失業 その他の失業の種類

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失業

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/12 21:59 UTC 版)

その他の失業の種類

次のような失業も考えることができる。

  • 季節的失業 - 季節的要因により発生する失業[30]
  • 潜在的失業 - 仕事に就きたいと思っているが適当な仕事がないという理由から、仕事を探すことをやめる失業[31][32]
  • 一時的失業 - 農業従事者の農閑期の失業。
  • 産業予備軍 - 資本家にとって賃金抑制装置として必要とされる相対的過剰人口
  • 技術的失業 - 機械化・自動化により、特殊能力が不要となり発生する失業[33]


失業の歴史

中世キリスト教世界(=カトリックの世界)では、貧しいことは「神の心にかなうこと」とされ、そのような人に手を差し伸べることは善行であった。宗教改革(=プロテスタンティズムの登場)は、こういった見方を一変させ、「怠惰と貪欲は許されざる罪」で、物乞いは「怠惰の原因」として排斥し、労働を「神聖な義務」であるとした。プロテスタンティズムの流行は貧しいものへの視線を変容させ、「神に見放されたことを表す」という見方が広がり、都市を締め出された貧民荒野森林に住みつくか、浮浪者となって暴動を起こすようになった。

イギリスでは1531年に王令により貧民を、「病気等で働けない者」と、「怠惰ゆえに働かない者」に分類し、前者には物乞いの許可を下し、後者には鞭打ちを加えることとした。1536年には成文化され救貧法となり、労働不能貧民には衣食の提供を行う一方、健常者には強制労働を課した。産業革命が加速する18世紀まで、健常者の「怠惰」は神との関係において罪として扱われ、救貧院の実態は刑務所そのものであった。18世紀以降、キリスト教の価値観を離れた救貧活動が広がり、ギルバート法の成立やスピーナムランド制度がイギリスで成立し、救貧や失業に対する価値観はようやく変転を見せた(救貧法参照)。

産業革命以後、賃労働者の比率が高くなったことから、失業は重大な社会問題として取り扱われることとなった。19世紀のイギリスにおいては、金融設備投資の循環から、ほぼ10年おきに恐慌が発生しており、そのたびに失業率が10 %近くにまで上昇する循環があった。

20世紀に入って、この循環は次第に崩れ、1929年に発生した世界恐慌以後は、各国で失業が急増。アメリカ合衆国(以下アメリカ)では一時失業率が25 %に達し、社会革命が公然と叫ばれた。なお、この時の失業はニューディール政策により一時的に減少したが、政策が後退すると再び増加し、第二次世界大戦による大規模な軍需発生まで解決されなかった。

戦後、ブレトンウッズ体制の下で西側諸国は奇跡的な高度成長を達成。国家による経済政策への大幅な介入により完全雇用がほぼ達成された。1970年代に入ると、名目賃金の上昇とオイルショックの発生で供給構造が傷み、インフレーションの下で失業が増加した(スタグフレーション)。

1980年代に入ると不況からの脱出を図り新自由主義的経済政策(レーガノミクスサッチャリズムロジャーノミクスなど)が導入され、労働市場が流動化した国々では経済成長率が高まったが、同時期にインフレ率抑制を目的にした金融政策が採用され、失業率は大幅に上昇した。

1990年代になり、アメリカ・イギリスは構造的な高失業から脱出したが、大陸欧州諸国は高い失業率に甘んじた。また、欧米に比べ低失業率だった日本においても、バブル経済崩壊以降の長期不況により失業が顕在化、社会問題となった。

2009年前後には世界金融危機がピークに達し、世界各国で高い失業率が記録された。また、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大により、各国で外出禁止令や都市のロックダウンが行われて経済活動が大きく減退した結果、失業率も大幅に上昇。アメリカのGDPは第二四半期に-32.9 %を記録[34]。その結果、新規失業者数も増加した。

景気と失業率

失業率の定義

失業率は一国の地域によっても大きく異なる。失業率の高さは、紫<青<緑<黄<赤となっている。(ドイツ、2020年10月)

失業を測る尺度である失業率は、労働力人口に対する失業者数の割合で定義される。一般に失業率という場合、完全失業率を指す[35]。失業者とは「働く意思と能力があるのに仕事に就けない状態にある人」を指すので、仕事探しをあきらめた人(自発的失業者)は失業者には含まれない。

なお、仕事探しをあきらめた人は就業意欲喪失者 (discouraged worker)と呼ぶ。ちなみに、労働力調査では、働く意志があるとは、ハローワークに通って職探しをするなど仕事を探す努力や事業開始の準備をしていること、とされている。仕事に就けない状態には仕事をしなくても職場から給与などを受け取っている場合を含まず、こうした場合は休業者として扱われる。

