冷凍睡眠
『鉛の卵』(安部公房) 1人の20世紀人が、百年間冬眠するはずのところ、機械の故障で80万年後に目覚める。そこはサボテンに似た緑色の植物人の国だった。20世紀人は、ものを食べるという罪を犯したために、どれい族の居住域へ追放される。ところが、どれい族は高度な文明を持ち、20世紀人と同様の姿形をしていた。実は植物人の方が、博物館の保存公園に隔離されているのだった。
『南京虫』(マヤコフスキー) 1929年、スクリプキンは恋人ゾーヤを捨て、成金の娘との結婚式に臨む。結婚式場で火事が発生し、それを消すための放水が凍りついて、スクリプキンは1匹の南京虫とともに氷づけになり、50年間眠る。1979年にスクリプキンは解凍され、ゾーヤと再会する。南京虫とスクリプキンは、過去の貴重な遺物として動物園の檻に入れられる。
『未来からの手記』(アモソフ) 1960年代末。47歳の生理学者である「私(イワン)」は、不治の白血病に侵された。唯物論者の「私」は、「死」=「無」であることを知っていた。「私」は冷凍睡眠に入り、白血病治療の可能な時代を待つ。22年後の1991年、「私」は目覚める。そこは平和で豊かな理想社会であり、「私」は健康を回復する。しかし「私」は、新しい時代に適応できない。「私」は美しいアンナと出会い、子供も生まれるが、アンナは前夫によって殺されてしまった。
★2.冷凍睡眠する人と、しない人の年齢の差。
『ガラスの城の記録』(手塚治虫) 札貫礼蔵は冷凍睡眠に関心を持ち、自分だけでなく家族をも冬眠させる。しかし、睡眠装置管理のため起きている者と、眠る者との間で、年齢の進み方が異なってくる。眠っていた長男・一郎は24歳の容姿だったが、起きていた弟・四郎は42歳になっていた。冷凍睡眠の作用で一郎の人格は破壊され、彼は弟・四郎の娘(=姪)真理と関係を持ち、父・礼蔵、弟・四郎を始め、大勢の人間を殺す〔*この作品は未完である〕。
『夏への扉』(ハインライン) 1970年。30歳を目前にしたダニエルは共同経営者に裏切られ、発明の特許を奪われて、会社を追われる。ダニエルは絶望して冷凍睡眠で30年間眠り、2000年に目覚めるが、開発途上のタイムマシンで1970年に帰り、過去の失敗を取り戻す。ダニエルを慕う11歳の少女リッキィに、「21歳になったら、冷凍睡眠で2001年まで眠るように」と告げて、ダニエルは一足先に再び冷凍睡眠の装置に入る。2001年。30歳のダニエルは21歳のリッキィと結婚する。
『そして、だれも・・・』(星新一『なりそこない王子』) 宇宙船の乗員5人が人工冬眠に入り、全員、同じ夢を見続ける。覚醒時の混乱を防ぐためだ。夢の内容は現実同様、宇宙船で長期旅行をする、というものである。目的地に近づき、乗員たちは1人ずつ目覚める。まだ夢の中にいる乗員からは、宇宙船内の仲間が1人また1人と、どこかへ消えてしまうように見える。覚醒すれば現実の宇宙船内で、消えた仲間と再会できるのである。
★5.墓の中に長年月いた後に蘇生するのは、冷凍睡眠と同じようなものである。
『捜神記』巻15-12(通巻370話) 後漢末の大乱の頃、前漢時代(200~400年前にあたる)の官女の墓をあばいた者がいた。官女はまだ生きており、墓から出ると、もとどおり元気になった。魏の郭后が彼女を側に置き、漢代の宮中のことを尋ねると、その返答は明快で、首尾も一貫していた。
『捜神記』巻15-14(通巻372話) 某家の葬儀の折、女中が誤って墓の中に閉じこめられ、10余年を経て救い出された。女中は、掘り出されるまでの年月を、「1晩か2晩くらいの時間だ」と思っていた。閉じこめられた時、彼女は15~6歳だったが、掘り出された時も、姿形は以前のままだった。女中はその後、嫁に行き、子供も産んだ。
コールドスリープ
![]() | この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2018年1月) |

コールドスリープとは、宇宙船での惑星間移動などにおいて、人体を低温状態に保ち、目的地に着くまでの時間経過による搭乗員の老化を防ぐ装置、もしくは同装置による睡眠状態。移動以外にも、肉体の状態を保ったまま未来へ行く一方通行のタイムトラベルの手段としても用いられる。
SF作品にはしばしば登場する概念であったが、2020年6月、筑波大学と理化学研究所の共同研究チームが、本来、冬眠しないはずのマウスを冬眠に極めて似た状態に誘導することに成功したとする論文の発表(雑誌『Nature』)を行い、世界に衝撃を与えた[1][2][3][4]。
なお、和製英語におけるSF用語であることから、英語圏で使われることはなく、冷凍睡眠や長期冷凍睡眠にはハイバネーション(冬眠)やハイパースリープといった語句が主に使われる。
概要
一般にコールドスリープには、低温状態にして睡眠後に時々覚醒するタイプ、冬眠タイプ、冷凍タイプがあるとされる。
数十年以上もの長期間におよぶ惑星間の有人移動の際、それに必要不可欠な搭乗員の食料や酸素といった生命維持系、健康維持のための生活空間など、生活に要するものを少なく抑えることができれば宇宙船の質量を減らすことができ、その分だけ燃料を減らすことができるほか、備蓄スペースを別のことに利用できる。また、数十年以上をかけての有人移動には、人間の寿命との兼ね合いが生じる。このような点から、コールドスリープが選択される。
一方、生命を保ったまま人間を冷凍させる技術や、長期冬眠をさせるための技術は確立していない。
冷凍した場合、水分が凍結した時に起こる体積膨張によって細胞を破壊してしまうため、生命を保ったまま人間を冷凍できるかどうかなどの問題がある。なお、精子の冷凍保存は実用化されている。
