カトリック教会
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教義
カトリック教会独自の教義
イエス・キリストの母・聖母マリアは子供を宿した時に原罪が潔められた、という意味ではなく、「マリアはその存在の最初(母アンナの胎内に宿った時)から原罪を免れていた」という信仰[注 5][注 6]。
聖母マリアは、その人生の終わりに、肉体のままで天国にあげられたという信仰。
神の恵みと神との親しい交わりとを保ったまま死んで、永遠の救いは保証されているものの、天国の喜びにあずかるために必要な聖性を得るように浄化(清め)の苦しみを受ける人々の魂が行くとされる、天国と地獄の間の世界。
ローマ教皇は、全世界のキリスト教の司教たちの中で、最も権威を持っていて、天国の鍵[注 7]を受け継いでいるとされる。教会の外にいる者は聖霊の恵みを受けられず、もしそこから離れてしまえば聖霊の恵みを得ることができないとされている。一方で、「カトリック教会と縁のない人々が救われないというわけではない」ということを、現代の教皇たちは述べている。
ローマ教皇が「信仰および道徳に関する事柄について教皇座(エクス・カテドラ)から厳かに宣言する場合、その決定は聖霊の導きに基づくものとなるため、正しく決して誤りえない」という教義のこと。教皇ピウス12世の「聖母の被昇天」に関する宣言には、「もしこれらのことを疑い、否定する発言を行うものはカトリック教会の信仰から離れているとみなされる」とした。第1バチカン公会議で決議されたこの教義に反対する者は、分離して復古カトリック教会を結成した。
他教派にも一部類似があるが特にカトリック教会で強調される教義
- 全実体変化説
ミサ中の聖変化によって、捧げられたパンとぶどう酒の全実体(the whole substance)が、パンとぶどう酒という偶有性[14](外観)のみを残して、イエス・キリストの霊魂と神性を持った聖体・聖血へと、「真実に(truly)、実際に(really)、実体的に(substantially)」変化(Transsubstantiation)するという説[15]。
聖変化した聖体は、ミサ中に領食(聖体拝領)する以外でも、聖体賛美式などでキリストの臨在を示すものとして拝礼の対象に用いられる。
また、パンまたはぶどう酒のどちらかの形態(外観)のみ(単形色)の聖体拝領で、聖体の秘跡として有効であるとする。多くのローマ・カトリック教会では、聖職者を除く一般信徒はパンのみを拝領する。使用するパンについて、ローマ・カトリック教会では、専用に作られた酵母なしの無発酵パン(「ホスチア」と呼ばれるもの)の使用を義務とする。
なお、東方典礼カトリック教会では、東方教会(正教会・東方諸教会)の伝統を受け継いで、プロスフォラと呼ばれる、専用に作られた発酵パンを使用し、水で割ったぶどう酒に浸して、それを匙ですくって拝領する。
- 奇跡があるという教説
カトリック教会には、公認、未公認、または非公認のあらゆる奇跡があるとされる。
現代的な教義の意味づけ
カトリック教会の教説(教え)は「聖書と聖伝」という言葉であらわされるように、旧約聖書、新約聖書およびイエス・キリストと使徒の教えに由来し、教父たちによって研鑽され、多くの議論を経て公会議などによって確立されてきたものである。使徒信条およびニケア・コンスタンチノープル信条を信条としている[16]。特に宗教改革以降、トリエント公会議においてカトリック教会の教義が整理され、再確認された。さらに現代では第2バチカン公会議でも現代に生きる教会として教義の意味を見直した[注 8]。
教典
カトリック教会においては、ヒエロニムス以来何度となく改訂されてきた、ヴルガータと呼ばれる後期ラテン語訳聖書が公式な聖書とされてきた。現在は各国語に翻訳されている。カトリック教会で聖書正典に含まれる諸文書を最終的に決定した公会議はトリエント公会議である。カトリック教会が正典とする旧約聖書には、七十人訳聖書には含まれていたがヘブライ語のマソラ本文に含まれていない文書がある。それらは第二正典という語で指される場合もあるが、正典に含めている。
日本語訳聖書においても、かつてカトリック教会とプロテスタント諸派では異なる翻訳による聖書を用いてきた。しかし、第2バチカン公会議以降の世界でのカトリックとプロテスタントによる聖書の共同翻訳という流れを受けて、日本でも両者による共同翻訳作業が始められた。その成果が初めて形になったのが『共同訳聖書』であり、表記などの問題点を改善したものが、現在日本のカトリック教会で公式に用いられている『新共同訳聖書』である。なお、『新共同訳聖書』では、上記旧約聖書の第二正典の部分を、これを正典に含めないプロテスタントなど他教派へ配慮して「旧約聖書続編」という名称で掲載している。
『カトリック教会のカテキズム』は教典などの信仰の公式な説明書である。
注釈
- ^ この場合は現在のカトリック教会と正教会を含む。
- ^ 東方教会ではこの言葉に由来して、総主教や首座主教などが持つ「カトリコス(英: Catholicos)」という称号がある。
- ^ 原典は古代ギリシア語: Εἰς μίαν, ᾱ̔γίαν, καθολικὴν καὶ ἀποστολικὴν Ἐκκλησίαν, ラテン文字化: Eis mian, hagian, katholikēn kai apostolikēn Ekklēsian;現代ギリシア語: Εις μίαν, αγίαν, καθολικήν και αποστολικήν Εκκλησίαν, 発音 [is ˈmian aˈʝian kaθoliˈkin ce apostoliˈkin ekliˈsian]
- ^ 西方典礼とほぼ同義語。第2バチカン公会議後の1969年に発布された「新しいミサ」の導入まで、東方典礼カトリック教会を除くローマ・カトリック教会は、ミサなどの典礼を世界中で全てラテン語で行っていた。
- ^ 中世には「来世の裁き」の観念が発達し、最後の審判を描く図像には天国の場所に神が裁判官として座し、マリアや聖人たちが仲介者として周りを囲んでいた[11]。
- ^ 神の母という信仰は、3世紀初めからアレクサンドリアの教父によって行われている。428年、ネストリオスはこれに反対し「キリストの母」と呼ぶべきだと唱えて、激しい論争が起こった[12]。
