いわき‐がわ〔いはきがは〕【岩木川】
岩木川
岩木川は、青森県西目屋村と秋田県藤里町の境にある白神山地の雁森岳にその源を発し、途中の諸支川を集めながら東に流れ、弘前市付近で流れを変えて藤崎町で平川を合流します。五所川原市付近では十川等の支川を合流し、津軽平野の平坦な低地をゆったりと北上しながら十三湖を経て日本海に注ぐ流域面積2,540km2、流路延長102kmの一級河川です。 |
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五所川原市中心部を流れる岩木川 |
河川概要 |
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1.岩木川の歴史 |
"岩木川は藩政時代より水害に苦しめられてきましたが、明治時代の治水運動により国直轄として調査が実施されました。 その後大正6年「岩木川改修計画」が国会に提出され直轄治水事業が着手されました。 その中でも「十三湖水戸口」における河口閉塞解消のための突堤設置は大きな治水プロジェクトでした。" |
十三湖水戸口改修 |
○洪水と治水運動 岩木川の歴史は水害との戦いでした。 このため、藩政時代から歴代藩主は、領内繁栄のため水害防止に力を注いできましたが、当時の技術力・経済力では完全なものではなく、ひとたび豪雨となればたちまち氾濫して人々の生命や財産を奪い、また、洪水で没した田畑は長い間放置されたといわれています。 明治に入り、活発な治水運動が展開された結果、岩木川改修に向けた調査が開始され、やがて明治44年全国主要河川改修計画の第1期河川に指定されたのを契機に、国直轄で実施されることになりました。 ○岩木川改修計画書(当初) 大正6年9月には【大久保清長】(「岩木川改修事務所の初代所長」)より「岩木川改修計画書」が国会に提出され、翌大正7年に直轄事業に着手しました。 その中でも十三湖水戸口突堤設置が大きな治水プロジェクトでした。
○水戸口の閉塞 十三湖が日本海に注ぐ箇所を「水戸口」と呼んでいます。 この水戸口が毎年11月頃から翌年4月頃まで、北西の季節風による荒波の漂砂 によって閉塞され、十三湖沿岸はもとより岩木川下流部の耕地まで湛水が広がり大きな被害を受けていました。
水戸口閉塞の開削にあたっては開削位置をめぐって上流住民と十三住民との間で度々争いが生じ、明治23年には流血の惨事となるほどの重大な問題となりました。 ○水戸口改修工事水戸口突堤工事は日本国内は勿論、外国にも適当な例は見当たらず、その方法や工事の進め方を決定するには随分苦心したと言われています。また、突堤に関しては位置や方向、規模などについても長い年月をかけた測量結果により、地形変化の特徴を捉え、その突堤の設計を完成させました。 突堤工事は大正14年から仮突堤工事に着手し、昭和22年に完成しました。現在の水戸口は突堤完成後約50年経過しても一度も閉塞することなく保たれているのは、海からのエネルギーと川からのエネルギーが程良いバランスを維持しているためだといわれています。
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2.地域の中の岩木川 |
"岩木川は舟運等を通じて地域発展に貢献した歴史があります。 最近では河川を軸とした地域間交流としての役割としても見直され重要な空間となっています。 総合学習の場としての「みずべの学習ひろば」や市民団体によるイベントは大きな期待が寄せられています。" |
地域とのつながり ○舟運と地域発展
藩政時代の岩木川は十三湊から現在の板柳、藤崎まで舟が航行しており、渡し場も元禄時代の記録によると十三湖の十三渡、岩木川の駒越、石渡、板屋野木、平川の石川、境関、藤崎にあったとされています。 ○河川に求めるもの 岩木川はその源流部が世界自然遺産の白神山地であったり、下流部には広大なヨシ原が分布するなど自然豊かな河川であるとともに、流域の人々にとって歴史的、社会的、経済的にも関わりの深いかけがえのない資源を持った河川です。 河川を軸にした地域間交流によって地域づくりに寄与する河川の役割が見直され、また、自然体験の場、癒しの場、ふれあいの場等としても重要な空間となっています。 ○総合学習 総合学習の場として「みずべの学習ひろば」「水辺プラザ」等があげられますが、川を中心とした生態系など自然環境を実際に観察・体験学習できる場として大きな期待が寄せられています。 「みずべの学習ひろば」は岩木川と平川の合流部に位置し、自然環境豊かな場所に湿性植物や河畔林、鳥、水生生物が生息するとともに、水質等の測定ができるように自然学習拠点として整備しました。
○市民団体によるイベント
