華厳経 内容

華厳経

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/20 16:56 UTC 版)

内容

「ヴァイローチャナ・ブッダ」という仏が本尊として示されている。「ヴァイローチャナ・ブッダ」を、「太陽の輝きの仏」と訳し、「毘盧舎那仏」と音写される。毘盧舎那仏は、真言宗の本尊たる大日如来と同一の仏である。

華厳経にも、如来蔵思想につながる発想が展開されている[6]

陽光である毘盧舎那仏の智彗の光は、すべての衆生を照らして衆生は光に満ち、同時に毘盧舎那仏の宇宙は衆生で満たされている。これを「一即一切・一切即一」とあらわし、「あらゆるものは無縁の関係性(縁)によって成り立っている」ことで、これを法界縁起と呼ぶ。

「六十華厳」の中で特に重要なのは、最も古層に属する「十地品」[7]と「入法界品」の章とされている。

  • 「十地品」には、菩薩が踏み行なうべき十段階の修行が示されていて、そのうち六番目までは自利の修行が説かれ、七番目から十番目までが利他行が説かれている。
  • 「入法界品」には、善財童子(ぜんざいどうじ)という少年が、人生を知り尽くした53人の人々を訪ねて、悟りへの道を追究する物語[8]が述べられている。

天台宗の開祖、隋の智顗の見解では、この経典釈迦の悟りの内容を示しているといい、智顗は五時八教の教相判釈で、華厳経を釈迦が成道後まもなく悟りの内容を分かり易くせずにそのまま説いた経典で粗削りの教えであるとした。対して唐の法蔵は『華厳五教章』において、五教十宗判の教相判釈を行い、華厳の教えを最高としている。

邦訳

全訳

抜粋訳・編訳

  • 荒牧典俊訳注 『十地経 大乗仏典8』 中央公論社、新版1980年。中公文庫(改訂版)、2003年
  • 高崎直道訳注 『如来蔵系経典「華厳経如来性起品」 大乗仏典12』 中央公論社、新版1980年。中公文庫(改訂版)、2004年
  • 木村清孝訳著 『華厳経』 筑摩書房〈仏教経典選5〉、1986年 - 浄行品 夜摩天宮菩薩説偈品 十地品(抄) 入法界品(抄)
  • 原田霊道 『現代意訳 華厳経』 書肆心水、2010年、新装版2016年
  • 鎌田茂雄 『和訳 華厳経』 東京美術、1995年
  • 中村元代表 『現代語訳大乗仏典5 『華厳経』『楞伽経』』 東京書籍、2003年
  • 大角修 『善財童子の旅 現代語訳 華厳経「入法界品」』 春秋社、2014年

ドイツ語訳

全訳

  • 土井虎賀寿訳 DAS KEGON SUTRA 東大寺の委嘱により漢訳からの重訳(全4巻)独訳華厳経刊行会1983年 c/o土井 佐保

  1. ^ 「華厳経」 - 世界大百科事典 第2版、平凡社
  2. ^ 『ガンダヴィユーハ・スートラ』(Gaṇḍavyūha Sūtra)は、「入法界品」のサンスクリット原題でもある。
  3. ^ 『華厳の思想』 鎌田茂雄 講談社学術文庫 p44
  4. ^ 華厳経 - ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
  5. ^ 藤谷厚生, 「金光明経の教学史的展開について (PDF) 」『四天王寺国際仏教大学紀要』 平成16年度 大学院 第4号 人文社会学部 第39号 短期大学部 第47号, p.1-28(p14), NAID 110006337539
  6. ^ 「華厳経如来性起品」を参照(『大乗仏典12 如来蔵系経典』に収録。高崎直道訳注、中央公論社のち中公文庫)
  7. ^ 十地品の成立年代は、紀元1世紀から2世紀頃とされる。『仏典解題事典 第二版』(春秋社、1977年)や、『大蔵経全解説大事典』(雄山閣出版、1998年)を参照
  8. ^ 絵巻の関連出版は『華厳五十五所絵巻』がある。『続日本の絵巻.7』(小松茂美編、中央公論社、1990年)や、『新修日本絵巻物全集.25』(田中一松編、角川書店、1979年)を参照。


「華厳経」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  華厳経のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「華厳経」の関連用語

1
一念不生 歴史民俗用語
90% |||||

2
華厳経の四菩薩 ウィキペディア小見出し辞書
74% |||||

3
抜粋訳・編訳 ウィキペディア小見出し辞書
74% |||||

4
華厳経の位置づけ ウィキペディア小見出し辞書
58% |||||

5
慧苑 世界宗教用語
56% |||||

6
李通玄 世界宗教用語
52% |||||

7
円教 世界宗教用語
52% |||||

8
寿量品 世界宗教用語
52% |||||

9
新羅写経 世界宗教用語
52% |||||

10
華厳経と盧舎那仏 ウィキペディア小見出し辞書
36% |||||

華厳経のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



華厳経のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの華厳経 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2023 GRAS Group, Inc.RSS