テレワーク 現在のトレンド

テレワーク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 01:02 UTC 版)

現在のトレンド

日本

区分

日本でのテレワークの区分として、雇用関係の有無がある。企業や官公庁に雇用され、在宅勤務などを行う「雇用型」と、フリーライターやSOHOなどの「自営型」、あるいは「非雇用型」は、広く使われる区分である[107][108]。また、国土交通省のテレワーク人口実態調査では、情報通信機器等を利用し仕事をする時間が1週間当たり8時間以上の者を「狭義のテレワーカー」、それ以外を「広義のテレワーカー」としている[109]。また、佐藤彰男は雇用型、非雇用型を在宅勤務、モバイルワーク、SOHO、在宅就業に分けることができる、としている[108]。それぞれの概要は以下のとおり。

  • 雇用型
    • 自宅利用型テレワーク - 在宅勤務。自宅にいて、事業所とはインターネット、パソコン、電話などで連絡を取る。
    • モバイルワーク - 事業所に毎日出勤することはせずに、顧客先や移動中にノートパソコン、携帯電話などを使って勤務する。
  • 非雇用型
    • SOHO - 個人事業主。法人格を持っていることが条件。
    • 在宅ワーク型 - 個人が請負、あるいはテレワークあっせん会社に登録を行い、データ入力やアドレス収集、ホームページ作成などを行う。収入の低さから「電脳内職」と揶揄される形態でもある。

また、総務省では上記に付け加えて、施設利用型勤務[注 1]を定義している。

規模

平成17年度テレワーク実態調査(国土交通省)によれば、2005年時点で日本には狭義のテレワーカーが674万人[注 2]いる。政府は2003年7月策定の「eJAPAN戦略II」で、2010年に日本の労働人口の2割[注 3]をテレワーカーにする目標をかかげている。

一方で、この数字は過大であるという指摘もある。一例として、「調査は本人の自覚によらず定義に当てはまるかで判断しているため、例えば週に8時間以上自宅へ持ち帰り残業を行えばテレワーカーとなる」(佐藤、2008)を挙げる[108]

日本は通勤者のための公共交通機関網が他国と比較して広範囲に発達していることや、企業人事評価制度の問題などから、2019年までの日本ではテレワークの普及が遅れていたが、2019新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) の感染が世界的に拡大する中、2020年4月7日に東京都などで、改正・新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発出されると、人との接触機会が多い満員電車の解消などのためテレワークが推奨された。準備期間はほとんどなかったにも関わらず、テレワークに切り替える会社も相次いだ。単純な解雇や自宅待機者も含まれるため全てがテレワークによる減少とは限らないものの、丸の内八重洲など比較的大企業のオフィスが周辺に存在する東京駅の利用者は、朝7時台47.8%減、8時台67.7%減となった[110]

テレワークソリューション

テレワークを企業が導入するにあたっては、テレワークソリューション、労務管理、執務環境の3つの側面から検討することが必要。特に在宅勤務の場合、パソコンの画面をずっと見て仕事をすることが多い為「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に留意した執務環境が必要である。

テレワーク・デイ

総務省厚生労働省経済産業省国土交通省内閣官房内閣府では、東京都及び経済界と連携し、2020年までの毎年、東京オリンピックの開会式が予定されている7月24日を『「働く、を変える日」テレワーク・デイ』とし、企業等による全国一斉のテレワーク実施を呼びかけている[111][112]

  • 第1回目(2017年) - 900団体以上、約6.3万人が参加[111]NTTコミュニケーションズは約800人の社員が終日、在宅で勤務した[113]Yahoo!は全従業員の半数に当たる3000人規模でテレワークを実施し、自宅やカフェ、サテライトオフィスなど、それぞれのワークスタイルに合う空間で作業をした[113]サニーサイドアップは本社最寄り駅の一つが国立競技場駅であり、「下り電車に乗ろう」プランを導入、海の家や高尾山でミーティングを行った[113]
  • 第2回目(2018年) - テレワーク・デイズ(7月23日の週で、24日を含む計2日以上)として開催、1200団体以上が実施団体として登録した[114]

