華厳経
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/20 16:56 UTC 版)

経名は「大方広仏の、華で飾られた(アヴァタンサカ)教え」の意。「大方広仏」、つまり時間も空間も超越した絶対的な存在としての仏という存在について説いた仏典である。
元来は『雑華経』(ぞうけきょう、梵: Gaṇḍavyūha Sūtra, ガンダヴィユーハ・スートラ[2])、すなわち「様々な華で飾られた・荘厳された(ガンダヴィユーハ)教え」とも呼ばれていた[3]。
沿革
華厳経は、インドで伝えられてきた様々な独立した仏典が、4世紀頃に中央アジア(西域)でまとめられたものであると推定されている[4]。 華厳経全体のサンスクリット語原典は未発見であるが、「十地品」「入法界品」などは独立したサンスクリット仏典があり現代語訳されている。
漢訳完本として、
- 東晋の東晉天竺三藏佛馱跋陀羅 訳(418 - 420年)(『大方廣佛華嚴經』60巻(六十華厳)、旧訳または晋経、大正蔵278)
- 唐の于闐國三藏實叉難陀 訳(695 - 699年)(『大方廣佛華嚴經』80巻(八十華厳)、新訳または唐経、大正蔵279)
がある。
部分訳としては、
- 支婁迦讖訳 『仏説兜沙経』(大正蔵280) - 「如来名号品」「光明覚品」
- 支謙訳 『仏説菩薩本業経』(大正蔵281) - 「十住品」
- 聶道真訳 『諸菩薩求仏本業経』(大正蔵282) - 「十住品」
- 竺法護訳 『菩薩十住行道品』(大正蔵283) - 「十住品」
- 祇多蜜訳 『仏説菩薩十住経』(大正蔵284) - 「十住品」
- 竺法護訳 『漸備一切智徳経』(大正蔵285) - 「十地品」
- 鳩摩羅什訳 『十住経』(大正蔵286) - 「十地品」
- 尸羅達摩訳 『仏説十地経』(大正蔵287) - 「十地品」
- 竺法護訳 『等目菩薩所問三昧経』(大正蔵288) - 「十定品」
- 玄奘訳 『顕無辺仏土功徳経』(大正蔵289) - 「寿明品」(六十華厳)・「如来寿量品」(八十華厳)
- 法顕訳 『仏説較量一切仏刹功徳経』(大正蔵290) - 「寿明品」(六十華厳)・「如来寿量品」(八十華厳)
- 竺法護訳 『仏説如来興顕経』(大正蔵291) - 「性起品」
- 竺法護訳 『度世品経』(大正蔵292) - 「離世間品」
- 般若三蔵訳 『大方広仏華厳経入不思議解脱境界普賢行願品』(「四十華厳」、大正蔵293) - 「入法界品」
- 聖堅訳 『仏説羅摩伽経』(大正蔵294) - 「入法界品」
- 地婆訶羅訳 『大方広仏華厳経入法界品』(大正蔵295) - 「入法界品」
- 仏陀跋陀羅訳 『文殊師利発願経』(大正蔵296) - 「入法界品(末尾)」
- 不空訳 『普賢菩薩行願讃』(大正蔵297) - 「入法界品(末尾)」
等がある。
また、チベット語訳完本も存在し、チベット大蔵経の「カンギュル」(律・経蔵)の主要な一角を占めている。
中国では華厳経に依拠して地論宗・華厳宗が生まれ、特に華厳宗は雄大な重重無尽の縁起を中心とする独特の思想体系を築き、日本仏教史にも大きな展開を起こした。
上代日本へは、大陸より審祥が華厳宗を伝来し、東大寺で「探玄記」による「六十華厳」の講義を3年間に及び行なった。東大寺は今日まで華厳宗大本山である。
ネパールでは『十地経』と『入法界品』(Gaṇḍavyūha)がそれぞれ独立の経典として九法宝典(Navagrantha)に数えられている[5]。
構成
六十華厳経 | 八十華厳経 |
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- ^ 「華厳経」 - 世界大百科事典 第2版、平凡社
- ^ 『ガンダヴィユーハ・スートラ』(Gaṇḍavyūha Sūtra)は、「入法界品」のサンスクリット原題でもある。
- ^ 『華厳の思想』 鎌田茂雄 講談社学術文庫 p44
- ^ 華厳経 - ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
- ^ 藤谷厚生, 「金光明経の教学史的展開について (PDF) 」『四天王寺国際仏教大学紀要』 平成16年度 大学院 第4号 人文社会学部 第39号 短期大学部 第47号, p.1-28(p14), NAID 110006337539
- ^ 「華厳経如来性起品」を参照(『大乗仏典12 如来蔵系経典』に収録。高崎直道訳注、中央公論社のち中公文庫)
- ^ 十地品の成立年代は、紀元1世紀から2世紀頃とされる。『仏典解題事典 第二版』(春秋社、1977年)や、『大蔵経全解説大事典』(雄山閣出版、1998年)を参照
- ^ 絵巻の関連出版は『華厳五十五所絵巻』がある。『続日本の絵巻.7』(小松茂美編、中央公論社、1990年)や、『新修日本絵巻物全集.25』(田中一松編、角川書店、1979年)を参照。
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