非カルケドン派正教会とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 非カルケドン派正教会の意味・解説 

非カルケドン派正教会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/03 21:29 UTC 版)

キリスト教 > 東方教会 > 東方諸教会 > 非カルケドン派正教会

非カルケドン派正教会[1](ひカルケドンはせいきょうかい、英語: Non-Chalcedonian Orthodox Churches[2])とは、カルケドン公会議(第四全地公会議)の決議を不服として成立した諸教会(アルメニア使徒教会コプト正教会シリア正教会など)の総称。

「非カルケドン派」の名称により、コンスタンティノープル総主教を名誉的なトップとし「ギリシャ正教」とも呼ばれる正教会[注 1]及びカトリック教会[注 2]カルケドン派)と区別される[1]

他にも様々な呼び名があり、オリエンタル・オーソドックスオリエント正教英語: Oriental Orthodox[2][3][注 3]非カルケドン派教会ロシア語: Дохалкидонские церкви[4])、古東方教会ロシア語: Древневосточные Церкви[5][6])、古オリエント教会イタリア語: Chiese orientali antiche[7], ドイツ語: Altorientalische Kirchen[8])等と呼ばれる。

キリスト教諸教派の成立の概略を表す樹形図。更に細かい分類方法と経緯があり、この図はあくまで概略を示すものである。
非カルケドン派正教会信者の国別分布
  主要宗教 (75%以上)
  主要宗教 (50~75%)
  少数派ではあるが重要な宗教 (20~50%)
  少数派ではあるが重要な宗教 (5~20%)
  少数派 (1~5%)
  僅かな少数派であるが (1%未満)、独立教会がある地域

日本では便宜的な名称として東方諸教会[9]東方正統教会[10]等と呼んでいる事例がある。なお、「東方諸教会」には、エフェソス公会議で既に分れていた(つまり「非エフェソス派教会」であって「非カルケドン派教会」ではない)ネストリウス派アッシリア東方教会など)[注 4]が含まれることがある(この場合、非カルケドン派+ネストリウス派=東方諸教会)[11]

概要

シェヌーダ3世コプト正教会の教皇アレクサンドリア総主教
エルサレム聖マルコ修道院英語版における聖体礼儀シリア正教会

カルケドン公会議でカルケドン派正教会およびカトリック教会から分かれたアルメニア、コプト(エジプト)、シリアの3教会と、その流れを汲む諸教会である。主に中東に存在する。規模は小さいものではなく、中東など各地域において伝統的な教派の一つとなっている。アルメニア使徒教会は世界で初めて国教とされたキリスト教会である。

教義は合性論の立場に立ち、単性論を否定、両性論ネストリウス派寄りと見なし否認する。カルケドン派の諸教会からは、しばしば「単性論教会」と呼ばれるが、非カルケドン派教会は単性論をコンスタンティノープルエウテュケス英語版の主張に限定しており、「単性論教会」の名称は自称として用いられることはない上に、いささか蔑称としてのニュアンスも含まれていると捉える。非カルケドン派は中立的な呼び名である。

非カルケドン派正教会とカルケドン派正教会とは、祭服の形・典礼奉神礼)の形式などに多くの共通点があり、見た目に似通っている部分も少なくない。両教会が東方教会と総称される所以である。カルケドン公会議以前の伝統は非カルケドン派正教会とカルケドン派正教会の両正教会に受け継がれて尊重されている。

近世以降、カトリック教会の勢力拡大に伴い、非カルケドン派正教会の一部は儀礼様式を保ちつつカトリック教会の教義を受け入れてローマ教皇庁の傘下に入り、東方典礼カトリック教会となった。

現代、非カルケドン派正教会とカルケドン派正教会との関係深化の話し合いは、東西教会の関係深化の話し合いよりは比較的順調に進められている。

非カルケドン派正教会の一覧

以下に非カルケドン派正教会の一覧と概説を挙げる。詳細はそれぞれの教会の項目を参照。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 本記事においては便宜上、以下「コンスタンティノープル総主教を名誉的なトップとし『ギリシャ正教』とも呼ばれる正教会」を「カルケドン派正教会」と呼ぶ。
  2. ^ 東西教会の分裂の時期をかなり早い年代にとる見解でもカルケドン公会議の時期に東西教会が分かれていたとする者はまずいないので、本記事では「カルケドン派正教会及びカトリック教会」とする。
  3. ^ 東方正教会(Eastern Orthodoxy)とも呼ばれるいわゆるギリシャ正教との混同に注意。
  4. ^ ネストリウス派はカルケドン公会議でも改めて主流派から異端とされたものの、以前のエフェソス公会議で既に異端とされていたため、ネストリウス派は「非カルケドン派」という呼称のカテゴリにはあまり含まれない。誤解されていることが多いが、アッシリア東方教会は「正教会」との自称を用いない。東方典礼カトリック教会であるカルデア典礼カトリック教会とは別のもの。

出典

関連項目


非カルケドン派正教会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 06:26 UTC 版)

東方諸教会」の記事における「非カルケドン派正教会」の解説

シリア正教会 使徒時代アンティオキア教会からの継承カルケドン派正教会同様に自覚している。シリア語アラビア語奉神礼用いている。ヤコブ派という異称があるが、ヤコボス・バラダイオスの働きシリア正教会自身尊重するものの、この異称蔑称として傾向持っており、シリア正教会自身が使う事は無い。主にシリアトルコ分布する首座主教アンティオキア総主教であり、ギリシャ正教系のアンティオキア総主教並立する態をなしている。その管掌範囲シリア一国とどまらずイラクなどにも及んでおり、欧米にも移民通じて普及するなどしている。また、歴史的経緯からインド正教会傘下にある。 アルメニア使徒教会アルメニア正教会301年アルメニア王国世界で初めキリスト教国教化したことに始まる。主にアルメニアトルコ分布しアメリカにも多い。東方典礼カトリック教会であるアルメニア典礼カトリック教会とは別のもの。 コプト正教会コプト」とはエジプトの古い呼び名コプト語アラビア語奉神礼を行う。主にエジプト分布するが、海外へ移民通してエジプト国外イギリス・フランスなど)にも広がり見せている(英国正教会英語版)はコプト正教会連なる)。首座主教であるアレクサンドリア総主教教皇パパギリシア語: Πάπας、英語: Pope)の称号古くから保持しており、「パパ・アレクサンドリア総主教」や「コプト教皇」などと称されるギリシャ正教系の正教会にもアレクサンドリア総主教居り、これと並立する態をなしているのは、上記通り並立して存在するアンティオキア総主教事情似ているエチオピア正教会 エチオピア正教会サハラより南で唯一植民地時代以前から存在する教会である。アクスム王国コプトエジプト)からキリスト教受け入れ国教とし、エチオピア帝国時代まで国教とされていた。1959年独立教会となるまではコプト正教会一部であったが、現在非カルケドン派正教会の中では最大規模を誇る。独特の形状をした、意匠凝らされ十字架用いられている事でも知られるエチオピアクロス様々な輸入雑貨店等で扱われている。 エリトリア正教会 エリトリア独立に伴い上記エチオピア正教会から独立して成立した教会インド正教会 南インドマラバール海岸一帯分布する。 「インドにおける非カルケドン派」も参照

※この「非カルケドン派正教会」の解説は、「東方諸教会」の解説の一部です。
「非カルケドン派正教会」を含む「東方諸教会」の記事については、「東方諸教会」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「非カルケドン派正教会」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「非カルケドン派正教会」の関連用語

非カルケドン派正教会のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



非カルケドン派正教会のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの非カルケドン派正教会 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの東方諸教会 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS