第201話 - 第300話
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 03:32 UTC 版)
「ゴルゴ13のエピソード一覧」の記事における「第201話 - 第300話」の解説
“話数 題名 / 発表年月”の順で記載。 第201話 ルーサー・キングの遺産 / 1983年8月 間近に控えた米大統領選の最大の目玉は、民主党の大統領候補レオナード・ゴードンだった。かつてのキング牧師の同志であり、キング牧師の意志を受け継ぐと高らかに謳うゴードンだったが、実際はキング牧師の暗殺事件の際に、事前にそれを知りながら彼を見殺しにしたという醜悪な過去があった。フロリダで開かれた演説会、聴衆の声援に迎えられたゴードンは、キング牧師のノーベル平和賞の記念メダルのレプリカをつけて演壇に立つ。 第202話 プロキシー・ファイト 委任状闘争 / 1983年8月 ハワイの一流ホテル乗っ取りの依頼を受けた日本のヤクザ・立花。委任状闘争の名義人として乗っ取り計画の陣頭指揮を執るものの、依頼人を出し抜いて自身がホテルのオーナーになろうと企んでいた。マフィアの警告もはね除け立花は着々と計画を進めるが、そんな中ロスの富豪の娘を捜しているという探偵が訪ねてくる。立花は知らんぷりを決め込むが、娘は立花の経営する芸能プロに騙され売春を強要され、それを苦に自殺してしまっていた。娘の死を知った富豪は激怒し、乗っ取りを成功させて得意の絶頂にある立花に復讐するべくゴルゴを雇う。なお、こんにちの日本では、「プロキシーファイト」は「委任状争奪戦」と訳されることが多い。 第203話 女カメラマン・キム / 1983年9月 政治家のセックススキャンダルをスクープした女カメラマン、キム。彼女から専属カメラマンになることを断られた編集長は、逆恨みして彼女をチンピラたちに襲わせた。そこをゴルゴに助けられた彼女は、お礼がしたいとゴルゴを連れ出した。食事をしたり、酒を飲んだりして一緒に過ごす二人。その頃、キムの相棒の元に、キムにスキャンダルを暴かれた政治家が「殺し屋」を雇ったという情報が舞い込む。 第204話 多国籍企業 某略の図式 ヘッド・ハンター / 1983年10月 米人材獲得会社の副社長サミュエル・ポッターが飲酒運転による事故で命を落とす。事故を不審に思った祖父のポッター会長は死因を調査するが、サミュエルが多国籍企業による国家買収という恐るべき陰謀にまつわる機密情報をつかんでしまったことを知る。ポッターは独自の調査網でゴルゴにコンタクトをとり、黒幕の暗殺を依頼する。標的の正体が判明し次第知らせるとゴルゴに約束してポッターは執念の調査を続けるが、その黒幕は彼が想像もしなかった人物だった。 第205話 裏切りのスワスチカ / 1983年11月 西ドイツ外相ゲンシャーの補佐官リヒャルツ・ゼルが襲撃された。犯人はその場で射殺されたが、手の甲にはチベットのシンボル正鉤十字マークであるスワスチカの刺青が彫られていた。第二次世界大戦末期、チベット人支援部隊はソ連軍を迎え撃つが、隊長であったゼルことグルカは敵前逃亡を謀り、部隊を見殺しにしていた。グルカはヒトラーの日記を強奪し、戦後はゼルと名前を変え、西ドイツ官僚としての地位を固めていたのである。チベット人部隊の生き残りにグルカ暗殺命令を出していた人物は「ローゼン・マクシミリアン」という老人だったが、とうとうゼルの殺害と日記の破壊をゴルゴに依頼する。ゴルゴはマクシミリアンの正体が元ドイツ第三帝国副総統ルドルフ・ヘスであることを見破る。 第206話 デバッグ / 1983年12月 パソコンマニアの少年マークは、全くの偶然から国防関係のデータ通信回路に不法侵入してしまった。そこでゴルゴのデータを発見したマークは、ゴルゴへの興味が抑えきれず、とうとうゴルゴへの接触を試みる。一方、データへの不法侵入に気が付いたCIAは、犯人捜査に乗り出し、マークがゴルゴに接触しようとしている事実を掴む。早くしなければマークの命が危ないと現場に急ぐ捜査官だった。 第207話 闇の封印 / 1984年1月 建設政務官を務める若手代議士の塚山は、ある日永田町に住む友人の吉岡から奇妙な相談を受ける。このところ吉岡の自宅の地下から、真夜中に何事か工事をしているような異様な音が聞こえるというのだ。塚山はそれとなく各所に問い合わせてみたが、誰に聞いても要領を得ない返事しか返ってこず、そのうち吉岡が謎の変死を遂げたという知らせが飛び込んできて衝撃を受ける。その後塚山は弔いのつもりで親友の死の謎を調べ始めるが、やがて永田町の地下に網の目のように張り巡らされた無数のトンネルと、その奥深くに眠る大戦末期の極秘書簡「S-書簡」の存在を知ることになる。 第208話 ビオ・グレゴリオ司教 / 1984年2月 南アフリカの老大司教マーローが、アパルトヘイトに抗議して極秘裏に収監された。法王の懐刀であるビオ司教は、南ア政府の資金源であるクルーガーランド金貨の価格を暴落させてこれに対抗。さらにその裏で、ゴルゴに警戒厳重・脱出は不可能な南アにあえて潜入する仕事を依頼する。 第209話 海難審判 / 1984年3月 イラン軍向けの武器を満載した貨物船ユピテル号が、無人となって当のイラン沿岸に漂着した。イラン軍のラシッド少佐はこの謎の調査に乗り出すが、事件の裏にはゴルゴがいた。 第210話 真実の瞬間 / 1984年4月 イスラエル人のモルド・シェ・ダハンは、ソ連の元第一副首相ヨセフ・イワノビッチ・クレメールに瓜二つの容姿をしていた為に、CIAに拉致され、クレメールの身代わりを強いられる。亡命するクレメールからKGBの眼を逸らす為だと説得されるダハンだったが、CIAの狙いは、ダハンにクレメールの代わりに死んで貰う計画だった。ダハンも、その狙いに気付き焦り出す。 第211話 AZ4 CP72 / 1984年5月 カナダ、ケベックで罹患すれば致死率100%の伝染病が発生した。調査の結果、陸軍情報局は、科学戦略防衛研究所のクリフォード・コベントリー所長が感染源であることを突き止める。そこで、他者への感染を食い止めようとするカナダ陸軍は、生死を彷徨うコベントリーからゴルゴと接触したという事実を知らされる。カナダ陸軍は、大捜査網を張り巡らせ、ゴルゴ抹殺の為に動き出した。 第212話 デッド・アングル / 1984年6月 アメリカ国務省が雇い入れた若き狙撃手、カッツ・ドーベル。コンピュータ並の頭脳とオリンピック選手を凌ぐ射撃能力を誇る彼がゴルゴの前に立ちはだかる。 第213話 2万5千年の荒野 / 1984年6月 カリフォルニア州郊外の原子力発電所でトラブルが発生。解決には原子炉に充満する蒸気を逃がさなければならないが、肝心の逃がし弁は超過勤務を強いられた職員のミスで壊れてしまっていた。もし原子炉が爆発すれば広島型原爆の数百発分の放射能が散布され、ロサンゼルスが2万5千年の死の街に……!偶然ゴルゴの狙撃を目撃したプラントの設計者・バリーは、蒸気を逃がすためにサージ管を狙撃で撃ち抜くことを依頼する。だが、狙撃場所はメルトダウン寸前の原発の中だった。 第214話 スパニッシュ・ハーレム / 1984年8月 FALNP (プエルトリコ国家解放武装団)の女テロリスト・アンジェラ。テロ行為を行った彼女はその姿を目撃され、起訴される。彼女と一夜を共にしたゴルゴは、なぜか法廷に立って彼女の弁護を行う。 