謡本とは? わかりやすく解説

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うたい‐ぼん〔うたひ‐〕【謡本】

読み方:うたいぼん

謡曲詞章書き節付けの譜を傍記した本。謡曲謡うためのテキストで、時代流儀により体裁多様


謡本

読み方:ウタイボン(utaibon)

謡曲詞章書き、その脇に節付を示す符号付した稽古テキスト

別名 うたいの本


謡本〈百二十番/(車屋本)鳥養道晰筆〉

主名称: 謡本〈百二十番/(車屋本)鳥養道晰筆〉
指定番号 2006
枝番 00
指定年月日 1960.06.09(昭和35.06.09)
国宝重文区分 重要文化財
部門種別 書跡・典籍
ト書
員数 21
時代区分 桃山
年代
検索年代
解説文: 桃山時代作品

謡本〈百二十番/(車屋本)鳥養道晰筆〉

主名称: 謡本〈百二十番/(車屋本)鳥養道晰筆〉
指定番号 2022
枝番 00
指定年月日 1960.06.09(昭和35.06.09)
国宝重文区分 重要文化財
部門種別 書跡・典籍
ト書
員数 24
時代区分 桃山
年代 1596
検索年代
解説文: 桃山時代作品
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書跡・典籍:  諸経要集  講周易疏論家義記断簡  謡本  謡本  讃岐入道集  豊後国風土記  豊浦宮法楽和歌

謡曲

(謡本 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/25 01:45 UTC 版)

謡曲(ようきょく)とは、の詞章のこと。 演劇における脚本に相当する。本来、「」と言われていたものが、大正昭和初期から「謡曲」とも称するようになった[1]。謡曲は「謡の曲」という意味であり、この項目では便宜上能の声楽部分に当たる謡については措き、テキストとしての能の詞章やそれを収めた書籍について取り上げる。謡についてはの項参照。

概要

能は古くは自作自演が原則であり、その台本ともいえる謡曲は現存する曲や廃曲になったものも含めると、その数は約二千番にのぼり、その大部分が江戸時代以前に作られたものである。しかし作者に関しては不明のものが多く、現在その中の二、三割程度が観阿弥世阿弥金春禅竹などの作者の確定できるものとされている。ただしそれらの曲の中には、その以前からあった曲を改作したり、内容を補ったりした曲もあったという。世阿弥の自筆本はいくつか現存しており、本文は片仮名で記されている。

謡曲は台詞と地の文とで構成され、その文章は古歌・古詩などの引用、縁語掛詞枕詞序詞といった修辞技法を駆使した和文体である。だがその本文はさらに「小段」と呼ばれる細かい単位に分けることができる。たとえば能『高砂』を例にあげると、その冒頭は次のような「小段」になっている。『高砂』の内容については高砂 (能)を参照。

〔真ノ次第〕〈次第〉ワキ・ワキツレ「今を始めの旅衣、今を始めの旅衣…(以下略、以後も同様)
〈名ノリ〉ワキ「抑も是は九州肥後国、阿蘇の宮の神主…
〈上歌〉ワキ・ワキツレ「旅衣、末遥々の都路を、末遥々の都路を…
〈着キゼリフ〉ワキ「急ぎ候間、播州高砂の浦に着いて候…

〔真ノ次第〕以下括弧で括られているのは「小段」の名である。〔真ノ次第〕〈次第〉というのは、曲の最初にワキが登場するための囃子と謡であり、それに続く〈名ノリ〉というのは、そのワキが自分は何者でどうしたわけでここに登場したのかを述べる部分である。〈上歌〉とは謡の旋律の一種であり、〈着キゼリフ〉は曲中で登場人物が目的地に着いたことを述べるもの。これは『高砂』以外のほかの曲目であっても、能楽師はその曲目に〈次第〉という「小段」があれば、すべてほぼ同じ旋律でもってそれを謡い、〈名ノリ〉とあればその定められた型でもって自分のことを述べる。要するにシテ・ワキをはじめとする舞台に立つ能楽師は(アイも含めれば狂言師も)、どんな曲目でも謡曲の本文に何々の「小段」とあれば、それに従ってその通りに演じるようになっている。「小段」は謡だけのもの、囃子だけのもの、舞だけのもの、せりふだけのもの、またそれらを組み合わせたものなどその種類は数十種類に及ぶ。上の『高砂』の冒頭で見ると〔真ノ次第〕が囃子、〈次第〉と〈上歌〉が謡、〈名ノリ〉と〈着キゼリフ〉がせりふということになる。そしてそれら「小段」を始めから終りまでモザイクのように積み重ねることによって、ひとつのストーリーにしているのである。能すなわち謡曲はすべてこのように構成されており、それゆえに現在の演劇の脚本と違って「小書」(こがき)と呼ばれる特殊演出を曲中に付け加えたり、また半能のように謡曲の前半部分を大幅にカットして後半の舞中心に演じるなど、内容を抜き差しすることが容易となっている。

