影絵アニメーションとは? わかりやすく解説

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影絵アニメーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/26 15:09 UTC 版)

荒井和五郎『お蝶夫人の幻想』の1シーン(1940)

影絵アニメーション(かげえアニメーション)とは、キャラクターを黒い影絵として描くアニメーションのこと。方法は様々だが、関節が動くようにつなげた切り紙に後ろから光を当てて撮影する方法が一般的。影絵芝居の影響を受けているが、技術的には多くの点で異なっている。シルエットアニメーションSilhouette animation)と呼ばれることもある。

歴史

ヨーロッパの影絵アニメーションは、影絵芝居(オンブル・シノワーズ)とシルエットエティエンヌ・ド・シルエットヨハン・カスパー・ラヴァーター)にインスパイアされて同時多発的に生まれたものと思われる。1909年にイギリス映画監督チャールズ・アームストロングの短編『The Sporting Mice』(1909年)を作ったが、現存している最も古いものは同監督の『The Clown and His Donkey』(1910年)である。この作品は背景が黒く、キャラクターは白い影絵になっている。一方、ドイツではロッテ・ライニガーが処女作『Das Ornament des verliebten Herzens』(1919年)を作り、こちらはキャラクターが黒い影絵で、現在の影絵アニメーションのスタイルを確立させたと言える[1]。そのライニガーの『アクメッド王子の冒険英語版』(1926年)は世界初の長編影絵アニメーションで、世界中に影絵アニメーションへの関心を呼び起こさせた。日本ではその2年後に、鈴木俊夫が『四十人の盗賊』(1928年)を作ったが、それ以前にも『蟹満寺縁起』(1924年、監督:奥田秀彦、内田吐夢木村白山)という影絵アニメーションが存在していた[2]

今日、純粋なプロの影絵アニメーション映画は稀で、専門のアニメーターも少ない。しかし、デジタルで作られた影絵アニメーションが『サウスパーク』(1997年 - )、『Mona the Vampire』(1999年 - 2003年。カナダのテレビアニメシリーズ)、『さよなら絶望先生』(2007年)、ゲームの『ドンキーコング リターンズ』(2010年)などで部分的に使われている。

技法

ライニガーが開発した伝統的な影絵アニメーションの技法は切り紙アニメーションの応用である。まず、紙や板金で作られた切り絵を、糸や針金、留め金具で接合する。それを撮影台の上に乗せ1コマ1コマ撮影する。多少の相違はあるが、大藤信郎やブルーノ ・ベットゲの影絵アニメーションはそうした技法で作られた[3]。一方、ミッシェル・オスロのテレビシリーズ『Cine si』(1989年)は少し異なり、切り紙アニメーションとセル画を組み合わせ、さらに実写クレイアニメも使われている(このシリーズは再編集されて長編アニメーション『プリンス&プリンセス』として公開された)[4]

近年はコンピュータアニメーションで影絵アニメーションが作られている。オスロは『アズールとアスマール英語版』(2006年)の1シーンで3Dレンダリングを使っている。アカデミー賞短編アニメ映画賞にノミネートされた『ジャスパー・モレロの冒険英語版』(2005年)では2Dのキャラクターと3Dの背景で作られている。また、Jan Koesteの『Our Man In Nirvana』(2006年)と『ジャングル・ブック2』(2003年)はインドネシアの影絵芝居ワヤン・クリで使われる操作棒をコンピューターアニメーションでわざわざ再現している。

カラー

影絵アニメーションは当初モノクロで表現されることが多かったが、ライニガーは『ジャックと豆の木』(1955年)でフルカラーの背景を用いた。着色した半透明の「キャンディーの包み紙」がステンドグラス的な効果を生んだ。『 Aucassin et Nicolette』(1976年)では半透明のプラスチック片で作られたカラーパレットを使用した[5]

後の映画監督たちは、「アクメッド王子の冒険」を真似て、背景は1色か2色、そのトーンを変えて使うカラーの影絵アニメーションを作った。キャラクターもフルカラーにすると切り紙アニメーションになるが、キャラクターが横向きの場合に限り「カラーの影絵アニメーション」と呼ばれることある。

代表的な影絵アニメーション

関連項目

脚注

  1. ^ Jouvanceau, Pierre (2004). The Silhouette Film. Pagine di Chiavari. trans. Kitson. Genoa: Le Mani. ISBN 88-8012-299-1 
  2. ^ [1]
  3. ^ [2]
  4. ^ Pilling, Jayne (2001). “The storyteller”. 2D and Beyond. Animation. Hove: RotoVision. pp. 100–109, 153. ISBN 2-88046-445-5. https://archive.org/details/animation2dbeyon0000pill/page/100 
  5. ^ [3]

影絵アニメーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 16:12 UTC 版)

日本のアニメーション」の記事における「影絵アニメーション」の解説

影絵アニメーションとは切り紙アニメーション応用で、主に切り紙後ろから光を当てることで出来シルエット少しずつ動かしながらコマ撮りにし連続映写したアニメーション日本においては江戸時代から影絵遊び存在し明治時代には影絵芝居講演行われていたことから、影絵アニメーションが受け入れられやすい地盤があったと考えられる日本のアニメーション作品の中で現存している最古作品である『なまくら刀』(1917年)においても、中心切り紙アニメーションであるが、侍が深夜辻斬りをするシーン一部に影絵アニメーションが使われている。 日本の影絵アニメーションの中で特に著名な作品残した人物として大藤信郎をあげることが出来る。元々は切り紙アニメーション千代紙使ったアニメーションで有名であった大藤信郎だが、セルアニメーション中心に制作する時期経て後年は影絵アニメーションを数多く制作したなかでも第二次世界大戦後制作された『くじら』(1952年)や『幽霊船』(1956年)では、色セロファン使用したカラー影絵アニメーションがステンドグラス動いているかのような独特の映像となっており、前者1958年カンヌ映画祭短編部門第二位を、後者1956年ヴェネチア国際記録映画特別賞受賞している。

※この「影絵アニメーション」の解説は、「日本のアニメーション」の解説の一部です。
「影絵アニメーション」を含む「日本のアニメーション」の記事については、「日本のアニメーション」の概要を参照ください。

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