第215話 ロックフォードの野望 / 1984年8月 世界経済を支配するロックフォード財閥の当主、デビッド・ロックフォードは、月100万ドルの報酬でゴルゴを一族の専属狙撃手として雇い、彼を懐柔しようとする。契約を断るゴルゴだったが、その直後にロックフォードはゴルゴのあらゆる資産を凍結、自身の巨大な権力を見せつける。動きを封じられたゴルゴは、唯一ロックフォードに対抗し得る華僑がいる台湾へ飛び立つ。 第216話 メジャー・オペレーション / 1984年9月 米軍のアフガン侵攻作戦始動を前にして、米国防総省戦略分析局局長のコッブ大佐は、ゴルゴを使ってベトナム戦争のゲリラ戦のケーススタディーを行おうとしていた。コッブはベトナム戦争での敗北がトラウマとなっていたのだ。コッブはブラジル軍の要人殺害という虚偽の依頼を口実にしてゴルゴをブラジルにおびき出す。ゴルゴは丸腰でブラジルのモンテグロッサのジャングルに追い込まれてしまう。 第217話 サギ師ラッキー / 1984年10月 シカゴの結婚詐欺常習犯・ラッキー。結婚詐欺師としてはそれなりに名が知られていたが、所詮は一介の詐欺師でしかない。なじみの刑事から「チキン(小者)」と嘲られ、ラッキーは何かデカいことをやって見返してやろうと誓うが、そんな彼の前にゴルゴが現れる。偶然ゴルゴが国際的なテロリストだと知ったラッキーは、ゴルゴを利用して一世一代の詐欺を成し遂げようと企てる。 第218話 ロックフォードの野望〈謀略の死角〉 / 1984年11月 圧倒的な権力で自身を屈服させようとしたデビッド・ロックフォードを葬ったゴルゴ。しかしロックフォード一族の野望は新当主のローランスに引き継がれていた。アメリカ元国防長官のブレジンジャーとも手を組んだロックフォード一族は、今度はゴルゴの依頼者を例外なく抹殺することで仕事の妨害を図る。死んだ依頼者の遺言でローランス殺害を依頼されたゴルゴは、再びロックフォード一族との戦いに挑む。 第219話 十月革命の子 / 1984年12月 KGB第一副議長ビクトル・クレメンコ将軍の陰謀により、伯父のクラスノダール州党委員会書記イワン・ベトロビッチ・コペイキンを殺害されたKGB第二総局ウラジミール・ムラトフ大佐。その復讐を果たしたいムラトフだったが、相手がKGB第一副議長では手を出す事が出来なかった。しかも、アフガニスタン転属を命じられ、自分の死を予感したムラトフは、復讐の為の狙撃をゴルゴに依頼するのだった。 第220話 アイリッシュ・パディーズ / 1984年12月 アイリッシュへの差別から、まともに職に就けない青年・エド。父親も同様で、毎日日雇いの仕事を転々としている。親父のようにはなるまいと誓ったエドは思い切ってIRAに入ることを決意し、ホテルに宿泊している上院議員を襲ってIRAの目を引こうとする。が、エドは気づかなかったがそこには彼の父の姿もあった。エドがダメ親父として馬鹿にしていた父は、実はIRAきってのボンバー(爆弾係)だった。 第221話 シーザーの眼 / 1985年1月 シーザー電子が秘密裏に開発したビームマイクロ・スクランブラー。核兵器の無力化を図る事が可能だという、この極秘製品を巡ってKGBの陰謀が渦巻いていた。警視庁では正体不明のソ連工作員「ミスターM」抹殺をゴルゴに依頼する。ゴルゴは依頼を遂行し、事件は解決したように思えたが「つくば科学万博」を控えたシーザー電子に再び陰謀の影が忍び寄る。 第222話 フラッシュ・バック / 1985年2月 ガービー刑事は、麻薬密売人のマリオから麻薬の供給元がキューバ政府内務省であることを聞き出した。マリオに公聴会での証言を頼むガービーだったが、組織を恐れるマリオは証言を拒否する。仕方なくガービーは、自分がマリオを装って公聴会で証言する。しかし、その為に組織からの報復を受けて、マリオの妻子は殺害される。罪の意識を感じたガービーは、自分が刑事の身であるにも拘らず、マリオの妻子の復讐を、ゴルゴに依頼する。 第223話 偽りの五星紅旗 / 1985年3月 中国への返還を控えた香港の経済を破綻せんと暗躍する男の狙撃を「こちらの手で、確実に」という条件のもとでCIAから引き受けたゴルゴ。だが狙撃現場には同じく男の殺害を目論む中国側の狙撃部隊がすでに展開していた。 第224話 イリーガルの妻 / 1985年4月 アニー・ハモンドの夫、ビル・ハモンドは英国の空軍基地につとめている。しかし、ビルは多忙を理由に、アニーにすげなくなっていた。アニーは、ビルが浮気しているに違いないと考え、私立探偵を雇い、ビルの行動を調べさせる。ビルは実は本名をソミノフといい、その正体はソ連の情報部員であった。このことに気がついた探偵は、ビルに殺されてしまう。正体がばれかかったビルはアニーも殺そうとする。 第225話 ソフホーズ / 1985年5月 クレムリンのナンバー2、ゴルバチョフ党政治局員兼書記は、杜撰な経営報告が続く国営農場(ソフホーズ)の実態について、調査を開始する。これを受けて国営農場と癒着関係にあった党中央書記・セミョーノフらは、過去の悪行が明るみに出る前にゴルバチョフを暗殺するべく、ゴルゴへの接触を試みる。一方、アメリカCIAの世界食糧生産調査部は、ソ連の農業生産の実態を知るため、国営農場内にある閉鎖された水圧塔(バダ・ナポールナヤ・バシニヤ)に盗聴カメラを仕掛ける計画を立ち上げ、実行に移す。だが奇しくもその頃、セミョーノフらはゴルバチョフの国営農場視察に合わせて、暗殺を実行する狙撃手を水圧塔に潜ませようとしていた。 第226話 ファイアー・アフター / 1985年6月 ブラジルの高層ビルで火災が発生、144名の犠牲者を出す大惨事となった。だが死体の中から2名の射殺体が発見され、火災事故は殺人事件へと発展する。そんな中、唯一の生存者とされる女性が病院へ搬送された。彼女曰く、偶然居合わせた東洋人の男性に助けられたのだという。 第227話 血統の掟 / 1985年7月 英国2千ギニー賞レースを始め、デビュー以来負け知らずの強さを見せる牝馬・ギルフィ。名馬ヘロデ号の血を引く彼女は、しかし、純粋なサラブレッドではなく、その4分の1にロシア馬、メディス・トロッター種の血が入っていた。何よりも血統を重んじる英国ジョッキークラブの理事長、ギデオン・デ・グレイは、「雑種」であるギルフィに英国クラシックレースのダービーを奪われることに我慢がならず、彼女の抹殺を決意する。しかし、彼の姪であり、ギルフィの育ての親でもあるシーリアは、これに断固として反対。疾走する馬の手綱をも打ち抜くほどの自身の射撃の腕前を持ってして、命がけでギルフィを護ることを宣言する。 第228話 ハリウッドギャンブル / 1985年8月 ハリウッド映画プロデューサー、スコットは、新作映画のスポンサーだった石油成金王のブリノ・デローニが殺害され、資金繰りに困っていた。仕方なく友人の州知事候補コナリーに相談するのだが、デローニを殺害したのがコナリーだと知ったスコットは、コナリーを脅して金を取ろうとする。しかし、デローニ抹殺をゴルゴに依頼した時点でスコットの動きを読んでいたのは、実はコナリーの方だった。 第229話 スタインベック三世 / 1985年9月 各国要人の健康状態に関する情報を提供する機関、MC130のボスであるスタインベック三世。古城の主でもある彼の暗殺を依頼されたゴルゴはスタインベック三世を銃のスコープに捉える。 