スーツ着用の有無

2020年8月、K-51インターナショナルがオーダースーツ購入経験のある20代~50代の男性を対象に、「新型コロナとオーダースーツ」に関する調査を実施。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発令や外出自粛要請を受けて、リモートワーク(テレワーク)という働き方が急増したが、スーツ着用が『かなり減った(38.5%)』、『少し減った(24.0%)』『変わらない(18.0%)』『全く着なくなった(18.0%)』『かなり増えた(1.0%)』『少し増えた(0.5%)』の回答を得た。しかし、重要な会議や商談などではビデオ会議やWEB商談でも8割以上が『はい(81.8%)』(着用)と回答した[115][116]

仮想化

企業では、タブレットやラップトップなどのリモートデバイスからアクセスできる社内アプリケーションへのアクセスをテレワーカーに提供することがよくある。これらのデバイスは、従業員の間で人気が高まっているが、基礎となるOSが異なるため、さまざまな互換性の問題がみられる。しかし、デスクトップ仮想化、特にリモート・デスクトップ仮想化を利用することで、モバイル・デバイスからレガシー・アプリケーションやOSにアクセスすることができる。

アメリカ連邦政府

2000年以降、米国連邦法運輸省および関連省庁歳出法)では、各行政機関に対し、対象となる従業員が可能な限り在宅勤務に参加できるよう、従業員のパフォーマンスを低下させない限り、在宅勤務に関する方針を定めることを義務づけている[117]。つまり、連邦法は、各機関がテレワーク・プログラムを確立しなければならないことを義務付けているが、個々の従業員にテレワークをする法的権利は与えられていない[118]

もし、フルタイムでテレワークを行う資格のある連邦政府職員全員がテレワークをすれば、連邦政府は年間139億ドルの通勤コストの削減を実現し、毎年9ポンドの環境汚染物質を削減することができる[119]。2007年の出来事により、米国連邦政府にとって重要な測定値として、テレワークが前面に押し出された。テレワークは、事業の継続性(COOP)や国家的なパンデミック対策の計画、外国産石油への依存度の低下やガス価格上昇の負担の軽減、国防軍基地閉鎖・再編委員会(BRAC)、職員の採用と定着への焦点などに関連している。2007年9月12日に開催されたテレワーク交流タウンホールミーティングの基調講演の中で、当時のアメリカ共通役務庁英語版長官であったルリタ・ドアン英語版は、機関のテレワーク参加率を高めるための積極的なコミットメント目標を発表した。彼女の課題は、2010年までに対象となる機関職員の50%が週1日以上のテレワークを可能にすることであった。2007年現在、対象となるGSA職員の10%がテレワークを行っているのに対し、連邦労働者全体では4.2%となっている。彼女の目標は、2008年末までに20%、2009年末までに40%、そして2010年までに最終的に50%にすることであった[120]

2007年のアメリカ国立科学財団職員を対象とした調査では、約3分の1がテレワークに定期的に参加しており、職員はこのプログラムに満足しており、テレワークの結果、職員の時間と温室効果ガスの排出量が節約されたと指摘されている[121][122]。サーベンス議員(D-MD)は、2009年3月に「2009年テレワーク改善法」を提出した。この法案の共同提案者には、コノリ(D-VA)議員が含まれている。コノリ(D-VA)、ウルフ(R-VA)、カピト(R-WV)が法案の共同提案者となった。この法案は、各行政機関が、従業員の業績や行政機関の運営を低下させることなく、可能な限り最大限に従業員にテレワークを認める方針を定めることを求めている。同時に、米国上院で、アカカ上院議員(D-HI)は、ランドリュー上院議員(D-LA)とヴォイノビッチ(R-OH)とともに、同法案を提出した[123]

2010年5月24日、上院は、ダニエル・アカカ(ハワイ州)とジョージ・ヴォイノビッチ(オハイオ州)の両上院議員が提唱するテレワーク強化法(S.707)を可決した。この法案は、連邦職員にテレワークを行う資格を与え、連邦政府機関がテレワーク方針を定め、テレワーク・マネージャーを特定することを要求している[124]。2010年7月14日、下院は「2010年テレワーク改善法」(H.R.1722)を290-131で可決した。米国上院は2010年9月29日に全会一致で法案の最終版を可決し、下院は2010年11月18日に254-152の超党派投票で可決した[125]。2010年12月9日、オバマ大統領は、2010年のテレワーク強化法(H.R.1722)に署名を行った[126]。2012年のテレワーク強化法は、米国の機関が従業員に実行可能なオプションとしてテレワークを提供するための枠組みを提供した。テレワークを行う従業員の数を増やすテレワーク強化法の主な目的は次の3つで、(1)業務の継続性の向上、(2)経営の有効性の促進、(3)ワークライフバランスの強化である[127]

