アメリカ同時多発テロ事件 アメリカ同時多発テロ事件の概要

アメリカ同時多発テロ事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/19 00:52 UTC 版)

アメリカ同時多発テロ事件
最上段:旅客機の衝突で炎上するワールドトレードセンター
2段目左:ペンタゴンに突入した痕跡
2段目右:2機目の旅客機が激突し爆発炎上するワールドトレードセンター
3段目左:崩壊後のワールドトレードセンターと生存者の救出活動を行う消防士
3段目右:ユナイテッド航空93便の残骸
最下段:ペンタゴンに突入する瞬間を捉えた映像のコマ
場所 アメリカ合衆国
ニューヨーク州ニューヨーク(1度目と2度目)
バージニア州アーリントン(3度目)
ペンシルベニア州シャンクスヴィル(4度目)
日付 2001年9月11日火曜日
午前8時46分 - 午前10時28分
東部夏時間 (EDT)
標的 ワールドトレードセンターの北棟と南棟(第1・2)
アメリカ国防総省本部庁舎(第3)
第4の標的は不明(ワシントンD.C.の場所だと考えられている。アルカーイダ合衆国議事堂が標的になっていたと主張している)。
攻撃手段 ハイジャック自爆テロ
死亡者 2,996人(被害者2,977人 + 実行犯19人)[1][2][3]
負傷者 25,000人以上
容疑者 アルカーイダ
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一連の攻撃で、日本人24人を含む2,977人が死亡[8]、25,000人以上が負傷し、少なくとも100億ドルのインフラ被害・物的損害に加えて、長期にわたる健康被害が発生した[9][10]アメリカの歴史上、最も多くの消防士および法執行官が死亡した事件であり、殉職者はそれぞれ343人と72人だった[11]。また、この事件を契機にアフガニスタン紛争が勃発した。

概要

2001年9月11日火曜日の朝、アメリカ合衆国北東部の空港からカリフォルニアに向けて出発した旅客機4機が、アルカイダのテロリスト合計19人にハイジャックされた。

ワールドトレードセンターへのテロ攻撃
そのうちアメリカン航空11便ユナイテッド航空175便の2機はロウアー・マンハッタンワールドトレードセンターへと向かい、午前8時46分(日本時間で午後9時46分)にアメリカン航空11便がノース・タワー(北棟)に、午前9時3分(日本時間で午後10時3分)にユナイテッド航空175便がサウス・タワー(南棟)にそれぞれ突入した。
南棟は突入から56分後、北棟は1時間42分後に崩壊し、破片とそれに伴う火災は、47階建ての7 ワールドトレードセンタータワーを含むワールドトレードセンターの他のすべての建物の一部または完全な崩壊を引き起こしただけでなく、周囲にある他の10の大規模構造物に大きな損害を与えた。
ペンタゴンへのテロ攻撃
3機目のアメリカン航空77便バージニア州アーリントン郡ペンタゴンアメリカ国防総省本庁舎)に墜落し、建物の西側が部分的に崩壊した。
テロ攻撃の失敗
4機目のユナイテッド航空93便ワシントンD.C.に向かって飛行していたが、乗員乗客がハイジャック犯の拘束を試みた結果、ペンシルバニア州ストーニークリーク郡区の野原に墜落した。

ワールドトレードセンターとその周辺のインフラの破壊は、ニューヨーク市の経済に深刻な打撃を与え、世界市場に大きな影響を与えた。アメリカとカナダの民間空域は9月13日まで閉鎖され、ウォール街は9月17日まで閉鎖された。さらなる攻撃への警戒や恐れから、多くの閉鎖、避難、キャンセルが続いた。

捜査の結果アルカイダと指導者であるウサーマ・ビン・ラーディンに嫌疑がかけられ、アメリカは2001年10月に対テロ戦争を開始してアフガニスタンに侵攻し、アフガニスタンからのアルカイダの追放と、指導者であるビン・ラーディンの引き渡しという自らの要求に従わなかったタリバンを退陣させた。ビン・ラディンは当初、関与を否定していたが、2004年にはテロ攻撃の責任が自らにあることを認めた[12]

