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物語要素事典 |
死体
『戒言(蚕飼の草子)』(御伽草子) 天竺の金色姫は継母にいじめられ、うつほ舟で日本に渡るが、やがて病死する。棺におさめた姫の遺骸は、蚕に変わった。
『今昔物語集』巻16-29 長谷観音に参詣する男が、帰りの夜道、検非違使庁の放免たちから死人の処置をおしつけられ、死骸を家に持ち帰る。死骸の重さ堅さを不思議に思い、妻と二人で調べてみると、黄金であった。
『今昔物語集』巻2-12 天竺の燈指比丘が貧窮と孤独に苦しみ自暴自棄になって、墓場から死骸を引きずり出す。それを家に運び、嘆き悲しんでいると、死骸が黄金に変じた。これを聞いた阿闍世王が取り上げようとすると、黄金は死体になった。棄てるとまた黄金になった。
*三千両だと思って死体を掘り出す→〔井戸〕4bの『銭形平次捕物控』(野村胡堂)「招く骸骨」。
*銭が死体に変わり、また銭にもどる→〔金〕6の『日本霊異記』下-5。
『黄金餅』(落語) 物乞い坊主の西念が死ぬ間際に、貯めこんだ金を人に取られるのがいやで、多くの一分銀や二分金を餅の中に入れて、全部呑み込んでしまう。このありさまをのぞき見た長屋の金兵衛が、焼き場まで行き、「西念の骨を拾う」と称して、遺骸から金を取り出す。金兵衛はこの金を元手に目黒で餅屋を営み、繁盛した。
★1d.死体から金歯などを取る。
『不思議な手紙』(つげ義春) 火葬場の作業員沼田は、焼き窯にもぐって、遺体から金歯など金目のものを盗み取っていた。同僚たちは「バチがあたるぞ」と言って、沼田を批難した。ある時、沼田が窯の中にいるうちに、窯焚きが始まってしまう。同僚の東(あずま)はそれに気づきながら、かまわず石炭をくべて、沼田を遺体と一緒に焼いた。
★2.死体から食物などが生ずる。
『古事記』上巻 スサノヲがオオゲツヒメを殺した。オオゲツヒメの死体の、頭から蚕、二つの目から稲種、二つの耳から粟、鼻から小豆、陰部から麦、肛門から大豆が生じた。
『士師記』第14章 サムソンが裂き殺した獅子の体に蜂が群れ、そこに蜜ができた。サムソンは獅子の死体から蜜をかき集めて食べた。サムソンはペリシテ人の娘と結婚し、宴会を催して、客たちに「食べる者から食べ物が出た。強い者から甘い物が出た」という謎を出した。その謎は、誰も解けなかった。
『たばこの起こり』(昔話) 母が一人娘の死を悲しみ、墓前で毎日泣く。娘の腹から草が生え、大きな葉をたくさんつけたので、母が葉を竹に詰め、火をつけて吸ってみると、なんともいえぬ良い味で心が慰められた。たばこは、もとは一人娘が母を慰めるために生やしたものだ(鹿児島県大島郡)。
『日本書紀』巻1・第5段一書第11 ツクヨミが剣を抜いてウケモチノカミを殺した。ウケモチノカミの死体の、頭から牛馬、額から粟、眉から繭、眼から稗、腹から稲、陰部から麦・大豆・小豆が生じた。
猫と南瓜の伝説 商人が宿の旦那と食事をしていた時、猫が旦那の膳の上を跳び越える。商人が「それを食べるな」と禁じ、旦那の食事を飼い犬に与える。犬は倒れて死ぬ。旦那は怒って猫を殺し、藪に埋める。翌年、藪の中に大きな南瓜がなったのを商人が見つけ、旦那と二人で掘り返す。南瓜の根は、死んだ猫の口から生えており、うっかり食べれば死ぬところであった(宮城県伊具郡丸森町)。
★3a.葬ったはずの死体が、墓や棺の中から消える。
