公序良俗
公序良俗とは、社会秩序を維持し、営みが円滑に進むために必要な一般的な道徳観念や慣習を指す言葉である。これらは、法律に明文化されていないものの、社会の安定や個人の生活を守るために重要な役割を果たしている。公序良俗は、時代や地域によって異なる場合があり、文化や歴史の背景から生まれたものであることが多い。
公序良俗に反する行為は、法律によって罰せられることがある。例えば、風紀を乱す行為や公共の場での迷惑行為などが該当する。また、契約や取引においても、公序良俗に反する内容は無効とされることがある。これは、社会の秩序を乱すことを防ぐために、法律が公序良俗を尊重していることを示している。
公序良俗は、個々人の道徳観や価値観にも影響を与える。人々は、公序良俗に基づいて行動することで、他者との関係を円滑にし、社会の一員として適切に機能することができる。また、公序良俗を守ることで、自分自身の評価や信頼を高めることができる。
しかし、公序良俗は、時代や文化の変化によって変わることがある。過去には一般的であった慣習や価値観が、現代では受け入れられないこともある。そのため、公序良俗を理解し、適切に適用することが重要である。
公序良俗
「公序良俗」とは、法律の用語で、「国家社会の安定的な維持と、善良かつ健全な国民生活の営み」を意味する言葉である。簡単にいえば「人道やモラル」や「社会的な道徳観念」などのことである。
社会一般の利益を損なったり倫理道徳に反したりする振る舞いは「公序良俗に反する」とか「公序良俗違反」などのように表現される。
「公序良俗」は「公序(公の秩序)」と「良俗(善良の風俗)」からなる熟語である。法律の分野では、民法第九十条の「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」という規定に基づき、頻出する用語である。
「公序良俗」の具体的な意味・解釈については、東京地方裁判所・平成27年(ワ)第20841号・損害賠償請求事件の判決文の記述は比較的わかりやすい。以下抜粋。
「公序良俗とは,国家社会の一般的利益である公の秩序及び社会の一般的道徳観念である善良の風俗を意味し,公序良俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とされるものであるが(民法90条),以下略」―― 知的財産 裁判例集(裁判所)
公序良俗に反する行為の例
公序良俗に反する(「公序良俗違反」の罪に問われる)行為の範囲は幅広く多岐にわたるが、典型例としては「ぼったくり」「愛人契約」「性差による賃金差別」などが挙げられる。いわゆる「パパ活」は愛人契約の一種として公序良俗違反に問われる可能性がある。公序良俗(こうじょりょうぞく)
公序良俗
= 公の秩序善良の風俗
読み方:おおやけのちつじょぜんりょうのふうぞく【独】 öffentliche Ordnung und gute Sitten 【仏】 ordre public et bonnes mœurs
「公序良俗(こうじょりょうぞく)」と略称される。「公の秩序」とは国家社会の一般的な利益をいい,「善良の風俗」は社会の一般的な道徳観念をいうが,特に両者を区別せず,まとめて「社会の一般的秩序を維持するために要請される倫理的規範」の意味に用いられる。法律行為において,公序良俗違反の行為は無効であるとされ(民90条),この法条は,具体的に律する条文が存在しないような行為に対して一般条項として機能する。
関連項目
(注:この情報は2007年11月現在のものです)
公序良俗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/03 01:09 UTC 版)
公序良俗(こうじょりょうぞく)とは、公の秩序又は善良の風俗の略であり、これに反する法律行為は無効とされる。
「善良な風俗」という言葉の響きから、「風紀紊乱」の意味で誤用される場合も多い。例えばカラオケボックスの個室内に、「公序良俗に反する使用をしないでください」などと書かれていたりする。これは「個室内で風紀を乱す行為をしないでください」という意味で「公序良俗」を使用しているとみられるが、本来は誤った使い方である。
ローマ法以来、すべての法制の認めるところであるが、個人意思の絶対を尊重する法制の下においては、個人意思を制限する例外としての地位を与えられたにすぎない。現在においては、すべての法律関係は、公序良俗によって支配されるべきであり、公序良俗は、法律の全体系を支配する理念と考えられる[1]。
日本法における公序良俗
意義
民法第90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」としている。公序良俗は、契約の有効性を論じるときに、その社会的妥当性を判断する基準となる。
