どき‐がわ〔‐がは〕【土器川】
土器川
土器川は香川県琴南町と徳島県三野町の境にある讃岐山脈にその源を発し、中讃地域を南北に貫流して瀬戸内海に注ぐ香川県唯一の一級河川です。流域面積140km2、流路延長33kmの香川県では大きな河川です。 |
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中讃地域を瀬戸内海に流れる土器川 |
河川概要 |
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1.土器川の歴史 |
"年間降水量が1,200mm程度と非常に少ない土器川流域において、先人は伏流する土器川から取水する方式として「出水(ですい)」を利用してきました。また、治水対策として急流河川の特徴を活かし、「霞堤(かすみてい)」を築いてきました。" |
土器川の最下流の街丸亀市は、古くは津野郷とよばれ平安朝の頃からひらけ、条里制の遺構や古代遺跡あるいは史跡などが多く存在します。土器川の名称の由来についても、この付近に土器を専門に製造する人々が住んでいたことから、この名前が生まれたとされています。また、土器川中流部左岸には、弘法大師が父を弔う伽藍を建立した善通寺、全国に広く信仰圏をもつ金刀比羅宮(ことひらぐう)があり、町はその門前町として発展してきました。河口から13km地点の祓川(はらいかわ)橋地点で金刀比羅宮の神事の時に人々がミソギをしたことに起因して、祓川橋より上流を祓川とも呼んでいます。 土器川流域は瀬戸内海気候に属し年間降水量は1,200mm程度と少なく、その降水量は梅雨期と台風期に集中します。土器川のみならず香川県のほとんどの河川は、山地部から瀬戸内海に向け南北を流れる流路の短い急勾配河川のため、扇状地として広がる中下流部は土砂の堆積が著しく、周辺の田畑や家屋より川が高い天井川となっています。そのため、平常時の水は極端に少なく、渇水被害が頻発する反面、ひとたび洪水となれば急流河川のため激流と化す二面性を持っています。
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2.地域の中の土器川 |
"土器川は、地域のふれあい、憩いの場として利用されており、高水敷の運動公園は各種スポーツを楽しむ人が多数訪れます。土器川生物公園は、人と生物が共生できる公園として整備されています。また、年間を通じて流域で各種のイベントが催されています。" |
3.土器川の自然環境 |
"河床勾配が1/100と急流河川である土器川中上流部は、砂礫河原が卓越し、河原特有の植物(カワラハハコ)、鳥類(チドリ類)が生息し、水際にはミゾコウジュ、カワヂシャなどの湿性植物も生育しています。" |
土器川上流は河床勾配が1/100程度で岩河床を呈しており、取水箇所も少ないことから流水が存在し、一般的な山地河川の様相を呈しています。扇状地河川となる中下流部は、砂礫河原となり、伏流水化している箇所が多く取水も相まって、瀬切れが年間約180日見られます。最下流の干潮域では河床勾配が1/1,200程度となり河床は砂・シルトで構成されています。 土器川の水質は、基準点である丸亀橋(河口から2.6km)において、BOD平均値が4.3mg/lと環境基準2.0mg/lを大きく上回っていますが、上流祓川橋(河口から13.1km)においてBOD平均値が0.6mg/lと良好となっています。この原因は下流丸亀市の市街化された地域から排出される生活排水が主となっています。
土器川の直轄管理区間(河口から18.85km)の特徴的な自然環境について、下流から見ていくと、汽水域には、ハクセンシオマネキ、ヤマトオサガニ、アリアケモドキ等のカニ類、フトヘナタリ、ウミゴマツボの貝類、ハマサジ、ハママツナ、ナガミノオニシバ等の植物などの生物が生息・生育しており、干潟や干潟周辺(ヨシ原等)には特有の種が見られます。