『漢武故事』16 漢の武帝に寵愛された拳夫人(鉤弋)の死後、その墓を開くと、棺の中は空で遺体がなく、着物と靴だけが残っていた。
『日本書紀』巻7景行天皇43年 能褒野に葬られたヤマトタケルは、白鳥となって墓から出て飛び去る。群臣が棺を開いてみると、屍衣だけあって遺体は消えていた。
『日本書紀』巻22推古天皇21年12月 聖徳太子と問答をした飢人が死んだので葬る。数日後、太子は「あの飢人は真人であろう」と言い、家来に見に行かせる。墓を開くと死体はなく、太子の与えた衣がたたんで棺上に置いてあった〔*『日本霊異記』上-4・『今昔物語集』巻11-1などに類話〕。
『変身物語』(オヴィディウス)巻3 美少年ナルキッソスが、自らの姿に恋い焦がれて死ぬ。水の精や森の精たちが嘆き悲しみ、棺を用意し火葬の準備をする。ところがいつのまにかナルキッソスの死体が消えており、代わりに、黄色い水仙の花が見つかった。
『ヨハネによる福音書』第20章 イエスの死の翌々日、週の初めの日の朝早く、マグダラのマリアが墓に行くと、墓から石が取りのけてあった。イエスの遺体はなくなっており、遺体を包んだ亜麻布が、墓の中に置いてあった〔*『マタイ』第28章・『マルコ』第16章・『ルカ』第24章に類話〕。
『聊斎志異』巻5-186「西湖主」 陳弼教は、洞庭湖で矢傷を負った猪婆龍(鰐)を救ったことから、龍王の娘と結婚し裕福に暮らす。八十一歳で死んだが、棺を開くと空だった。
*堂の中にあるはずの死体が消える→〔部屋〕5cの『今昔物語集』巻15-20。
『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)第3部第7編 修道院のゾシマ長老が、六十五歳で病死する。以前に亡くなった長老については、埋葬されるまで死体がまったく腐敗せず、顔色は明るく、芳香さえ漂っていた、との言い伝えがあった。ところがゾシマ長老の死体からは、死後一日もたたぬうちに腐臭が発した。ゾシマ長老を深く信仰していたアリョーシャは、大きな衝撃を受けた。
★3c.死に近づいた人が姿を消す・行方知れずになるなどして、死体を残さない。
『最後の事件』(ドイル) シャーロック・ホームズがモリアティ教授の犯罪組織を壊滅させたため、モリアティ教授は復讐をくわだて、ホームズを殺そうとつけねらう。ホームズとモリアティは、スイスのライヘンバハ滝の断崖で一対一の決闘をする。格闘の末、二人とも滝壺に落ちたらしく、死体は見つからなかった。
『七王妃物語』(ニザーミー)第44章 六十歳に達したバハラーム王は、ある日狩に出かけ、洞窟の中に姿を消す。人々が探すが、ついに見つからなかった。
『南総里見八犬伝』第9輯巻之53上第180勝回下編大団円 六十歳をこした八犬士たちは、主君に暇を請うて富山にこもる。二十年後、彼らの息子たちが訪れると、八犬士は教訓の言葉を述べ「他山に移らん」と告げて、その場で忽然と姿を消す。あとには異香が薫るのみだった。
*→〔靴(履・沓・鞋)〕2の『水鏡』中巻・〔島〕2の『好色一代男』巻8「床の責道具」・〔寸断〕1cの『英雄伝』(プルタルコス)「ロムルス」。
*死体を残さない猫→〔猫〕3の『古今著聞集』巻20「魚虫禽獣」第30。
★3d.たとえ埋葬された遺体があっても、それが当人のものだという証拠はない。