- ^ 『マタイによる福音書』の第16章18-19節の箇所にのみ出てくる、ペトロはイエスより天国の管理人に任命されたとされる[13]。
- ^ これらの教義は1992年に『カトリック教会のカテキズム』(CCC)として教皇庁により編纂され、順次各国語に翻訳されている。これは、いわゆるローマ・カトリック教会だけでなく東方典礼カトリック教会の規範にもなっている。なお、イエズス会、フランシスコ会などはローマ・カトリック教会の組織内部の修道会であり、教義(カテキズム)については同じであるため、「イエズス会派」「フランシスコ教団」などと呼んだりプロテスタントの各教派と同列に扱ったりするのは誤りである。
- ^ 教皇#地位と権威参照。
- ^ 中世ヨーロッパには「来世の裁き」の観念が発達し、最後の審判を描く図像には天国の場所に神が裁判官として座し、マリアや聖人たちが仲介者として周りを囲んでいた[17]。
- ^ 『マタイによる福音書』の第16章18-19節にある「天国の鍵」の記述の中で、ペトロが天国の管理人をするところの教会を、イエスは「自分の教会」と言ったという記述がある[18]。
- ^ 主日のミサは、日曜日だけでなく前日の土曜日の夜のミサも含む。
- ^ カトリック教会では、聖母マリアや諸聖人を神として敬っているわけではないため、「マリア崇拝」等と称するのは誤りである。
- ^ ガリレオは、ニコラウス・コペルニクス、ヨハネス・ケプラー、アイザック・ニュートンと並び、科学革命の中心人物とされている。
出典
- ^ 「世界のカトリック信者は13・2億人、信者増も聖職者減 最新統計発表」クリスチャントゥデイ(2020年10月19日)
- ^ 八木谷涼子『なんでもわかるキリスト教大事典』(朝日新聞出版)58頁 ISBN 9784022617217
- ^ DOGMATIC CONSTITUTION ON THE CHURCH LUMEN GENTIUM The Holy See(バチカン公式サイト)
- ^ 小高毅『よくわかるカトリック-その信仰と魅力 』(教文館、2002.15.May)10頁
- ^ “教会への愛、教会における責任” 2018年4月10日閲覧。
- ^ Paul Kwong; Philip L. Wickeri (2015), “Chapter18: Sheng Kung Hui - The Contextualization of Anglicanism in Hong Kong”, in Mark David Chapman; Sathianathan Clarke; Martyn Percy, The Oxford Handbook of Anglican Studies, Oxford University Press, ISBN 978-0198783022(英語)
- ^ An Introduction to the Christian Orthodox Churches, By John Binns, page 28 [1]
- ^ ▶▶カトリックとプロテスタントの違い◀◀長崎バプテスト教会
- ^ 八木谷涼子『なんでもわかるキリスト教大事典』(朝日新聞出版)P58ーP59 ISBN 9784022617217
- ^ 小高毅『よくわかるカトリック-その信仰と魅力』(教文館、2002年5月15日)p.10頁
- ^ 『岩波キリスト教辞典』(岩波書店)779頁
- ^ 『岩波キリスト教辞典』(岩波書店)767頁
- ^ 『岩波新約聖書』(岩波書店、2004年)131頁
- ^ “偶有性とは - コトバンク”. 2021年8月10日閲覧。
- ^ “全実体変化”. 護教の盾 (2014年5月2日). 2021年8月10日閲覧。
- ^ 『カトリック教会のカテキズム』194,195 (p.65) ISBN 4877501010
- ^ 『岩波キリスト教辞典』779頁「天国」の項目(安發和彰)
- ^ 『岩波新約聖書』(岩波書店、2004年)131頁
- ^ 『カトリック教会のカテキズム 要約(コンペンディウム)』175頁
- ^ “東京大司教区に補佐司教任命”. カトリック中央協議会 (2004年12月2日). 2005年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月17日閲覧。
- ^ 『カトリック教会の教え』251-254頁
- ^ “ANNUARIUM STATISTICUM ECCLESIAE: Published for 2000”. 2015年9月4日閲覧。
- ^ 『カトリック教会のカテキズム 要約(コンペンディウム)』(カトリック中央協議会 ISBN 978-4-87750-153-2)137頁
- ^ “結婚の神秘” 2018年4月6日閲覧。
- ^ “オプス・デイへの召し出し” 2018年4月6日閲覧。
- ^ 「ローマ教会、女性に投票権/世界代表司教会議 権利向上へ一歩」『朝日新聞』夕刊2023年4月27日8面(2023年5月1日閲覧)
- ^ 『カトリック教会の教え』252頁
- ^ クリスチャン神父のQ&A カトリック松原教会(2014年10月31日閲覧
- ^ COMMON CHRISTOLOGICAL DECLARATION BETWEEN THE CATHOLIC CHURCH AND THE ASSYRIAN CHURCH OF THE EAST The Holy See(バチカン公式サイト)
- ^ 教皇庁教理省 (2007年6月29日). “教会論のいくつかの側面に関する問いに対する回答”. カトリック中央協議会. 2013年4月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月17日閲覧。
- ^ “主の祈り 日本聖公会/ローマ・カトリック教会共通口語訳”. カトリック中央協議会. 2012年7月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月17日閲覧。
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