アニメ (日本のアニメーション作品)
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製作会社と制作会社
作品制作数の増加に伴い分業化が進み、プリプロダクションの企画・製作会社と、プロダクションの作画・動画スタジオ、美術スタジオなどと、ポストプロダクションの撮影会社、音源制作など制作工程別に作業を請け負う専門スタジオと分業化されている。
また、グロス請けと呼ばれる、1話単位で制作作業を一括受注し制作業務全般を行う制作会社もある。
制作工程
原撮の例
テレビアニメ#制作過程も参照。
大きく分けると3つの工程に別れる。なお、制作資金調達に関しては多種多様な方法があるので本項では取り上げない。
- プリプロダクション
- 企画書をもとに、主要スタッフ編成と制作のフローを確定し、脚本・設定・絵コンテなど制作に必要な各種設定など行う作業。
- プロダクション
- 原画、動画、仕上げなどのアニメーションの作成作業。
- ポストプロダクション
- アフレコ・BGM・効果音を加える音作業やVTR編集などの作業。
さらに詳細な工程を経て制作される。制作会社、作品に投入される各部門のスタッフ数、技術の進歩などにより役職名や工程の違いもあるが、企画から完成までの基本的な工程は以下の通りである[注 1]。
複数にわたるシリーズ作品の場合、諸事情により主要スタッフや担当アニメ制作会社などが途中で変更されることも珍しくない。
- 企画
- 作品の企画意図や全体像にセールスポイントなどを記述した企画書などを作成、製作側(複数の社局が製作委員会を結成することも多い)がその採否を決定する。
- オリジナル企画と、漫画・小説など既存の著作物を原作とした企画とに二分される。後者の場合は著作権者の承諾を得るのに難航する事も珍しくない。
- スタッフ編成とワークフローの確定
- 脚本(シナリオ・本読み)
- 設定
- 脚本・原作・企画書を元にして、作品の主要な登場人物キャラクターデザインや舞台背景を設定する美術設定(美術監督)・メカデザイン(メカニカル設定)とクレジットされることが多い。
- 絵コンテ
- 原画(原図・作画・レイアウトシステム)
- 原画マン(原画家、原画担当者、レイアウトマン)と呼ばれる職制が担当する。絵コンテを元に完成画面を想定し背景の構図とキャラクターのレイアウト(画面構成)を作成する。ペンタブレットなどの進化で、原画作業の時点からデジタル制作に移行している。
- 演出(プロデューサー)は、レイアウトが絵コンテの内容、演出意図との差異を確認、修正指示を入れ作画監督に渡す。
- 作画監督は動きやキャラクターデザインを修正し、画面の統一を図る、作監修正と呼ばれる作業を行う。
- 動画
- 動画マンと呼ばれる職制が担当する。ラフに描かれた原画の清書作業を行い、原画の間の絵を描きおこし全ての動きを完成させる作業。中割りとも呼ばれる。
- 動画検査と呼ばれる職制が簡易撮影装置で動画をチェックし、修正を指示する。
- 原画と動画についてはアニメーターも参照。
- 仕上げ(色トレス、彩色、デジタル彩色):色彩設定(色彩設計)の指示・動画に指定されている色指定の通りに着色する作業。
- 背景
- 美術監督は、背景設定となる美術ボードを制作する。原画で指定された背景設定に合わせて、背景スタッフが背景を作成する作業。デジタルアニメも背景は絵の具で仕上げが多かったが、デジタル制作の背景も増えている。
- 撮影(合成):撮影監督が作業を監督し、仕上げと背景、3DCGパートなどの別工程部分を組み合わせる合成・加工工程のこと。セルアニメ時代にアナログ素材をフィルム撮影していた名残りで撮影と呼ばれる。2000年頃を境に、アニメ制作がセルアニメからデジタルアニメに移行してからは、コンポジット(合成)とも呼ばれる[7]。
- 楽曲作成
- 様々な場面に合わせた楽曲BGMを作成する作業。汎用的な楽曲から特徴的なシーンに向けたもの、あらかじめ演出尺や映像に合わせて楽曲するものまで様々。
- 音作業:音響監督は、声優のキャスティングと演技指導、ダビングなどの音響演出を担当する。監督や演出(プロデューサー)などが参加する場合が多い。
- フィルムまたはVTR編集