「連邦政府における2012年のテレワークの状況(The 2012 Status Telework in the Federal Government)」では、過去18ヶ月間のテレワークのハイライトと、今後のテレワーク改善の目標が掲載されている。データセルに参加している87の機関すべてがテレワーク政策を策定し、政策の73%がテレワーク法の要件を満たしていることが報告されている。68万4,000人以上の連邦職員がテレワークの資格があるとみなされ、これは全連邦職員の約32%に相当する。144,000人以上の連邦職員が、所属機関との間でテレワーク協定を結んでいた。在宅勤務者の27%が週に3日以上遠隔勤務していた[128]。この調査結果に加えて、報告書は国防総省でのテレワークについても調査している。報告書によると、国防総省には79万3,000人以上の職員がおり、そのうち13万4,877人がテレワークの対象とみなされている。全体的に見て、連邦政府はテレワークを受け入れているようで、従業員のためのリモートワークの機会をより多く作ろうとしている。最後に、報告書では、政府がテレワークを通じてより多くの仕事を提供できるようにする方法をいくつか挙げている。その中には、定年間近の従業員を維持するためのツールとしてテレワークを利用することや、高度な訓練を受けた障害のある退役軍人の雇用を拡大するためにテレワークを利用することなどの提案が含まれている[128]

センター

テレワークセンターは、一般的に車で移動したり、公共交通機関を利用したりする人が多い場所の近くに設置されているオフィスである。通常は、生産性を最大限に高めるために、オフィス設備や高速インターネット接続を完備している。中には、受付や管理者などのサポートスタッフを配置しているところも見られる。例えば、ワシントンの首都圏には、メリーランド州に7カ所、バージニア州に8カ所、ワシントンD.C.に3カ所、ウェストバージニア州に1カ所のテレワークセンターが設置されている。テレワークセンターは、通勤時間を短縮しながら、従来のオフィス環境で仕事をすることができる。テレワークセンターの中には、個々の企業が設立したものもあれば、多くの組織が利用するために独立した組織が設立したものも存在する。また、テレワークセンターは、自宅で仕事をするスペースがない人や、自宅で仕事をする気がない人には魅力的なものである。そして、雇用主に労働力のためのより正式な構造を維持する能力を提供している。

このようなワークアレンジメントは、サービスのカスタマイズや仮想的な組織化へと向かう現在の傾向に伴い、より一般的になる可能性が高くなっている。分散型ワークは、コスト削減、競争上の優位性と敏捷性の強化、希少な人材へのアクセス、従業員の柔軟性、有効性、生産性の向上など、企業にとって大きな可能性を提供している[129][130][131][132]。それは欧米、特にヨーロッパで人気を得ている。重要性は増加しているが、分散型ワークはアジアではまだ広く受け入れられていない[133]

リモートオフィスセンター

リモートオフィスセンター英語版(ROCs)は、複数の企業から個人にオフィスを貸し出す分散型のセンターである。リモートオフィスセンターでは、プロ仕様のネットワークアクセス、電話システム、セキュリティシステム、メールストップ、オプションサービスなどを追加料金で提供している。ROCは一般的に、人口集中地域全体の人々が住んでいる場所の近くに位置しているため、労働者は数マイル以上の距離を通勤する必要がない。在宅勤務者は実際のオフィスで仕事を行うが、従来の在宅勤務と同様にVPNを利用してインターネットを介して会社のネットワークにアクセスする。