第230話 兵士は森に眠る / 1985年9月 ベトナム戦争時に使用された枯葉剤の副作用で、癌を患ってしまった男、ダン。人生に絶望した彼は、浮気をしていた妻をその手にかけてしまう。彼は残りわずかな人生を、娘キャロルのために、ある機関から依頼されたゴルゴ暗殺へ費やすことを決意する。 第231話 見えない翼 / 1985年10月 レーダーに捕捉できないステルス機「F-19」の開発を着々と進めていた米国は、ついに実験機「XST」を完成させた。KGBは腕利きの工作員を使ってこれの奪取を図るものの失敗。ゴルゴは開発チーム「スネークワーク」の主幹の暗殺と、「XST」の奪取もしくは破壊を依頼され、ニューメキシコ州の極秘基地に乗り込む。が、標的の殺害には成功するが不測の事態により「XST」の奪取は不可能になる。基地からの逃走には「XST」を使う他なかった。 第232話 心霊兵器(サイキック・ウェポン) / 1985年12月 冷戦真っただ中の西ドイツのミサイル基地。管制室で、次々と兵士が常軌を失い、東側に照準をあわせている核ミサイルを発射しようとする。CIAの西ドイツ支部は、KGBによる陰謀を疑う。CIAが調査を進めていくと、かつて、超能力者とされていたフリーマンという男が西ドイツのソ連大使館内に居ると判明する。CIAは、KGBがフリーマンを訓練して、超能力で相手を攻撃したり支配したりする、「サイキック・ウェポン」にしたのではないか、とおののく。そして、カーという外部のスナイパーを雇い、フリーマンを狙撃させるが、狙撃の際、カーの体がしびれ、狙撃に失敗する。このため、さらに心霊兵器の信憑性が高まるが、CIAは、今度はゴルゴにフリーマンの狙撃を依頼する。 第233話 弾道 / 1986年1月 ハイウェイで車を運転中の女性がライフルで頭を撃ち抜かれて死亡した。捜査に当たったロス市警のホーガンは女性の夫・ケッタリングに目をつける。ケッタリングは女性と離婚協議でもめていた上、裏社会とも繋がりのある男だったからだが、ケッタリングはあくまで容疑を否定する。知人のギャングの話によると、事件の少し前に現在ロスに超一流スナイパーのゴルゴ13が来ているとの噂をケッタリングに話したという。現場検証から並の狙撃手の犯行ではないと睨んでいたホーガンは、ケッタリングがゴルゴを雇って狙撃を行わせたに違いないと疑う。 第234話 心臓の無い男 / 1986年1月 心臓死をもって法的な死亡を規定しているスウェーデン。ギャングのボス・ベルイマンは一時心臓発作によって死にかけたものの、最新の人工心臓を移植することによって再び蘇った。法的に死亡認定を受けたベルイマンは、法律の適用されない「生ける死者」として無法行為を繰り返し、好き放題に振る舞い始める。このまま放置する訳にはいかないと考えた国家保安警察は、ベルイマンの暗殺をゴルゴに依頼する。ただし依頼には、医学界から反発の無いように、あくまで自然死に見えるようにという困難な条件がついていた。 第235話 ワイルドギース / 1986年2月 世界各国に傭兵部隊を展開する組織を持つホートン大佐は、ラスベガスで開かれるポーカーのワールドシリーズに毎年足を運ぶほどのギャンブル好きだった。賭け仲間から部隊がゴルゴに勝てるか賭けようとけしかけられた大佐は、これを機会にかねてより最大の商売敵として見ていたゴルゴを抹殺することを決意する。内戦の始まったウガンダの軍事政権が傭兵の派遣を頼んでいるのを奇貨として、懇意のCIA局員を介して偽の依頼でゴルゴを呼び出し、傭兵部隊の待ち受けるジャングルへとおびき寄せる。 第236話 KGBの長い腕 / 1986年3月 KGBのニューヨーク支部長であるレオン・ニコラビッチ・マリク。新任参事官に睨みをきかせ、8年前に亡命した事務次官の暗殺計画を推し進め、「KGBの長い腕」が健在であることを示そうと息巻くが、進む米ソのデタント(緊張緩和)状況の中で周囲からは煙たがられていた。クレムリンも彼の強行姿勢を危険視し、人事異動で本国に呼び戻そうと辞令を送るが、マリクは帰国命令を突っぱねる。 第237話 幻の栽培(ダミーのさいばい) / 1986年4月 ★単行本未収録。1986年、イランはイラクと長く戦火を交えていたが、共に決定力を欠いていた。米国がイランに、ソ連がイラクに武器を供給していたが、米ソは阿吽の呼吸で、イランとイラクの双方が無意味に消耗していくシナリオを描いていたのだった。イランの政治的精神的支柱は、ホメイニであったが老いが忍び寄っており、国民を鼓舞できるほどの気力体力は残っていなかった。そこで側近たちは、ホメイニに酷似した年寄りを訓練し、ホメイニの影武者として振舞わせ始める。一方、イラン国民の間では、厭戦感、閉塞感に満ちていた。それを代弁すべく、パスダラン(革命防衛隊)のリーダー、ガラバキは、そうとは知らず影武者のホメイニに、「革命の敵・裏切り者のバニサドル前イラン大統領を血祭りにあげるので、対イラク戦を終結してほしい」、と直訴する。影武者のホメイニはこれを承認しガラバギを焚き付ける。ガラバギはフランスに亡命中のバニサドル暗殺を試みるがバニサドル側に拘束されてしまう。バニサドルはガラバギに、「あのホメイニは影武者だ、ホメイニを利用する奴らにイランを乗っ取られてはならない」と、影武者のホメイニを暗殺するようカウンターテロを教唆する。ガラバギはこの暗示にかかり、影武者のホメイニを暗殺すべく、母国イランを目指す。この展開を快く思わなかったのはCIAで、CIAとしては、イランに、まだまだ消耗戦を続けさせたいと考えていた。そこで、ゴルゴ13を起用し、ガラバギ暗殺を依頼する。ゴルゴ13はあっさり仕事に成功し、イランは果てのない対イラク戦を継続することとなる。 第238話 ナイトメア / 1986年5月 アルゼンチンのブエノスアイレスの歓楽街に、ゴルゴ13が姿を見せ、クレオ、という女を買った。クレオの恋人はアントニオ、といい、アルゼンチン空軍の大尉だったのだが、フォークランド紛争で出撃し、英国の戦艦に体当たりして死んだという。それ以来、クレオは、少し精神が不安定になっていた。一方、CIAはゴルゴ13をマークしていたのだが、ゴルゴ13とやりあう展開になり、殺されてしまう。ゴルゴ13はクレオを連れて、メンドーサという街を目指し、CIAも二人を追う。 なおSPコミックス版では、最初の方がフルカラー、前半部分全部が2色で印刷されている。 第239話 南フロリダ殺人ゲーム / 1986年6月 麻薬密輸ルートの元締めを狙撃するゴルゴ。元締めの用心棒である元FBI捜査官は執拗にゴルゴをマークするが、一見狙撃不可能なポイントから狙撃したゴルゴを追い込むことが出来ない。 第240話 システム・ダウン / 1986年7月 リーズ生命保険の調査部長ヨーコ・マッキンレーは被保険者の不審な死の裏にゴルゴ13が絡んでいることを知る。ヨーコはゴルゴへの連絡方法がラジオで賛美歌13番がリクエストされる、ユナイトホライズン土地開発の株が暴騰、ラスベガスのカジノでジャックポットが出るなどがあることをつきとめその連絡網を断とうとする。 第241話 ダイブ to トリポリ / 1986年8月 1986年、米大統領レーガンは、リビアが世界各国で頻発するテロリズムに関与していると判断し、大規模な空爆を決行した。しかしその後、重大な問題が発生する。空爆時に実戦テストを兼ねて使用された最新型のレーザー誘導方式のASM(空対地ミサイル)4発のうち、1弾が不発となり、リビア軍に回収されてしまったのだ。さらに、この新型ASMの情報がソ連へと流出する懸念も浮上する。潜入による回収、空爆による破壊など、いずれの対応策も不可能と判断したアメリカは、ゴルゴにトリポリへの潜入と、ソ連への輸送前のASMの破壊を依頼する。依頼を受けたゴルゴは作戦の助手・エルザとともに、深夜の闇に紛れてリビアの砂漠へとパラシュート降下(ダイブ)する。 第242話 ドラゴン・バードへの実験 / 1986年9月 アメリカ・CIAが躍起となって追いかける、極左系組織"竜の鳥(ドラゴン・バード)"。首領であるP・S・モズーコを含む6人から成るこのチームは、各国の群衆や学生たちを巧みに扇動、暴動を引き起こして時の政権の転覆を図る、アジテーターのプロであった。そんな時、白人政府と黒人大衆の軋轢に揺れる南アメリカで、彼らの姿が目撃されたとの情報が入った。CIAは、彼らが、7日後に行われるケープタウンでの政府代表と一般大衆との対話集会において、大規模な暴動を引き起こそうとしていると推測し、ゴルゴに彼らの抹殺を依頼する。しかし、当日の会場となる国立競技スタジアムには、何万人という群衆が集まると予想される。 第243話 アイスバーグ・カット / 1986年10月 ムバラク大統領下のエジプト政府は、水不足解消と国力回復のため、アメリカからやってきた元マサチューセッツ工科大学の研究員、ガイ・ハミルトンの持ち込んだプロジェクトに注目する。それは、北極海に浮かぶ巨大氷山にエアコンプレッサーを建造し、それによって生じる泡の推進力とタグボートでの牽引によって、氷山をエジプトまで遥々運搬しようという途方もない計画であった。しかし同時に彼は、この研究を巡る家庭内のトラブルから、妻とその父親を射殺してしまっていた。エジプトの現在以上の国力の増強を望まないアメリカは、ハミルトンの起こした事件に関する捜査からプロジェクトの存在を察知し、これを阻止するべくゴルゴへの依頼を行う。 第244話 アクロバティックス / 1986年11月 アメリカ・ノースカロライナの州知事候補であるリチャード・パインの息子、シオンは、資産家でもある父親の理解もあり、趣味である切手収集に没頭する幸せな日々を送っていた。しかし、対立候補であるマンソン陣営が仕掛けた卑劣な罠によって一家が乗った車を爆破され、シオンは両親と姉を失い、自身も大怪我を負う。その後、マンソンが犯人だと確信したシオンと家政婦のジーナは、彼に復讐するべく殺し屋を雇うことを決意するが、未成年者であるシオンは遺産を自由に使うことが出来ない。途方に暮れかけた二人だったが、父の遺言書の中に記載されたシオンの切手収集への支出に関する内容に注目、殺し屋への報酬を捻出するための奇策を思いつく。 第245話 スワップ 捕虜交換 / 1986年12月 ★単行本未収録。シリアのダマスカスに陣取る、パレスチナの過激派グループの部長、カーリッドのもとへ、女スパイが連行された。その女、サラ・ストームはモサドのトップ・エージェントだ。サラは、西ドイツ連邦情報局いわゆるゲーレンの幹部のシェンクがゴルゴ13と接触する様子が撮影されたマイクロフィルムを持っていた。カーリッドは、サラを、スワップすなわち捕虜交換に用いよう、と考える。捕虜交換の相手は、イスラエルで終身刑となっている女闘士、ガブリエレ・クロッフェ・ティーデマン。ガブリエレは、元バーダー・マインホフグループ(=西ドイツの極左テロ組織、別名ドイツ赤軍)に属する伝説的テロリストだ。同じころ、ダマスカスにゴルゴ13が現れる。カーリッドはゴルゴ13を拘束し、ゴルゴ13に「近日中に、イスラエルとヨルダンの国境を流れるヨルダン川のアレンビー橋で、サラとガブリエレの捕虜交換を行う、そこでサラがイスラエル側に渡り切らない内に射殺してくれ」と要求する。そして捕虜交換の当日を迎える。カーリッドはゴルゴ13に銃と弾丸を一発だけ与える。やがて、ヨルダン側からはサラが、イスラエル側からはガブリエレが釈放され、それぞれ対岸を目指して歩き始める。そして、二人が橋の中央ですれ違うその刹那、ゴルゴ13が発砲。弾丸はまずサラの頭蓋骨を貫通し、さらにガブリエレの頭蓋骨を貫通し、二人は同時に崩れ落ちる。捕虜交換はぶち壊しとなり、ゴルゴ13は逃走する。そして後日談。カーリッドはやっと全貌を把握する。そもそも、ゲーレンのシェンクがゴルゴ13に接触して依頼したのは、ガブリエレの暗殺であった。しかしイスラエルの獄中に居るガブリエレを暗殺するのは困難で、ゴルゴ13はまずサラを密告しカーリッドに逮捕させた。そしてサラとガブリエレの捕虜交換へ、と話は進んでいったのであるが、すべてはガブリエレを獄中からつり出すためのゴルゴ13の筋書き通りだった。 第246話 見えない軍隊 / 1987年1月 ゴルゴは墜落したステルス戦闘機の破片を奪取して米政府に取引を持ちかけている傭兵団から破片の護衛を依頼される。その動きを察知した米側はわざとソ連側に情報をリークし、中米での工作妨害をしているスペツナズ部隊を差し向けさせて相打ちにしようと目論む。 第247話 フィールド・テスト / 1987年2月 マサチューセッツ工科大学のベルナルド・シュルツ教授は、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)製の銃身を持つ、画期的な高性能銃の開発に成功する。しかし、取引相手の武器商人・ロゼリーに、新型銃のフィールドテストをコロンビアで行う旨を告げられると、一瞬の戸惑いを見せる。コロンビアの新大統領に就任したビルヒリオ・バルコは彼の同窓生であり、混乱する内政への助言をするべく国賓として招待されていたのだ。果たせる哉、シュルツがコロンビアを来訪するのと同時期に、労働者解放軍と名乗る組織による暗殺や強奪が頻発する。一連のゲリラ活動の裏に高性能銃の存在を知ったバルコ大統領は、組織の殲滅と高性能銃の破壊、並びに銃の考案者の殺害をゴルゴに依頼する。 第248話 ハリウッド・シンデレラ / 1987年3月 映画会社、ハリウッド・United-Movies(U・M)は、低迷する興行成績を打開するべく、社運を賭けた女性映画、"その後(アフター・ザット)"の製作を決定、その主演女優候補を二人に絞り込んだ。一人は知名度は抜群だが大根女優のオリビア・ロペス。もう一人はかつてアカデミー主演女優賞を獲りながら現在は引退同然の生活を送っているナンシー・N。奇しくも全盛時代、二人は互いを嫌悪し合うライバル同士であった。さらに、U・Mの副社長の一人であるR・カーターはオリビアを、もう一人の副社長R・スタンバーグはナンシーをそれぞれ推しており、この対決の勝者が次期社長の座を獲得すると目されていた。カーターは自らの愛人でもあるオリビアを主役にし、社長の椅子を我が物とするべく、ゴルゴにナンシーの殺害を依頼する。 第249話 ルート95 / 1987年4月 アメリカ・ネバダ州の平原を縦断する国道95号線。その道路沿いに建つモーテルの主人が夜間、何者かに殺された。モーテルにいたのは主人の娘・ソフィアと従業員のエンリコ、主人の知り合いの男性と女性宿泊客、そして同じく宿泊していたゴルゴであった。強盗による犯行と思われたが、葬儀の最中、女性客は主人の正体が、七年前に引退した大物マフィア、"ビッグ・ドン"ことドン・バローネだと確信する。彼女は記者であり、"ビッグ・ドン"に取材をしようとしていたのだ。