- オープニング、エンディング、CM前後のアイキャッチを組み合わせて完成させる作業。オブジェクトの最終調整、色彩調整も行われる。
ただし、諸事情により企画段階[11]、もしくは制作途中で中止になることもあり[12]、中にはアフレコも終えた段階でお蔵入りになったケースもある[13]。稀に一度は中止にされた作品が時を経て再起動するケースもある[14]。
流通形態
- テレビアニメ
- 地上波放送局、BS局・CSチャンネルなどでのテレビ放送用に制作される作品で、さらに特殊ジャンル分けとして深夜番組の深夜アニメや、全国独立放送協議会加盟局主体で放送のUHFアニメ(アナログテレビ放送当時、特に日本の三大都市圏でのUHF局は独立局が主体だったことから)などの分類もされる。
- ネット配信は基本的に配信開始から1週間以内は無料配信、或いは特定配信サイト独占契約などによる有料配信の形態が主流となっている。
- 海外向けではCrunchyrollなどが著作権者の承諾を得て、台本を翻訳、字幕を付けて世界中に配信している。これらのサービスは基本的には日本国内からのアクセスは不可能となっている。
- パッケージ販売の頭打ちから、国内外問わずネット配信による事業収益に活路を見出す動きが活発となり、テレビアニメ配信を重視するネット配信業者も相次いで誕生している。
- 作品に関しては、『日本のテレビアニメ作品一覧』を参照。
- アニメーション映画
- 映画館などでの上映用に制作される作品。劇場用アニメーション映画、アニメ映画、劇場版アニメなどと呼ばれる。
- 作品に関しては、『日本のアニメ映画作品一覧』を参照。
- 映画館などでの上映用に制作される作品。劇場用アニメーション映画、アニメ映画、劇場版アニメなどと呼ばれる。
- OVA(オリジナルビデオアニメーション)
- Webアニメ
- インターネット配信用に制作される作品。国外では「Original Net Animation」(ONA)と呼ばれる。近年ではネット配信会社の伸長とともに増え、テレビ局のネット参入もみられる。
- 作品に関しては、『Webアニメ#Webアニメ作品一覧』を参照。
- インターネット配信用に制作される作品。国外では「Original Net Animation」(ONA)と呼ばれる。近年ではネット配信会社の伸長とともに増え、テレビ局のネット参入もみられる。
- CM
- 近年では企業が宣伝のためにアニメーションを活用する事例が増えている。
注釈
- ^ 『ボンバーマンジェッターズ』 シナリオ打ち合わせ アニメ ボンバーマンジェッターズ 制作現場レポート とテレコム・アニメーションフィルムの アニメ業界の基礎知識〜アニメーションの制作の流れ〜、アニメーション産業に関する実態調査報告書(PDF)-2009年1月,公正取引委員会を元に記述している。
- ^ a b リアリティの向上や演出効果を高めるため、特殊効果を画面上の要素として付加する作業[9]。デジタルアニメにおいては、ソフトウェアを使用したエフェクトや線画に対するアンチエイリアス・加工処理がかけられ、3DCG主体の作品では、逆に直接描く2Dエフェクトを加えることもある。
- ^ 作業内容からすれば合成もしくはコンポジットと呼んだ方が近く、そうした表記になっている作品もある。
- ^ アメリカのディズニー製作作品も日本では「ディズニーアニメ」と呼ばれ、講談社ディズニーアニメブック、偕成社ディズニーアニメ小説版など、ディズニー公認の絵本やノベライズ版にも「アニメ」が使用されている。
- ^ アメリカ版の『カードキャプターさくら』(現地タイトルは『CardCaptors』)は主人公の姓がAVALONになっている、フランス版の『めぞん一刻』(現地タイトルは『Juliette, je t'aime』)は舞台がミモザ・ペンションでヒロインの名前がジュリエットになっている、韓国版の『クレヨンしんちゃん』(現地タイトルは『짱구는 못말려』)は舞台がソウル特別市となっている、など色々。
- ^ 解禁以降は架空の地理あるいは日本の実在地理が舞台ではあるが架空の施設が主な舞台のものは、原作の名称のままだったり、地理や人名のみローカライズされたりしている
出典
- ^ 高橋・津堅 2011, pp. 4–5.
- ^ 高橋・津堅 2011, pp. 9–10.