パートタイムマーや職探しを諦めた人などを含む失業率に、U6失業率という統計がある[36]

労働力調査における失業者や失業率の定義については、「労働力調査」の項目参照。

景気等との関係

失業率は、国全体の景気動向を知る上で重要な指標となっている[35]。不況による失業率の上昇は、労働力が有効に活用されていないという経済的な無駄が増えていることを意味する[37]

失業率は様々な経済活動と関連しながら変動する労働市場においての需給の引き締め度合いを表すシグナルとなる[38]

失業率の抑制は経済政策の重要な目標とされる[4]。また、失業率を減らすことは、労働の経済学の重要な課題である[39]

失業率は、

  1. 様々な経済活動の「結果」
  2. 失業率を契機とした景気変動などに影響を与える「要因」

というの二つの側面がある[4]

失業率は景気と相関があると言われているが、動きが一致するとは限らない。失業率は、景気循環要因以外にも、経済構造に関連する要因によっても動く[40]。伝統的な日本的経営のもとでは、企業は従業員の雇用を守ることを企業の社会的使命の1つと考えており、人員整理、特に解雇をなるべく忌避し、ぎりぎりまで状況を見極めようとするからである。その反面、採用についても、大企業になるほど、慎重で計画性や人員構成のバランスを重んじ、不要不急の採用は避ける傾向にある(一方で、近年非正規雇用の採用は柔軟に行っており、雇用関係指標を見る際にはその点も考慮に入れる必要がある)。

また、労働者側も、不況が長期化すると就業意欲喪失者が増加するが(不況で求人が少なくなり「どうせ就職できない」とあきらめる人が増える)、このため失業者数が減り、失業率を押し下げる要因になり、表面上は景気が回復したかに見える。逆に、景気回復局面では(景気が良くなって求人が増えるだろう、と)新規に仕事探しを始める人が現れるので、かえって就労を希望する「失業者」が増えて、失業率を押し上げることになる。

以上のようなことから、失業率は景気に対して遅行指標となっており[40]、失業率のみならず他の景気指標を併せてみる必要がある。失業率は景気動向と比較して、通常1年から1年半送れて変動する[41]。また、景気の先行指数の代表である株価と、遅行指数の一つである失業率は、一時的に正反対の動きを見せることがある[42]

中国では、経済成長率が1%下がると、100万人の失業者が生まれると試算されている[43]

  • 非正規雇用
以前の正規雇用に比べて雇用、解雇を行いやすいアルバイト労働者派遣といった非正規雇用労働者の増加を初めとする、労働形態の細分化および複雑化が進行している昨今の状況においては、失業率の利用に十分な注意を要する。



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  143. ^ 田中秀臣 『日本型サラリーマンは復活する』 日本放送出版協会〈NHKブックス〉、2002年、198頁。
  144. ^ 田中秀臣 『日本型サラリーマンは復活する』 日本放送出版協会〈NHKブックス〉、2002年、217頁。
  145. ^ 田中秀臣 『偏差値40から良い会社に入る方法』 東洋経済新報社、2009年、180頁。
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  148. ^ 森永卓郎 『日本経済50の大疑問』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、147-148頁。
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  151. ^ 1)人員削減の必要性、2)解雇回避努力、3)人選の妥当性4)手続きの相当性、という四要件が満たされれば合理的な理由と容認され、解雇権濫用に該当しないとされている(解雇法理の四要件)(大竹文雄 『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』 中央公論新社〈中公新書〉、2010年、163-164頁)。
  152. ^ a b 岩田規久男 『経済学的思考のすすめ』 筑摩書房、2011年、195頁。
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  154. ^ 田中秀臣 『偏差値40から良い会社に入る方法』 東洋経済新報社、2009年、182頁。
  155. ^ 田中秀臣 『最後の『冬ソナ』論』 太田出版、2005年、157頁。
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  186. ^ 新自由主義否定はナンセンス! やっぱり「小泉改革」は日本に必要だった日刊サイゾー 2011年10月29日
  187. ^ 10代で学ぶ金融そもそも講座 第44回「グローバルマーケットの中で」man@bouwまなぼう 2011年6月29日
  188. ^ 高橋洋一 『高橋教授の経済超入門』 アスペクト、2011年、209頁。
  189. ^ 政治・社会【日本の解き方】厚労省は失業対策できない!日銀に責務課すべきZAKZAK 2012年7月5日(2012年7月7日時点のインターネット・アーカイブ)
  190. ^ 2012年インタビューFNホールディング
  191. ^ 高橋洋一・ブラック企業も減る!アベノミクスの効果とはPHPビジネスオンライン 衆知 2014年11月26日
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  193. ^ 野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、141頁。






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