2020年6月には、筑波大学と理化学研究所の共同研究チームが、本来、冬眠しないはずのマウスを冬眠に極めて似た状態に誘導することに成功。マウスの脳の視床下部に存在する「Qニューロン」を発見し、冬眠をしない動物でも冬眠に近い状態を作れる可能性が示された[3]。
Qニューロンの発見
前述のマウスの「Qニューロン」はマウスの脳の視床下部に存在し、Qニューロンを刺激すると、マウスの酸素消費量が著しく低下するとともに、体温も数日間にわたり大きく低下(室温が20℃、体温が22-23℃)。この状態は少なくとも1日以上安定して持続した後、すべてのマウスは障害が残ることなく、自発的に元の状態に戻った[3]。
睡眠研究の第一人者である筑波大学教授の櫻井武は、睡眠や覚醒に関わる脳内物質を調べるため、特定の神経細胞を興奮させる実験をしていてマウスが動かなくなった。生理学的に冬眠と区別できない状態になっていることに気付き、親交があった理化学研究所冬眠生物学研究チームの砂川玄志郎に連絡し、共同研究が始まる。その結果、この神経細胞群が、"冬眠スイッチ"ともいうべき「Qニューロン」であることを発見。「Q」は、「QRFP」という名前のペプチドの頭文字で、このQRFPは、人間も含む哺乳類に広く分布することが分かっているため、人間でもQRFPを含む神経を刺激することで、マウス同様に"冬眠に極めて似た状態"を誘導することができる可能性が高まった。一方で、太古には、人間も冬眠していたのではないか、とする報告もある[3]。人間にも人工的に冬眠に似た状態を作り出すことが可能であれば、救急搬送や集中治療、全身麻酔、臓器保存、再生医療といった臨床の現場で応用できると期待が高まった[4]。
2022年には、体温を下げずに代謝だけを下げる"温かい冬眠"により、血流停止時の臓器ダメージを防げる可能性が新たに示された[5]。
類似する技術
クライオニクス
日本では行われてはいないが、クライオニクス(cryonics、人体冷凍保存)と呼ばれるサービスがある。これは、死んだ直後の人体を冷凍保存し、医療技術の発展した未来に復活の望みを求めるものである。しかし、先述したように冷凍時や解凍時の細胞破壊を克服する技術の目覚ましい進歩が必要とされることに加え、すでに破壊されてしまった細胞の復元は非常に困難であることから、実際に彼らが復活するかについては悲観的や否定的な意見が多い。
あえて比較するならコールドスリープは架空の技術だが、クライオニクスは(さまざまな問題があるものの)既存の技術である。また、コールドスリープは生きている人体が対象であり、クライオニクスは死んだ後の人体が対象である。
停滞フィールド
SF作品などでコールドスリープに近い使われ方をするテクノロジーに停滞フィールド (stasis) というものがある。これは対象の時空間をまるごと停止することで、肉体が外部からの影響を一切受けないようにする技術である。恒星間航行における主観的時間の短縮や、重犯罪者に対する長期間の冷凍刑などの応用例がある。ただし、時空間を高度に操作する技術が必要であるため、実現の可能性はきわめて低いと考えられる。
ラリー・ニーヴンの小説『プタヴの世界』(1966年)における、異星人のスリント人が乗る宇宙船に事故が発生したため、宇宙服に内蔵された停滞フィールドを起動して救助を待つつもりが発見されずに15億年後の地球で目覚めた、などの例がある。
冷凍遺体からのクローン作製
2008年、理化学研究所の若山照彦らのチームが、死後16年間冷凍保存されていたマウスからクローンマウスを産み出すことに成功した。これにより、理論的には冷凍保存された人の遺体からクローン人間を生み出すことが可能となった。この技術を応用すれば、マンモスなどの絶滅動物の凍結死体からクローンを作れる可能性もあると期待されている。ただし、クローン個体は単にDNAや体の構造が一致するだけのもので意識や記憶の共有は起きないと考えられており、この技術を人間に用いても、本人にとっては寿命が延びることを意味しない。
登場作品
脚注
- ^ “冬眠様状態を誘導する新規神経回路の発見 ~人工冬眠の実現へ大きな前進~”. 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 (2020年6月11日). 2020年8月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月26日閲覧。
- ^ “冬眠様状態を誘導する新規神経回路の発見 ~人工冬眠の実現へ大きな前進~” (PDF). 筑波大学 理科学研究所 (2020年6月5日). 2021年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月26日閲覧。
- ^ a b c d “人間も冬眠できる?もはやSFでない「人工冬眠」研究~医療や宇宙分野への期待も!”. サイエンスZERO(NHK). 2023年5月19日閲覧。
- ^ a b ““人工冬眠”が2030年代にも実用化、医療現場を変える”. 三菱電機BizTimeline(2021年5月17日付 日刊工業新聞) (2021年5月17日). 2023年5月19日閲覧。
- ^ “人工冬眠が臓器のダメージを防ぐ可能性”. 中沢真也 - 理化学研究所 (2023年1月18日). 2023年5月19日閲覧。
関連項目
冷凍睡眠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 14:28 UTC 版)
「メタルマックス4 月光のディーヴァ」の記事における「冷凍睡眠」の解説
モリセ博士の指揮下に行われたプロジェクト。コールドスリープ。
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