アルカイダとビンラディンは、アメリカのイスラエル支援サウジアラビアにおけるアメリカ軍の存在イラクに対する制裁を動機として挙げた。ビンラディンは10年近く捕縛を逃れ、パキスタンの国境付近に居を構えていたが、2011年にアメリカ軍の急襲により殺害された。

ワールドトレードセンター跡地の清掃は2002年5月に完了し、ペンタゴンは1年以内に修復された。1 ワールドトレードセンターの建設は2006年11月に始まり、2014年11月にオープンした[13][14]。ニューヨーク市の911メモリアル&ミュージアム、バージニア州アーリントン郡のペンタゴンメモリアル、ペンシルバニア州の墜落現場にある93便ナショナルメモリアルなど、多数の慰霊碑が建設されている。

ハイジャックされた旅客機

ハイジャックされた各旅客機の飛行ルート

2001年9月11日朝(現地時間)、マサチューセッツ州ボストンバージニア州ダレス(ワシントンD.C.近郊)、ニュージャージー州ニューアークを発った4機の旅客機が、モハメド・アタを中心とするアラブ系の集団によってほぼ同時にハイジャックされた。彼らは操縦室に侵入し、操縦士を殺害した後、自ら操縦して、2機(アメリカン航空11便、ユナイテッド航空175便)をニューヨークマンハッタンへ、残り2機(アメリカン航空77便、ユナイテッド航空93便)をワシントンD.C.へ向かわせた[15][16]

なお、乗っ取られた4機のうち2機が米ボーイング社製のボーイング767型機で、残りの2機がボーイング757型機である。この2種類の機体は、運行する航空会社の操縦士に互換性を持たせるために、操縦室の操縦システムは基本的に同じ物が使われており、いずれも2人のみで操縦できるため、意図してこれらの機体が運行されている便が選択されハイジャックされたと考えられている。

また、実行犯のリーダー、モハメド・アタをはじめとする一部のハイジャック犯たちは、アメリカ合衆国内にある民間の航空学校(ホフマン飛行機学校[17])で小型機の自家用操縦免許を取得した後に、これらの機体の操縦方法を事前にフライトシミュレータで訓練していたことが明らかになっている[18]

これら4機がいずれも北米大陸横断ルートという、アメリカ合衆国国内線の中では長距離飛行に入るルートを飛行する便であったのは、長距離便のために燃料積載量が多く、衝突後の延焼規模を多くすることを狙ったと推測する者[要出典]もいる。なお、ハイジャックされて激突・墜落させられた旅客機の乗客・乗員は全員死亡している[19]

アメリカン航空11便

アメリカン航空のボーイング767-200ER(N334AA)
アメリカン航空11便の飛行経路

ボストンロサンゼルス行きアメリカン航空11便(AA011; ボーイング767-200ER型機・機体記号N334AA)は、乗客81名(日本人1名を含む)・乗員11名を乗せ、午前8時00分頃にローガン国際空港を離陸し、ロサンゼルス国際空港に向かった[20][21]。その後、11便は午前8時14分頃に始められたハイジャックにより、コックピットを乗っ取られた[22]。11便は午前8時27分に進路を南向きに変え、午前8時46分にニューヨークロウアー・マンハッタンのワールドトレードセンター・ツインタワー北棟(110階建)に突入し爆発炎上した[22][23]。角度、速度ともに浅い離着陸時の事故と違い、機体の残骸はほとんど原形を留めていなかった。

11便がWTC北棟に衝突する瞬間は、ニューヨーク市消防局Ladder Companyの取材をしていたフランスの映像作家、ノーデ兄弟英語版によって撮影されていた[24]。また、ホームビデオや定点カメラに写り込んだ映像も存在する[25]

