三省堂 大辞林 |
物語要素事典 |
催眠術
『魔睡』(森鴎外) 法科大学教授大川渉の細君は、妊娠七ヵ月である。細君は病母の付き添いで磯貝医師を訪れ、その折、磯貝から妙なふるまいをしかけられて、しばらく意識を失った。帰宅した細君からそれを聞いた大川は、「磯貝はお前に魔睡術(催眠術)を施そうとしたのだ。今後、磯貝の所へは行くな」と説く。その日大川は、女性の貞潔についていろいろと考えた。
『幇間』(谷崎潤一郎) 幇間の三平は、芸者梅吉の下手な催眠術に、いつもかかったふりをして、梅吉を喜ばせる。ある夜、旦那や他の芸者の見る前で、三平は催眠術をかけられ、裸になって梅吉を抱くという一人芝居をさせられる。三平は、惚れた女にからかわれる快感に、最後まで催眠術にかかったふりをし通す。
『ドクトル・マブゼ』(ラング) マブゼ博士は催眠術の名手である。言葉を用いず、相手の目を見るだけで催眠状態に陥れる。目指す人物を背後から見つめて、あやつることもできる。トルド伯爵は催眠状態のまま、いかさま賭博をさせられ、社会的信用を失う。さらに、言葉による暗示をかけられて自殺する。フォン・ヴェンク検事は催眠状態で車を運転させられ、断崖から転落死しそうになる。しかし部下たちが、断崖の直前でフォン・ヴェンク検事を車から救い出す→〔金〕8。
『カリガリ博士』(ウイーネ) 怪人カリガリが夢遊病者ツェザーレをあやつり、覚醒時には絶対にできないこと、すなわち連続殺人を犯させる。青年フランツィスがカリガリを追跡し、「カリガリの正体は某精神病院の院長だ」と告発する。しかしフランツィス自身その病院の入院患者であり、彼の言葉はただの妄想にすぎないのかもしれなかった〔*現実か精神病者の妄想かわからない、という点で→〔アイデンティティ〕1aの『ドグラ・マグラ』(夢野久作)に似る〕。
『催眠術の啓示』(ポオ) 「私」は、肺結核のヴァンカーク氏の苦痛を軽減させるため、催眠術を施した。何度も施術するうちに、彼は霊魂不滅を確信するようになり、「催眠状態で問答すれば、覚醒時には不可能な洞察が得られるのではないか」と言う。ヴァンカーク氏は半睡半醒状態で「神」や「存在」について語り、「私」が彼を覚醒させると同時に息絶えた。その時すでに死後硬直しており、彼は話の後半部を、幽冥界から語っていたのかもしれなかった。
『晴れた日に永遠が見える』(ミネリ) 一九七〇年頃のこと。精神医学のシャボー教授が女学生デイジーに催眠術をかける。デイジーは前世を思い出し、「私は公爵夫人メリンダ。一九世紀のロンドンに生きていた」と言う。デイジーはシャボーに恋するが、シャボーは、デイジーではなく前世のメリンダに恋してしまう。催眠状態では、前世だけでなく来世も、過去のことのように思い浮かぶので、メリンダはシャボーに「私たち二人は生まれ変わって結婚し、二〇三八年には夫婦として幸せに暮らしている」と告げる。それを聞いてシャボーは安心する。
ウィキペディア |
催眠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2011/08/31 04:43 UTC 版)
(催眠術 から転送)
催眠(さいみん、英: hypnosis)とは、暗示を受けやすい変性意識状態のひとつ。また、その状態(催眠状態)、およびその状態に導く技術 (催眠法) を指す場合がある。催眠術(さいみんじゅつ 英: hypnotism)とも呼ばれる。
目次 |
性質
意識の構成には「清明度」、「質的」、「広がり」の三つの要素が存在する。「清明度」の低下は一般に意識障害を、「質的」の変化(意識変容)はせん妄やもうろう等を指し、「広がり」が低下した状態(意識の狭窄)を催眠状態と呼ぶ。別の観点から言えば、人間の意識は9割を占める非論理的な潜在意識と、覚醒時に論理的に思考する顕在意識とで構成されているが、催眠とは、意識レベルを批判能力を除外する潜在意識レベルに誘導することであるといえる。