中下流域は出水による攪乱があるため砂礫河原が卓越し、カワラヨモギ等の河原固有の植物が生育しています。また、シロチドリ、イカルチドリ、コチドリ等の鳥類が繁殖・生息場として利用しているとともに、水際にはミゾコウジュ、カワヂシャ等の湿性植物が生育しています。アキニレ、ムクノキ-エノキ群落等の河道内樹木は、鳥類をはじめとする生物の生息環境として重要な役割を果たしています。また、セイタカアワダチソウ、ミシシッピーアカミミガメ、ブラックバス、アメリカザリガニ等の外来種の侵入も見られ在来の生態に影響を与えています。 上流付近は、流水の伏没が少なく、比較的表流水が維持されていることからアカザ等の魚類、アオサナエ、コオニヤンマ、ゲンジボタル等の流水性の水生昆虫が見られ、水際にはネコヤナギ、コガマ等が見られるなど、瀬・淵が存在する水域環境及び水際植生は土器川流域において重要となってます。
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4.土器川の主な災害 |
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(注:この情報は2008年2月現在のものです)
土器川
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/27 16:59 UTC 版)
土器川 | |
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土器川(香川県丸亀市土居町ほうらい橋付近)
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水系 | 一級水系 土器川 |
種別 | 一級河川 |
延長 | 33 km |
平均流量 | -- m3/s |
流域面積 | 140 km2 |
水源 | 竜王山(香川県) |
水源の標高 | 1059 m |
河口・合流先 | 瀬戸内海(香川県) |
流域 | ![]() 香川県満濃町・丸亀市 |
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土器川(どきがわ)は、香川県を流れる河川。香川県唯一の一級河川である。中流部では祓川(はらいかわ)とも呼ばれる。
名称の由来
かつて河口付近の川原と三角州から取れた粘土から土師器などの土器を専門に製造する人々が住んでおり、河口には土器村(現丸亀市土器町など)という地名ができた[1]事にちなんで名づけられたと言われている[2][3]。流路延長は33 kmで、流域面積は140 km2である[4]。
地理
流路
讃岐山脈を構成する標高1059 mの竜王山(香川県仲多度郡まんのう町勝浦)に源を発する[4]。美霞洞温泉の付近まで南西に流れ、そこからは北西方向へと流れ、まんのう町北東端部の祓川公園付近で、より北向きに流れの方向を変えてから[注釈 1]、丸亀平野を北流し、丸亀市土器町北と丸亀市富士見町の境界から瀬戸内海へ注ぐ。
江戸時代初期まで、土器川の河口は鵜足郡川津村(現在の坂出市川津町)と阿野郡福江村(現在の坂出市福江町)の間にあった。つまり、現在の坂出市中心部辺りで瀬戸内海に流れ込んでいた。しかし、藤堂高虎の家臣である西嶋八兵衛が高松藩(生駒藩)の奉行に就任すると、土器川の改修工事を含めて讃岐国各地で治水事業を行い、現在の位置に河口が付け替えられた。
また、1972年と1973年の夏に発生した干魃に、瀬戸内海の潮位も高かった事が重なり、土器川の下流域の農地で塩害が発生したため、その防止を目的として河口部には潮止堰を建設した[5]。この潮止堰は予讃線よりも内陸側、ちょうど土器川の両岸に土器川河川敷緑地がある付近に位置する。
瀬切れ
土器川が流れる香川県は瀬戸内式気候で、日本において降雨が少ない地域である。土器川の流域での年間降水量は1200 mm程度に留まる[5]。降雨は梅雨の時期と台風の時期の集中しているために[5]、元から普段の流量は少ない。
土器川の水は農業用水としても取水されている。満濃池導水路を通して満濃池にも土器川の水が供給されている。その上、土器川の河底には砂礫が堆積しており、河川水が浸み込み易い[6]。以上のような要因が重なり、しばしば断流して涸れ川になり、これを「瀬切れ」と言う[7]。なお、瀬切れは、土器川の比較的上流部の飯野山付近ですら発生が見られる[6]。しかし、大雨が降ると川が現れる。また、地下には伏流水が流れており、付近では地面を掘って伏流水を得るための
