サイエンス・フィクション
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道具立ての変遷
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SFの道具立て(ガジェット)は、科学技術の進歩に伴って変遷する。
かつて現実味を持ちえた「もしも火星に知的生命体がいたら」などの仮定は、天体観測技術の発展・さらには火星探査機での調査により科学的には否定され、ファンタジーやパロディ的作品の設定として利用するか、その仮定を成立させるためのバックグラウンドの構築をともなうことでしか成立しなくなった。
逆に、手塚治虫らがSF的設定として描いた「人間の接近を感知して自動的に開閉する扉」は、現代では自動ドアとして日常的になっており、未来技術を演出するSFの小道具ではなくなった。どこにいても発着信・通話が可能な携帯電話などもまた然りである。また、コンピュータの進歩によってサイバースペースやAIを小道具に使ったり、バイオテクノロジーやナノテクノロジーなどの最新の研究やその発想を押し進めたSFも書かれている。
その一方で、タイムマシンや超光速航法、超光速通信、反重力などの架空の技術は、考案された当初は様々な架空理論による理論づけがされたが、現在では特別な架空理論を伴わずに、物語開始の時点で既に技術が確立され汎用化しているという前提をもって作品中で使用されることも多い。
SFと科学技術
SFと現実の科学技術の関係については、科学的知見がSF物語の創作材料となることが多いだけでなく、逆にSFが科学の発展を方向付けることもある。
その典型的な例がロボットである。日本にはロボットアニメの伝統があり、それらに触発されてロボット工学の道に進んだ日本人の技術者は多く、日本がロボット工学で世界の最先端にいるのはこれが原因だ、と分析する者もいる[37]。アメリカでも、「『2001年宇宙の旅』のHAL 9000を実際に作ってみたい」という動機で人工知能の研究を行っている研究者が多い。
ジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』も、コンスタンチン・ツィオルコフスキーやロバート・H・ゴダード、ヴェルナー・フォン・ブラウンらのように少年期にこれを読んでロケット工学の研究に着手し、この分野で名を成した研究者がおり、彼らの手によってついには実際に月まで人間を運ぶに至った。一方、H.G.ウェルズのファンであった科学者レオ・シラードは、『解放された世界』に登場した原子力兵器に触発されて核エネルギーの開発に着手、結果として後年に日本への原子爆弾投下が実現してしまった[38]。
携帯電話、テレビ、潜水艦なども、最初はSFの世界で登場して「未来にはきっと存在するであろう技術」として概念が普及し、その後に現実世界でも実現した。このように、ある意味ではSFが科学技術へと影響を与えている一面があるとも考えられる。またNASAで最初のアフリカ系アメリカ人の女性宇宙飛行士、メイ・ジェミソンはスター・トレックに多大な影響を受けたと語っている[39]。
SFの賞
SF作品を対象とした文学賞のうち、英語圏においてもっとも有名なものは、ワールドコン登録者のファン投票によって選ばれるヒューゴー賞と、アメリカSFファンタジー作家協会(SFWA)に所属するSF作家・編集者・評論家などの投票によって選ばれるネビュラ賞の2つである。このほか、ファン投票によって選ばれる賞(ローカス賞など)、選考委員が受賞作を決定する賞(アーサー・C・クラーク賞、ジョン・W・キャンベル記念賞、フィリップ・K・ディック賞など)、特定の国・地域で発表された作品を対象とする賞(英国SF協会賞、ディトマー賞など)、特定の傾向を持つ作品を対象とした賞(プロメテウス賞、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞など)、新人・若手作家を対象とした賞(キャンベル新人賞など)、特定のサブジャンルを対象とした賞(サイドワイズ賞など)、翻訳作品を対象とした賞など、数多くの賞が存在する。世界幻想文学大賞やミソピーイク賞のように隣接ジャンルの賞をSF作品が受賞することもある。
日本においては、日本SF大会の参加者を中心としたファン投票によって選ばれる星雲賞や、日本SF作家クラブ会員の投票によって選ばれた候補作を選考委員が選考する日本SF大賞のほか、SFマガジン読者賞、公募新人賞などがある。
そのほか、ドイツ、フランス、中国、イスラエル、ルーマニア、ブラジルなど各国にそれぞれSFを対象とする文学賞が存在する。
注釈
- ^ 「現実的な問題」というのは、政治情勢次第でこの様な破滅が引き起こされる事が、科学技術的に不可能ではなくなった、という意味である[独自研究?]。
- ^ 伊藤計劃はデビュー作『虐殺器官』が絶賛を得て第28回日本SF大賞候補となり、また文芸評論の分野などからも21世紀の日本SFを担う牽引役として期待を集める存在となった[35]が、2010年、34歳の若さで亡くなった。
出典
- ^ Gunn, James (2002). The Road to Science Fiction: From Wells to Heinlein. Scarecrow Press. ISBN 978-0810844391.
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- ^ "www.jessesword.com/sf/view/210". Retrieved on 2007-02-02.
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- ^ Scalzi, John (2005). The Rough Guide to Sci-Fi Movies.
- ^ Ellison, Harlan (1998). "Harlan Ellison's responses to online fan questions at ParCon". Retrieved on 2006-04-25, 2006.
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- ^ 『十億年の宴』pp.28-31
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- ^ 『現代SFの歴史』pp.31-35
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- ^ 『十億年の宴』pp.261-263
- ^ 『SF百科図鑑』p348
- ^ マイク・アシュリー 『SF雜誌の歴史 - 黄金期そして革命』(牧眞司訳、東京創元社、2015年1月。ISBN 978-4-488-01540-4)の前書き、及び、訳者後書き(牧眞司)参照。
- ^ 中村融, 山岸真編『20世紀SF〈2〉1950年代―初めの終わり』 (河出文庫) 解説。
- ^ 仁賀克雄編『機械仕掛けの神―黄金の50年代SF傑作選』 (ソノラマ文庫)。
- ^ [1]「50年代SFの幻視者たち」大野万紀
- ^ 『十億年の宴』 [要ページ番号]
- ^ 『日本SF古典集成 (1)』 [要ページ番号]
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- ^ 長山「日本SF精神史 完全版」(河出書房新社)2018年刊行
- ^ 日本SF誕生ーー空想と科学の作家たち(第2章). 勉誠出版. (2019年8月5日)
- ^ 「SF研究からみたマンガ/コミックス研究」p.76
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- ^ 山野浩一. “「NW-SF宣言」”. 2012年11月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月20日閲覧。(初出:「季刊NW-SF」Vol.1、1970)
- ^ “【レビュー・書評】虐殺器官〔著〕伊藤計劃”. ブック・アサヒ・コム. 朝日新聞社 (2010年6月6日). 2015年9月6日閲覧。
- ^ 大森望 (2011年3月8日). “徳間書店のSF専門誌、11年の歴史に幕”. WEB本の雑誌. 本の雑誌社. 2011年9月8日閲覧。
- ^ “日本のロボット工学、鉄腕アトムとガンダムのおかげで発展? 海外メディア注目”. 財経新聞. (2014年3月31日) 2016年11月21日閲覧。
- ^ http://www.thestargarden.co.uk/Why-society-needs-science-fiction.html
- ^ https://memory-alpha.fandom.com/wiki/Mae_Jemison[出典無効]
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