容及び配置変更範囲その他の事情考慮して特段理由がない限り合理的とは認められない解されるのである平成24年8月10日基発0810第2号)。 第20条民事的効力のある規定であり、第20条により不合理とされた労働条件定め無効となり、故意過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償認められ得ると解されるまた、第20条により、無効とされた労働条件については、基本的には、無期契約労働者と同じ労働条件認められる平成24年8月10日基発0810第2号)。 第20条は、有期労働契約者の労働条件が期間の定めがあることにより同一使用者無期労働契約締結している労働者労働条件相違する場合においては当該労働条件相違は、労働者業務の内容及び当該業務に伴う責任程度(以下、「職務内容」という。)、当該職務内容及び配置変更範囲その他の事情考慮して不合理認められるものであってならない旨を定めている。同条は、有期契約労働者については、無期労働契約者と比較して合理的な労働条件決定が行われにくく、両者労働条件格差問題となっていたこと等を踏まえ有期契約労働者公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したのである。同条は、有期契約労働者無期契約労働者との間で労働条件相違があることを前提に、職務内容当該職務内容及び配置変更範囲その他の事情考慮して、その相違不合理認められるものであってならないとするものであり、職務内容等違い応じた均衡のとれた処遇求め規定である。第20条が「不合理認められるものであってならない」と規定していることや、その趣旨有期契約労働者公正な処遇を図ることにあること等に照らせば、同条の規定私法上の効力有するものと解するのが相当であり、有期契約労働者のうち同条に違反する労働条件相違設け部分無効である。もっとも、有期契約労働者無期契約労働者との労働条件相違が、第20条違反する場合であっても、同条の効力により当該有期契約労働者労働条件比較対象とする無期契約労働者労働条件同一のものとなるわけではない解するのが相当である。第20条でいう「期間の定めがあることにより」とは、有期契約労働者無期契約労働者との労働条件相違が期間の定め有無関連して生じたのであることをいうものと解するのが相当であり、「不合理認められるもの」とは、有期契約労働者無期契約労働者との労働条件相違不合理であると評価することができるものであることをいうと解するのが相当である。そのうえで正社員は、出向を含む全国規模広域異動可能性があるほか、等級役職制度設けられており、職務遂行能力見合う等級役職への格付け通じて将来中核人材として登用される可能性があるが、契約社員は、就業場所変更出向予定されておらず、将来中核人材として登用されることも予定されていない。これを前提に各手当不合理性の要件検証し皆勤手当無事故手当作業手当給食手当通勤手当について正社員契約社員との間で差異設けることは「職務内容によって両者の間に差異生ずるものではない」として「不合理である」と判断住宅手当について正社員契約社員との間で差異設けることは「正社員転居を伴う配転予定されているため、契約社員比較して住宅要する費用多額となる」ことから「不合理にあたらない」と判断したハマキョウレックス事件、最判平成30年6月1日)。 定年後嘱託社員正社員は、本件ではその業務の内容及び当該業務に伴う責任程度違いはなく、業務都合により配置転換等を命じられることがある点でも違いはない。有期契約契約労働者無期契約労働者との労働条件相違不合理認められるのであるか否か判断する際に考慮されることとなる事情は、労働者職務内容及び変更範囲並びにこれらに関連する事情限定されるものではない。定年制は、使用者が、その雇用する労働者長期雇用年功処遇前提しながら人事刷新等により組織運営適正化を図るとともに賃金コスト一定限度抑制するための制度ということができる。定年制の下における無期契約労働者賃金体系は、当該労働者定年退職するまで長期間雇用することを前提定められたものであることが少なくない解される。これに対し使用者定年退職者有期労働契約により再雇用する場合当該者長期間雇用することは通常予定されていないまた、定年退職後再雇用される有期契約労働者は、定年退職するまでの間、無期契約労働者として賃金支給受けてきた者であり、一定の要件満たせ老齢厚生年金支給を受けることも予定されている。そして、このような事情は、定年退職後再雇用される有期契約労働者賃金体系在り方検討する当たって、その基礎になるものであるということができる。有期契約労働者定年退職後再雇用された者であることは、当該有期契約労働者無期契約労働者との労働条件相違不合理であると認められるのであるか否か判断において、第20条にいう「その他の事情」として考慮されることとなる事情にあたると解するのが相当である。有期契約労働者無期契約労働者との個々賃金項目に係る労働条件相違不合理認められるのであるか否か判断する当たっては、両者賃金総額比較することのみによるのではなく当該賃金項目の趣旨個別考慮すべきものと解するのが相当である。これを前提に各手当不合理性の要件検証し精勤手当については「不合理である」と判断超勤手当についても「嘱託社員精勤手当支給しないことは不合理評価することができるものに当たり、正社員超勤手当計算基礎精勤手当含まれているにもかかわらず嘱託社員時間外手当計算基礎精勤手当含まれていないという労働条件相違は、不合理評価することができる」と判断したが(本審は超勤手当再計算をさせるために原審差し戻し)、能率給職務給住宅手当家族手当役付手当賞与について差異設けることは「不合理にあたらない」と判断した長澤運輸事件、最判平成30年6月1日)。

※この「期間の定めのある労働契約」の解説は、「労働契約法」の解説の一部です。
「期間の定めのある労働契約」を含む「労働契約法」の記事については、「労働契約法」の概要を参照ください。

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