ユナイテッド航空175便

ユナイテッド航空のボーイング767-200(N612UA)
ユナイテッド航空175便の飛行経路

ボストン発ロサンゼルス行きユナイテッド航空175便(UA175; ボーイング767-200ER型機・機体記号N612UA)は、乗客56名・乗員9名を乗せ、午前8時14分にローガン国際空港を離陸し(アメリカン航空11便でのハイジャック発生とほぼ同時)、ロサンゼルス国際空港に向かった[26][27]。午前8時42分頃、UA175便のパイロットは離陸直後に耳にした不審な内容の無線(ハイジャックされたアメリカン航空11便からの無線だった)について管制官に報告したが、それから午前8時46分までの間にUA175便もハイジャックされ、コックピットを乗っ取られた[22]。その後、UA175便は午前8時58分にニューヨークへ進路を変え、午前9時03分にWTC・ツインタワー南棟(110階建)に突入し爆発炎上した[22][23]。南棟では北棟の爆発を受けて多くの人が避難を開始していたため、人的被害は北棟よりも少ないが、先に突入を受けた北棟より早く南棟が崩壊している[28]

11便とは異なり、175便の突入時には、既に多くの人に事態が認識されていたことから、突入の瞬間の映像や写真が多数記録されている[29]。なお、105階に居たエーオン副社長のケビン・コスグローブ(南棟の崩壊時に死亡)が、南棟が崩壊する瞬間まで911番へ電話で状況を伝えていた音声が録音されており[30]、この録音はザカリアス・ムサウイの裁判において証拠として用いられた[31]

アメリカン航空77便

アメリカン航空のボーイング757-200
アメリカン航空77便の飛行経路

ワシントンD.C.ダレス国際空港)発、ロサンゼルス(ロサンゼルス国際空港)行きアメリカン航空77便(AA077; ボーイング757-200:機体記号N644AA)は、乗客58名・乗員6名を乗せて、午前8時20分に出発した。午前8時50分頃までにハイジャックされコックピットを乗っ取られた。直後に進路を北向きに変えた後、南へ転回、その後東へ進路を変えた。最初の進路離脱から3分間は管制塔と機長が交信していたが、その後通信不能となった。

そして午前9時38分、バージニア州アーリントンにあるアメリカ国防総省本庁舎(ペンタゴン)に激突し、爆発炎上した。激突の瞬間の映像がペンタゴンの駐車場の監視カメラによって記録されており、また付近を通行中の多くのドライバーや歩行者によって降下し激突する瞬間が目撃された。

防犯カメラなどの映像によると、機体は水平の状態で地面を滑走しながらペンタゴンに衝突していたが、高速で建築物に激突・炎上したため機体の残骸はほとんど原形を留めていなかった。

ユナイテッド航空93便

ユナイテッド航空のボーイング757-200(N591UA)
ユナイテッド航空93便の飛行経路
ユナイテッド航空93便の墜落跡地にできた穴

ニューアークニューアーク空港)発サンフランシスコサンフランシスコ国際空港)行きユナイテッド航空93便(UA093; ボーイング757-200、機体記号N591UA)は、午前8時42分、乗客37名(日本人1名を含む)(乗客37名中4人はテロリスト)・乗員7名を乗せて、滑走路の混雑で30分遅延で出発した。

乗客の機内電話からの通報によると、午前9時27分にハイジャックされ、コックピットを乗っ取られた。オハイオ州クリーブランド付近で進路を南に変え、さらに南東へ向かった。ワシントンD.C.へ向かうことを管制官に通告、標的はアメリカ合衆国議会議事堂ホワイトハウスであったと推測されている。

午前9時57分、機内電話や携帯電話による外部との連絡で、ハイジャックの目的を自爆テロと認識した乗客が機の奪還に乗り出す。午前10時03分、93便は490ノット (563マイル毎時 (906 km/h)) の速度でペンシルベニア州ピッツバーグ郊外シャンクスヴィル(ワシントンD.C. 北西240キロの場所)に墜落した[32]。離着陸時の速度の倍以上の高速で地上に衝突したため、機体の残骸はほとんど原形を留めていなかった。なお、地震計のデータから墜落の時刻を午前10時06分と公式記録と異なる報告がなされたが、後にこの時刻を算出した地震学者本人により撤回されている。

