横取り
横取り
★1a.AとBが貴重な品を巡って争い、通りかかったCがその品を横取りする。
『イソップ寓話集』(岩波文庫版)147「ライオンと熊」 ライオンと熊が、鹿の仔をめぐって争い、互いに傷つき横たわる。そこへ狐が通りかかり、仔鹿を取って立ち去る。
『茶壺』(狂言) 酔って寝た男の茶壺を、すっぱが奪おうとし、目をさました男と「これは私の物」「いや、みどもの物」と争いになる。通りかかった目代が「論ずるものは中から取れ」と言い、茶壷を横取りして逃げる。
*→〔三つの宝〕6の『百喩経』「毘舎闍鬼(びしゃじゃき)の喩」。
★1b.A・B・Cが貴重な品を巡って争い、通りかかったDがその品を横取りする。
『千一夜物語』「バイバルス王と警察隊長たちの物語」中の挿話・マルドリュス版第949夜 空飛ぶじゅうたんをめぐって争う3人の男を見た少年は、みずから審判官をかって出る。3人を遠ざけておいてから少年はじゅうたんに乗って逃げる。
★1c.AとBが金を巡って争い、通りかかったCがその金を預かる。
『三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)』(河竹黙阿弥)「大川端庚申塚」 春の節分の夜。大川端で、お嬢吉三とお坊吉三が百両の金を奪いあい、刀を抜いて切り結ぶ。そこへ和尚吉三が仲裁に入る。盗みをしても非道はしないことで名高い和尚吉三に敬意を表し、お嬢吉三とお坊吉三は百両を和尚吉三に預ける。3人はその場で義兄弟の契りを結ぶ。
★1d.AとBが争い、通りかかったCがAとBを獲物として得る。
漁父の利の故事(『戦国策』第30「燕(2)」469) ドブガイ(あるいはカラスガイ・ハマグリ)が肉を出して、日にさらしていた。シギ(あるいはカワセミ)がその肉をついばんだので、ドブガイは貝を合わせてシギのくちばしをはさんだ。両者が争っているところへ漁父が来て、両方とも捕えた。
*AとBが争って死に、通りかかったCも死ぬ→〔相打ち〕3の『パンチャタントラ』第2巻第3話。
★1e.AとBが争い、通りかかったCが争いをやめさせて、A・B双方の命を救う。「漁父の利」とは異なる展開。
『日本書紀』巻19欽明天皇即位前紀 2頭の狼が山で戦い、血だらけになっていた。秦大津父(はたのおほつち)という人が通りかかり、「あなた方は貴い神で、荒々しいわざを好みます。猟師に遭ったら捕らえられてしまうでしょう」と言い、2頭の噛み合いをやめさせた。そして血で汚れた毛を拭い洗って放してやり、2頭の命を助けた。この報いであろうか、後に彼は欽明天皇に召され、重んぜられた。
『椿説弓張月』前篇巻之1第2回 鎮西八郎為朝が道に迷って山奥へ踏み込むと、狼の子2頭が鹿の肉を得ようと、血まみれで噛み合い争っていた。為朝は、「汝らは勇(たけ)き神である。食は別の所でも得られるが、命は失ったら取り返しがつかない」と教え、弓を挿し入れて2頭を引き分ける。仲直りした2頭は、為朝の先にたって歩み、麓まで導く。為朝は2頭を「山雄」「野風」と名づけ、飼い犬のごとくにした→〔誤解による殺害〕1。
『唄をうたう骨』(グリム)KHM28 「猪を退治した者に王女を与える」との布告に応じて、高慢な兄と無邪気な弟の2人兄弟が出かける。小人が、弟の善良な心を認めて槍を与え、弟はその槍で猪の心臓を突き刺す。しかし兄が悪心を起こし、弟を殺して手柄を横取りし、王女を得る。
『ペンタメローネ』(バジーレ)「序話」 王女ゾーザが、壺いっぱいに涙をためて王子タッデオを蘇生させようとするが、あと少しのところで眠りこむ。奴隷女が壺を横取りして、自分の涙を加える。たちまちタッデオは棺から起き上がり、奴隷女を花嫁にする→〔涙〕2a。
『魔笛』(モーツァルト) 王子タミーノが大蛇に追われ、気を失って倒れる。夜の女王に仕える3人の侍女が、大蛇を退治する。王子が意識を回復したところへ、鳥刺しパパゲーノがやって来るので、王子は、パパゲーノが大蛇を退治したと思って、礼を言う。パパゲーノも自分の手柄にして自慢する。侍女たちは戻って来て、パパゲーノの嘘をとがめ、罰として彼の口に錠前をはめる。
『ルスランとリュドミラ』(プーシキン)第5~6歌 ルスランは魔法使いチェルノモールを倒し、リュドミラを彼女の父ウラジーミル大公が待つ御殿へ連れ帰る(*→〔誘拐〕5)途中、丘のふもとで眠る。リュドミラを得たいと思うファルラーフが、ルスランを刀で3度刺し、御殿へ行って、「私が森の精と戦い、リュドミラを取り戻しました」と嘘の報告をする。洞窟の老人が(*→〔老婆〕3c)、死の水と生の水を注いで、ルスランを生き返らせる。ルスランは御殿へ急ぎ、ファルラーフの嘘をあばく。
「横取り」の例文・使い方・用例・文例
品詞の分類
名詞およびサ変動詞(奪う) | 兼併 追奪 横取り 攻奪 簒奪 |
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