源氏 公家源氏

源氏

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/04 14:12 UTC 版)

公家源氏

天皇の皇子が降下することを、「一世の源氏」といい、任官の上で大いに優遇された。嵯峨天皇の子である源定源融仁明天皇の子である源冷は父天皇の意向で親王の例に準じて内裏において元服を行っており、親王に準じた待遇を受けた。その後、陽成天皇の退位後の後継選定で藤原基経が源融を退けて光孝天皇を即位させ、光孝天皇が崩御するとその基経が臣籍に降下した源定省を復籍させて宇多天皇として即位させるなど、同じ天皇の子でも親王と一世源氏の区別の明確化を迫られる事態が発生し、宇多天皇以降の儀式書では親王の元服と一世源氏の元服では異なる作法が記されるようになる。しかし、その後も規模を小さくしながらも内裏で元服を行い、内蔵寮から饗宴や引出物が用意された醍醐天皇の子である源高明源兼明の元服など一世源氏の特殊性が完全に排除されることはなかった(内蔵寮は天皇の私的な支出を扱う官司であり、一世源氏の元服を公的行事から天皇主催の私的行事に切り替えることで特殊性を維持したとみられる)。『源氏物語』において、桐壺帝が一世源氏である光源氏の元服を自ら主導して、引出物も自ら準備している(費用も桐壺帝の負担と考えられる)のも、一世源氏の特殊性が描かれた場面と言える[9]。皇孫に至って臣籍降下することを「二世の源氏」といい、一世の源氏よりも家系的には不利を蒙ったといわれる。しかしどちらにせよ、一部の家系をのぞいてはその地位を子孫に伝えることは難しかった。しかし、天皇が代を重ねていくに従い、父祖の代の源氏とは血縁が離れていくため、天皇の「ミウチ」としての関係も薄れていくのが常であった[10]。3代目以降も上級貴族であり続けた例は少なく、中央で下級貴族として細々と生き延びるか、受領階級として地方へ赴任しそこで土着して武士化するか、完全に没落するかしかなかった[10]

中央貴族として栄えた源氏としては村上天皇の皇子を祖とする源師房中院流)流が知られる。師房は具平親王の子であり、「二世の源氏」であったが藤原頼通養子となったことがあり、さらに藤原道長の家系と重層的な縁戚関係を築いたことで「御堂末葉」、すなわち摂関家に準ずる家格と認識されるようになった[11]。嫡流久我家は上流貴族の地位を占め続け、一門の堂上家からは建久七年の政変で権力を掌握し「源博陸」と呼ばれた源通親や、後醍醐天皇第一の側近として南朝を指揮した北畠親房明治政府の重鎮となった岩倉具視を輩出している。このほか宇多源氏・清和源氏・花山源氏など一部の家系も堂上家として存続している。

堂上源氏

明治時代まで存続した、源氏の堂上家の一覧


注釈

  1. ^ 守邦親王は『尊卑分脈』、久明親王は『本朝皇胤紹運録』に源姓を賜与されたとの記載がある。

出典

  1. ^ 日本大百科全書 8』330-331頁、「源氏」の項目より。
  2. ^ 倉本一宏 2019, p. 12-13.
  3. ^ a b c 中村みどり 2015, p. 61.
  4. ^ 倉本一宏 2019, p. 12-15.
  5. ^ 倉本一宏 2019, p. 14-15.
  6. ^ 倉本一宏 2019, p. 21.
  7. ^ 倉本一宏 2019, p. 16-21.
  8. ^ a b 赤坂恒明 2015, p. 268-267.
  9. ^ 江渡俊裕「一世源氏元服に関する試論」小口雅史 編『律令制と日本古代国家』(同成社、2018年) ISBN 978-4-88621-804-9
  10. ^ a b 倉本一宏 2019, p. 15.
  11. ^ 倉本一宏 2019, p. 124-132.
  12. ^ Sansom, George (1958). A History of Japan to 1334. Stanford University Press. pp. 241–242, 247–252. ISBN 0804705232 
  13. ^ a b c d e f g h i j k l m 赤坂恒明 2015, p. 267.
  14. ^ 太田 1923, p. 57.
  15. ^ 塙 & 川俣 1930, p. 419.
  16. ^ 太田 1936, p. 4550.
  17. ^ 倉本一宏 2019, p. 248-249.
  18. ^ 太田 1934, p. 2233.
  19. ^ 赤坂恒明 2015, p. 259.
  20. ^ 倉本一宏 2019, p. 121-123.
  21. ^ 倉本一宏 2019, p. 123.
  22. ^ 倉本一宏 2019, p. 201-202.
  23. ^ 倉本一宏 2019, p. 202-203.
  24. ^ 倉本一宏 2019, p. 205-206.
  25. ^ a b 倉本一宏 2019, p. 207.
  26. ^ a b 倉本一宏 2019, p. 208.
  27. ^ a b 倉本一宏 2019, p. 208-209.
  28. ^ デジタル版 日本人名大辞典+Plus『源宗治』 - コトバンク
  29. ^ a b 倉本一宏 2019, p. 209-210.
  30. ^ 倉本一宏 2019, p. 210-211.
  31. ^ a b 倉本一宏 2019, p. 212.


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