乗客たちがハイジャッカーたちに反撃した際に「Let's Roll.(さあやろうぜ・よし、皆かかれ)」を合図にしたと言われている。この「Let's Roll」は、9・11事件以降のアフガニスタンでの「報復戦争」において一種のスローガンとして用いられた[33]。9・11事件の調査委員会は乗客は操縦室内に進入できなかったと結論づけているが[22]、一部の遺族はCVR音声に乗客が操縦室に進入した証拠が記録されていると主張している[34]。なお、離陸からハイジャック、墜落までの乗員乗客の行動を基にした映画『ユナイテッド93』が2006年に公開された[35]


注釈

  1. ^ 民放のうち、日本テレビ系列は『火曜サスペンス劇場』、テレビ朝日系列では『ニュースステーション』がそれぞれ放送中だった。TBS系列は『ジャングルTV ~タモリの法則~』(毎日放送制作)、フジテレビ系列ではドラマ・『ウソコイ』(関西テレビ制作)がそれぞれ開始した直後だった。この中でニュース速報が出された。
  2. ^ 現在はフリーアナウンサー。
  3. ^ この時間帯は毎日放送の責任枠であったため、22時53分まではTBSから毎日放送経由で全国へ流された。
  4. ^ ニュース挿入時間中はドラマの送出VTRを一時停止し、ニュース終了のタイミングで送出VTRを再び再生した(放送枠の「こじ開け」措置。これにより、後続番組は5分程度の繰り下げとなった。)。
  5. ^ この時に放映がされていた2001年度の「チャイルドマザー」「チャイルドファザー」は、上記の事件の影響で多量に放映されたため、槍玉に挙がり放送中止に至ったとされる。なお、公共広告機構以外にも上記の事件の影響で差し替えとなったCMもある。
  6. ^ 前日の9月10日付けも台風情報を行うために休止となっており、レギュラー放送としては初めて2日間連続休止となった(この時は「深夜便」のスタジオにはつながず、ニュースセンターのラジオスタジオから断続的に放送した。9月12日付けから再開するが、その週は「NHKジャーナル」を臨時に0:45まで拡大延長したため、一部のコーナーは休止となった)
  7. ^ なお、この事件の10日前に東京都新宿区で発生した歌舞伎町ビル火災の影響から、このような措置を既にとっていた放送局も複数存在する。
  8. ^ 国際政治学・安全保障政策の研究者である宮坂直史は著書(『日本はテロを防げるか』ちくま新書)の中で、テロは複数箇所で同時に行われることが多いことから「アメリカ同時多発テロ」を固有名詞として用いることには違和感を覚える、と指摘している。
  9. ^ 全米に飛行禁止令が出された後も連絡が行き届かず、飛行を続けていた航空機が11機存在したことによる。ユナイテッド93でも描写されている。
  10. ^ 犠牲者1700人の宗教についての調査で、全体の内の約10%がユダヤ教徒であったことが示されている。また犠牲者の姓を調査した結果、約400人 (およそ15%) がユダヤ人である可能性があることが判明した。犠牲となったキャンター・フィッツジェラルド英語版社の従業員658人のうち、公共の慰霊碑に名前があった390人を調査した結果、その中の49人 (およそ13%) がユダヤ人であったことが判明した。2002 American Jewish Year Bookによると、ニューヨーク州の人口のうち9%がユダヤ人であった。またWTCの犠牲者のうち64%がニューヨーク州在住の人物であった。

出典

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  17. ^ NHKスペシャル『一年目の真実~ビンラディン対アメリカ~』による。
  18. ^ 『華氏911』の映画監督であるマイケル・ムーアは、これら大型機を操縦して体当たりする技術が一朝一夕で身に付くわけがなく、犯人は飛行機のフライト経験が豊富な元軍人(仮説としてサウジアラビア空軍のパイロット)ではないかと主張している[要出典]
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