当イベントは平成11年より開催しており、現在までに5回を数え地域に根ざした恒例行事として岩木川改修の歴史や津軽の文化などを再認識できる場になっています。 |
3.岩木川の自然環境 |
"岩木川流域は国立公園、国定公園、県立自然公園といった良好な自然環境を有しています。 源流部には世界遺産である白神山地が位置し、上流部にはアユやウグイの産卵場、中流部にはオオタカの繁殖、下流部はヨシ原のオオセッカなど貴重な動植物が多数確認されています。" |
○岩木川流域の指定公園 岩木川流域は十和田八幡平国立公園、津軽国定公園をはじめ、5つの県立自然公園に指定されるなど豊かな自然環境を有しています。 ○岩木川源流部の自然環境
白神山地は、人為的な影響を受けていない原生的なブナ天然林が世界最大級の規模で分布することが評価され、平成5年には世界自然遺産に登録されました。 ○岩木川上流部の自然環境
河原は瀬と淵が発達し、アユやウグイの産卵場もみられ、また、カワセミが多く生息し、イワツバメの繁殖地にもなっています。 また、水辺にはツルヨシやミクリが見られ、ヤナギ河畔林もあります。 ○岩木川中流部の自然環境
河岸沿いにはヤナギ高木林が帯状に発達し、オオタカやノスリが繁殖しているほか、トビの集団ねぐらが形成されることもあります。 ○岩木川下流部の自然環境
また、マークオサムシやゲンゴロウ類等の昆虫類も豊富で、ワンド状の入り江、池ではタナゴ類やメダカも生息しています。 哺乳類では準絶滅危惧種に指定されているイイズナが確認されています。 ○岩木川河口部の自然環境
また、オオハクチョウをはじめとする水鳥が冬季を中心に多く訪れています。 ○平川の自然環境
藤崎町付近の河岸にはオオハクチョウなどが越冬のため飛来し、また、カワセミの繁殖も確認されています。 ○北限種の多い岩木川 岩木川は北限種が比較的多い川で、淡水魚の天然分布種であるアブラハヤや植物のサクラタデ、ドクダミ、タコノアシ、ミソハギなどあげられます。 |
4.岩木川の主な災害 |
・昭和50年 8月20日洪水 ・昭和52年 8月 4日洪水 ・昭和56年 8月23日洪水 ・平成 2年 9月19日洪水 ・平成 9年 5月 8日洪水 ・平成14年 8月11日洪水 |
主な水害
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5.その他 |
"岩木川の名前の由来と小説「津軽」" |
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(注:この情報は2008年2月現在のものです)
岩木川
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/05 14:07 UTC 版)
岩木川 | |
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五能線から北望
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水系 | 一級水系 岩木川 |
種別 | 一級河川 |
延長 | 102 km |
平均流量 | 88.2 m3/s (五所川原観測所 2000年) |
流域面積 | 2,540 km2 |
水源 | 雁森岳(西目屋村) |
水源の標高 | 987 m |
河口・合流先 | 日本海(五所川原市) |
流域 | ![]() |
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Geoshapeリポジトリ 国土数値情報河川データセット | |
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岩木川 8202070001 岩木川水系 地図 岩木川流路 |
地図の不具合を報告 | |
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Geoshapeリポジトリ 国土数値情報河川データセット | |
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岩木川水系 820207 地図 岩木川水系流路 |
地図の不具合を報告 | |
岩木川(いわきがわ)は、青森県中西部を流れる一級河川。岩木川水系の本流である。中流域はリンゴの特産地として知られる。古くは「弘前川」や「大川」と呼ばれていたが後に岩木川に統一された。
川の名前は岩木山に由来する。「イワキ」は、神が鎮座する「イワクラ」と同じく霊山信仰に基づく言葉だとされている[1]。
地理