その時、ソフィアと兄妹同然に育ったという男、ジョーが現れる。 第250話 バトル オブ サンズ / 1987年4月 イラクは特殊部隊を使いイランのペルシャ港に停泊中の外国タンカーを爆破し、港湾を封鎖しようと目論む。イランはイラク特殊部隊とその教官である元SEALのニール・レッドマンの暗殺を依頼するがその情報はイラク側に漏れていた。 第251話 ワッピング要塞 / 1987年6月 イギリスの著名新聞四紙を発行しているNI(ニューズインフォメーショナル社)。その政治・王室関連のスクープ記事の内容に疑問を抱いたロイター通信社の局長は、敏腕記者マーチン・ジェラルドに調査を行うよう指示する。果たして、NI社主のバレード・アーウィックと保守党副幹事長のハワード・フィールディング、王室に近いアサートン伯爵との間に、癒着関係があることが発覚した。折しもNIが印刷関係の労働組合によるストライキに揺れていたことから、マーチンは局長の指示の元、委員長のオドーネルに接触し、組合の手でこの事実を世間に公表するよう持ちかける。一方、関係が発覚したことを知ったアーウィックは、オドーネルを始末するべくゴルゴとの接触を図る。 第252話 レバノンの焦躁 / 1987年7月 アラブ過激派組織による外国人誘拐が頻発するレバノン。ある日、ベイルートのアメリカン大学に勤めるフランク・ハリソン教授とその妻リンが、アラブ聖戦革命細胞と称するグループに誘拐される。その情報を受け、アメリカ・上院テロ対策特別委員会のジョージ・エドモントン議員は、人質救出と犯人グループ殲滅のために狙撃手を雇うことを決意する。彼と人質のリンは不倫関係にあったのだ。しかし人質を無傷で救出するためには、身を隠す場所もない砂漠の真ん中で、遠距離から二人の犯人を同時に狙撃しなければならない。これを知った狙撃手は、自ら計画を下りてしまう。そんな仕事を緊張もなしに出来る奴は人間じゃなく、"機械(マシーン)"だという言葉を残して。 第253話 大学教授の私生活 / 1987年8月 ハーバード大学で教鞭を執る傍らフリーランスの狙撃屋でもあるゴールドマンは、武器商人ロゼリーからゴルゴの殺害を依頼される。ゴールドマンは暗闇の中ゴルゴを一発で仕留めようとするが、偶然ゴルゴがライターでタバコに火を点けたため、目がくらんでしまい狙撃に失敗する。ゴルゴは暗視野スコープを搭載した新型銃の存在を嗅ぎつけ、ロゼリーに接触を図る。 第254話 二十年目の毒 / 1987年8月 オーストラリアの名士、ウエスト・パーカーは、元アメリカの脱走兵だった。ベトナム戦争当時の極秘マイクロフィルムを隠し持つパーカーと、そのフィルムの消去を依頼させるゴルゴ。 第255話 サンタ・アナ / 1987年9月 インターポール(国際刑事警察機構)は、増加の一途をたどるテロに対処するため、テロリストを雇って別のテロリストを倒させる"相殺作戦"を開始した。その軸として選ばれたのが、ヨーロッパを中心に活動を行う、通称"血まみれブリギッダ"。昔の仲間であった別の女テロリストを難なく始末した彼女の仕事ぶりを確認したインターポールは、次の標的としてゴルゴ13を指名する。依頼人からその旨を告げられたブリギッダは、自分の思い通りにやるという条件のもと、その仕事を引き受ける。 第256話 楽園の汚染 / 1987年10月 カリブ海に浮かぶセント・トーマス島。楽園のような南国リゾート地の裏側では、西インド諸島から集めてこられた貧困家庭の年若い少女達が無理矢理売春を強いらるという悲惨な現実があった。事態を重く見た国連人権擁護委員会は、売春組織の首領フランク・ボネの暗殺をゴルゴに依頼する。島一番の高級娼館を訪れたゴルゴは、ボネの娘であるアンジェラに目をつけられ誘惑される。サディストの気のあるアンジェラは、ゴルゴを支配して快感を得ようとする。 第257話 隠されたメッセージ / 1987年11月 イスラエル軍強硬派と通じている米政府高官は軍事協定に『ある細工』を施して『合法的』にイスラエルへ新型核ミサイルを供与し、中東に核戦争を起こそうと図る。だが、傘下にある極右組織との交信時にミスを犯した事でその緻密な計画の歯車が狂いだす。 第258話 ロシア・クライシス / 1987年12月 米国に国家機密を流した角で本国に強制送還されたKGB局員キリール。本来なら処刑されるところだったが、KGB局長は罪を免除する代わりに現政権に批判的な秘密組織「十月(オクチャーブリ)」の内情を探ることを持ちかけられる。キリールに選択肢はなく、言われるままに「十月」に潜入して内偵を始めるが、やがて自身を使い捨てにしようとしているKGBの意図に気づく。半ば自暴自棄になったキリールは、現政権に不満を持つアフガン戦線の軍隊と結託しクーデターを起こそうと決意する。 第259話 ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物) / 1988年1月 西側亡命を希望する者が、KGBの暗殺者によって次々に射殺された。ゴルゴは偽情報を流して娼婦のダイアナが暗殺者であることを確認し、ロンドンのヒースロー空港で射殺する。 第260話 ラスト・ゴーギャン / 1988年2月 ゴーギャンの最後の作品といわれる「後ろ向きにすわるマルケサスの女」が、投機目的で芸術品を買い漁っている日本人資産家の雑賀の手に渡ってしまった。絵のモデルの孫・ゴーグは、暗黒市場で売買されたその絵が表に出て行くことを頑なに嫌った。画商ホーナー・ロレンソを通じて、「後ろ向きにすわるマルケサスの女」を消し去ることを依頼されたゴルゴは、別枠での雑賀暗殺依頼と合わせる形で特殊弾で雑賀の胸を撃ち抜き、絵に数多くの穴を空けるとともに、雑賀の血と肉片で絵を修復不能にする。 第261話 西経一七五度 / 1988年3月 政変により英連邦を離脱し共和制に移行したフィジー。フィジーにある南太平洋大学は周辺諸国と先進国の援助で運営されていたが、その設立趣旨書には「設立二十年の時点でフィジーの国体が変わった場合には大学はフィジーに帰属する」と定められていた。ソ連の侵攻を想定したものだったが、副理事長のカセンガドはこれを利用して邪魔者を追い出し、大学をフィジーの国立大学に変えようとする。ゴルゴは設立二十年の期日までにカセンガドの暗殺を依頼されるが、フィジーに乗り込んだ後も何故かこれといった行動を起こさなかった。そして、依頼人の心配をよそに期限が過ぎてしまう。 第262話 すべて人民のもの(ВСЁ НАРОДУ) / 1988年4月 スイスのプライベートバンク・ヒューラー商会にシュヴァイツェルと名乗る一人のロシア人が現れた。シュヴァイツェルは自らをニコライ二世の孫だと主張し、かつてロシア革命間際にヒューラーに預けられた旧ロマノフ王家の隠し財産の全額引き渡しを要求する。相続にはソ連政府の承認があり、アメリカの国家予算に匹敵する莫大なその遺産がソ連に渡れば、東西の富のバランスが逆転してしまう。相続人を証明するメダルはシュヴァイツェルの持ち物の他にもう一枚存在し、ヒューラーからもう一枚のメダルの所有者を捜すよう頼まれたフリーの調査員・フェイスは、CIAの協力も得て調査を行うが、やがてその調査が進むうちに、歴史の闇に埋もれた第五皇女「ドーラ」と、その息子である日系ロシア人「グレゴリー・皇士・東郷=ロマノフ」の存在を知ることになる。 