『アーサーの死』(マロリー)第21巻第5~6章 瀕死のアーサー王が、貴婦人たちの乗る小船でアヴァロンの島へ運ばれて行くのを、ベディヴィア卿が見送る(*→〔島〕3)。しかし翌朝、礼拝堂の隠者から「昨夜、貴婦人たちの依頼で、ある方の遺体を埋葬しました」と聞かされて、ベディヴィア卿は「それはアーサー王の遺体だろう」と思う。ただし、それが本当にアーサー王の遺体だったかどうかは、確認できなかった。
★4.動かせない死体。
『宇治拾遺物語』巻3-15 棺に入れて鳥部野へ運んだはずの女の遺骸が、いつのまにか彼女の部屋の妻戸口に戻って横たわり、どうやっても動かせない。やむなく板敷を取りのけてそこに埋め、塚を作る。
『黄金伝説』56「聖ゲオルギウス」 聖ゲオルギウスの聖遺物を運ぶ男たちが、ある教会で一夜をあかす。翌朝、聖遺物を入れた容器を持ち上げようとしても重くて上がらない。やむなく聖遺物の一部をその教会に置いていく。
『黄金伝説』119「洗者聖ヨハネ刎首」 ヨハネの聖頭骨をコンスタンティノポリスへ運ぶ車が、カルケドンまで来ると突然進まなくなり、牛をいくら駆り立てても動かない。そのため、聖頭骨をカルケドンに葬ることになった。
『北野天神縁起』 延喜三年(903)二月二十五日に、菅原道真は太宰府で死去した。筑前国四堂のあたりを墓所にしようと葬列が進んだが、途中で車がとどまり、牛がいくら引いても動かなくなった。そこで、その地を墓所と定めて遺骸を埋葬した。それが今の安楽寺である。
『後漢書』列伝71「独行伝」 張劭が死に、葬列が墓穴の所まで来るが、棺を吊り降ろそうとしても動かない。母が棺を撫で「何か心残りがあるのか」と問い、そのまま待つ。やがて夢で親友の死を知った范式(=巨卿)が駆けつけ、彼が棺の引き綱を取ると、棺は動き出す。
★5.死体が動く。
『捜神後記』巻4-4(通巻44話) 病死した男の死体が真夜中に起き上がり、通夜をする妻の腕輪をもぎ取ろうとする。妻が腕輪を渡すと死体は倒れて死に、夜明けになって蘇生する。生き返った男は、「冥府の役人に腕輪を贈ったら、放免してくれた」と語った。
『遠野物語』(柳田国男)101 ある家で老女が死に、一人の旅人がその夜の死体の番を頼まれる。死人が床から起き上がるので旅人は恐れるが、台所の水口の穴から狐が死人を見つめているのに気づき、「こいつの仕業であったか」と、旅人は棒で狐を打ち殺した。
『聊斎志異』巻1-3「尸変」 宿に部屋がないため、女の死体を安置する建物に旅人たちが寝る。死体が起き上がり、眠る旅人たちを次々に殺して、生き残った一人の男を追いかける。木の陰の男をつかまえようとして死体は木に抱きつき、ようやく静かになる。
*死体が踊る→〔踊り〕4。
★6.死体を見る。
『黄金伝説』111「殉教者聖ラウレンティウス」 聖ラウレンティウスの墓所が偶然開かれた。この時、聖人の遺骨を見た納室係や修道士たちは、十日後に全員死んでしまった。
『閑居の友』上-19 比叡山でつかわれている一人の中間僧(ちゅうげんそう=雑用をする法師)が、毎日、夕暮れになると姿を消し、翌朝早くに戻って来る。主が人に命じてあとをつけさせると、中間僧は蓮台野(=火葬場と墓地があった)へ行き、腐乱した死人のそばで一晩中、不浄観をしていた。
『源氏物語』「御法」 紫上が臨終を迎える。夕霧は、かつて野分の折にかいま見た紫上の姿を、ふたたび拝する機会は今以外にはないと思い、人々の騒ぎにまぎれて几帳を引き上げ大殿油をかかげて、紫上の死顔に見入る。
『今昔物語集』巻19-10 蔵人宗正は、愛妻の死後十日余りして、恋しさから棺を開ける。変わり果てた妻の屍体を見て宗正は道心を起こし出家する。