青森県中津軽郡西目屋村の白神山地雁森岳(標高987m)に源を発し、岩木山南麓を北東に流れる。弘前市から概ね北に向きを変え、津軽平野を潤す。津軽半島西部を流れ、河口近くに十三湖を形成したのち五所川原市十三で日本海に注ぐ。
流域の自治体
支流
詳細は岩木川の支流の一覧を参照。
ここでは一級河川に指定される支流を取り上げる(下流より)。括弧内は流域の自治体
- せばと川(五所川原市)
- 相内川(五所川原市)
- 山王川
- 桂川
- 今泉川(五所川原市、北津軽郡中泊町)
- 昆布掛川(五所川原市、北津軽郡中泊町)
- 鳥谷川(つがる市、五所川原市、北津軽郡中泊町)
- 薄市川
- 尾別川
- 宮野沢川
- 中里川
- 岩谷川
- 中里川
- 山田川(つがる市、五所川原市、弘前市、西津軽郡鯵ヶ沢町)
- 旧十川(つがる市、五所川原市)
- 金木川
- 小田川
- 飯詰川
- 松野木川
- 天神川
- 十川(黒石市、青森市、五所川原市、北津軽郡鶴田町、板柳町、南津軽郡藤崎町)
- 前田野目川
- 浪岡川
- 大釈迦川
- 赤川
- 正平津川
- 王余魚沢川
- 大釈迦川
- 本郷川
- 高館川
- 長坂川
- 新和川(弘前市)
- 宇田野川
- 旧大蜂川(弘前市)
- 大石川
- 前萢川
- 大蜂川(弘前市)
- 多沢川
- 鶏川
- 平川(平川市、南津軽郡大鰐町、弘前市、平川市、南津軽郡田舎館村、藤崎町)
- 後長根川(弘前市)
- 新土淵川(弘前市)
- 栩内川(弘前市)
- 相馬川(弘前市)
- 作沢川
- 鴫ヶ沢川
- 蔵助沢川(弘前市)
- 大秋川(中津軽郡西目屋村、弘前市)
- 平沢川(中津軽郡西目屋村)
- 湯ノ沢川(中津軽郡西目屋村) - 釣瓶落峠付近に発し、尾太岳の東麓を北流し、美山湖に注ぐ。長さ13.1km、流域面積40.4km。湯の沢川は険しいV字谷を形成していて、かつては岩木川の本流への合流点である砂子瀬地区より先へは牛馬の通行ができなかった。谷の途中に尾太鉱山があり、その鉱廃水による水質汚染対策ため、現在も鉱滓ダムの整備や管理が行われている。[2][3]
- 大沢川(中津軽郡西目屋村)
- 暗門川(中津軽郡西目屋村)
並行する交通
鉄道
かつては国鉄黒石線が浅瀬石川下流部で並行していた。1984年に弘南鉄道に転換されたものの1998年に廃止された。
道路
- 国道339号
- 青森県道43号五所川原車力線:つがる市鷺坂付近から同市下車力付近まで、土手上を並行している。川と並行する区間には、ガードレールが殆ど設置されておらず、転落事故への注意が必要である。
- 五所川原市道唐笠柳・錦町線:つがる総合病院開院に伴い、整備された岩木川沿いを通る市道。
主な橋梁
- 十三湖大橋 - 青森県道12号鰺ケ沢蟹田線
- 中島遊歩道橋(十三湖岸)
- 津軽大橋 - 青森県道189号富萢薄市線
- 津軽令和大橋 - 青森県道43号五所川原車力線
- 神田橋 - 青森県道2号屏風山内真部線
- 三好橋 - 青森県道164号林五所川原線
- 新津軽大橋
- 奥津軽大橋 - 国道101号五所川原西バイパス
- 岩木川橋梁 - JR五能線
- 乾橋 - 国道101号
- 五所川原大橋 - 青森県道154号妙堂崎五所川原線
- 鶴寿橋 - 青森県道153号山田鶴田線
- 保安橋 - 青森県道200号米山菖蒲川線
- 津軽りんご大橋 - 青森県道125号小友板柳停車場線
- 幡竜橋
- 安東橋 - 青森県道131号前坂藤崎線
- 清瀬橋 - 青森県道41号弘前環状線
- 城北大橋
- 富士見橋 - 青森県道31号弘前鯵ケ沢線
- 岩木橋 - 青森県道3号弘前岳鰺ケ沢線
- 岩木茜橋 - 青森県道129号関ケ平五代線
- 上岩木橋 -弘前南部広域農道(アップルロード)
- 里見橋 - 青森県道28号岩崎西目屋弘前線
- 地形橋
- 長慶橋 - 青森県道28号岩崎西目屋弘前線
- 堰根橋
- 高野橋
- 吉川橋
- 平山橋
- 米ヶ袋橋
- 堰口橋
- 目屋渓大橋 - 青森県道28号岩崎西目屋弘前線
- 目屋橋
- 鷹ノ巣橋 - 青森県道28号岩崎西目屋弘前線
- 村市橋
- 川辺橋
- 河鳥橋
- (津軽ダム)
脚注
注釈
出典
- ^ “青森河川国道事務所 「かわ」のひろば 岩木川 これからの岩木川を考えてみませんか? 岩木川Q&A”. www.thr.mlit.go.jp. 2019年9月5日閲覧。
- ^ 『青森県百科事典』p931「湯の沢川」
- ^ 『角川日本地名大辞典2 青森県』p1268-1272「西目屋村」
参考文献
- 『青森県百科事典』,東奥日報社,1981,ISBN 4-88561-000-1
- 『角川日本地名大辞典2 青森県』,角川書店,1985
関連項目
外部リンク
固有名詞の分類
- 岩木川のページへのリンク