私法上の効力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 03:39 UTC 版)
損失補填ないし損失保証をした場合、現在では刑事罰の対象となることは明らかであるが、その私法上の効力はどう解すべきか。この点、平成3年証券取引法改正前においては行政処分の対象とはなるが私法上は有効と解するのが学説・行政・判例の一致するところであった(最高裁判決平成12年7月7日)。これを無効と解すれば得をするのは証券会社であり、顧客側が不利益を被るからである(ここでの顧客とは主に保護すべき弱者たる大衆投資家を想定している)。従って、顧客は証券会社に対して損失保証の履行を請求し得ることになる。 一方、平成3年改正後になされた損失保証契約は無効であると解するのが現在の通説・判例である。刑事罰が科せられるほど反公益性の強いものであるから、公序良俗(民法90条)に反するためである。また、前述の大蔵省通達後、平成3年改正前になされた損失保証契約についても無効とする判例がある(最高裁判決平成9年9月4日)。通達によって反社会性の強い行為であるとの社会的認識が生まれたと認められるからである。従って、平成3年12月26日以後になされた損失保証・損失補填であれば顧客は証券会社に対してその履行を請求できず、既に補填された分は証券会社に返還すべきことになる。 そこで、大蔵省通達前になされた損失保証契約の履行を平成3年改正後に請求することは認められるかどうかが問題となる。この点、判例は昭和60年6月14日に締結された損失保証契約につき、当時「証券取引秩序において許容されない反社会性の強い行為であるとの社会的認識」は無かったとして契約を有効と解した上で、現在法が禁じている行為を請求することはできないとした(最高裁判決平成15年4月18日)。
※この「私法上の効力」の解説は、「損失補填」の解説の一部です。
「私法上の効力」を含む「損失補填」の記事については、「損失補填」の概要を参照ください。
- 私法上の効力のページへのリンク