定 定の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/12 18:50 UTC 版)

仏教用語
定, サマーディ
アヌラーダプラのサマーディ像(4-6世紀ごろ,世界遺産)
サンスクリット語 समाधि (samādhi)
中国語 三昧 , 三摩地 , 定
(拼音sān mó dì)
日本語
(ローマ字: じょう)
英語 concentration, one-pointedness of mind
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定すなわち三昧は、仏教の三学である・定・の一つであって、仏教の実践道の大綱である[1]。また、八正道の一つには正定が挙げられており、五根には定根が、五力には定力が挙げられている。[2][1]。定は五分法身中国語版の一つでもある[2]。定に反して心が散り乱れて動く状態を散といい、定散(じょうさん)と呼ばれる[1]

定は、もともと古代インドの宗教的実践として行われてきたものを仏教にも採用したもので、その境地の深まりに応じて様々な名称の定が説かれる[2]

定の異名

『総合佛教大辞典』よれば、禅定(静慮[3])、三昧などの語の含む範囲と、定のそれとの広狭に関しては種々の異説があるという[1]。それらの語は、広くは禅定といわれる[1]慧沼の『成唯識論了義灯』巻五本には定の異名が7つ挙げられている。それは、「三摩呬多」(等引)、「三摩地」(等持)、「三摩鉢底」(等至)、「駄那演那」(靜慮)、「質多翳迦阿羯羅多」(心一境性)、「奢摩他」(心(止))、「現法樂住」の七つである: [4]。それぞれは、サマーヒタ(: samāhita、等持)、サマーディ(: samādhi、三摩地、定)、サマーパッティ(: samāpatti、等至)、ディヤーナ(: dhyāna、禅那)、チッタイカーグラター(: cittaikāgratā、心一境性)、シャマタ(: śamatha、止)、ドリシュタ・ダルマ・スカ・ヴィハーラ(: dṛṣṭa-dharma-sukha-vihāra、現法楽住)である[1]

サマーディ

サマーディ (, : samādhi[5]) は、良くという意味の Sam と、置くという意味の Adhi であり、心を一定の対象に集中させることである[6]。定の強さによって、初心者の定、禅定の直前のもの、禅定を伴っているものに分けられる[6][要検証]

修得定と生得定

定には、修得定(しゅとくじょう)と生得定(しょうとくじょう)とがある[1]。修得定は、散地である欲界において、定を得るための修行を実践して得られる[1]。生得定は、定地である色界無色界に生まれることで自然に得られる[1]色界定の場合は、この二をそれぞれ生静慮・定静慮といい、無色定の場合は生無色・定無色という[1][要追加記述]


注釈

  1. ^ 竹村牧男によれば、部派仏教では人間は釈尊にはほど遠く、修行しても及ばないと考えられており、修行の最終の地位は阿羅漢であるという[24][25]
  2. ^ 荒牧典俊の訳注によれば、十地経のこの箇所がこのように説く定というのは、概念作用も感情も滅尽する最高位の禅定であって、非想非非想処に属するものであるという[要検証][27]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac 総合仏教大辞典編集委員会『総合佛教大辞典』法蔵館、2005年、687-689頁。ISBN 4-8318-7070-6 
  2. ^ a b c d (編集)中村元、田村芳朗、末木文美士、福永光司、今野達『岩波仏教辞典』(2版)岩波書店、2002年、513-514頁。ISBN 4-00-080205-4 
  3. ^ a b c d 吉瀬 勝「倶舎論における中間定解釈」『印度學佛教學研究』第31巻第1号、1982年、320-325頁、NAID 130004024564 
  4. ^ 『大正大蔵経』巻43、740頁
  5. ^ 『岩波 仏教辞典 第二版』401頁「三昧」
  6. ^ a b マハーシ長老 著、ウ・ウィジャナンダー 訳『ミャンマーの瞑想―ウィパッサナー観法』国際語学社、1996年、162頁。ISBN 4-87731-024-X 
  7. ^ Vism.84–85; PP.85
  8. ^ Buddhaghosa & Nanamoli 1999, p. 437.
  9. ^ Buddhaghosa & Nanamoli (1999), pp. 90–91 (II, 27–28, "Development in Brief"), 110ff. (starting with III, 104, "enumeration"). It can also be found sprinkled earlier in this text, as on p. 18 (I, 39, v. 2) and p. 39 (I, 107).
  10. ^ a b c d 長崎法潤「滅尽定について」(pdf)『大谷学報』第39巻第2号、1959年11月、64-76頁。 
  11. ^ a b c 服部弘瑞『原始仏教に於ける涅槃の研究』山喜房仏書林、2011年、610頁。ISBN 978-4796302135  該当ページでは受想滅[定]とあり、定 samāpatti が抜けた表記。
  12. ^ 桐山靖雄『人間改造の原理と方法―原始仏教から密教まで』平河出版社、1977年、198頁。  ASIN B000J8OBDK
  13. ^ a b c 太田蕗子「大乗菩薩道における無相と滅尽定の背景について」『印度學佛教學研究』第64巻第1号、2015年12月20日、402-397頁、NAID 110010033496 
  14. ^ ダライ・ラマ14世テンジン・ギャツォ 著、菅沼晃 訳『ダライ・ラマ 智慧の眼をひらく』春秋社、2001年、132、索引16頁。ISBN 978-4-393-13335-4  全面的な再改訳版。(初版『大乗仏教入門』1980年、改訳『智慧の眼』1988年)The Opening of the Wisdom-Eye: And the History of the Advancement of Buddhadharma in Tibet, 1966, rep, 1977。上座部仏教における注釈も備える。
  15. ^ ākāśānañcāyatana-samāpatti
  16. ^ viññāṇañcāyatana-samāpatti
  17. ^ ākiñcaññāyatana-samāpatti
  18. ^ nevasaññānāsaññāyatana-samāpatti
  19. ^ saññāvedayitanirodha
  20. ^ 藤本晃「パーリ経典に説かれる「九次第定」の成立と構造」『印度學佛教學研究』第53巻第2号、2005年、891-888頁、doi:10.4259/ibk.53.891NAID 130004027834 
  21. ^ 藤本晃 『悟りの4つのステージ: 預流果、一来果、不還果、阿羅漢果』 サンガ、2015年、274頁。
  22. ^ この場面は、中村元訳『ブッダ最後の旅 - 大パリニッバーナ経』(岩波文庫)では169-170頁に記載されている。
  23. ^ 藤本晃 『悟りの4つのステージ: 預流果、一来果、不還果、阿羅漢果』 サンガ、2015年、209頁、260-269頁。
  24. ^ 竹村牧男 『「覚り」と「空」』 講談社、講談社現代新書、1992年1月、118頁および125頁。
  25. ^ 竹村牧男 『インド仏教の歴史』 講談社、講談社学術文庫、2005年7月、133頁および140頁。なお、本書4頁によれば、本書は、竹村牧男『「覚り」と「空」』(講談社現代新書)の再刊である。
  26. ^ a b 平川彰・編纂 『仏教漢梵大辞典』 霊友会、740頁「滅尽定」、及びその対照逐訳。
  27. ^ a b 荒牧典俊訳 『大乗仏典 第八巻 十地経』 中央公論社、1974年1月、222-223, 392頁。
  28. ^ 太田蕗子「ツォンカパ著『密意解明』における菩薩の修道階梯 : 滅尽定を中心として」『日本西蔵学会々報』第54号、2008年6月1日、33-45頁、NAID 110009841250 


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