第263話 悪魔の島影 / 1988年5月 ゴルゴはPAC(パン・アフリカニスト会議)から組織の裏切り者であるロニ・オバンゴの殺害依頼を受けた。ゴルゴは監獄島・ロベン島刑務所に容疑者として収監される形で潜入に成功し、オバンゴを誘き出すためにある行動に出る。 第264話 シビリアン・コントロール / 1988年6月 フランスの情報部には内務省系DST(国土保安局)と国防省系DGSE(対外治安総局)の2つがあり、互いに足の引っ張り合いをしており国益にならないと嘆くSDECE(元の情報部)の産みの親は、DGSE局長アンリ・ユステールとDST局長ジョルジュ・ドランの狙撃をゴルゴに依頼する。 第265話 スーパー・スターの共演 / 1988年7月 ブロードウェイ興行会社副会長ボブ・スティグナーは、会長テッド・コーナンの狙撃をレデル・ニコラヴィッチに依頼する。それを知ったテッドの「自分が死ぬはずの時間にボブが死ぬ」を条件のボブ狙撃依頼を受けたゴルゴは、ニコラヴィッチのトリガーに当てた指を狙撃して成功させる。 第266話 バチカン・セット / 1988年8月 ★単行本未収録。司祭だったニーノは、バチカンの資金の運用を試みたが、投資先が破綻し、詰め腹を切らされバチカンを放逐される。ITに長けたニーノは、スイスのプライベートバンクのセキュリティを破り、正体不明の匿名預金口座にログインし、ここから自分の口座に20万ドルを不正に送金指示、そしてこの20万ドルを手土産にバチカンに復職することに成功する。この破られた口座は、実はゴルゴ13の秘密口座であった。銀行の首脳は抜かれた20万ドルをゴルゴ13の口座に補填し、また、ゴルゴ13も銀行の責任を追及することはしなかった。一方、銀行の経営陣は20万ドルを略奪したニーノをこのままですませるわけにはない。次期頭取候補の一人、トーマスは、ゴルゴ13と接触、ローマ法王のスピーチの最中にニーノを殺害してほしいと依頼する。そしてその当日。ゴルゴ13に先行して、別のテロリストがローマ法王に向けて発砲するが、その射線をニーノがさえぎり、結果的に法王をかばって名誉ある死に至ってしまう。これで騒動は幕引きか、と思われたが、ゴルゴ13は結局トーマスを暗殺する。トーマスが、ゴルゴ13の匿名口座に関する情報を故意に外部に漏らしていたことが、ゴルゴ13のルールに触れたためであった。 この題材は、2007年10月にリリースされた、「第475話 聖なる銀行」でも扱われている。「聖なる銀行」が収録されている別冊ゴルゴNo.175の292ページに詳細な解説がある。 第267話 殺人呪法マクンバ / 1988年9月 ブラジル空軍の戦闘機が演習中に謎の墜落事故を起こす。事故死したパイロットは世界二大黒人宗教の一つマクンバの信者の女性とトラブルを起こしており、空軍内部では「マクンバの呪いだ」との噂とともに動揺が広まっていた。事故の原因を探っていた新聞記者ナンシー・ハートは、噂に手を焼いた軍がマクンバの頭目バート・ソロモンの暗殺をゴルゴに依頼したことを知る。 第268話 ロンサム・ジョージ / 1988年10月 現在ガラパゴス諸島のピンタゾウガメは、ロンサム・ジョージただ一匹しか生息していない。そんな中、イギリス貴族のサー・ウィントン・ロスがメスのピンタ・ゾウガメを発見した者に莫大な賞金を進呈すると宣言し、ついにメスのカメが一匹捕獲された。折しもモスクワではキューバから招いた天才生物学者に西側への亡命する節があり、カメの実地での研究を口実に亡命されてはかなわないとKGBはメスのカメ殺害の刺客を送る。が、これを察知したロスの方でもそれを阻止しようとゴルゴにコンタクトをとっていた。 第269話 熱砂の彼方に / 1988年11月 FAO(国連食糧農業機構)特別委員会の調査で、サハラ砂漠南部8か国の食糧飢饉が天災によるものではなく人為的なものであることが判明した。元凶の一つがフランス系多国籍穀物メジャーによる買い占めの陰で私腹を肥やすシンジケート「ユニオン・アフリカーヌ」の存在であり、ゴルゴは組織のゴッド・ファーザーとされるジョルジュ・レ・バンの排除をFAOから依頼される。レ・バンが潜伏しているマリ共和国を訪れたゴルゴは、レ・バン一味に保安官だった父親を殺された少年とともに隠れ家のあるトゥアレグ村へと向かう。 第270話 禿鷲伝説 / 1988年12月 ペレストロイカの一環によるグラスノスチにより、KGBが過去に行ったゴルゴへの殺人依頼が表沙汰になることを恐れ、ゴルゴを始末することを計画する。元KGB特別局の暗殺者イワン・マルコビッチ・コズロフは退職して悠々自適の生活を送っていたが、KGB本部より密命を受け、ゴルゴの過去を探ることになる。コズロフはその過程で「東堂高志」という日本人の存在を知り、その経歴から「ゴルゴ=東堂高志」なのではないかという疑念を抱くようになる。一方でゴルゴは保守党の重鎮である黒井信介よりコズロフ殺害の依頼を受けていた。 第271話 14Kの謎 / 1989年2月 香港を拠点とするアジア最大の地下組織「14K」。外交官であり中国中央調査部の趙慎行は、調査を進めるにつれて、14Kと日本の大企業・江川不動産、そして「妖怪」の異名を持つ保守党の最長老、黒井信介との間に密接なつながりがあることを掴む。黒井は日中戦争の初期、中国の二大秘密結社の一つであるチンパンの首領、杜月笙の上海脱出を助けた縁から、14Kの上部組織である三合会とも深い関係を持っていたのだ。やがて黒井は香港返還に備えて不動産を処分するべく香港へ飛び、有限公司の社長・陳秀清に連絡を取る。この陳こそが14Kの首領であることを知った趙は、彼を暗殺するべくゴルゴにコンタクトを依頼する。 第272話 モスクワ・プラトーン / 1989年3月 アフガン帰還兵イワンの母アンナは、ソ連にとって不利な情報を持って西側亡命を望んでいる。KGBはこれを阻止しようとゴルゴに依頼し、「彼女の水を手に入れてくれ。5ccでいい。」というゴルゴの希望に応える。 第273話 白いサーカス / 1989年4月 オーストリアのキッツビューエル開催のアルペンスキー滑降で優勝が期待される選手レイ・ファーマン。レイの締め具を何者かがヘリコプターから狙撃するという情報を得たサービスマンのラリー・オーツは、その狙撃の阻止をゴルゴに依頼する。 第274話 北の暗殺教官 / 1989年5月 フィリピンの共産ゲリラABB(アレックス・ボンカヤオ旅団)は、バギオ市の北方約120kmの山岳地帯にある養鶏場に見せかけた射撃訓練場に、ソ連の暗殺教官イゴール・ギメルシュとソフィア・ノバコフを招いていた。国軍情報部の依頼を受け、ゴルゴはアーチェリーで仕留める。 第275話 ザ・イルカ / 1989年6月 アメリカ海軍の海洋動物研究所の所長ドクター・ドルフは、軍事用に育てたイルカを使って報酬目当てのテロを繰り返していた。海軍特殊戦略部門の委託を受けて研究していたにもかかわらず、暴走したのである。海軍はドクターの殺害を試み、要塞さながらの堅個な守りに守られている島に特殊部隊を送るが武装したイルカにはまったく歯が立たなかった。弱り果てた果てにゴルゴにドクターの殺害を依頼する。 第276話 偽りの報道番組(ドキュメンタリー) / 1989年7月 アメリカでは麻薬が蔓延し、大きな社会問題となっていた。テレビプロデューサー・サイモンは南米麻薬密輸ルート解明をテーマとしたドキュメンタリー番組を制作し、コロンビア政府に取材を申し入れる。