公の秩序は国家および社会の一般的利益を、善良の風俗は社会の一般的倫理をそれぞれ意味する。しかし両者は一体的に扱われるべきであり、両者を厳密に区別する実益はないとされている。裁判にあたっても、公序に反するか良俗に反するか、そのいずれであるかを決定する必要はない。
なお、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)による改正前の民法90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」という条文だった[2]。しかし、公序良俗に反するか否かを判断するときは、法律行為の内容に限らず、法律行為のプロセスも考慮に入れる必要があるとの運用がなされてきたことが反映され、「事項を目的とする」の文言が削られた[2]。
類型
90条のような解釈の余地の大きい漠然とした要件を持った規定は、非常に柔軟で妥当な解決を可能にするが、他方、要件が抽象的になればなるほど、その適用の際に裁判官の主観的な判断によって結論が左右される危険性が大きくなる。しかし90条に関しては、今日では判例の蓄積により公序良俗の内容も相当に固まってきている。大きく分けると、当事者の不利益よりも社会規範への抵触(反社会性)に着目する類型(1~4)と、一方当事者に生ずる被害や権利侵害を問題とする類型(5~7)、これらと視点を異にする問題(8)がある[3]。
- 犯罪にかかわる行為
- 犯罪を犯す対価として金を与える契約、犯罪をしないことの対価として金を与える契約などは私法上も無効である。
- 取締規定に反する行為
- 特定の取引を禁止する取締規定違反についても、取締規定を効力規定と解するのではなく、90条の問題とされることが多い。それにより、違反が軽微であるかどうか、当事者は違法であることを認識していたか、取引の安全は害されるか、取締規定の目的は達せられるか、などの具体的事情を考慮して判断する。
- 例として、食品衛生法で禁止されている硼砂の混入したアラレを販売した事案(最一小判昭和39年1月23日民集18巻1号37頁)、不正競争防止法・商標法に違反してアメリカ・ポロ社のメンズウェアの類似商品を販売した事案(最一小判平成13年6月11日集民202号433頁)では、違法行為をあえて行ったという当事者の主観的要素を考慮して無効とした。
- 人倫に反する行為
- 射幸行為
- 自由を極度に制限する行為
- 「前借金無効判決」(最二小判昭和30年10月7日民集9巻11号1616頁)では、16歳にも達しない少女が酌婦として稼働する旨の契約、およびこれに伴う金銭消費貸借契約・連帯保証契約(芸娼妓契約)について、契約全体を無効とし、金銭の消費貸借についても不法原因給付を適用して、返還請求も認めないとした。
- 従前の判例(大判大正7年10月2日民録25輯195頁及び大正10年9月29日民録27輯1774頁)は、芸娼妓として稼働する部分と金銭消費貸借の部分とを区分し、前者は無効であるが後者は前者と不可分であれば無効、そうでなければ有効としてきた。しかしこの立場に立つ以上、抱え主は悪くとも借金は取り戻せるから、結果として娘の売買は減らなかった。この判例変更は、人身売買を一切許さないという毅然とした態度を表明したものといえる。
- 「前借金無効判決」(最二小判昭和30年10月7日民集9巻11号1616頁)では、16歳にも達しない少女が酌婦として稼働する旨の契約、およびこれに伴う金銭消費貸借契約・連帯保証契約(芸娼妓契約)について、契約全体を無効とし、金銭の消費貸借についても不法原因給付を適用して、返還請求も認めないとした。
- 暴利行為または不公正な取引行為
- 個人の尊厳・男女平等などの基本権に反するもの
- 動機の違法
英米法におけるパブリック・ポリシー
公序良俗は英米法ではパブリック・ポリシーの原則(public policyまたはpolicy of the law)がこれに相当する[4]。パブリック・ポリシーとは、何人も公共の利益や公共の福祉に反するような他者に危害を与えうる行為を行うことは認められず無効とするという法原理である[4]。英米法の法原理ではこれに反する契約や私的取引等の行為(againsts public policy)は無効とされる[4]。
関連項目
- 箕作麟祥
- 牧野英一 - 公序良俗や作為義務を研究した人物
- 規範
- 作為義務・不作為
- 信義誠実の原則
- 法
- 努力義務
- ヴェニスの商人 - 作品中の人肉をめぐる契約について、公序良俗の観点から無効と判断するべきとの指摘がある。
脚注
出典
「公序良俗」の例文・使い方・用例・文例
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