身近にある催眠現象自己暗示
学生時代、苦手科目に悩まされる経験は誰にでもある。きっかけは、たまたま数学の小テストで赤点を取った、数学の先生を嫌いになったなどたわいもない事象ではあるが、これを契機に「自分は数学に弱い」というマイナスの自己暗示を掛け続けてしまう。その結果、理性的な顕在意識でいくら数学を頑張っても、潜在意識でプログラムされた「数学嫌い」がより強固に働き、挫折してしまうのである。潜在意識の力は強固であり、例えば、出題箇所のヤマが当たるか否か、といった直感にまで影響を及ぼし、前述の「数学嫌い」を悪循環をもって固定化してしまう。
催眠による現象
催眠状態といえば特別な状態に聞こえるが、電車の中でうたた寝をしている状態に近く、誰しもが入る事の出来る現象である。
催眠状態では意識が狭窄しているので、外界からの刺激や他の概念が意識から締め出され一つの事象が意識を占領することによって、暗示のままに動かされる。この暗示によって様々な幻覚が作り出されてくる。また、潜在意識に働きかけて対人恐怖症やアガリ症等を治療する。上述の数学嫌いと同様に、たわいもない事象がきっかけでこれらの症状が発症することが多いからである。
しかし催眠状態というような特別な状態がはっきりと存在している訳ではない。
催眠法は、心理的な悩みを改善する目的で行われる催眠療法 (ヒプノセラピー) と娯楽を目的に行われる舞台催眠 (ショウ催眠) とに大別される。
催眠を医療に用いる試みもアメリカでは積極的に行なわれているが、日本では積極的な医療機関は限られている。一般的には、まず薬物療法など、他の治療法を十分に試みた上で、適用可否の判断を含めて、訓練を受けた専門家により行われるべきである、とアメリカではされている。
サブカルチャーの書籍には、催眠音声を使って自慰をする「催眠オナニー(サイニー)」というものがある[1]。
俗にいう催眠商法は、催眠と呼称されているが舞台催眠的な方法で物を買わせるのではなく、始めに一つの部屋に大勢の人が入れられ、早いもの順に競わせるようにして品物をただ同然であげると言い、そして最後にその条件反射を利用して安い布団などを高値で買わせるといった心理学全体の技術を応用した詐欺である。
催眠術という呼称
メスメルの動物磁気実験から発祥し、それに様々な実践的実験が試されてきたものをメスメリズム(催眠術)という。それが日本に入って来たときに催眠術と名付けられた。 日本に入って来た当時「眠りに催す」ように見えたから付けられたのだが、その2週間後に被験者は眠っている訳ではないと気付いた、しかしすでに催眠術という言葉は日本中に広まってしまい訂正することができなかった。
メスメリズムとは、ヒプノシス(催眠)の元の呼ばれ方である。19世紀のイギリスの医師、ジェイムズ・ブレイドの造語だとされる。 現代の催眠に携わる人の間では「催眠は魔術的なものではなく科学であるから、催眠術ではなく催眠・催眠法という表現を使うべき」という主張もある[2]。
現代で催眠術という場合、特に舞台催眠 (英: stage hypnosis、ショウ催眠)を指す場合がある。 一般のほとんどの人が「催眠術」をTVなどでよく見る、いわゆる「ショウ催眠」としてしか認知していないために「超能力」「魔術」などといったものと同一視し、誤解されがちであるが、現代の催眠は心理学、脳科学、そして体の構造を利用した「技術」である。
- ^ サイニー研究会 『さあ、やってみよう~催眠オナニー入門~』 メディアックス、2010年。ISBN 978-4862016263。
- ^ 武藤安隆 『図解雑学 催眠』ナツメ社、2001年、62頁。ISBN 978-4816330803。
- 1 催眠の概要
- 2 関連書
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