『ドグラ・マグラ』(夢野久作) 一千年前、中国の画家が妻を殺し屍体の変相図を絵巻にした。彼の遠い子孫である呉一郎はその絵巻を見て、自分の妻を殺し屍体の変わり行くさまを見ようとする。
★7a.一つの死体を見た複数の人間が、それぞれ自分が殺したと思いこんで、死体の処理に苦慮する。
『千一夜物語』「せむしの男および仕立屋とキリスト教徒の仲買人と御用係とユダヤ人の医者との物語」マルドリュス版第24~25夜・32夜 仕立屋夫婦の家で食事を御馳走になったせむし男が、魚の骨を喉にひっかけて死ぬ。仕立屋夫婦は死体を病人のごとくよそおって医者の所へ運び、階段の壁に立てかける。医者はつまづいて死体を倒し、自分が殺したと思う。同様にして、王の料理所の御用係と仲買人とが、それぞれ死体を殴り殺したと思いこむ。実は、せむし男は死んではおらず、やがて息を吹き返す。
『智恵あり殿』(昔話) 男が、村の旦那を「女房の所へ来た間男だ」と思って殴り殺す。智恵あり殿が死体の処理を引き受け、博奕場の雨戸に立てかける。「誰かがのぞきに来た」というので、若い衆が旦那の死体を棒で殴り倒す。智恵あり殿が処理を引き受け、死体を旦那の家の戸口へ運び「開けてくれ」と言う。旦那の妻が「夜遊びする夫は帰らんでもよい」と言うので、智恵あり殿は「身投げする」と言って死体を井戸に投げこむ。妻が泣くと、智恵あり殿は死体を蒸籠でむし、医者に見せる。熱病で死んだものと医者は診断し、ようやく旦那の葬式が出せる(新潟県南蒲原郡)。
『ハリーの災難』(ストーリイ) 中年男ハリーの死体が草原で発見される。初老の退職船長ワイルスは、「自分が誤って猟銃で撃ち殺した」と思う。ハリーの前妻ジェニファーは牛乳瓶で、老嬢グレイヴリーは靴で、それぞれハリーの頭部を殴り、二人とも「自分がハリーに致命傷を負わせた」と考える。彼らは死体の処理に苦慮するが、医者がハリーを見て「心臓発作で死んだのだ」と診断する。
『七賢人物語』「第六の賢人の語る第六の物語」 老騎士と若妻が一晩に三人の騎士を家に引き入れて殺し、金を奪う。若妻は、死体を一つだけ兄に見せて、処理を頼む。兄は死体を河に捨てて妹の家に帰るが、部屋にまた死体があるので、「蘇生して戻って来たか」と思い、再び河に捨てる。しかし家に帰るとまたしても死体があるので、兄は今度は森で死体を焼く。そこへ旅の騎士がやって来るので、兄は「また蘇生したか」と思って、旅の騎士を火の中へ投げ込む。
『無関係な死』(安部公房) Aがアパートの自室に帰ると、見知らぬ死体がある。Aは関わり合いになるのを恐れ、死体を他人の部屋に移そうと考える。床に血痕があるので、Aは長時間かけて床を洗う。しかしその行為自体が、かえってAへの疑いを招くことに、あとから気づく。
★7d.殺人犯が、自分が殺した人間以外の死体も処理せねばならなくなる。
『十字路』(江戸川乱歩) 伊勢省吾は妻を殺し、死体を自動車のトランクに入れて運ぶ。十字路で接触事故があり、伊勢がしばらく車から離れている間に、他所で頭を打ってフラフラになった男が伊勢の車をタクシーと思って乗り込み、そのまま死んでしまう。伊勢は死体が二つに増えたことに困惑しつつ、二死体をダム予定地の古井戸に放り込んで処理する。
*死体処理方法としての人肉食→〔人肉食〕3の『二壜のソース』(ダンセイニ)。
*死体をバラバラにして処理する→〔寸断〕1cの『英雄伝』(プルタルコス)「ロムルス」。
