世界保健機関 世界保健機関の概要

世界保健機関

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/30 03:22 UTC 版)

世界保健機関
ロゴマーク
世界保健機関旗
概要 専門機関
略称 英語: WHO
フランス語: OMS
代表 テドロス・アダノム
状況 活動中
活動開始 1948年
本部 スイスジュネーヴ
公式サイト www.who.int
United Nations World Health Organisation
Portal:国際連合
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1948年設立。本部はスイスジュネーヴ。設立日である4月7日は、世界保健デーになっている[1]。シンボルマークは、世界地図をオリーブの葉が取り巻く国際連合旗の中心に、医療の象徴であるアスクレピオスの杖の巻き付いた)をあしらったものである。

WHOでは「健康」を「身体的、精神的、社会的に完全な良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」(WHO憲章前文)と定義しており、非常に広範な目標を掲げている。そのために、病気の撲滅のための研究、適正な医療医薬品の普及だけでなく、基本的人間要請(basic human needs、BHN)の達成や健康的なライフスタイルの推進にも力を入れている。

略称は英語式(WHO)と仏語式、スペイン語式、ポルトガル語式(OMS)で異なる。日本をはじめ多くの国では英語略称のWHO(ダブリュー・エイチ・オー)が多用される[注 1](以下「WHO」と表記する)。

歴史

全世界的な公衆衛生や健康に関する最初の国際的機関は、1907年12月に発足した国際公衆衛生事務局英語版である。本部をパリに置いたこの機関は、12カ国が「公衆衛生国際事務局設置に関する千九百七年のローマ協定」[3]に調印することによって発足し、当初はヨーロッパだけを対象としたものだったのが、第一次世界大戦の勃発する1914年までには60カ国が参加するまでになっていた。第一次世界大戦後、発足した国際連盟は国際公衆衛生の専門機関として国際連盟保健機関(League of Nations Health Organization)を発足させたが、国際公衆衛生事務局は原調印国であるアメリカ合衆国が国際連盟に不参加を決めたため、連盟とは別組織のままで存続することとなった。第二次世界大戦後、新たな健康に関する国際機関の設立が提唱され、1946年7月22日に国連経済社会理事会が世界保健機関の憲章を採択。国際連盟保健機関や国際公衆衛生事務局を解散して、1948年4月7日に世界保健機関が設立された[4]。日本は1956年の国際連合加盟に先立つ1951年5月にWHOに加盟した[1]

天然痘の撲滅

WHOの功績の中でももっとも輝かしいものは、天然痘の撲滅に成功したことである。天然痘は非常に高い致死率を持ち世界各地で多大な死者を出した病気であったが、症状が明確に判別できるため対処しやすく、ヒト以外に感染することがないため人間のみの対策で対処でき、さらに種痘による完全な予防法が確立されていたことから、撲滅は原理的には可能であると考えられていた。こうしたことから、1958年に総会でソ連の生物学者ヴィクトル・ジダーノフが提案[5]した「世界天然痘根絶決議」の全会一致の可決で撲滅計画は始まったが、当初は人類すべてへの種痘による撲滅を目指していたため、医療や行政の整っていない発展途上国においては対策が行き届かず、撲滅にはほど遠い状態がつづいていた。そこでよりこの計画を推進するため、1967年には特別予算が組まれるとともに、10年後の1977年までに天然痘を撲滅させることが明確に謳われた。このときに方針が転換され、流行地域において賞金を懸けることで患者を発見し、患者が見つかるとその患者に接触した人物を根こそぎ調べ上げて徹底的にその周囲で種痘を行う、いわゆる封じ込め政策へと移行した[6]。このとき、世界には天然痘の患者が1000万から1500万人いると推定されていた。しかし、この封じ込め政策は功を奏し、患者数は激減していった。1970年代に入ると南アジア南アメリカで相次いで撲滅が宣言され、1977年ソマリアで発見された患者を最後に天然痘は地球上から姿を消した。そして、患者が発生しなくなってから3年後の1980年、WHO総会は天然痘の撲滅を正式に宣言した[7]

ポリオやその他感染症の撲滅計画

天然痘を撲滅したWHOが次に撲滅の目標に定めたのは急性灰白髄炎(ポリオ)だった。1988年には「世界ポリオ撲滅計画(Global Polio Eradication Initiative)」が開始され、2000年までのポリオ撲滅が謳われた[8]。しかしその後計画は難航し、2018年6月現在、いまだパキスタンアフガニスタンナイジェリアコンゴ民主共和国の4か国においてポリオ患者が発生している状態となっている[9]。さらに2018年にはパプアニューギニアでアウトブレイクが起こりプロジェクトが実施されている[10]。このほか、1995年には「アフリカ・オンコセルカ症対策計画(African Programme for Onchocerciasis Control)」が開始され、オンコセルカ症(河川盲目症)の撲滅が進められている[11]

多剤耐性菌について

WHOは2017年2月27日に多剤耐性菌の警戒リストを初めて公開した。このリストによると、最も危険度が高いものとして『アシネトバクター緑膿菌エンテロバクター』が挙げられた。その次に危険な物として『ヘリコバクター・ピロリサルモネラ』などが挙げられた。WHOは新たな抗生物質の開発を急ぐとともに抗生物質の適切な使用を呼びかけている。[1]