謡本

安土桃山時代から寛永期になると武士、町人が能を愛好し、またその声楽部分を独立させた謡は空前の流行を見るようになり、謡本(うたいぼん)も各流派家元の認可によるものが発行されるようになった。謡本とは、謡の稽古の際に用いる謡曲の詞章、節付を記した本のことで、古くは「能の本」とも呼ばれた。謡本の中には、嵯峨本と呼ばれる豪華なものが発行されたりもした(俵屋宗達下画、本阿弥光悦筆の版下によるもの)。

謡本は江戸時代には当時よく知られた曲目を「内組」(うちぐみ)、あまり知られていないものを「外組」(そとぐみ)と称して出版されていたが、当時すでに舞台で演じられなくなった番外曲と呼ばれるものも出されており、合せて六百番近い数の謡本が出版されている。このうち江戸時代を通してもっとも流布したのは観世流の謡本であった。謡本の発行権は江戸期以降、各流儀の家元に帰属するのがたてまえになっているが、観世流のような大きな流派では、家元以外の有力な職分家の認可によるものも発行されており、過去訴訟問題が起こったこともある(矢来観世家の項参照)。

謡本にはアイの台詞やアイとワキとのやりとりは省略されており、ト書に相当するものもなく、完全な上演台本とはいえない。これは謡本が通常、謡を学ぶための稽古本とされているからである。ただし能の舞台進行を知る上では非常に役に立つ。なお能楽師の芸の伝習は口伝によるため謡本を必要としない。

現在、謡曲の流儀として謡本を発行しているのは以下の六流である(シテ方五流、ワキ方一流)。

  • シテ方
観世流
宝生流
金剛流
金春流
喜多流
  • ワキ方
下掛宝生流

刊行本

『謡曲大観』(佐成謙太郎)明治書院、1930 - 1931年。 

『謡曲大観』(佐成謙太郎、復刊)明治書院、1953 - 1954年。 

『謡曲大観』(佐成謙太郎、影印版)明治書院、1982年。 

脚注

  1. ^ 横井春野『謡曲と能楽通』四六書院〈通叢書 32〉、1930年https://dl.ndl.go.jp/pid/1179277/1/16 

参考文献

  • 西野春雄校注 『謡曲百番』〈『新日本古典文学大系』第57巻〉 岩波書店、1998年
  • 西野春雄・羽田昶編 『能・狂言事典』 平凡社、1999年

謡本

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/27 03:39 UTC 版)

謡曲」の記事における「謡本」の解説

安土桃山時代から寛永期になると武士町人が能を愛好し、またその声楽部分を独立させた謡は空前流行を見るようになり、謡本(うたいぼん)も各流派家元認可よるもの発行されるようになった。謡本とは、謡の稽古の際に用い謡曲詞章、節付を記した本のことで、古くは「能の本」とも呼ばれた。謡本の中には嵯峨本呼ばれる豪華なものが発行されたりもした(俵屋宗達下画、本阿弥光悦筆の版下よるもの)。 謡本は江戸時代には当時よく知られ曲目を「内組」(うちぐみ)、あまり知られていないものを「外組」(そとぐみ)と称して出版されていたが、当時すでに舞台で演じられなくなった番外曲と呼ばれるものも出されており、合せて六百番近い数の謡本が出版されている。このうち江戸時代通してもっとも流布したのは観世流の謡本であった。謡本の発行江戸期以降、各流儀家元帰属するのがたてまえになっているが、観世流のような大きな流派では、家元以外の有力な職分家の認可よるもの発行されており、過去訴訟問題起こったこともある(矢来観世家の項参照)。 謡本にはアイ台詞アイワキとのやりとり省略されており、ト書相当するものもなく、完全な上演台本とはいえない。これは謡本が通常、謡を学ぶための稽古本とされているからである。ただし能の舞台進行を知る上では非常に役に立つ。なお能楽師の芸の伝習口伝によるため謡本を必要としない。 現在、謡曲流儀として謡本を発行しているのは以下の六流である(シテ方五流ワキ方一流)。 シテ方 観世流 宝生流 金剛流 金春流 喜多流 ワキ方 下掛宝生流

※この「謡本」の解説は、「謡曲」の解説の一部です。
「謡本」を含む「謡曲」の記事については、「謡曲」の概要を参照ください。

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