*死体を、他の死体の入っている棺桶に押し込む→〔棺〕3の『雁の寺』(水上勉)。
★8.管理された死体。
『或る阿呆の一生』(芥川龍之介)9「死体」 「彼」は、王朝時代に取材した短編(『羅生門』)を仕上げるのに必要だったので、医科大学の解剖室を訪れて死体を実見した。死体は皆、親指に針金のついた札をつけていた。
『死者の奢り』(大江健三郎) 「僕」と女子大生は、医学部の解剖用の死体三十体余りを、古い水槽から新しい水槽に移すアルバイトをする。しかし死体は新しい水槽へ移すのでなく、焼却場に運び火葬する手続きだったことがわかり、一日がかりの作業はまったく無駄であった。
『イリアス』第22~24歌 アキレウスはヘクトルの喉を槍で刺して倒し、「野犬・野鳥がおぬしの身にたかって食いちぎるだろう」と言う。アキレウスはヘクトルの死体の踝(くるぶし)に穴をあけ、紐を通して戦車にしばりつける。そして戦車を走らせ、ヘクトルの死体をひきずりまわして傷つける。ヘクトルの父プリアモス王が莫大な金品を差し出して懇願し、ヘクトルの死体を引き取って火葬する。
★9b.放置された死体を供養・埋葬する。後に死体がその恩を返す。
『今昔物語集』巻10-14 費長房は、白骨化した死体が往来の人に踏まれるのを見て憐れみ、これを埋葬する。後、死者の霊が費長房の夢に現れて礼を述べ、報恩に仙術を伝授する。費長房は飛行自在の仙人となる。
『旅の道づれ』(アンデルセン) 旅の途中ヨハンネスは、乱暴者たちが死体を教会の外へ棄てようとするのをとめ、死体の借金を代わりに払い、棺の中に死体を安置して手を組み合わせてやる。死体は、ヨハンネスの旅の道連れとなり、彼を援助する→〔難題〕1b。
『今昔物語集』巻2-7 貧しい下女が、仏弟子伽旃延の教えにしたがって少量の水を伽旃延に布施する。下女はその夜死んで、ただちにトウ利天に生まれる。天人となった下女は五百の天子を率い、香を焚き花を散らして自分の死骸を供養する。
*天人が自らの前世の骸骨を供養する→〔前世〕3の『発心集』7-12。
★10.死体となってから正体をあらわす。
『透明人間』第28章(ウェルズ) 町を支配しようとたくらみ、殺人さえ犯した透明人間を、人々が追い詰める。大勢が道路いっぱいに拡がり、透明人間を袋の鼠にして、殴り、蹴る。透明人間は倒れて息絶え、しばらくしてから徐々に、三十歳前後の男の傷だらけの死体が見えてくる。
『遠野物語』(柳田国男)100 漁夫が夜道を遠方から帰る途中、妻と出会う。妻が一人で夜中にこんな所へ来るはずがないので、これは化け物であろうと思い、漁夫は魚切包丁で妻を刺し殺す。死んだ妻は、しばらくは正体を現さなかったが、やがて一匹の狐となった→〔夢〕17。
『耳袋』巻之2「猫の人に化けし事」 老母が妖猫の正体を顕したので、息子が切り殺すと死体は老母の姿になる。息子は「母を殺した」と思い切腹しようとするが、友人が「しばし待て」と止める。夜になって死体は次第に古猫の姿を顕す〔*同巻「猫人に付し事」では、猫に取りつかれた母を息子が殺すが、死体は母のままなので、息子は自殺する〕。
『耳袋』巻之7「古狸をしたがへし英勇の事」 夜、妖怪退治に出かけた男の所へ「汝の妻が産気づいたから帰れ」「汝の妻は難産で死んだから帰れ」と、次々に使いが来るが、男は退ける。妻の死骸が恨みを言いに来るので切り殺すと、しばらくは妻の姿のままだったが、朝になって大きな古狸となった。
*僧に化けた古狐が、死んで正体をあらわす→〔行方不明〕4の『半七捕物帳』(岡本綺堂)「狐と僧」。