- ^ 『日経産業新聞』1982年11月29日8頁「東洋現像所、CGフィルム製作会社設立――初の国産システム、「ゴルゴ13」受注。」(日本経済新聞社)
- ^ 『日経産業新聞』2001年12月5日1頁「セガ・東大、動くCG自在、「アニメ・日本」に省力化の武器――制作費削減に道。」(日本経済新聞社)
- ^ 米軍管理下での製作(せいさく)とフィルムの接収「線画発注書」の説明参照。広島平和記念資料館バーチャル・ミュージアム内を参照
- ^ 『フクちゃんの潜水艦』日本映画データベース
- ^ a b 高橋克則、高瀬康司 (2020年12月13日). “『鬼滅の刃』の絵がスゴイのは、"作画"よりも〇〇の力? ジブリと正反対のアニメーション思想とは (2)”. 文春オンライン. 文藝春秋. 2022年11月9日閲覧。
- ^ a b 杉本穂高 (2020年12月20日). “『鬼滅の刃』『君の名は。』大ヒットの要因に ufotableと新海誠から探るアニメーションの"撮影"の重要性 (1)”. リアルサウンド. 株式会社blueprint. 2022年11月11日閲覧。
- ^ 泉津井陽一 (2016年3月7日). “もっとアニメを知るための撮影講座 第5回 エフェクトを考える (1)”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル. 2022年11月9日閲覧。
- ^ 泉津井陽一 (2016年2月8日). “もっとアニメを知るための撮影講座 第1回 アニメの「撮影」って?”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル. 2022年11月9日閲覧。
- ^ サトウタツオ通信_diary(2005年8月10日分の日記) 佐藤竜雄 2015年4月8日閲覧。
- ^ 「アライブ 最終進化的少年」アニメ化中止発表 増加する製作中止 アニメ!アニメ!ビズ 2010年6月6日、2015年4月8日閲覧。
- ^ 声優あるある漫画『それが声優!』TVアニメ化決定。原作者・あさのますみ×作画・畑健二郎、最速対談(1ページ) エキサイトレビュー 2014年12月30日、同31日閲覧。
- ^ ガイナックス、「オネアミス」後の世界描く「蒼きウル」制作開始 来春に“先行短編”公開 ITmedia 2014年12月11日、2015年4月8日閲覧。
- ^ 第14回 日本のアニメーション産業は大丈夫か? (2006/10/16) http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tv_iibun/061016_14th/
- ^ 第15回 アニメ産業に忍び寄る暗い影とは (2006/11/07) http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tv_iibun/061107_15th/
- ^ “「日本のアニメ」は家電や邦画と同じ道を歩んでしまうのか” (日本語). ITmedia ビジネスオンライン. 2022年2月4日閲覧。
- ^ 講座アニメーション第3巻 イメージの設計・池田宏編 / 美術出版社
- ^ 『読売新聞』2013年11月29日夕刊芸能C面14頁「「サザエさん」アニメ45年 波のない磯野家」安心感」(読売新聞東京本社)
- ^ anime Marian Webster dictionary
- ^ 津堅信之『日本アニメーションの力 85年の歴史を貫く2つの軸』NTT出版、2004年、p20
- ^ 津堅信之『アニメ作家としての手塚治虫 その軌跡と本質』NTT出版、2007年、p.20 アニメ!アニメ!の勝手な用語集 第1回アニメとアニメーションの違い アニメ!アニメ! Archived 2010年7月6日, at the Wayback Machine. 2008年2月17日
- ^ 例としてドビュッシーのピアノ曲「映像」第3曲「ムーヴマンmouvement(動き)」冒頭のテンポ指示が「トレザニメ très animé(とても動いて)」など。
- ^ フレッド・パッテン(Fred Patten)による。
- ^ Dictionary.com-Otaku
- ^ Dictionary.com-Anime
- ^ キネマ旬報1995
- ^ 例としては、
japanimation.com
など。Anime Oxide - ^ 『スーパーナチュラル・ザ・アニメーション』海外ドラマPowerPush!!
TVGroove.com
- ^ 全米の大人気ドラマ『SUPERNATURAL』を日本が完全アニメ化
cinema-magazine.com
- ^ スタジオジブリだけじゃない!これからのジャパニメーションを占う作品に注目! - シネマトゥデイ
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- ^ 地球人間模様@ヨーロッパ 日本を究める
- ^ Documentaire présentant le Japon à travers l'amitié franco-japonaise
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- ^ ROBOTECH.COM(公式サイト):タツノコプロとハーモニーゴールド社とのライセンス契約上の問題により、オンラインショップの発送先に日本は選択できない
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- ^ 『鉄腕アトム(Astro Boy)』『ジャングル大帝(Kimba the White Lion)』『ガッチャマン(Battle of the Planets)』『宇宙戦艦ヤマト(Star Blazers)』など多数
- ^ 日本アニメ人気の露、「デスノート」「いぬやしき」など国内配布禁止 過激表現理由に
- ^ 中国コンテンツ市場調査(6分野) 2009年版(2009年10月) | 調査レポート - 国・地域別に見る - ジェトロ
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- ^ 津堅(2005)、pp.111-112.
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- ^ 小牧雅伸『アニメックの頃… 編集長ま奮闘記』NTT出版、2009年、p.83
- ^ 岡田斗司夫、山本弘、小巻雅伸「オタクの歴史徹底大研究」『空前絶後のオタク座談会1 ヨイコ』音楽専科社、2001年、p.57
- ^ 藤津遼太『「アニメ評論家」宣言』扶桑社、2003年、pp.277-278
- ^ 津堅(2007)、p.179
- ^ 日本アニメーション学会 公式サイト
- ^ 苺ましまろ:月刊コミック電撃大王2006年3月号
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