切り紙アニメーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/24 15:01 UTC 版)
概要
紙、カード、布、写真などの平面的素材を切ってパーツ(キャラクター、プロップ、背景)をつくり、これを撮影台のうえに配置し撮影する。これを1コマとして再配置→撮影を繰り返しつくられるアニメーションがカットアウトアニメーションである[1]。カットアウトアニメーションはストップモーション・アニメーションの一種である。
カットアウトアニメーション制作は素材を切り出し繋げる工程(リギング含むモデリング)とこれを動かしてアニメーションをつける工程に大別される。これは3DCGアニメーション制作と類似している[2]。
アニメーションの歴史の初期には多くのアニメーションがカットアウトアニメーションであった。手描きアニメーションの一種であるセルアニメーションの台頭により商業アニメーションの主流からは外れるが、様々な作品が現代まで商業・芸術・同人で作られ続けれている。ユーリ・ノルシュテインはその代表的作家として知られる。現在では、『サウスパーク』のように、物理的に紙などを切り取るのではなく、スキャンした画像、あるいはベクタグラフィックスをコンピュータで処理して作ることも多い。
近年ではバーチャルYouTuberの「2Dモデル」としてデジタルカットアウトアニメーションの技術が利用されている。イラストレーターによってパーツ分けして描画されたキャラクターの絵を用意し[3]、モデラーがLive2D等のアニメーションシステム上でリギングをおこなう[4]。そのうえで演者のモーションキャプチャデータに基づいてモデルを動かしアニメーション(動画・生配信映像)を生成している。
技法
リギング
カットアウトアニメーションではしばしばリギングが用いられる。
カットアウトアニメーションにおいて切り出されたパーツはそれぞれ独立しており、これを重ね合わせて撮影してアニメーションが制作される。しかし多くの場合、重ね合わせにはパターンがある。例えば腕のパーツが股から生えることは稀である。であれば切り出したあとにパーツ間を擬似関節で繋ぎ、これに動きをつけて撮影すれば効率が良い。更に、よく連動して動かす部位間に共通の操作棒をつければより効率良いアニメーション制作が可能になる(参考: 人形劇)。これはまさにリギングであり、カットアウトアニメーションにおいてスケルタルアニメーションをおこなうことを意味する。
代表的作品

映画
- 『なまくら刀』(1917、日本、幸内純一)[5]
- 『El Apóstol』(1917、アルゼンチン、キリーノ・クリスティアーニ) - 世界最初の長編切り紙アニメーションと言われる。
- 『煙り草物語』(1926、日本、大藤信郎)[5]
- 『漫画 二つの世界』(1929、日本、村田安司)[5]
- 『体育デー』(1932、日本、村田安司)[5]
- 『くじら』(1953、日本、大藤信郎)[6]
- 『ファンタスティック・プラネット』 (1973、フランス、ルネ・ラルー)
- 『旅』(1973、日本、川本喜八郎)
- 『詩人の生涯』(1974、日本、川本喜八郎)
- 『霧につつまれたハリネズミ』(1975、ソビエト連邦、ユーリ・ノルシュテイン)
- 『クラバート』(1977、チェコスロバキア、カレル・ゼマン)
- 『サウスパーク/無修正映画版』(1999、アメリカ)
- 『戦場でワルツを』(2008、イスラエル)
- 『燃える仏像人間』(2013、日本) - ゲキメーション[注 1]
- 『生きのびるために』(2017、カナダ=アイルランド=ルクセンブルク)
- 『バイオレンス・ボイジャー』(2019、日本) - ゲキメーション
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テレビ
- 『空飛ぶモンティ・パイソン』(1969 - 1974、イギリス、テリー・ギリアム)[7]
- 『妖怪伝 猫目小僧』(1976、日本) - ゲキメーション
- 『ブルーズ・クルーズ』(1996 - 2006、アメリカ)
- 『サウスパーク』(1997 - 、アメリカ)
- 『アンジェラ・アナコンダ』(1999 - 2002、カナダ)
- 『化物語』(2009)の劇中パートと『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)のプロダクションデザイン(日本、劇団イヌカレー)
- 『闇芝居』(2013、日本) - 紙芝居風のアニメ
- 『おっはよー!アンクル・グランパ』(2013 - 2017、アメリカ)
- 『影鰐-KAGEWANI-』(2015、日本) - 紙芝居風のアニメ
- 『妖怪シェアハウス』(2020・2022、日本)- ストーリーに関連する伝説をゲキメーションで制作
- 『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(2020 - 、日本)- オープニングをゲキメーションで制作
- 『ちみも』(2022、日本) - デジタル作画と併用する形で制作[8]。
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関連項目
脚注
注釈
出典
- ^ a b "カットアウトアニメーション ... 切り抜いた絵を平らな台の上で動かし、その様子を真上からカメラで撮影する手法" 以下より引用。NHK. (2024). 第16回 マンガとアニメーション - 理解度チェック. NHKテレビ 高校講座 芸術 美術Ⅰ.
- ^ "どんなに優れた3Dアニメーターであっても、キャラクターのリギングが貧弱であれば、本来のスキルを発揮することは難しい。" 以下より引用。小村. (2020). キャラクターの魅力をモーションで伝えきる!「VR空間におけるキャラクターの自然な存在感を実現する方法」|CGWCCレポート(8). CGWORLD.
- ^ "イラストレーターさんから絵の素材が来ますので、イラストレーターの方や弊社スタッフに“瞳”“まぶた”“口”のようにパーツ分けをしてもらいます。" ナカジマ 2021 より引用。
- ^ "Live2Dデザイナー ... パーツの動きを組み合わせていかに立体的に見えるようにするかを調整していきます。" ナカジマ 2021 より引用。
- ^ a b c d こども映画館 スクリーンで見る日本アニメーション!(高知県立美術館)
- ^ 大藤信郎について -短い評伝-(公益社団法人 映像文化製作者連盟)
- ^ Malbus Moma (2015-11-25), Terry Gilliam explains Monty Python animations 2019年7月23日閲覧。
- ^ “海外のアニメ制作フローを日本でも。TVアニメ『ちみも』『東京24区』における、Toon Boomツールの活用例〜CGWCC 2022”. CGWORLD.jp (2023年4月7日). 2023年5月1日閲覧。
参考文献
切り紙アニメーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 16:12 UTC 版)
「日本のアニメーション」の記事における「切り紙アニメーション」の解説
切り紙アニメーションとは主に切り紙を背景の上に置き、各部分を少しずつ動かしながらコマ撮りにし連続映写したアニメーション。後に、20世紀初頭ではまだ高価だったセル画を用いたアニメーションに移行していくが、それまでに日本のアニメーションの中心をなした手法である。日本最古のアニメーション作品は何かについては諸説あるが、現存し、見ることのできる中で最も古い作品である『なまくら刀』(1917年)はこの切り紙アニメーションを主とし、一部に影絵アニメーションの手法も用いて作られていることが確認できる。 切り紙アニメーションの制作者として特に著名な人物として村田安司をあげることができる。アメリカでは急速にセルの普及が進み、日本においてもアニメーション制作に使われ始めたが未だ高価であった、いわゆる境目にあたる時期に時代遅れになりつつあった切り紙アニメーションの手法を追求し続けた作者と言える。現在見ることのできる作品も比較的多く残っている。 また、大藤信郎は、後に影絵アニメーションにおいて海外において複数の賞を受賞する作品を生み出すが、その初期においては切り紙アニメーションを数多く制作しており、切り紙に千代紙を使った独特のアニメーションを制作している。
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