しかしコロンビア政府関係者は麻薬王・サントスについて言葉を濁し、テレビ局に圧力をかけ、番組制作を中止に追い込んだ。サイモンは単身で乗り込むが、サントス側に捕われてしまう。一方でサントスはやらせ番組を作ることで有名なテレビプロデューサー・バターソンと結託し、ニセの引退宣言を含むドキュメンタリー番組を作ることを画策していた。CIAはサントスの逮捕を試みるがことごとく失敗したため、CIA長官自らゴルゴにサントスの殺害を依頼する。 第277話 200年の輪廻 / 1989年8月 革命200年祭を間近に控えたフランス・ナポレオン広場から、当時の女流作家・スタール夫人の日記が発見される。ルーブル美術館主席理事のベルナール・エルデューらが修復を行った結果、驚くべき記述が見つかった。ルイ十六世の死刑決議の際、彼のいとこに当たるオルレアン公が賛成にまわったのは、賛成派の工作によって大金で買収されたためだというのだ。しかし、この記述の裏付けとなるメモが記されたオルレアン公の肖像画は、第二次大戦時、ヒトラー率いるドイツ軍に回収されて以後、行方知れずになっていた。一方、側近が起こしたインサイダー取引、”ペシネー事件”によるスキャンダルに揺れていたミッテラン大統領にも、この日記に関する情報が伝わる。記述が公開されることで政治と金にまつわる政権批判が起きることを懸念した彼は、対策を講じるよう部下に厳命する。 第278話 イタリアン・コネクション / 1989年10月 新進デザイナーとして世に認められ始めていたコルドーニはイタリア社会特有の「縁故主義」により政財界に顔のきくチェザーレを後ろ盾にして世に出たものの、現在では彼との縁を切りたがっていた。チェザーレはマフィアの幹部であり、コルドーニの服に麻薬を仕込んで密売に使っていたのである。そんな中、チェザーレの部下が東京で麻薬密売の現行犯で逮捕される。極秘にチェザーレを内偵していたDEA(米合衆国麻薬取締局)局員が情報を流したためであったが、コルドーニが秘密を漏らしたと疑ったチェザーレはコルドーニを制裁する。コルドーニの死に責任を感じたDEA局員は、ゴルゴにチェザーレの暗殺と麻薬密売ルートを公のものにすることを依頼する。 第279話 レバント・トライアングル / 1989年11月 レバノン沖東地中海で多発する貨物船行方不明事件は、国際犯罪組織による保険金目当ての偽装失踪事件であることが判明した。ロイズ保険組合の引受人として多額の保険金を詐取されたランドール卿は、組織のボス・クレシスの殺害をゴルゴに依頼する。クレシスには心理学者という変わり種の愛人・マリアがおり、マリアは日本のビジネスマンに変装して邸に来たゴルゴに催眠術をかけて正体を暴こうとする。が、変装を完璧に期すために家族写真の用意はおろか、深層心理に自己催眠までかけていたゴルゴの方が役者は上だった。 第280話 黄色い害虫 / 1989年12月 台湾から世界へ流れる模造品に頭を悩ませていた米コンピューター企業。模造品のルートを調べさせていたが、ところが調査のうちに模造品売買に関与する台湾の闇組織「竹連幇」にKGBが接触していることが判明する。ソ連が自由に手に入れられない半導体を竹連幇を通じて購入していることを知ったCIAは、ゴルゴに竹連幇の頭目の暗殺を依頼する。 第281話 ロメオたちの西側 / 1990年1月 西ドイツの首都ボンでは、俗に言うハニートラップ要員、東ドイツの色仕掛け専門の諜報員「ロメオ」達が暗躍し、政府機関に勤める女性から情報を引き出す事件が続発して防諜上の深刻な問題になっていた。そしてついに、ゲンシャー外相の個人秘書の1人であるヒルダまでもが、MFS(東ドイツ国家保安省)のトップ・エージェントでもある「ロメオ」の1人ペーターに籠絡されてしまう。ゲーレン機関に在籍したこともあるヒルダの父カール・フォン・エールリッヒは、 祖国と愛娘を救うためにゴルゴにペーターの暗殺を依頼する。 第282話 プログラム・トレーダー / 1990年2月 顧客のインサイダー取引の発覚によって連座して罪を負うことになったエクセル・バートン証券。プログラマーのハミルトンは、多額の罰金を背負わされた上、会社をクビになってしまった。復讐心に燃えるハミルトンは、自身が作ったコンピューターウィルスをばらまいて世界の株式市場に途方もない大混乱を起こそうと企む。インサイダー事件の捜査に当たったSEC(米証券取引委員会)前委員長のシャークはハミルトンの企みを察知し、ゴルゴにハミルトンの暗殺を依頼する。 第283話 未来への遺産 / 1990年3月 大企業家・シドニーは癌に冒され、死期が迫っていた。シドニーは、友人のケインズに、将来の蘇生のために自身の死体を冷凍保存するように依頼し、同時に7億5千万ドルという莫大な資産をケインズに預け、将来の蘇生後に受け取ることを遺言に記す。シドニーの甥・マシューズは、ケインズの営む遺体冷凍保存ビジネスに疑問を抱き、ゴルゴにシドニーの遺体冷凍処理を阻止するよう依頼する。シドニーの遺体を運搬する小型飛行機に、ゴルゴの搭乗する戦闘機が迫る。 第284話 餓狼おどる海 / 1990年4月 1975年以降の東南アジア三国の政情不安により、南シナ海では国外脱出するボートピープルが大量に発生。直後より彼らを狙う海賊も出現し、武器を持たない難民達に襲いかかって無法の限りを尽くしていた。近年ではその凶悪さに一層拍車がかかり、事態を重く見たUNCHRはゴルゴに海賊の殲滅を依頼する。海賊退治のためにゴルゴが特別調達したのは、かつて旧日本軍で使われていた人間魚雷・「回天」だった。超小型潜水艦ともいえる「回天」に乗り込み、ゴルゴは波間に紛れて海賊達を強襲する。 第285話 ファイル消失 / 1990年5月 南米某国に新設されたカトリック系の病院。しかしこの建設に充てられた寄付金は、麻薬密輸組織のボス・ネルビとバジーレ市長が、組織の汚れたカネを洗浄するために支出したものであった。調査資料を入手したバチカンは、世間からの批判を覚悟の上で事実を公表することを決定する。これに対して麻薬組織側は、国連の公文書管理部に協力者を潜り込ませ、かつてバチカンの司教がナチスのヨーロッパ脱出に協力したことを証明する資料(ファイル)を盗み出し、組織に関する調査資料と交換するよう恫喝する。バチカンの行政主席であり、事件の中で兄・バッキス神父を殺されたドン・フェリーチ侯爵は、組織との交渉に先立ち、ゴルゴ13に接触する。 第286話 東欧の激動・六日間革命 / 1990年6月 永くルーマニアを支配し続けたチャウシェスク独裁政権に亀裂が入り始めた。大統領が自身の影武者を残して亡命し、秘密警察の将軍・ベリンデに影武者を操らせる事で体制維持を図る計画を進めている情報をつかんだ抵抗組織は、ゴルゴに影武者の暗殺を依頼する。ところが政情が急転し、ルーマニア全土にいよいよ革命の嵐が吹き始める。ゴルゴはベリンデ将軍の元に影武者が現れるはずと踏むが、その矢先に大統領夫妻が反乱軍に逮捕される。 第287話 神の領域 / 1990年7月 心臓移植手術の権威であるテキサス心臓研究所で、とある患者に手術が行われようとしていた。患者はアメリカ国籍を持ってはいるがKGBの重要なスリーパーであり、KGBは水面下で様々な根回しをしてこの手術の実現にこぎ着けさせたのだった。対立するCIAは、執刀医のマシューズに手術を故意に失敗させるよう脅迫する。マシューズは言われた通りに手術ミスで患者を死なせたものの、良心の呵責で悩み抜く。