このタイプの在宅勤務は、在宅勤務のメリットを十分に享受することはできないが、在宅勤務ができない、またはしたくないという従業員のニーズに対応することが可能である。

テレワーカーのための情報セキュリティ

安全ではないコンピュータやネットワーク接続から情報を盗むことを生業とするハッカーにとって、テレワーカーは組織の最も機密性の高いデータへ扉を開くことになる可能性がある[134]。セキュリティとプライバシーは、技術者が作成できるあらゆるセキュリティ対策の一歩先を行くハッカーの能力のおかげで、最近ではますます希少価値の高いものとなっている。セキュリティ侵害は、標準的なオフィス環境では十分に大きな脅威であるが、在宅勤務や外出先で働く従業員がいる組織では、そのリスクはさらに大きなものとなる。

データ保護と情報セキュリティが組織にとって重要であり、機密データ保護という全体的な目標を達成するためには、従業員の行動が重要であることをテレワーカーに伝えることが組織にとって重要である[134]。セキュリティ問題に対する意識の向上とトレーニングを行っているにもかかわらず、多くの従業員がセキュリティリスクを抑止するために必要な予防措置を講じていないのが現状である。

真のセキュリティは、セキュリティポリシーから始まるものである。情報セキュリティの専門家は、セキュリティポリシーが在宅勤務/テレワーク、そして誰がテレワークをすることができるか、テレワークをする人が利用できるサービス、情報の制限、本人確認/認証/認可、機器とソフトウェアの仕様、完全性と機密性、メンテナンスガイドライン、および堅牢なユーザー教育をカバーしていることを確認しなければならないとされている[134]

その他の国々

ニューヨーク・タイムズの記事によると、在宅勤務は現在アメリカの労働力の約2.6%を占めており、ドライバーなどのリモートワークは含まれていないという。記事では、スタンフォード大学の経済学教授であるニコラス・ブルームの実験についても言及されている。この実験では、250人の労働者が中国の大手旅行会社であるCtripからランダムに選ばれ、自宅かオフィスのどちらかで働くことになった。その結果、在宅勤務をしている人の方が、オフィス勤務をしている人よりも長時間勤務していることが判明した。在宅勤務者はまた、より生産性が高く、より幸せな生活を送っていた。Ctripは在宅勤務で約2Kを節約した。なお、在宅勤務者の退職率は低下したが、昇進率も低下した。在宅勤務者の多くは、孤独感や昇進願望などを理由に、最後にはオフィスに戻ることを求めていた。Global Workplace Analyticsの社長であるケイト・リスターは、ほとんどの労働者が在宅勤務とオフィスワークの併用を好むという結論に達した。在宅勤務は効率性を高め、労働者の柔軟性を高めるものである[135]

アメリカは経済性が高く、マルチメディアサービスも充実しているため、テレワークを利用する傾向が高まっている。在宅勤務を好む国トップ10の中では米国が1位であるが[136]、中国などの発展途上国もこの傾向に追いついてきている。money.163.comの記事によると、アジア太平洋地域の在宅勤務者数は、アメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカなどの地域を上回っている。アジア太平洋地域の在宅勤務者数は約37%、その他の地域では約23~4%となっている[137]。なお、すべての労働者が在宅勤務をする機会があるわけではない。在宅勤務の倫理的な問題の一つは、誰に在宅勤務の機会を与えるべきかということである。ある人は、幼い子供がいるので、自宅で仕事をする機会が多いかもしれないが、もう一人は個人的な問題を抱えていると言い出すこともある。そして、在宅勤務とオフィスワークを両立させることは、多くの労働者に好まれている。多くの人は、週に1~2回の在宅勤務が妥当なスケジュールだと考えている。企業もまた、労働者の満足度が高く、企業がコストを節約できるため、この提案を支持している。

コロナウイルスパンデミックの影響

アナリストは、現在進行中の新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の世界的流行が在宅勤務の「転換点」になる可能性を示唆している[138]シアトルでは、マイクロソフトアマゾンフェイスブックグーグルが従業員に在宅勤務を義務付けている[139][140]。また、流行の結果として在宅勤務が増加することでアメリカではインターネットへのアクセス権英語版が拡大する可能性があると示唆する声もある[141]


注釈

  1. ^ サテライト・オフィス、テレワークセンター、スポットオフィス等を就業場所とするもの
  2. ^ 内訳は、雇用型で506万人、自営型で168万人
  3. ^ 7000万人×0.2=1400万人

出典

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