主な支流
- 前ノ川 - まんのう町堀田で、土器川へ合流する。
- 清水川 - 土器川河川敷緑地の潮止堰よりも下流側で、土器川へ合流する。
流域の自治体
並行する交通
道路
- 香川県道154号久保谷塩江線(まんのう町勝浦) - 土器川の最上流部。
- 国道438号(まんのう町勝浦 - まんのう町長尾) - 三頭トンネルの西側から、長尾までの区間は、ほぼ土器川の流路に沿っている。
- 香川県道46号長尾丸亀線(まんのう町長尾 - 丸亀市土器町西) - 国道438号に代って、長尾から土器川の流路に沿っている。
- 香川県道21号丸亀詫間豊浜線(丸亀市土器町西 - 丸亀市土居町) - 香川県道46号に代って、土器川の支流の1つの清水川に達する付近までは、比較的土器川の流路に沿っている。
- 香川県道199号炭所西善通寺線(まんのう町炭所西 - まんのう町祓川橋西詰) - 土器川の中流部に沿っている。
- 香川県道195号岡田丸亀線(丸亀市飯山町東小川 - 丸亀市土器町東) - 土器川の下流部に沿っている。
鉄道
やや遠いものの、鉄道では琴平駅付近の土讃線が、土器川の流路に比較的沿っている。
生物相
上流域
しばしば瀬切れを引き起こす土器川でも、上流部であれば水棲昆虫のアオサナエ、ゲンジボタルなどが見られ、さらに、コオニヤンマ、ムカシトンボなども見られる[5]。
中流・下流域
しばしば瀬切れを起こす土器川では、乾燥した栄養分の乏しい礫の川原などに見られるヨモギなど見られる[5]。ただ、かつては見られた礫の多い川原に生育するカワラハハコやハマウツボなどが見られなくなった一方で、ヨモギに加えて、ノイバラやクズなどが侵入してきたなど、植生に変化が起きた[5]。
河口部
瀬切れが起きても土器川の地下には伏流水が流れており、河口部には汽水域が存在する。その河口部には潮止堰が建設されたものの、狭い汽水域には、ハママツナ、ハマサジなどの植生が見られ、また、魚類や甲殻類や貝類など、土器川の汽水域には多種の水棲生物が棲息している[5]。
文化
土器川の河口近くの丸亀市土器町にある田潮八幡宮や吉岡神社の秋祭りでは、白装束の氏子らが神輿を担いだまま土器川に入る「水浴び神輿」と呼ばれる催しが行われる。神輿を大きく揺らしたり、ひっくり返したりする事が有名で、特に田潮八幡宮の祭では、川の両岸と近くの橋が見物人で溢れる。
丸亀市の「土器川河川敷広場」は昭和62年度手づくり郷土賞(水辺の風物詩)受賞[8]、まんのう町の「土器川親水護岸」は平成5年度手づくり郷土賞(自然とふれあう水辺づくり)受賞[8]。
脚注
注釈
出典
- ^ “土器町まちづくり計画 2015”. 香川県丸亀市. p. 1. 2019年9月7日閲覧。
- ^ 『われら土器川探検隊』、建設省四国地方建設局香川工事事務所、企画・発行
- ^ “日本の川 - 中国 - 土器川 - 国土交通省水管理・国土保全局”. www.mlit.go.jp. 2019年9月7日閲覧。
- ^ a b 小倉 紀雄、島谷 幸宏、谷田 一三 編集 『図説 日本の河川』 p.162、p.163 朝倉書店 2010年1月30日発行 ISBN 978-4-254-18033-6
- ^ a b c d e f g h 小倉 紀雄、島谷 幸宏、谷田 一三 編集 『図説 日本の河川』 p.126 朝倉書店 2010年1月30日発行 ISBN 978-4-254-18033-6
- ^ a b 小倉 紀雄、島谷 幸宏、谷田 一三 編集 『図説 日本の河川』 p.127 朝倉書店 2010年1月30日発行 ISBN 978-4-254-18033-6
- ^ 小倉 紀雄、島谷 幸宏、谷田 一三 編集 『図説 日本の河川』 p.126、p.127 朝倉書店 2010年1月30日発行 ISBN 978-4-254-18033-6
- ^ a b 手づくり郷土賞>これまでの受賞一覧>香川県 国土交通省
関連項目
外部リンク
固有名詞の分類
- 土器川のページへのリンク