その他近年の動向

2022年11月21日にパンデミックや感染の集団発生を引き起こす危険性があり優先的に監視すべき病原体の新たなリストを作成すると発表した[12]。また同月28日にはサル痘の英語名称を「mpox(エム痘)」に変更すると発表した[13]

活動内容

  • 世界保健機関憲章第1条「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的とする。
  • 情報の収集公開や国際基準の設定(国際疾病分類(ICD)の作成など)。
  • 多国間協力の推進。
  • 災害時緊急対策。
  • 感染症対策(痘瘡根絶・拡大予防接種対策)。
  • 都市に住む人の健康を守り、生活の質を向上させるため、WHO健康都市に対する取り組みの推進。

注釈

  1. ^ WHO は「ダブリュー・エイチ・オー」とイニシャル読みするのが正しく、「フー」とアクロニム読みにはしない。しかし、辞書によっては「フー」という表記も見られる[2]

出典

  1. ^ a b https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kokusai/who/index.html 「日本とWHO」日本国厚生労働省 2020年5月12日閲覧
  2. ^ 医師の転職支援「専門医局」サイトの用語集に「WHO(フー)」として、世界保健機関の記載がある。
  3. ^ 日本国外務省、公衆衛生国際事務局設置に関する千九百七年のローマ協定 (PDF)
  4. ^ 「世界地理大百科事典1 国際連合」p322-323 2000年2月1日初版第1刷 朝倉書店
  5. ^ Fenner, Frank (1988). “Development of the Global Smallpox Eradication Programme” (PDF). Smallpox and Its Eradication (History of International Public Health, No. 6). Geneva: World Health Organization. pp. 366-418. ISBN 92-4-156110-6. http://whqlibdoc.who.int/smallpox/9241561106_chp9.pdf 
  6. ^ 「人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を越えて」p24 加藤茂孝 丸善出版 平成25年3月30日発行
  7. ^ 「世界地理大百科事典1 国際連合」p330 2000年2月1日初版第1刷 朝倉書店
  8. ^ http://idsc.nih.go.jp/disease/polio/yobou.html#whoprogram 「ポリオ」感染症情報センター 2020年5月12日閲覧
  9. ^ https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2018/06191125.html 「ポリオの状況-2018年6月12日現在」日本国厚生労働省検疫所FORTH 2018年 2020年5月12日閲覧
  10. ^ https://www.forth.go.jp/topics/201903110002.html 「伝播型ワクチン由来Ⅰ型ポリオウイルス-パプアニューギニア」日本国厚生労働省検疫所FORTH 2019年 2020年5月12日閲覧
  11. ^ https://atm.eisai.co.jp/ntd/onchoserciasis.html 「河川盲目症」エーザイ株式会社 2020年5月12日閲覧
  12. ^ 世界的流行の恐れある病原体 WHOが新リスト作成へ”. www.afpbb.com. 2022年12月11日閲覧。
  13. ^ サル痘を「エム痘」に WHO、名称変更へ”. www.afpbb.com. 2022年12月11日閲覧。
  14. ^ World Health Organization > Health Topics > Data>Data Repository > By Theme
  15. ^ World Health Organization > Health Topics > Data>Data Repository > By Indicator
  16. ^ World Health Organization > Health Topics > Data>Data Repository > By Theme > Mortality and Global Health Estimates
  17. ^ World Health Organization > Health Topics > Data>Data Repository > By Theme > Mental Health
  18. ^ World Health Organization > Health Topics > Data>Data Repository > By Theme > Health Financing
  19. ^ World Health Organization > Publications
  20. ^ World Health Organization > Publications > World health Statistics
  21. ^ https://www.mhlw.go.jp/bunya/kokusaigyomu/who/ 「WHO総会について」日本国厚生労働省 2020年5月12日閲覧
  22. ^ https://www.mhlw.go.jp/bunya/kokusaigyomu/who/eb.html 「WHO執行理事会について」日本国厚生労働省 2020年5月12日閲覧
  23. ^ 「世界地理大百科事典1 国際連合」p324-325 2000年2月1日初版第1刷 朝倉書店
  24. ^ a b https://www.unic.or.jp/info/un/unsystem/specialized_agencies/who/ 「世界保健機関」国際連合広報センター 2020年5月16日閲覧
  25. ^ Countries”. 2016年6月1日閲覧。
  26. ^ a b https://www.japan-who.or.jp/commodity/soshiki.html 「WHOの組織について」公益社団法人日本WHO協会 2020年5月16日閲覧
  27. ^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/04_hakusho/ODA2004/html/siryo/sr3320012.htm 「政府開発援助(ODA)白書 2004年版 資料編 第3章 第3節12 世界保健機関(WHO:World Health Organization)」日本国外務省 2020年5月11日閲覧
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  29. ^ WHO | Programme Budget Web Portal”. open.who.int. 2020年5月12日閲覧。
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