*→〔虎〕2の『南総里見八犬伝』第9輯巻之27第143回~巻之30第148回で、人喰い虎の死骸が消え、掛け軸の絵に変ずるのも、死体となってから正体を現す物語の一種。
『今昔物語集』巻29-19 盗賊袴垂が、死体のふりをして裸で路傍に臥す。通りかかりの武者が馬上から弓の先で袴垂の身体をつつくと、袴垂はとび起き、武者を殺して彼の衣服・武具・馬を奪う。
『千一夜物語』「眼を覚ました永眠の男の物語」マルドリュス版第647~653夜 一文なしになったアブール・ハサンが死んだふりをし、彼の妻は、教王ハルン・アル・ラシードの妃から葬儀費用一万ディナールを与えられる。続いて妻が死んだふりをして、アブール・ハサンも教王ハルン・アル・ラシードから一万ディナールを得る→〔返答〕3c。
『そして誰もいなくなった』(クリスティ) 十人の男女が島に招かれ、『テン・リトル・インディアンズ』の歌詞に従って一人ずつ殺されていく。犯人は六人目の犠牲者をよそおい、銃で額を撃たれた死体のふりをして残りの四人を欺き、その後彼らを始末する〔*九人全員が死んだ後、犯人は今度は本当に自分の額を撃ち抜いて自殺する〕。
『通夜』(つげ義春) 三人の盗賊が、一軒家に雨宿りを請う。老婆が「今、倅(せがれ)が死んだばかりじゃ」と言って断るが、三人は強引に上がり込む。彼らは退屈しのぎに、死体の足の裏や脇の下をくすぐり、さらに死体を蒲団から引きずり出し、抱いて踊る。やがて雨があがり、三人は家から出て行く。彼らは「愉快だったなあ」「あの死体め。必死だったぞ」「ババァめ。つまらぬ嘘をつくからさ」と笑い合う。
『ヘンリー四世』(シェイクスピア)第1部・第5幕第4場 フォルスタッフは戦闘中に死んだふりをして横たわり、敵が去ってから起き上がる。皇太子ヘンリーに倒された敵将ホッパーを見て、フォルスタッフはその死体に一太刀浴びせ、自分が討ち取ったと言って手柄を横取りしようとする。
*→〔けがれ〕2の『今昔物語集』巻29-17。
*→〔死〕5a。
★12.身代わりの死体。
『サテュリコン』(ペトロニウス)111~112 貞淑な未亡人が、夫の遺骸とともに地下墓室に入り死のうとする。近くの処刑台の監視兵が未亡人を誘惑し、二人は墓室で関係を持つ。その間に、処刑台の罪人の死体を、家族が盗んで埋葬する。監視兵は死体盗難の責任を負って自殺しようとするが、未亡人が「代わりに、私の夫の遺骸を処刑台の十字架にかければよい」と教える(*エウモルポスの語る物語)。
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死体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2011/10/21 08:32 UTC 版)
死体(したい、屍体)とは、生物が死を迎え、その生命活動を停止している状態の体のことである。但し、日常の用語として「死体」と言った場合、人間ないし動物の死体までを指すことが多い。
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- 1 死体とは
- 2 死体の概要
- 死体取扱規則e-Gov
- 死体解剖保存法e-Gov
- 死体解剖保存法施行規則e-Gov
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