悩み果てた末に、マシューズは懺悔を聞いてもらおうと教会に足を運ぶ。 第288話 ドイツはひとつ / 1990年8月 欧州議会議員に当選したベルギー外相のグールトは、自国が抱える民族問題の解消のためにもEC統合に邁進しようと考えていた。ところが、その矢先にベルリンの壁が崩壊。ドイツの統一によりEC統合への動きが挫かれることを恐れたグールトは、西ドイツ実業界の最有力者で急進右派の雄・ベルマンの暗殺をゴルゴに依頼する。ゴルゴの腕を見込んでの依頼だったが、同時に将来EC統合の障害にも成り得る彼の排除もグールトは画策していた。 第289話 ヨルダン川西岸 / 1990年9月 ヨルダン川西岸・パレスチナ自治区。イスラム原理主義組織構成員のアーデルは、治安諜報組織シャバクのスパイであり、アーデルの裏切りにより原理主義組織幹部のイーグルを含めメンバー数名が拘束されてしまう。イーグルの口から組織の情報が漏れる事を恐れた組織は口封じのために、イーグルの殺害をゴルゴに依頼する。 第290話 6月3日の死 / 1990年10月 1990年6月3日、インドのダラムサラでチベット亡命政府の構成員が射殺された。報告者が泡を食って亡命政府の幹部ドルジェ・ギャッツォに報告するも、ギャッツォはさほど動じた色は見せなかった。それもそのはず、彼はこのことを一年前から予期していたのだった。ギャッツォは一年前の今日--1989年の6月3日、すなわち中国天安門事件の日に思いを馳せる。 第291話 人工知能AIの誤算 / 1990年11月 1990年8月、イラク軍が電撃的にクウェートに侵攻した。イラク軍の侵攻が国防総省の戦略コンピューター「AI」が弾き出した予測と異様なほど酷似していたことを訝しんだアメリカ政府は、「AI」のプログラムがイラクに渡っており今般の侵略行動がすべて「AI」によって想定されていたことを知る。図らずも二つの「AI」同士が対決することになった状況で、アメリカ側の「AI」が出した解決策は25時間以内のイラク側の「AI」の破壊であり、それを実現可能な人物としてゴルゴの名前を挙げた。しかしアメリカがゴルゴを潜入させることは、当然イラクの「AI」も想定するに違いないことであった。 第292話 顔のない逃亡者 / 1990年12月 米国の麻薬王の金庫番・ジョニーが組織の金を抱えて行方をくらました。ジョニーはすでに整形手術で顔を変えてしまい、現在は南ノルウェーに潜伏しているという。わかっていることといえば「スミス」という偽名を名乗っていることぐらいである。 第293話 日・米コメ戦争 虎の尾を踏んだ男たち / 1991年1月 日本からパプア・ニューギニアへ巨額のODAが決定するが、壮大な開発計画の裏で両国の政財界の利権の温床となり、ODAの意義からは遠くかけ離れていた。パプア・ニューギニアで伝統的な米作りを教える藤岡と浜林の2人はODAに反対し、開発大臣ベルガー及びベルガーと癒着したビジネスマンの阿部と対立する。一方でアメリカは日本がコメ市場を一向に開放しない上、発展途上国の農業に対して大規模な援助を行うという有様にもどかしくなり、全米精米業者協会理事長はゴルゴにベルガー殺害を依頼する。 第294話 マンモスの牙 / 1991年2月 経済崩壊による混乱が続くソ連。資本の獲得のため、ソ連の"北方石英貴石公団"とカナダ財界の合弁企業は、国内で発掘されるマンモスの牙と全身骨格に目を付け、これを商品として取り扱う計画を進めていた。しかし、資金不足に悩む"科学アカデミー"と、その後ろ盾となるKGBが動き出し、貴石公団の発掘作業の妨害と"獲物"の横取りを狙っていた。カナダ財界からの依頼を受けたゴルゴは、妨害計画の中心人物であるKGB・チェルネイフスキイの狙撃を行うべく、発掘隊に潜入する。 第295話 アンコールの微笑 / 1991年3月 カンボジアのアンコール・ワットでは盗掘が相次ぎ、貴重な遺跡に深刻な被害が出ていた。やがて遺跡の保護に当たっていた保護活動家達にまで被害が出始め、事態を重く見たユネスコは非常手段としてゴルゴに盗掘団のスポンサーである香港の貿易商チョウ・イースーの暗殺を依頼することを決断する。保護活動のリーダー・モーア教授は、親友の活動家が殺された怒りから自身がゴルゴへの報酬を負担すると申し出る。また窃盗団に高度な知識を持ったブレーンがついていることが窺えることから、博士は「学問の冒涜者」であるその人物も同時に暗殺するべきだとも考える。だがその盗掘団のブレーンとは、遺跡の保護に対する見解の違いから確執を抱えている彼の息子のジャレットであった。 第296話 F1サーカス / 1991年4月 1990年F1鈴鹿グランプリ。チームサワダ・フィリップスは初優勝まであと一歩まで迫っていた。しかし、親会社サワダ自動車の社長は、その優勝が白人たちの反感を買い、サワダバッシングを引き起こすことを恐れていた。そして、ゴルゴが鈴鹿に現れる。 第297話 Kデー・カウントダウン / 1991年5月 クウェート侵攻によって緊迫化するイラク情勢。事態の緊張は米国主導による多国籍軍の武力攻撃も辞さずというところまで高まっていたが、何故かフセイン大統領は強気な姿勢を崩そうとせず、挑発的な言動を改めようとしなかった。単に情勢を見誤っているのかと思いきや、CIAの調査で驚くべき事実が発覚した。フセインの奇妙な自信の裏側には、石油を分解する微生物を使って主要国の石油プラントを襲撃しようという大胆なテロ計画が存在したのだった。 第298話 情報漏洩源(ディープ・スロート) / 1991年6月 「ディープ・スロート」とは、活動先の組織において要職に就き、重要情報を漏洩させるスパイを意味する。BND(西ドイツ情報局)は、シュタージ(東ドイツ保安局)が送り込んだディープ・スロートによるものと推測される情報漏洩に悩まされていた。そんな中、ベルリンの壁が崩壊しドイツ統一が現実見をおびてくる。東ドイツでシュタージ解体論が持ち上がる状況下、KGBがシュタージのスパイの取り込みに動き出し始め、西ドイツ首相はBND内のディープ・スロートの特定と暗殺をゴルゴに依頼する。 第299話 東亜共同体 / 1991年7月 外務省局長の長倉は、日本と民主化された中国・新生ソ連とが連携してアジアに「東亜共同体」という巨大経済ブロックを作る構想を持っていた。長倉が中ソ役人との接触を始めたことを知ったCIA職員のピーターは、米国の経済的孤立を懸念して共同体構想の阻止を訴えるが、なぜか上層部は悠長な返事しかしない。業を煮やしたピーターは個人でゴルゴに長倉の抹殺を依頼し、ゴルゴは趣味のクレー射撃の事故に見せかけて長倉を殺害する。長倉の死で、「東亜共同体」構想は頓挫したかに見えた。 第300話 最後の戦場 / 1991年8月 タンザニアのシャニンガ高原で南ア航空のDC-9が墜落した。ただ一人の生存者となったゴルゴの命をアメリカ軍デルタを執拗に狙うが、ゴルゴは負傷した身でありながら特殊部隊を翻弄し続けた。一方でアメリカ政府がソ連に打診し、ソ連軍スペツナズ)が派遣されることが決定してしまった。これにより米ソ両国の特殊部隊による共同戦線が生まれる。逃げ込んだ洞窟の暗闇の中で、東西の精鋭を翻弄し続けたゴルゴは最終的に緊急避難用の脱出ルートで無事脱出に成功する。
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